スカーレット隊(ポケットの中の戦争)

登録日:2022/06/30 Thu 20:40:26
更新日:2022/07/24 Sun 07:01:14
所要時間:約 6 分で読めます




スカーレット隊、発進!


スカーレット隊とは、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場する地球連邦軍の部隊の名前である。


【概要】

地球連邦軍に所属する部隊の一つ。
NT-1を受領する為、サイド6「リボー」コロニーに駐留している「グレイファントム」を母艦としている。
当時の最新鋭機であるジム・スナイパーⅡ量産型ガンキャノンジム・コマンドで構成されており、量産型ガンキャノン以外は少なくとも2機以上配備されている事から、パイロットこそ描かれなかったが上層部からの信頼がうかがえる。


【劇中での活躍】

連邦軍が密かに開発中のNT-1「アレックス」を破壊するべく、リボーコロニーに現れたサイクロプス隊の強襲用MS「ケンプファー」。
それを迎撃するべく、艦橋からの指示で母艦のグレイファントムから勇しく出撃するスカーレット隊。
しかし、哀れにも下降中の量産型ガンキャノンがケンプファーのショットガンに貫かれ破損。*1
続け様にケンプファーの放った2発のシュツルムファウストにて、ジム・コマンドが一度に二機撃墜。
炎と黒煙を吹きながら墜落していく量産型ガンキャノン。
そしてジム・スナイパーⅡとジム・コマンドも無惨な姿で横たわっていた。
降下に成功したジム・スナイパーⅡも一機いたが、ケンプファーの位置を捕捉できないまま、背後からジャイアントバズⅡの一撃を受けて撃墜された。

スカーレット隊、全滅!

……そう、以上がスカーレット隊の活躍の全てなのだ。
勇ましい出撃シーン、緊迫感のあるシリアスなBGM、そしてハイスペックなMS。
それら全てを活かすことなく散っていった、完全なる出落ち部隊である。
ちなみに、発進!から全滅!までの所要時間、映像にして約30秒ちょっとである。


【考察】

とまあ、あっさりとやられたスカーレット隊。
勿論その描写だけ見れば「ケンプファーSUGEEEEE!!」となるか「スカーレット隊ざっこwwwww」「何だ精鋭部隊じゃなくて精鋭部隊(笑)か」となるかだろう。

何故スカーレット隊は、良いMSを与えられていたのにああもあっさりとやられてしまったのか。
勿論それは機体が雑魚だったからという理由ではありえない。むしろ前述の通り、ジム・スナイパーⅡや量産型ガンキャノンは、当時の最新鋭機である*2
だが、MS……に限らず、兵器というのはいくら新型が開発されても、使用者の側が常に最新鋭のそれをありがたがるとは限らない。

事実ジオンでは一年戦争末期にゲルググが量産されても、扱い慣れたザクを好んだり、機種転換訓練の時間がなかったりして、旧式機に乗り続けたパイロットも多かった。*3
その為最新鋭機であるゲルググには、その性能を十分に活かせる古参兵ではなく、学徒兵や新兵が搭乗していた機体も多かったという。

現実の近代国家の例でいっても、戦争中においては特に、「新型機=ベテラン兵優先」の図式は必ずしも成立しない。
前線部隊に配備されている現用機材を更新するというのは、控えめに言ってもものすごく手間なので、戦争中の新型機は「新編成or再編成された部隊」に回される方が圧倒的に多かったりするのだ。
先のゲルググの様にガンダム世界においてもある程度この法則は通用していると考えられるため、あるいはスカーレット隊のパイロットも同様だった可能性もある。

実際、
  • 盾を装備していながら、それを構えず無防備に降下している
  • 下で動き回るケンプファーに視線を向けておらず、どうもまったく見つけられていないぽい
  • ショットガンはともかく、公式設定でも「弾速が遅い」ジャイアント・バズやシュツルムファウストを避けられていない
  • というかそもそもランダム回避運動さえとっていない
  • 僚機が次々と撃破されているにも関わらず、対応行動をとれていない
  • 降下に成功しても棒立ち状態で背後からの奇襲を許す
  • しかもその場所がコロニー外壁スレスレの橋の真下
などから、立ち回りを見るだけでも練度の低さがうかがえてしまう。

そもそも一年戦争末期にもなって、当時の最前線であるソロモンから*4遠く離れた中立地帯のサイド6に、NT-1受領のいわば使い走りとして来ていた事からも、実戦経験が豊富な部隊とは考えにくい。
このような描写から訓練成績が良かっただけの新兵を中心に集められた部隊なのでは?と思われるのは必然だっただろう。



とまあ、画面を見る限り正直文句のつけようのない雑魚っぷりではある。

……あるのだが、だがしかし、擁護できる点もないわけではない。



彼らが戦った場所はサイド6のリボーコロニーである。
ここは中立地帯であり、本来ならば南極条約において戦闘が禁止されている場所である。

しかし連邦の軍事施設を作ってMSを極秘開発を隠蔽している以上、もはやジオン側としては中立とみなしがたいのが当然であり*5、故にサイクロプス隊としてはある程度なりふりかまわない攻撃も可能である。

だが逆にサイド6と裏で「結託」している側である連邦軍部隊としてはそうもいかない。
共犯者であるサイド6首脳陣に不利益がでるのはもちろん、コロニーの一般市民に被害を拡大するなど持っての他である。
つまり、連邦軍側としてはこの場での戦闘行為には相当な制限が付く状態であり、無暗な火力の行使はなるべく避けねばならない状態にあった。

実際、このとき連邦側はコロニー住民の不興を買うことを避けるため、コロニーの治安部隊であるリーア軍を矢面に立たせ、その支援という立場を強調していた。スカーレット隊に下された命令も「防衛ラインを張る」事である。
連邦の上官が「君たちも実戦を経験しといた方がいいと思うがね」とリーア軍に嫌味を言っていたが30秒後に思いっきりブーメランになった。

そんな状況では高速で住宅街を移動しやりたい放題するケンプファーを空中から捉え、外したらコロニーに被害を及ぼすであろう狙撃行動など出来るはずもない。
ジム・スナイパーⅡがスナイパーライフルではなくブルパップマシンガンを装備している事からも、その判断は間違いではないだろう。
また、ケンプファーの砲撃を受けてしまったが、その砲撃が逸れればコロニーに予期せぬ被害が生じた可能性も考えられる。まあでも結果として墜落して被害は広がってしまったし、キャノン以外は盾使え?

また、ケンプファー自体が高速で動くステルス機、そのパイロットもミハイルというベテランだったため上記のスカーレット隊新兵説も含めるとスカーレット隊は致命的に運と相手が悪かったという可能性も充分あり得る。

もし仮に戦った場所が中立地帯ではなく、宇宙か地球の何処かだったら…あるいは連邦寄りサイドなら…*6結果はわからなった……かもしれない。

そしてロクな活躍もできなかった訳だが、結果的には無駄な犠牲に終わったわけでもなかった。
なにせケンプファーは彼らを駆逐するために貴重な弾薬を消費し、その結果肝心のNT-1とは接近戦で対峙する事となったのだ。
元々の切り札であるチェーンマインで仕留められなかった後、ビームサーベルで接近した事によりNT-1のドヒキョー隠しガトリング砲でケンプファーは正面から蜂の巣にされてしまった。
もしここで射撃武装があれば、一旦距離を置いてそれを放ち、未熟なクリスにはそれに対応する術がなかった可能性も高い。
そう考えるとスカーレット隊の犠牲は無駄ではないどころか、勝利の為に必要不可欠だったと言っても過言ではないだろう。犠牲になった方はたまったものではないが。


メタ的な話を言えばポケットの中の戦争は作られた当初は「MSはTV版機動戦士ガンダムと同じもの」という設定があった。
つまりジム・スナイパーⅡは「ジム・スナイパーカスタム」、量産型ガンキャノンは「ガンキャノン」、ジム・コマンドは「ジム」と置き換えて考えると、あの体たらくっぷりに納得がいく…
だめだガンキャノンがいたわ。


【関連機体】

出撃シーンから、少なくとも2機が配備されている事が確認できる。
スナイパーライフルではなくブルパップ・マシンガン装備で出撃。
降下中にカメラに向けてスコープバイザーを下ろす動作を披露するも、その後は色指定ミスされたり、ロクな戦闘シーンもなくいつのまにか撃墜されているという、あんまりな扱い。
ガンプラ「MG 1/100 ジム・スナイパーII」のインストではコマンド主力のスカーレット隊とスナイパーⅡ主力のディープブルー隊が居たことになっている。急にそんなこと明かされても困る

こちらは空中でキャノン砲を構えるも、ケンプファーのショットガン一発で撃墜されている。
ショットガンの弾頭の硬度*7もあるとはいえ、距離の空いた状態の散弾を受けて落とされるあたり、耐久面に疑問が残る。(因みにこいつの装甲材質はチタン合金セラミック複合材である)
しかも街中に墜落した影響で周囲が停電し、その上キャノン砲が暴発して街を破壊している為、この一件でコロニーに一番被害を与えたのは多分コイツである。

出撃シーンでジム・スナイパーⅡと明らかに異なる黄色いシルエットが映っている為、少なくとも2機以上が居るのはわかる。
しかし、一度もアップになる事なく撃墜されているのと、ジム・スナイパーⅡがジムコマンドの色で塗られているミスが頻発しているため判別が困難になっている。スカーレット隊の中でもさらに酷い扱い。

スカーレット隊の母艦。
サラミス級やマゼラン級ではなくペガサス級である辺り、スカーレット隊の地位の高さがうかがえる。
が、コロニー内ではスカーレット隊を発進させる以外の活躍はできずに終わっている。


【余談】

こんな彼らのやられっぷりだが、ジム・スナイパーⅡ、及び量産型ガンキャノンの映像作品における現状唯一の活躍であり、不名誉ではあるが貴重な映像資料である。
一応量産型ガンキャノンは『夢のマロン社宇宙の旅』でも動いてはいるが。

また、あまりのインパクトからガンダム界(たまに他の所でも)「噛ませ犬」「精鋭部隊」という話題になるとちょくちょく名前が出てくる。

カラオケで「いつか空に届いて」の映像付きを歌うと、間奏の間に出撃から全滅までの勇姿をほぼフルで見ることが出来る。




追記・修正は編集画面から公開するまで30秒ちょっとでお願いします。

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最終更新:2022年07月24日 07:01

*1 ここからの一連のシーンに出てくる機体はカラーリングがベージュ色でありジム・コマンドのようにも見えるが、盾の形状や肘、脚の出渕穴の存在から、ジム・スナイパーⅡの色指定ミスでないかと思われる。

*2 というか、ジム・コマンドも含め、戦争末期に開発されたのもあるが一年戦争では最高峰の性能を持つ。そのため、カタログスペック上では普通にケンプファーとは殴り合えるだけの性能はしっかりある。

*3 ただし、それはジオンのMSは操縦系統が統一されていないというのも大きな要因である。

*4 『ポケットの中の戦争』の舞台であるクリスマス時期は地球連邦軍がチェンバロ作戦を発令し、ソロモン攻略のために動いていた時期である。

*5 ジオンはジオンでどうもサイド6内にフラナガン機関を作っているっぽいのでどっちもどっちなのだが

*6 とは言ってもその頃の他のサイドは壊滅状態だったのだが。

*7 ケンプファーの持つショットガンの弾丸はルナ・チタニウム合金製であり、あのRX-78-2ガンダムガンキャノンの装甲と同じ材質である。