RRR

登録日:2023/02/06 Mon 21:23:00
更新日:2025/04/12 Sat 09:49:58
所要時間:約 18 分で読めます



注・遊戯王R・R・Rの項目ではありません



友情か?


使命か?



RRR
రౌద్రం రణం రుధిరం
Rise Roar Revolt

RRR(アールアールアール)』とは、2022年3月に公開されたインド映画。
言語はテルグ語および英語。字幕では、後者での発言の字幕には区別の為に<>が付けられている。
上映時間は182分。



OVERVIEW -概要-

監督と脚本を務めるのは『バーフバリ』シリーズのS・S・ラージャマウリ

イギリス植民地時代のインドを舞台に、二人の革命家が友情を結び、ときに様々な事柄の間で揺れながらも苛烈な支配に反旗を翻してゆく姿を描いた作品。

主人公は共に実在の人物だが、実際には両者には面識は無く、来歴も史実とは異なっている。
本作は「もし、そんな二人が歴史の表舞台に出る前に出会っていたら?」というifを描いたものである。
歴史映画というよりは時代背景と名前を借用したエンタメ作品という感が強く、監督も「あくまでフィクションとして制作した」としている。
日本で例えるなら真田幸村伊達政宗レッツパーリィして織田信長を倒すくらいのリアリティ。
あるいは「史実をベースにしていて史実通りに見えるけど色々違う」という点で『Ghost of Tsushima』。

また、本作は反英闘争と同時にインドの二大叙事詩『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』も下敷きとなっている。
クライマックスの挿入歌でも描かれているが、ラーマのモチーフは前者の主人公ラーマ、ビームも後者に登場する主人公の一人ビーマという、神話の英雄に準えられている。

インドの歴史や神話に関する知識があれば理解がより深まるが、必須ではない。
強いて挙げるなら、首を小さく横に振る動作はインドでは「Yes」を意味するということくらい。ちなみに「No」の場合でも首を横に振るが目線を合わせない。ぶっちゃけ日本人には読み取れない要素なので動作に惑わされずに台詞を追った方がいい。
ちなみにテルグ語の文法は日本語とほぼ同じ。
劇中歌や台詞について、気になる若しくは気になった単語のテルグ語の表記・発音を調べてから改めて聞き直すのも一興であろう。

ラージャマウリ監督作品にお馴染みの、ド派手でケレン味溢れるアクションシーン……そしてインド映画には欠かせないダンスシーンはもちろん本作でも健在。
180分と長尺の作品で、また息の詰まる場面や思わず目を背けたくなるような描写も少なくない一方、
上から下まで痛快にして爽快な大迫力アクションが詰まっており、その溢れるパワーにより180分という長さを感じさせないとの声は多い。
……とはいえ、インド本国では90分時点で休憩時間が存在しており、日本での上映で多くの館が180分ぶっ通しなのは単に我が国の映画館のシステムの都合によるものだが*1
パンフレットの紹介文には「見る者を徹底的に楽しませ、ストレスも鬱憤も吹き飛ばす驚愕、極楽の3時間」「これを見れば明日の勇気が湧いてくる究極のエナジー・チャージムービー」との文言があるが、全くハッタリなどではない。信じられぬなら御覧じろ

プロモーションとして一部のアクション・ダンスシーン等は動画サイトで公開されているが、ストーリー序盤で描かれる事故に巻き込まれた少年を救出するシーンは2023年1月時点で111万回再生
本作の目玉シーンの一つであるダンスパート、『ナートゥ・ナートゥ』に至っては1.1億回再生と凄まじい人気を集めている。
特に『ナートゥ・ナートゥ』は数々の賞も受賞している。詳細は個別項目を参照。

インド本国に於いては2022年3月に公開されたが、本国での興行収入は120億ルピー。
これはインド映画史上第3位インドで公開された映画史上第2位の記録である。
興行収入は全世界で1億6000万ドルを記録し、『バーフバリ』シリーズを越え全米そして全英第3位、
日本も2022年10月に公開後、興行収入は8週間で4億円を超え、1998年の『ムトゥ 踊るマハラジャ』が十数年間保持していた「日本で最も高い興行収入を記録したインド映画」の記録を塗り替え日本1位の成績を収めている。
日本アカデミー賞優秀外国作品賞etc...数々の映画賞も受賞しており、総じて2022年を代表する映画の一つと言えるだろう。

日本における洋画全般で見てもほぼ同じ上映時間なのに大コケしたアバター続編を差し置いて久々のヒット作となり、ロングラン上映も続き2023年7月28日からは日本語吹き替え版が公開されることが決定した。
そして2024年1月からは「RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~(アールアールアール バイ タカラヅカ ~ルートビーム~)」の名称で、宝塚歌劇団星組舞台として上演が決定。舞台はビームの視点から再構築したものとなる模様。続報を待とう。

本作のドキュメンタリー映画『RRR:Behind&Beyond』が劇場公開予定。


SCENARIO -あらすじ-

1920年、インドが大英帝国に植民地支配を受けていた時代のことだった。
南方にあるアーディラーバード地方の森に住まうゴーンド族の集落を訪れていたスコット総督夫妻は、
素晴らしい歌とヘナアート*2の才能を持つ少女・マッリを気に入り、彼女の母に銅貨2枚を支払う。
歌のお礼かと思い感謝するマッリの母だったが、夫妻はマッリを強引に車に乗せ連れて行く。銅貨2枚とは、マッリの身柄の値段だったのだ。
イギリス兵は、必死に慈悲を求めて我が子に追い縋る母を人とも思わず銃殺……しようとしたところ、「銃弾の値打ちを考えろ」と言う総督の意向によりその辺の丸太で殴り倒し、マッリはデリーの総督府へと連れて行かれてしまうのだった。

一方、デリー近郊の警察署では、逮捕された革命家の釈放を求める民衆が暴徒と化し、今にも警察署に雪崩れ込まんとしていた。
暴徒達のリーダーの逮捕を命じられたインド人警察官ラーマは、雲霞のごとき暴徒共を尽く蹴散らし、人混みの遥か先にいたリーダーを逮捕し、上官のもとへ連行して見せる。
だが、インド人であるが故にその功績は認められず、昇進を逃した事に彼は激しい憤りを見せる。

約半年後。イギリスと交流を持つニザーム藩王国の顧問が特使として総督府を訪れ、マッリの返還を勧める。
スコットの側近、エドワードは勧めを一笑に付すが、特使は「ゴーンド族の守護者は何が立ちはだかろうと必ず同胞を連れ帰る」と忠告し、
そして「“守護者”は既にデリーに進入している」と伝える。
総督を狙う刺客のデリー入りを受け、念のために警戒を強化する事となるが、「守護者」の情報は全く無い。
困惑する警官達を前に総督夫人・キャサリンは「『守護者』を生け捕りにした者は特別捜査官の地位を約束する」と宣言、ラーマは『守護者』逮捕の捜査責任者に立候補する。

ゴーンド族の守護者――ビームはアクタルと言う偽名でムスリムを装い、3人の仲間と共にデリーでマッリ奪還の為に情報収集をしていた。
その最中、ラーマとビームは燃料輸送列車が起こした爆発事故に遭遇する。
事故に巻き込まれた少年を助けるべく、初対面にもかかわらず二人は抜群のコンビネーションを発揮、その縁で意気投合しお互いの正体を知らないまま親友同士となってしまう。

やがて、マッリ奪還の千載一遇好機を掴んだビームは、仲間を率いて総督府に乗り込む。
だが、彼の秘密を知ったラーマもまた、己に課された使命の為に動き出す。

彼らの友情の行方はいかに……そして、各々が使命は果たせるのか?



CHARACTER -登場人物-


WATER -水の勇者・ビームとその仲間-

  • コムラム・ビーム(N・T・ラーマ・ラオJr./吹き替え:杉田智和
マッリを救い出す。請い願う事などない

主人公でゴーンド族のリーダー。比較的がっしりしており、ぼさぼさ髪かつ濃い方のヒゲ
野生の狼や大型のトラを相手に体力勝負で互角以上に立ち回る強者。薬草に関する知識も持ち合わせている。
エドワードにマッリ返還を勧めた特使は、その強さを「虎が娘を食い殺そうとしたら、その顎を引き裂いて殺してでも助ける」と形容しているが、劇中の活躍を見る限り比喩ではなさそうである。
その戦法はパワーに任せた荒々しいもので、「力任せにブン殴る、蹴り飛ばす」、「持ち上げて放り投げる」、「手近なもの(敵兵鎖ごと引き抜いたポールフェンス、果てはバイク)を叩きつける」……と非常に豪快。壊し屋スタイル

攫われたマッリを奪還すべく、「アクタル」偽名でデリーに潜入、イスラム教徒の整備士一家に匿われている。
ここでバイクの整備技術を身に着けたようで、自身のバイクの運転の腕前はピカ一。

戦場では勇ましい限り……だが、女性には少々奥手。
女性にパーティーに誘われるという事の重大性を分かっていない、身だしなみも整えないまま普段着でパーティーに行こうとするなど、女性の心の機微には少々鈍感。
「マダム」という畏まった呼び方に対して「ジェニーと呼んでほしい」と言われた事を「『マダムハ・ヤメテ・ジェニーヨ』という恐ろしく長い名前の女性」と誤解するなど天然気味でもある。
尤も、彼は英語が分からないため*3、ジェニーの言っている事のほとんどが理解できていないという事情もあるからだが。
むしろあの出川イングリッシュ並の会話力であそこまで仲良くなれているのだから大したものだ。

一方「マッリ奪還のためなら何をしても許される」と考えているフシがあり、そのためなら過激な手段に訴えることも辞さないのが欠点か。

史実では1920年当時は19歳だが撮影当時の中の人は35歳。作中も史実と同年齢なら老け顔が過ぎる
1930年代にゴーンド族と共に蜂起し、反乱を率いた。
1940年に警官に殺害されるも、その後は反乱の象徴として英雄視・神格化された。




  • ラッチュ(ラーフル・ラーマクリシュナ/吹き替え:竜門睦月)
  • ジャング(チャトラパティ・シェーカル)
  • ペッダイヤ(マカランド・デシュパンデ/吹き替え:峰晃弘)
ビームの仲間達。
個別の活躍の描写はあまり無いが、「拷問されようと決してビームの正体を明かさない」「遠くの微かな音を聞きつける」など、彼らもまた結構な強者である。

特に出番が多いのはラッチュ。
情報収集の為に活動家の集会に潜入していた所、同じく「守護者」捜索の情報収集の為に活動家に扮したラーマを同志と誤解して付いて行くというヘマをやらかす……が、僅かな仕草からラーマの正体に気付き逃走、しかもラーマの桁外れの脚力を前に追い詰められかかるも何とか逃げおおせる足の速さを見せる。
またこの行動が、結果としてビームとラーマを引き合わせる事となる。



  • マッリ(トゥインクル・シャルマ/吹き替え:田所あずさ
ゴーンド族の娘。
美しい歌声とヘナアートの腕前を気に入られ、キャサリンに連行されてしまう。
その最中、車で連れて行かれようとする自分を母親が必死で止めようとするも、
インド人に銃を使う事を勿体なく思うスコットの指示により、獣でも退けるかのように母がその辺の木の幹で殴り倒される様を目の当たりにしてしまう。
その後は、部族にいたときの服ではなくイギリス風の服を着せられ、普段は檻の付いた部屋に幽閉されながら、時々連れ出されてはイギリス人の女達を相手に歌とアートを強要される日々を送っていた。

ビームの事は「兄さん」と呼ぶが、実の妹という訳ではない様で、「同族の年上の男性への敬称」の意味でそう呼んでいると見られる。



FIRE -炎の男・ラーマとその関係者-

  • A・ラーマ・ラージュ(ラーム・チャラン/吹き替え:日野聡

生死は問いませんか?

もう一人の主人公。比較的スリムで、髪を整えている比較的薄い方のヒゲ
髭スタイルについては、当初はカイゼル髭に近かったが、潜入作戦を開始してからは顎鬚も生やしている。

インド人でありながらも体制側に付き、警察官を務めている。
雲霞の如く押し寄せる暴徒を警棒一本で薙ぎ倒し、頭を石で殴られようと止まらず暴徒のリーダーを捕まえて戻って来る強者
その鬼の如き強さはイギリス人の上司も信頼を通り越して恐怖に近いものを感じる程。
警官というだけあり、戦闘スタイルは洗練された格闘術。投げを多用するビームに対してこちらは打撃主体で、加えて棒の扱いにも長けている様子。ラッシュスタイル

極僅かな違和感と手掛かりから、半年ほど前に一度は取り逃した捜査対象の正体に気付くなど、洞察力も凄まじい。
また、ビームとは異なり職務上の必要から英語とその読み書きを習得している。
なおビームが主にバイクを使用するのに対し、ラーマはに乗ることが多い。

非常に強い上昇志向の持ち主で、功績を挙げてもインド人である事を理由に昇格できない現状に憤っていた折、
「ゴーンド族の守護者の逮捕」によって得られる特別捜査官の地位を得るべく、その実現に執念を燃やす。

任務のためなら同じインド人への拷問も辞さないなど、売国奴の誹りを受けそうなほどに大英帝国の冷酷性を体現したかのような苛烈な行いに手を染める反面、
爆炎の中から少年を救い出す優しさ、正体を知らぬままビームと結んだ友情もまた本物である。
彼ほどの男がなぜ英国の手先になり下がっているのか?そこには誰にも打ち明けられぬ過去と「使命」があった……!

作中のビームからは「兄貴」と呼ばれている通り、史実では1920年当時は22歳もしくは23歳でビームよりこちらの方が年上。
こちらも中の人は当時34歳と乖離が激しい。
1922年に仲間と共に武装蜂起し、2年間に渡ってイギリスにゲリラ戦を仕掛け続けた。
1924年に逮捕され処刑されるも、インド独立後はその功績を称えられ、記念切手が発行されている。



  • シータ(アーリヤー・バット/吹き替え:久保ユリカ

子供を飢えさせたら食べ物が気を悪くするわ

ラーマの婚約者である女性。
デリーに渡り、以後何の連絡も寄越さないラーマを心配している。
彼女が常に持っているペンダントは、元々はラーマが所持していたものを二つに割ったもので、片方を彼が、もう片方をシータが持っている。

モチーフとなっているのは『ラーマーヤナ』のヒロインにしてラーマの妃・シーター姫。
ビームがその名前を聞いた時に「ラーマ王子とシータ姫か」と茶化しているが、あながちただの冷やかしではない。



  • ヴェンカタ(アジャイ・デーヴガン/吹き替え:早川毅)
ラーマの父親。
ラーマの幼少期に、彼の目の前で死亡した事が示唆されている。
なお史実ではラーマの父は写真家だが、やはり彼の幼少期には亡くなっている。



  • ヴェンカテシュワルル(サムドラカニ/吹き替え:中村和正)
ラーマの叔父。
彼もまた警察官を務めており、ラーマの相談相手となっている。


BRITISH EMPIRE -大英帝国の圧制者-


  • スコット・バクストン(レイ・スティーヴンソン/吹き替え:野島昭生)

その1発の銃弾の価値を知っているか?

インドに圧政を敷くブリカス総督。序盤で本国からナイト爵を授与されている。
イギリスの資源と人員と人件費と輸送費を使ってようやく兵士の手元に届く銃弾は、その費用に見合った価値のある使い方をせねばならない」とし、
インド人の処刑に銃弾を使う事をよしとしない(=インド人の命より銃弾1発の方が高いのでインド人に銃弾を使って殺す値打ちは無いと公言する)冷血漢。
推定15年以上に渡り、しかもインド人の居ない所ですら同じことを言っているため、インド人を侮辱する為にそう言っているのではなく本気でそう考えている模様。
妻の残虐な趣味やインド人に対する仕打ちも全く気にしていない。
一方で単なるゲス野郎という訳でもなく、極僅かな手がかりから罠や裏切りに気付き、不安定な体勢で咄嗟に構えたライフルで正確な狙撃を決める、おまけに何度も死に損なうやたらとしぶとい等、彼もまた中々の強者




  • キャサリン・バクストン(アリソン・ドゥーディ/吹き替え:今泉葉子)

私は血が見たいの!

スコットの妻。公務でもプライベートでも夫に付き従う場面が多く、夫婦仲は悪くはない模様。また特別捜査官への任命について部下に告知する場面から、夫と同等の権力を握っているのかもしれない。

だが、その性格は邪悪そのもので、嫌味な白人女のテンプレ。
インド人をハンティングの獲物程度にしか思っておらず、人を攫うという行為に何の感慨も持っていない。
残虐な嗜好も持っており、反乱分子は生け捕りにして公開処刑にして徹底的に痛めつける事を好むなどサディスティック。
鞭打ち刑を「血が見たい」という理由でウキウキしながら観覧しに行き、予想したほどの血が出なかった時には「こんな事もあろうかと」とばかりにより殺傷力が期待できるトゲトゲの鞭を用意するなど、最早猟奇趣味に近い。



  • エドワード(エドワード・ソネンブリック/吹き替え:峰晃弘)
スコットの側近。マッリの母親に銅貨2枚を投げ渡すという敬意の欠片も無い行為を取っていたのも彼。
マッリの返還を促す特使を「大英帝国が弓矢で沈むとでも?」と一蹴した。フラグですねわかります
その後も全体的にインドの事を軽視する発言を繰り返すなど、イギリスへの絶対的な自信を持っている……というより、
本作のイギリス人の大方に共通する、インドとインド人を「所詮は未開の地とその野蛮人」としか思っていないような態度を見せるなど、尊大なだけで強者感は皆無



  • ジェニー(オリヴィア・モリス/吹き替え:内田真礼

マダムはやめて、ジェニーよ

本作の白人サイド唯一の良心。マジ天使

スコットの姪で、総督府に自由に出入りができる。
それなりの身分と思われるが、
  • 他の多くの白人のようにインド人への差別意識も無く、不当な暴力を振るわれるインド人労働者を労わる事ができる
  • 警護や従者も付けずに一人で自動車を運転して異国の街中へ出かける
  • マッリの事も気にかけており、自ら現地の市場へ足を運び彼女のために服や装飾品を見繕ってやっている
  • 出会ったばかりの異国人の異性(しかも被植民地の民!)という身分違いの者とも親しくして自宅に招く
など、この時代の白人女性としては相当アグレッシブかつ進歩的でいて優しい心の持ち主。ナートゥにも始まってすぐにノリノリになるなど柔軟さも持ち併せている。
なお、英語を解さないビームだが、ジェニーとのやり取りで彼女が「マッリ」と言ったことからその居場所を掴む事ができた。

その優しさを目にしたビームに一目惚れされ、当初は総督府に進入する手段として知り合いになる事を目指すが、徐々に本気で彼女に惹かれていく事となる
ジェニーもまたビームを憎からず思っている様で、園遊会に招待するなど、次第に身分や立場を乗り越えて接近していく。

欠点らしい欠点は、現地語を積極的に覚えようとしている様子が見られず、現地人相手にも英語オンリーで押し通そうとするところか。



  • ロバート
イギリス人の警察官。強者感はあまりないが強面
ビームが住み込んでいた修理屋にバイクを修理してもらったが、すぐに動かなくなってしまった事についてビームに文句を付ける。
スターターを何度蹴ってもエンジンがかからない事について説明している時の「キッキン!キッキン!キッキン!」はファン間では妙な人気を誇る。
バイクが動かない事については、バイクの知識を持つビームが一目で問題を見抜き一瞬で解決したが、
中々動かなかったのにインド人が見た途端に動き出した事、しかも動かなくなった原因が燃料コックの開き忘れ*5であり、その様を連れのイギリス人女性に爆笑された事で逆上。
腹癒せにビームを、正体を隠すべく抵抗できないのを良い事に連れの女性も思わず止めに入る程何度も殴打して去って行くという、本作のイギリス人にありがちな暴虐振りと小物っぽさを見せた。

その後総督府入口で門番として再登場、ジェニーが連れて来たビームを使用人と見て正面からの進入を拒むも、今度は彼女が説明した事で素直に引き下がる。
……が、マッリと束の間の再会を果たしたビームを察知して捕まえんと現場に迫るなど、常に一定の脅威として描かれていた。



  • ジェイク
パーティー会場でビームに絡むイギリス人の青年貴族
ダンスが得意らしく、様々なダンスの知識と技能を身に着けてきた(しかし太ってはいない)自負からインド映画でインド人にダンスでマウントを取ろうとする命知らず。ある意味ではビームやラーマに匹敵する強者
また、ジェニーに粉をかける場面も。

本作のイギリス人には珍しくもない事だがインド人の事はコケにしており、
ビームに足を引っかけて転ばせ、「インド人にダンスなどできない」と笑いものにしようとする*6
しかしラーマの介入によってナートゥを教えられ、その迫力に圧倒される事となる。



INSERTED MUSIC -劇中曲-


  • Komma Uyyala
マッリがヘナアート中に口ずさむ歌。
美しい歌声と暖かい歌詞が素敵だが、それを気に入った為にキャサリンに連れ去られ、
その後も公邸で無理矢理歌わされている事を思うとどこか複雑。
なおサウンドトラックでは伴奏付きだが、劇中ではアカペラか大人しめの曲調。

  • Dosti
事実上のオープニング曲。意味は「友情」である。
イギリス人に奪われた村娘を取り戻すたに戦うビームと、屈辱に耐えながら敢えてイギリスに付くラーマの友情、
お互いの秘密を知らないまま親友同士となった彼らの数奇な運命や決定的な断絶を思わせる様子が描かれている。
二人のハートフルな友情と、不穏な予兆を感じさせる描写にも注目。
映像中には単にじゃれ合っているだけに見えて終盤に関わる重大な伏線も仕込まれている。
テルグ語版だと「兄貴」と聞こえる空耳スポットが妙に多い

「Do you know “Naatu”?(ナートゥをご存じか?)」
本作のハイライトの一つと言っても過言ではない、皆さんお待ちかねのダンスパート
御時世柄かなわないが、もしも声出しが許されるならば「いよっ! 待ってました!」と叫びたくなる事請け合いのゴキゲンなシーン。

詳細は個別項目を参照。

  • Komuram Bheemudo
中盤でビームが己を奮起させる為に歌う歌。
メロディは『Komma Uyyala』と共通しているが、こちらは非常に勇ましい歌詞となっている。
YouTubeに公式動画も上がっているが、思いっ切り中盤以降のネタバレになっているので注意。

  • Etthara Jenda
本作のエンディングテーマ通称「ムルムル」
画面の9割程を占拠しており、スタッフロールなど小さ過ぎて全く見えやしない
静かな曲調であったり重厚感溢れる曲が多かったりする中、『ナートゥ・ナートゥ』と並びゴキゲンで爽やかな曲
3時間椅子に座り続けた疲れなど一気に吹っ飛ぶだろう。
実は何気にラージャマウリ監督まで踊っている。
ダンス中に掲げられている旗は、独立前に用いられていた「民族旗」と呼ばれるもののうち、その最初期デザインを元としたものである。

途中で挿入される「雄牛」に準えられる8人の肖像は、何れもかつて反英闘争を戦いインドに於い国民的英雄として称えられている人物たちである。
特に二人目、ヴァッラブバーイー・パテールなど2018年に完成当時世界一の高さ(182m*7)の立像が建立されている。
なお、最初に出てくるスバス・チャンドラ・ボーズは、第二次世界大戦中に日本やドイツの力を借りて独立を目指しインパール作戦に従事するも、1945年8月18日に当時日本領であった台湾から満州に旅立とうとして事故死。遺骨は東京都内の寺に安置されている。
なお偉人達は全て曲中では「雄牛」で統一されているが、女性も2名程混ざっている。
また、インド独立に関わった偉人として日本でもっとも有名と思われるマハトマ・ガンディーはこの偉人ラッシュに登場していない。
ここで登場する人物はいずれも武力で強大な英国に立ち向かい、血を流し、ときに志半ばで倒れた英雄である。
インドの独立は1947年。そう、主人公タッグのモデルとなった人物も、史実ではインド独立をその目で見ることは叶わなかった。


TRIVIA -余談-

タイトルの『RRR』は、監督と主演二人の名前に「R」がつくことからつけられた仮タイトルだったが、「大規模な映画には全言語共通で理解できるタイトルが必要」との監督の考えからそのまま本タイトルになった。
英語版ロゴには「蜂起(Rise)」「咆哮(Roar)」「反乱(Revolt)」の文字が付され、テルグ語、タミル語、カンナダ語、マラヤ―ラム語では「戦争」「血」「怒り」を意味するRが入った単語がサブタイトルとなっているが、いずれも後付である。
「Houki」「Houkou」「Hanran」で日本では『HHH』になったりはしなかった
パンフレットによると初期段階では読み方は「トリプルアール」だったとされる。


英国統治時代のインドの反乱をモチーフにした、いわば「抗英映画」的な側面を持つ本作だが、先述の通りイギリスでもヒット作となっている。ブリカスは反省しろ。

ちなみに、作中では主人公達インドの人々はインド産の馬「マルワリ」、大英帝国の人々は英国産の馬「サラブレッド」に騎乗している。


「大(英)帝国に支配される植民地が舞台」「反体制側と、被支配民ながら体制側に付く者のW主人公とその間の少女」「そんな二人はお互いの秘密を知らないまま親友同士となるもやがて離反」「親友を売ってでも出世したかったのはある理由が……」……
といった要素から、本作を「インド版『コードギアス』」と例える声も散見される。
反体制側が頭脳派という訳でもないので「全てパワーで解決する『コードギアス』」「ルルも体力お化けの『コードギアス』」とも。

作中で描かれた肩車の状態で戦うビームとラーマは印象的であり、その場面は広報ポスターにも起用されている。
そして、同時期にRRRと同様にアジア人が肩車をして戦う映画が公開されている。
アカデミー会員は肩車をアジア人の戦闘陣形だと誤認しているかもしれない。

オープニング映像で、ラーマとビームが人間ピラミッドによじ登って天辺の玉を棒で叩き割っていたが、あれは「ジャンマシュタミ」、もしくは「クリシュナ神生誕祭」と呼ばれるインドのお祭りで行われているものである。
これは年によって細かい日付は異なるが、概ね8月の行事である。
『ナートゥ』を披露したパーティーは2月14日であるため、つまり冒頭からビームとラーマが出会うまで約半年、
OPでわちゃわちゃしていた期間ビームとラーマが更にジェニーと出会うまでもう約半年、冒頭から約1年が過ぎている事になる。

元々本作は単発作品として制作されたものだが、公開後の大ヒットを受けて主要スタッフは続編の可能性を探っており、ビーム役のN・T・ラーマ・ラオJr.もシリーズ化に興味を示しているという。
今後に期待しよう。

約3時間という長尺ゆえオリジナルでは途中休憩時間が設けられているのだが、日本の多くの映画館では休憩無しで上映している。
その場合、中盤でINTERRRVALという表記が出るものの続きがすぐに始まってしまうため、これから見に行く諸氏は3時間トイレを我慢できるよう事前に注意しておこう。万一どうしようもない時は比較的物語が落ち着くビームの鞭打ち~処刑直前辺りまでのタイミングで退出するのがおすすめ。

2023年2月現在、Googleの検索エンジンで「RRR」と検索するとブラウザ上部をバイクの絵文字が走っていく小ネタが仕込まれている。


ムル!ムル!ムル!ムル!
ムルムルムルムルムルムル
ムルムルムルムルムルムル
ムルムルムルムルムルムルムルッ!


武者震いがしたら記事立てし血が騒いだら追記修正をお願いします。


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  • 濃い映画(特に顔的な意味で)
  • 炎と水
  • 愛のある項目
  • ネタバレ項目
最終更新:2025年04月12日 09:49

*1 ごく少数ながら国内でも合間に休憩時間を設けている館があるようだ。

*2 インドの伝統芸術。ヘナと呼ばれる植物を使い、肌に模様を描く。

*3 いくつかの簡単な単語なら分かる模様。「market」と聞いて一拍遅れて「市場」と思い当たったり、「ナーム」と微妙に発音を間違えていたが「名前=name」と知っていたりなど。

*4 実際にはビームを撃とうとしたイギリス兵を狙っていた。

*5 エンジンに燃料を供給するのにキャブレターを用いているオートバイはキャブレターへの燃料供給を止める燃料コックがついており、駐車中などは燃料コックを閉じておくが、キャブレター内に燃料が残っていると閉じている状態でも普通にエンジンがかかってしまいしばらくは走れる。オートバイに乗る人ならエンジンが急に動かなくなった際に燃料コックの開閉は真っ先に確認する非常に初歩的なことである。

*6 しかもこのときはビームを追いやるように彼に当たるスレスレで足を動かす悪辣ぶり。

*7 台座を含めた自由の女神像の約2倍