古馬三冠

登録日:2024/11/26 (火曜日) 23:44:00
更新日:2025/04/22 Tue 15:31:46
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古馬三冠とは、3歳馬限定のクラシック・牝馬三冠から派生した用法として存在する特定の3レースを指す。
本項目では日本の中央競馬における特別報奨金の対象となる春秋古馬三冠を解説するが、イギリスやアメリカでも同じく古馬の三冠は存在している。

2024年時点でのJRA中央競馬においては、
大阪杯、天皇賞・春、宝塚記念の3レースを春古馬三冠と呼び、
天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念の3レースを秋古馬三冠と呼ぶ。

なお、この名称はクラシック三冠牝馬三冠とは異なり正式名称ではない。
由来は2000年に秋古馬三冠レースが報奨金制度が施行されて以降、JRAの子会社であるJRA-VANが名付けたのが始まり。
ただしこの時には大阪杯がG1レースに格上げされていなかったので、春古馬三冠と呼ばれるようになったのは2017年に格上げされて以降となる。

各メディアでは古馬三冠を3歳馬の三冠と同列の表現で語る事が多いが、JRA公式はこの定義で語る事はほぼ無く、あくまで春秋のG1メインレースの域を出ていない。
ただし『ウイニングポスト』シリーズにおいては三冠配合と言う三冠馬同士で交配を行うと子供への遺伝や基礎能力値の上昇確率などにブーストが発生する要素がありため、仮にクラシック・牝馬三冠を逃したとしてもここを抑さえすれば条件達成のため積極的に取りに行くプレイヤーは多い

古馬レースという性質上、サラブレッド系3歳以上という条件を満たしていれば出走権は与えられており*1、クラシック三冠や牡馬三冠のように生涯一度の出走という訳ではない。
なので複数年にわたり同レースに出走し、跨って複数の該当レースを勝利するケースは多いが、その場合には「古馬◯冠馬」という表現は基本的にしない。

そして2025年より、従来の春秋古馬三冠に加え下記各三冠条件レースのうち3レースを同一年に勝利することでも古馬三冠と見做されるようになった。
無論、従来通りの古馬三冠を狙うことも可能で、上記条件を満たしたうえで秋古馬三冠を達成した場合、さらに追加の報奨金*2が得られる。

春古馬三冠


春古馬三冠は2017年に大阪杯がG1レースへ格上げした事により、JRAから同年に達成した場合に報奨金制度が施行されたのをきっかけに呼ばれるようになった名称。
2025年現在では達成馬は不在で、大阪杯の格上げ以前を含めてすら皆無の状態である。

大阪杯 (阪神競馬場・芝2000m)
天皇賞・春 (京都競馬場・芝3200m)
宝塚記念 (阪神競馬場・芝2200m)

以上が2025年現在における春古馬三冠レースである。

見ての通り西日本の競馬場に集中して開催されるレースばかりで、三冠レースの間にG1レースでも屈指の長距離を誇る天皇賞・春を挟むのが特徴的でもある。
しかもクラシック三冠の日本ダービー2400mから菊花賞3000mの間が数か月空くのに対し、こちらは距離が1200mも変わるのに間が一か月ほどしか無いため競走馬の疲労回復やトレーニングに費やす時間がギリギリ。
また三冠路線の中で一番歴史が浅く、さらに近年は春先にはドバイでの国際レースを目指す古馬が増えてきているため*3、そもそも春古馬三冠に執着しない陣営が大多数を占めている。
なので2024年現在に至って達成馬不在という以外にも3レース全出走の馬というのが少なく、さらに2025年から宝塚記念の開催時期が6月後半から6月前半に変更、つまりますます間隔が短くなってしまうため、秋古馬三冠と比べハードルと質の両面で厳しい。*4

通年成績で二冠馬

馬名(達成年度) 大阪杯 天皇賞(春) 宝塚記念 備考
ダテホーライ(1969年) 1着 4着 1着 天皇賞(春)1着:タケシバオー
カツラギエース(1984年) 1着 未出走 1着
タマモクロス(1988年) 未出走 1着 1着
イナリワン(1989年) 未出走 1着 1着
スーパークリーク(1990年) 1着 1着 未出走 筋肉痛により回避
メジロマックイーン(1993年) 1着 2着 1着 天皇賞(春)1着:ライスシャワー
ビワハヤヒデ(1994年) 未出走 1着 1着 宝塚記念はレコード勝利
マーベラスサンデー(1997年) 1着 3着 1着 天皇賞(春)1着:マヤノトップガン
テイエムオペラオー(2000年) 未出走 1着 1着
ヒシミラクル(2003年) 7着 1着 1着 産経大阪杯1着:タガノマイバッハ
ディープインパクト 未出走 1着 1着 宝塚記念は京都開催
メイショウサムソン(2007年) 1着 1着 2着 宝塚記念1着:アドマイヤムーン
ドリームジャーニー(2009年) 1着 3着 1着 天皇賞(春)1着:マイネルキッツ
ヒルノダムール(2011年) 1着 1着 未出走
キタサンブラック(2017年) 1着 1着 9着 宝塚記念1着:サトノクラウン
タイトルホルダー(2022年) 未出走 1着 1着 天皇賞(春)は阪神開催・宝塚記念はレコード勝利

ちなみに生涯成績ではメジロマックイーンが3レースを勝利している。
大阪杯未出走はいずれも阪神大賞典(阪神・芝3000m)日経賞(中山・芝2500m)といった春天の前哨戦*5に出走しており、日経賞を選んだタイトルホルダー*6以外は全て阪神大賞典を選択。
このうちイナリワン以外は全頭前哨戦を勝利、その年の春のレースを全勝している。
またテイエムオペラオー・メイショウサムソンは二冠の翌年に(も)春古馬三冠に出走しているがリーチをかけることなく敗れている。


秋古馬三冠


秋古馬三冠は2000年に下記3レースの通年達成に対し報奨金制度が施行されたのをきっかけに呼ばれるようになった名称。
なので春古馬三冠と異なり、2000年以前にも既に各レース自体はG1レースとして認定されている。
ハードルは春よりは低いと言えるが、それでも2024年11月現在では達成馬は2頭のみである。

天皇賞・秋 (東京競馬場・芝2000m)
ジャパンカップ (東京競馬場・芝2400m)
有馬記念 (中山競馬場・芝2500m)

以上が2024年現在における秋古馬三冠レースである。
左回り・右回りが分かれてしまうものの、適性面では春と比べれば格段に楽である。
しかし間が空かないことによるコンディションの問題は同様。
また、どれも日本競馬屈指のビッグレースの立場であり、適性内の日本の有力馬ならまず間違いなくどれかには出てくるので、手薄になりにくい
やはり負荷も考慮して2レース以内に絞って出る形が多い。

三冠達成馬

テイエムオペラオー

-テイエムは来ないのか!?テイエムは来ないのか!?-
-テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!-
-抜け出すか!メイショウドトウと!テイエム!テイエム!テイエムか!テイエムか!僅かにテイエムか!-
凄い苦しい競馬でしたが……ウッ

三冠達成時戦績:19戦12勝
生涯戦績:26戦14勝
三冠達成騎手:和田竜二(現役中ずっと同じ)


秋古馬三冠の名称が使われるようになった初年度に達成した競走馬。
そして2000年のレースを年間無敗で駆け抜けた世紀末覇王
ちなみにこの年の成績だけでも、「通年G1勝利数歴代最多」「重賞8連勝」「年度代表馬満票選出」「世界賞金王」「天皇賞春秋連覇」「天皇賞・秋は12年間連敗中だった1番人気のジンクス打破」と、数々の栄光を手にしている。

クラシック路線では皐月賞のみの一冠馬で、その後の古馬混合戦でも馬券内入着こそ果たすが勝ちきれないレースが続いた。
しかし年度表彰で最優秀4歳牡馬に選出された*7のをきっかけに、陣営が一丸となって2000年は不敗を掲げたのを理由にオペラオーも頷いて奮起する。

こうして翌2000年では、同期菊花賞馬ナリタトップロード、前年有馬記念覇者グラスワンダー、後輩二冠馬エアシャカール、後輩ダービー馬アグネスフライトらを悉く征して年間無敗の最強馬として君臨する事となった。
ちなみに秋古馬戦線からはメイショウドトウが3レース全て2着と因縁めいたものを感じさせている。

こうして2000年を過ごしたテイエムオペラオーだったが、翌2001年にはさすがに無敗という訳にはいかず、メイショウドトウに宝塚記念では一矢報われ、アグネスデジタルジャングルポケットなどの馬に先着を取られるようになり、引退レースとなった有馬記念もマンハッタンカフェの後ろで5着という結果になった。
とはいえ同年には天皇賞・春を連覇し、G2の京都大賞典をヤツのやらかしもあったが勝っているため衰えたわけではなく、また生涯成績を見ても掲示板外になった事は一度もないという馬主孝行な成績を残している。

主戦騎手の和田竜二は2017年まで中央G1勝利がこのテイエムオペラオー騎乗しか無く、以降も勝ちきれないレースが続いていた。
引退式では「一流の騎手になってオペラオーに認められるようになりたい」と語っていた彼だが中々そうはいかず、そのオペラオーも2018年5月に心臓麻痺で急死してしまった。
だがその年の宝塚記念で相棒のミッキーロケットに騎乗した和田竜二は見事に勝利を掴み、その後のインタビューでは「オペラオーが後押ししてくれたと思います。」とコメントを残している。


ゼンノロブロイ

-ゼンノロブロイが躱すか!ゼンノロブロイが躱すか!-
-ゼンノロブロイが勝った!ゼンノロブロイが先頭!-
-ゼンノロブロイ!ゼンノロブロイがタップダンスシチーを抑えました!-

三冠達成時戦績:15戦7勝
生涯戦績:20戦7勝
三冠達成騎手:オリビエ・ペリエ

テイエムオペラオーが秋古馬三冠を制してから4年後に偉業を達成した王道の覇者
クラシック路線では東京優駿2着が惜しいところで、G2の神戸新聞杯や青葉賞を勝利するに留まった。青葉賞組はダービーで勝てないのジンクスがここでも発揮されている。
年末の有馬記念で古馬混合戦線に参加するが、ラストランとして出走した一着のシンボリクリスエス9馬身差を付けられて3着と圧倒的大敗を喫してしまった。

4歳になってからも天皇賞・春で2着は取れたが宝塚記念ではタップダンスシチーを抑えきれず4着とやはり勝ちきれず、放牧を挟んで秋の叩きとして使用した京都大賞典でも2着に甘んじている。
前年の有馬記念以降に陣営から次期シンボリクリスエスとして期待されていたのもあり善戦マンとして終わるのを良しとしない意向から、天皇賞・秋への出馬が決定。危うく出走漏れになりそうだったが無事登録を終えて出走が決定した本レースではキングカメハメハが有力視されていたが屈腱炎を発症し回避したため、本命不在のレースとさえ言われていた。
実際のレースでは最終直線で伸びるダンスインザムードやアドマイヤグルーヴを凌駕して一着に入線し勝利を得られ、およそ1年1か月ぶりの勝利を手にする事ができた。
更に騎手のオリビエ・ペリエは前年にシンボリクリスエスに騎乗して天皇賞・秋を勝利しており、外人騎手による二連覇という偉業も達成している。

そして1か月後のジャパンカップでは、海外馬が5頭出走する中で国内馬からはハーツクライや菊花賞馬デルタブルースなどが出走。
直線では見事な末脚を見せて二着のコスモバルクに3馬身差をつける勝利を達成し、ペリエにとってもシンボリクリスエス騎乗時代からの2年連続3着という成績から脱却した。

そして迎えた最終レースの有馬記念では、ジャパンカップより引き続いてのコスモバルクやデルタブルースなどが参戦。更に後塵を喫しているタップダンスシチーの参戦があったが、三冠馬リーチの機運もあってかオッズでは1番人気を得ている。
当のレースではタップダンスシチーが先陣を切り二番手追走という形になり、デルタブルースなども同じ形で追走していたが次第にハイペースに置いて行かれ、最終直線ではタップダンスシチーとの一騎打ちになった。その後、逃げ切りを阻止せんと差し迫るゼンノロブロイはゴール寸前で半馬身の差し切りを達成し、ここに見事な三冠馬が誕生する。
さらに同レースではレースレコードタイムも記録されており、この記録は2024年11月現在でも突破されていない。*8

ちなみに余談だが、天皇賞・春と宝塚記念覇者のヒシミラクルはこの秋古馬3レース全てに参加している。

翌2005年もスターホース不足の現状を鑑みた陣営の意向により続投が決定するが、またしても勝ちきれないレースが続き、引退レースはディープインパクトが生涯唯一敗北を喫した有馬記念で8着という結果だった。

その後は種牡馬としての余生を過ごし、父や母父として産駒を輩出していた。
中には重賞優勝産駒も含まれており、*9今後も血統は途絶える事は無いだろう。


通年成績で二冠馬

馬名(達成年度) 天皇賞(秋) ジャパンカップ 有馬記念 備考
シンボリルドルフ(1985年) 2着 1着 1着 天皇賞(秋)1着:ギャロップダイナ
スペシャルウィーク(1999年) 1着 1着 2着 有馬記念1着:グラスワンダー
シンボリクリスエス(2002~2003年) 1着 3着 1着 2002年ジャパンカップ(中山競馬場芝2200m):ファルブラヴ
2003年ジャパンカップ:タップダンスシチー
ディープインパクト(2006年) 未出走 1着 1着 凱旋門賞出走のため
キタサンブラック(2017年) 1着 3着 1着 ジャパンカップ1着:シュヴァルグラン
アーモンドアイ(2020年) 1着 1着 未出走 ジャパンカップがラストラン
エフフォーリア(2021年) 1着 未出走 1着
イクイノックス(2022年) 1着 未出走 1着
イクイノックス(2023年) 1着 1着 未出走 出走を予定していたものの、疲労面や種牡馬入りのため引退
ドウデュース(2024年) 1着 1着 未出走 出走を予定していたものの、枠順確定翌日にハ行が見られ出走取消

なお生涯成績ではキタサンブラックとイクイノックスとドウデュースは三冠を達成している。


余談


馬による記録は上記通りだが騎手の達成者は秋古馬三冠を和田竜二騎手、オリビエ・ペリエ騎手の2名、同年以外でも全て勝利したのは武豊騎手*10、クリストフ・ルメール騎手*11の2名。
秋古馬三冠制定前では岡部幸雄*12、南井克巳*13、蛯名正義*14が全て勝利したことがある。
一方春古馬の方はまだ制定されて日が浅いのもあるが同年制覇は0、全て制覇したことあるのは横山和生騎手のみ*15*16
大阪杯がG2時代まで広げて岡部幸雄*17、田原成貴*18、藤田伸二*19、横山典弘騎手*20、武豊騎手*21、ルメール騎手*22が全て勝利している。


追記・修正は通年で春秋古馬三冠を達成してからお願いします。

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最終更新:2025年04月22日 15:31

*1 大阪杯と天皇賞(春)は4歳以上限定

*2 約一億円。外国産馬の場合は5000万円

*3 というか、大阪杯のG1昇格自体がドバイ遠征への偏りを減らす狙いもあるのだが。

*4 というより、馬に与える影響を考えるとほぼ不可能になった

*5 どちらも古くから春天への前哨戦と位置づけられていたが、2014年からは1着馬に春天優先出走権が与えられている

*6 こちらも阪神大賞典への出走プランもあったが年初めのトラブルで遠征を取り消し、美浦から近い中山での復帰戦で日経賞を選択した

*7 これは当時の馬齢計算が数え年方式だったのが理由で、2001年以降は満年齢表記となっている

*8 芝2500mのレコードタイム自体は第133回目黒記念(G2)にてルックトゥワイスが更新している

*9 そのうちの一頭が第71回優駿牝馬でアパパネと同着となったサンテミリオン

*10 同一馬ではドウデュース

*11 同一馬ではイクイノックス

*12 ヤエノムテキで秋天、シンボリルドルフでJC・有馬

*13 タマモクロスで秋天、ナリタブライアンで有馬、マーベラスクラウンでJC制覇

*14 バブルガムフェローで秋天、エルコンドルパサーでJC、マンハッタンカフェで有馬

*15 タイトルホルダーで春天・宝塚、ベラジオオペラで大阪杯、なお和生騎手は阪神開催の春天で勝利しているため阪神の春古馬三冠達成、更には2022年に宝塚・2025年大阪杯でレコード勝利し2冠のレコード持ちという珍しい記録も持っている

*16 春天の阪神開催は2年あり同じ称号を手にする可能性はワールドプレミアで勝利した『福永祐一』にもあったが、23年に騎手を引退・調教師になったため潰えている

*17 トウカイテイオーで大阪杯、ビワハヤヒデで春天・宝塚

*18 ステートジャガーで大阪杯、マヤノトップガンで春天・宝塚だが同年ではない

*19 ヒルノダムールで大阪杯・春天、ダンツフレームで宝塚

*20 アンビシャスで大阪杯、ゴールドシップで春天・宝塚だが同年ではない

*21 キタサンブラックで落とした宝塚は過去4勝しているものの、意外にもディープインパクトで制覇した2006年が最後である

*22 産経大阪杯時代にラキシスで勝利、春天・宝塚勝利は春古馬制定後複数あるものの同一馬での勝利は春天連覇のフィエールマンのみ