登録日:2024/10/21 Mon 19:25:00
更新日:2025/04/10 Thu 23:07:08
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概要
本名:エイパー・シナプス
性別:男
年齢:
45歳
所属:
地球連邦宇宙軍第3地球軌道艦隊
搭乗艦:ペガサス級強襲揚陸艦アルビオン
階級:大佐
声優:
大塚周夫
一年戦争では前線勤務で戦功を挙げ、大佐にまで昇進するなど、戦場において功をなした叩き上げの優秀な軍人。
主人公・
コウ・ウラキの父親とは知り合いという裏設定があるが、ウラキとの会話でも特に話題にしなかった事から本編では扱われていない。
老齢に見えるが、0083年時点で45歳(一年戦争当時は41-42歳)と十分壮年の男である。
好酒家であり、医者から酒の量を制限されている事をボヤく一面も。
公式サイトでは短気な一面もあるとされているが、劇中では
ジャブローの対応について愚痴る部下を
憤りに任せて怒鳴りつけたシーン位であり、決して階級を傘に無闇に高圧的な態度を取るような横柄な人間ではない。
むしろ劇中の登場人物の中でも指折りの人格者であり、モーラからも紳士と称される程で、この性格は部下にも慕われる要因となった。
ただ軍人であるが故に劇中ではその情が仇となりがちである。
中の人の好演、軍人気質の艦長としては当時はまだ珍しかったこと。そしてベテラン然としながら人格者的に描かれたキャラクター性からファンは多い。
一方で先の通り情が仇となって自らを追い詰めるシーンが多く、そのことで軍事的なツッコミから批判されてしまうこともまた多い。
略歴
連邦軍自体の軍務が惰性化していたのか、アルビオンを定刻通りに運用したことを見た
アナベル・ガトーに「連邦にしては真面目な艦長」と評された。
しかし、トリントン基地のザル警備っぷりに加えて、艦内の警備が甘かったのか
デラーズ・フリートに機体と核弾頭を奪われる失態を犯す。
ガンダム強奪の一件ではシナプスが現地で最も高階級だったこともあるが、壊滅的打撃を受けて基地司令のマーネリーが死亡したトリントン基地の臨時指揮を現地で承諾する。
その後、部隊を再編して奪還を試みるが軍からの支援不足もあって上手く行かず、追撃戦を地上・宇宙と転々と続ける事になる。
また、その最中に所属不明艦隊と
連邦旗艦の密会の場に遭遇、独断で戦闘介入を行っている。
実はこの密会こそがデラーズ艦隊の作戦を阻止する最大のチャンスだったのだが、当時のアルビオン艦隊には知る由も無かった。
その後は試作二号機の阻止叶わず、ソロモンにおける観艦式での核弾頭発射を許し、連邦宇宙艦隊に大損害を与えてしまった。
その後は連邦軍より本計画の一時中断、および
ガンダム3号機の警護命令を受けるが
これを無視し、アルビオン隊単独で
ガンダム3号機を接収、作中における最終目的、コロニー落としを実行しようとするデラーズ・フリートに追撃戦を仕掛けた。
連邦宇宙軍は
デラーズ・フリートの一部を内応させ、ソーラ・システムⅡでコロニーを破壊しようと作戦を立てていたが、結果としてシナプスの介入で
作戦が破綻、内応したデラーズ・フリートの一部は殲滅、コロニーは地球に落下、連邦宇宙軍にも被害が出るなど散々であった。
作戦終了後、軍法会議が開かれ、シナプスの後ろ盾だったコーウェンが失脚していた事もあり銃殺刑に処された。
重罰ではあるが実際に処刑が実行されたかどうかは明言していない媒体はあるものの、後発媒体ほど処刑と書かれているものが多いので処刑が実行された可能性は高いと思われる。
なお「コウの懲役1年は罪状から見れば軽過ぎると指摘されている反面、シナプスの判決は罪状通りの厳しいものとなった」
という記述が小説版『0083』にあり、ここからコウの罪状がシナプスに着せられているとの推察もある。
ちなみにこのへんは映像シリーズ版公表当時から二転三転しており、
- OVAシリーズ:明言無し(厳密には当該の場面を含む最終巻は下の劇場版のほうが早い)
- 劇場版:シアター公開版ではテロップで死刑が明言+パンフレットのデラーズ紛争関係の年表に「シナプスの死刑を執行」の記載あり→こっちのバージョンの映像ソフトでテロップが削除、明言無しに事実上変更
ファンの間でも混乱してるのって半分くらいこれが原因では?
- ノベライズ版:死刑が明言
- 松浦まさふみ版コミカライズ:死刑が明言
- ガンダムエースのコミカライズ『REBELLION』:死刑が明言。ただし新約版0083の色が特に強い本作でははっきりと「戦況が戦況だったため本来ならば階級降格で済むところ、コロニー落としの実行やその際のシーマ艦隊内応に絡む混乱の責任を押し付けられたため重罰化により極刑」とフォローが入っている
一応、刑の執行がなされたかどうかは不明なので、コウと同じく
ガンダム開発計画の抹消に伴って罪状が消滅した、という説が出て来るが、表向き計画を抹消したとしても使った予算や資材が戻る訳ではなく、コーウェン派は消えた予算と資材の行方、人員などを動かした説明責任を求められることになる。
その疑獄事件の罪を被ることになったのがシナプスという落としどころになったのだろう。
総評
管理職としての能力は高く、部下に対しては信賞必罰でありながら温情ある指導を行う等、
荒くれや
新人ばかりのアルビオンクルーを上手くまとめていた。
前線指揮官としても熟練した手腕を発揮しており、アフリカにおいては鉱山基地を発見するため敵機の逃走方向から基地の位置を割り出そうとしたり、
シーマ艦隊との初戦闘の際に脅しの砲撃をちゃんと見極め、他のサラミス級があっさり落ちる中、アルビオンはコウの暴走という予測不能な事態がありながらガンダムの大破だけで済ませている。
さらにデラーズの真意の底までは気付けなかったが、真の目的が他にあることも見抜いており、決して大局がまるで見えていなかったわけでもない。
味方の思惑は一切見えていなかったが…
また、就航間もない時期の寄せ集めなアルビオンクルーを、わずか1か月程度で一人前に鍛え上げた手腕を持ち、かつてシナプスの下で働いていた
ウェス・マーフィーも彼を慕っていた。
アルビオンクルー達とも同様に信頼を築いており、どちらかと言えば不服従な態度を取っていたモンシア達でさえ、後半はシナプスの大胆すぎる判断を支持したような言動も取っている。
このカリスマ性は後半にかけて良くも悪くもアルビオンの方向性を決めていくことになる。
他方で、政治的な視野の狭さや、融通が利かない欠点も指摘されてもおり、通りがかっただけの
ワイアットからは「融通が利かない」と苦言を呈されて、後に先述のシーマ艦隊との密会の場をブチ壊された時には 「盛った馬鹿」と罵られている。
警備状態を確認せずに核弾頭を受領したり、スパイを捕らえて尋問するような事もせずジャブロー本部に何の相談もせずに独断で行動しているところからも、軍人として融通が利かないと言われても仕方のない面は多い。
ワイアットと
シーマの密約はのけ者にされた結果判断が追い付かなかったと言える。
普通に、「艦隊司令が単独行動」「自分たちに対して何の信号も出さない」「所属不明としかわからない」「敵と思われる艦と並走」と不審な点だらけである。
全体で見ればキツい言い方をすると、
艦長・指導者としては非常に有能だが、情報戦やほぼ派閥の連携という面では無能と言わざるを得ず 、結果として有能な面を活かせず無能な働き者を演じてしまった人物。
部下を大事にするために部下からは慕われるが、自分勝手な行動をとるために上官からは疎まれる。コーウェンとはお似合いである。
無能を演じたという点については、お話の展開の為にご都合的な状況が多々あり、その割をモロに食っているのがシナプスだからである。
別の人物の尻拭いをするようにすれば良かったのでは…
尤もジオンが復活し大量破壊兵器を持っている状況でやれ政治だとか派閥だとか言ってられる場合じゃないのも事実であり、単に「地球を守る」為に行動し、連邦軍人の高潔たる精神を持ち続けたのは評価に値すると言えるだろう。
尺の都合からシナプスの心理描写に迫るパートはほとんどないし、相談相手になってくれそうな
バニングは肝心の後半の頭に戦死、という状況になっている。
特に略歴に有るアルビオンの警備状況の悪さについては
トリントン基地内部含めてガトーをノーガードで受け入れているという展開自体に無理がありすぎる。
とはいえ、ガンダムが強奪されないと話が進まないからなぁ…
いきなり恋人設定を生やされて悪女的に描かれてしまったニナと同様、彼も脚本の被害者と言える部分は多い。
また、逆にガトー侵入の手引きをしたオービルが警備の配置や巡回ルートを完璧に把握し、ガトーのエスコートを完璧に遂行した可能性もあるのかもしれないが、
そんなの民間人のエンジニアにバレてる時点でとっくの昔にアウトなんだが…アルビオンに載せていたし…
立ち入り禁止であるガンダムの格納庫にコウとキースが普通に入っている時点でアウトである。
そもそもの問題としてスパイのオービルをトリントン基地に送り届けたのはアルビオンである為、全ての元凶といっても過言ではない。
そのオービルも襲撃から一週間後に何故か持っていた書類のうっかりミスででスパイと割れてしまうレベルなので有能とは言いにくく。そもそも極秘の試験の前に見張り無しで関係者の外出許可を出していること自体あり得ない。
一方で、後半におけるアルビオンの私物化についてはシナプスの行動を擁護している人間目線から見てもアウトという見方は強い。
中でも独断で最新鋭のガンダムを強奪まがいで受領したことと、友軍化したシーマの攻撃を容認したことは流石に看過出来ないとされ、「最終的に処刑という判断になったのはやむなし」というのは概ね擁護・否定派の認識は共通していたりもする。
ナカト中佐が言った「観艦式は君たちのせいで滅茶苦茶になったから停止命令が出た」というのは一見横暴に見えるが正論である。
シーマ隊への攻撃に関しては、アルビオン隊にしてみれば「バニング大尉の死因となった相手と共闘するのは感情的に受け入れ難い」と思うのは無理もない。
勿論それを制するのが艦長の役目ではあるし、コロニー落としが迫る中で感情で動くなど軍人としての行動としては言語道断であることには違いないので「気持ちはわかるが君らは君らでそんな場合ではないだろう」というのが落としどころか。
なお何かと政治的手腕を疑問視されるが、コーウェンは
アナハイムと組んで
ガンダム開発計画を行っており、その際に軍中央や政治家に根回しして予算案を議会で議決させる、などの政治工作は行っている筈なので一定の手腕はあると思われる。
ただそれをシナプスとうまく共有出来ていたかはまあまあ怪しいところである。
その最期はコーウェンが一階級降格、コウが後に罪状消滅となるも、その真ん中にいたシナプスが全ての責任を負い文字通りの死に体になり、
上司や部下の責任を被ることとなった。これは後にウェス・マーフィーが不服な判断として語っている。
なお、「ガンダム開発計画」は戦後連邦軍によってもみ消されてなかったことにされ、「星の屑作戦」もコロニー落としを落下事故として処理するなど、
0083における多くの事案がなかったこと、あるいはかなり情報操作されて矮小化されて世間に伝えられた扱いになっている。
よってコーウェンが失脚せずしっかり発言権を持ち続けている=弁護していればもう少し処刑の判断が遅れ、コウと同じく罪状が消える…のは難しいとしても、
減刑くらいにはなっていた可能性は多少なりともある。そういう意味でも運のない人と言えるか。
主な台詞
「戦争の代償…というにはあまりにも大きな傷だ」
ニナにシドニーがあったところを説明した後の台詞。
「ヌゥッ!これでは軍閥政治ではないかっ!」
バスク・オムとの通信にて。これを言っているシナプスもまた軍閥政治の1ピースである自覚がない点はよく突っ込まれる。もっともコーウェン&シナプスにその関心が薄かったことは見て取れるが。
外部作品
スパロボでは戦艦乗りとしてどうしても
ブライトとかち合ってしまうため、0083組の中でも出番は少なめ。
モンシア同様、『第3次スーパーロボット大戦』でチラッと登場したのが初出。
『
第2次スーパーロボット大戦α』が唯一、最後まで使用できる作品。2連装メガ粒子砲を使用した時のカットインがかっこいい。宇宙世紀ガンダムの戦艦といえばまずブライトな中、スポット参戦以外で最後まで使えるのは中々新鮮である。
ブライトの
ラー・カイラムに比べて攻撃力は控えめだが、小隊長能力と武装の性能によりクリティカルが出やすいのが特徴。
ただし、ほぼALL兵器しか使わないため特殊技能の「援護攻撃」「連携攻撃」は宝の持ち腐れとなっている。
十分使えるのだが、色々と尖った他の艦に比べると若干影が薄くなりがち。
アルビオンのアニメーションが非常に凝っていることと先のカットインが救いか。
『
第3次スーパーロボット大戦α』ではスポット参戦だが、カットインにシモンが一緒に登場するようになっている。
作中では不本意な形で
ムルタ・アズラエルの言いなりになって味方であるαナンバーズと戦う羽目になったが、コーディネイター殲滅ばかりを優先するアズラエルに対しては内心軽蔑しており、彼に反発する形で戦闘中にαナンバーズを手助けしたために謹慎処分を受けてしまう。その後、アズラエルの口から命令無視で極刑をなる事を仄めかされたが、同志に匿われた事に加えて終盤でアズラエルが戦死した事でなし崩し的に復帰して生存していた。
あやうく原作エンドを迎えそうになったが、やる事なす事裏目に出た原作とは違いαナンバーズを逃がす事に成功しした上で自分の命も守りきれたので救われたといえるだろう。
原作とは違い政治力のある支援者がいっぱいいたというのもデカいと思われるが
ギレンの野望シリーズでは皆勤賞。
艦長としては、初期ではブライトに勝るが成長力の違いで最後には抜かれる、指揮能力もそれなりの中堅上位の艦長といったところ。
とはいえ、一年戦争限定シナリオではブライトはイベントで碌に使えないので、シナプスのお世話になることは多いだろう。
階級が低いので、他の指揮官と居合わせると能力が高くとも上書きされやすい点には注意。
系譜やアクシズの脅威だとデラーズ紛争後イベントもあるが、レビル本編ならばどの進め方をしても裏切らないし、星の屑作戦イベントに参加させても処刑されないので安心。
但し使えるのはレビル本編だけで、バニングと同じくティターンズやエゥーゴ編では出番はない。
Gジェネレーションシリーズではブライトには及ばないがなかなか使えるオールドタイプ艦長となる。
一方クロスオーバーシナリオを採用したナンバリングではほとんどモブ扱いのことが多い。
『NEO』と『DS』では何故かエゥーゴに所属しており出番は一話しかなく、大抵は前線をブライトとヘンケンに任せ自分は拠点でお留守番ることが多い。
まぁ、処刑されなかっただけまだましか。
余談
担当声優の大塚周夫は、ガトー役の
大塚明夫の父親である。
とはいえ互いに絡みがあるわけではなく、作中では終始敵味方の関係であった。
スペルは「Eyphar Sinapus」であり、Eypharという単語を検索しても彼以外は出てこないため由来は不明。
ただし欧米圏の人間に事前知識なしで読ませたらエイ
ファー
になる可能性の方が高い文字の並びである。
アレの読みがピーサリスにならなかった代わりにこっちがパ行になったのかな?
Sinapusの方は神経細胞(synapus)ではなくマスタードになる植物のからし菜(sinapis)の変形と思われる。
追記、修正はガンダム2号機と核弾頭を守り抜いた方にお願いします。
最終更新:2025年04月10日 23:07