ブレイカーズ


『ブレイカーズ(BREAKER'S)』とは、1996年11月にビスコからリリースされたAC向け対戦格闘ゲーム。
ネオジオのサードパーティに参加したビスコがMVS筐体用に開発・発売したもの。ROM容量は210Mbit。

元々は開発中止になった同社の未発売ゲーム『天麟の書 死嘩護(てんりんのしょ シカゴ)』というゲームが元になっており、
キャラクターの一部の設定にその名残や設定面での繋がり見られる。


概要

  • ストーリー
───香港。広大な中庭に、2人の格闘家が対峙していた。
挑戦者は、褐色の肌を持つたくましい男だ。地面は鮮血に染まっている。
だが、彼の三日月刀は、ただの一度も相手をとらえる事ができていない。一方的な戦いであった。
やがて彼は、力尽き倒れる。
「愚か者よ、我が血肉となるがよい。」
重苦しい声が響いたのち、挑戦者の体は、まるで砂の様に崩れ去っていた・・・。

武道大会「FIST (Fighting Instinct Severe Tournament)」は、その名の通り過酷な大会であった。
死者が出ることも珍しくはなかったが、格闘家として名を上げようと、参加する者は後を絶たなかった。
ルールのないこの大会で勝ち残った者は、莫大な賞金と共に、
大会の主催者である黄(ホァン)財閥の党首と戦う権利を獲得する。
だが、公開されないこの最終戦に赴いた格闘家は、誰一人戻っては来ないのである。
いつから存在するのかは、誰も知らない。
そこには、貧欲なる意思のみがあった。
太古より存在する彼は、現在において、その闇なる力の増幅に欠かせない供食のシステムを確立する。
それこそが、世界から多くの参加者が集まるまでになった武術大会「FIST」である。
そしてまた今年も、生け贄が選択されようとしていた。

至って普通の対戦格闘ゲームで、独自要素は多くないが、全体的にバランスよく仕上げられている佳作。
コマンドが分かりやすく、キャンセル時の技の受付時間がやや甘めで、初心者でもプレイしやすい。
各種ダメージ補正が細かく設定されており、気絶からの復帰の瞬間に無敵時間があるなど、
ゲームバランス面に気を使った丁寧な作りになっている。
また、この頃にしては珍しく非常にテンポのよいゲーム性をしており、
対戦中におけるラウンド間の暗転を始めとした「プレイヤーを待たせる要素」がほぼ存在せず、
試合開始から決着、そして連戦までの流れがスムーズでストレスがないのも大きな特徴である。

安定したゲームバランスを持ち、初心者でも楽しむことができる、そしてゲームの回転が非常に早い、と当時としては完成度の高いゲームであったものの、
その反面、目立った部分が少ないためにどうしても地味な印象を拭えず、ストーリーに従来のゲームの影響が見られたり、
キャラクター達もちょっと古臭いデザインかつ数も少なく、キワモノキャラも同時期のゲームと比較すると「これくらい普通だよね」という印象が強かった。
結果的に当時は対戦格闘ブームの有象無象の中に埋もれ、いまいち振るわない不遇の作品という扱いであった。
しかし、今となっては改めてその評価が見直されるべき作品の一つと言えるだろう。

家庭用ではネオジオROMとネオジオCDに移植されており、特にネオジオCD版は後述の通り、いくつかの追加要素とそれに合わせた調整が加えられている。
海外では2017年にドリームキャストへ移植されているが、こちらはセガ非公認ソフトなのでGD-ROMではなくCD-ROM媒体であり、
起動は初期に生産されたMIL-CD対応の本体でのみ可能となっている(ちなみにビスコの公式ライセンスは得ている模様)。
こちらはネオジオCD版を元にした移植のため、追加要素もそのまま遊べるようになっている。

ネオジオCD版では、追加要素としてボスキャラが使用可能になっている他、隠しとしてエクストラモードという隠しモードが存在する。
隠しモードのため通常では選択できず、オプションで隠しコマンドを入力すると開放されるのだが、
大きな特徴として、このモードをONにすると、以下のようにシステムに大量の追加要素が加わる。
  • ほぼ全ての技が各種行動でキャンセル可能に(ただし技によって優先順位あり)
  • 地上で5ヒット以上攻撃を喰らうと強制的に空中ヒットへ移行する
  • どこでも判定付与
  • ダウン復帰高速化
  • 空中で自動振り向きするように
  • 空中復帰追加
  • 当て投げ可能
  • 被ヒット・被ガード中のゲージ増加量が大幅アップ
  • 被ガード中にボタン同時押しでアドバンシングガードが可能に
  • 特定の喰らい状態中にボタン同時押しで1ゲージ消費の喰らい抜けが可能に
  • KO後にサドンデスが始まる(この時に倒された側が相手をKOすると強制的にドローになる)
このようにコンボゲーも真っ青な大胆すぎるアレンジが施され、バランスの良い本作が一転、ハチャメチャなゲームへと様変わりする。
ネオジオCD版ではこのモードを搭載するために全キャラに調整が施されており、その影響でAC版で可能だったマハールのバグが修正されていたりする。
しかし、かなり気合を入れて調整してあるのか、このモードにおける対戦バランスの崩壊は起きておらず、
むしろ本作がより味わい深くなるモードなので、もし興味のある人は何とか環境を整えて遊んでみてほしいモードである。
エクストラモード参考動画


ブレイカーズ・リベンジ


1998年7月にリリースされた『ブレイカーズ』の続編。ROM容量は242Mbit。
新キャラクターが1人追加されており、それに伴いバランス調整も施されている…と長らく言われていたが、
有志の調査によると、変更点は追加キャラ関連と各種ゲージのグラフィックの変更、
及び各キャラの勝利画面のグラフィック変更(例えば、李刀龍の勝利画面は何故か彼の首が長く描かれているように見える)以外、
実は何も変わっていない事が発覚した。
例えるなら、『ストII』から『II'』へレベルの変化ではなく、「移植でキャラが増えました」レベルなのが本作である。
追加要素として前作のネオジオCD版と同じくボスが使用可能になったが、コマンドが変更され、使用には1P・2P双方による同時コマンドが必要になった。

結局、新作ではあるが前作の超絶マイナーチェンジな上に、前作同様新鮮さに乏しかったためか、
出荷数は前作よりも少なく、おまけにネオジオ関連での家庭用も稼働当時は発売されず、
2020年頃にROM版の受注生産が行われるのみにとどまっている。
しかし、2023年に前作と纏めての『Breakers Collection』として各現行機種/PCへの初移植が実現している。
ただし、こちらは海外MVS版ベースの移植で日本語への切替えができず、隠しフィーチャーであったネオジオCD/DC版のエクストラモードも存在しない
(なお前作共々、アケアカNEOGEOで復刻はされていなかった。某完全版の時の不義理が尾を引いてるんじゃ…)。
また、UNICOより販売されている『VISCO Mini Arcade Bartop』にも本作が収録されている。


ブレイカーズリベンジ死嘩護

2024年、約四半世紀という年月を経て、exA-Arcadia基板よりなんと『ブレイカーズ』の新作が発表された。
さらなるマイナーチェンジが施された続編であり、キャラクターは従来のまま、ラスボスの黄白虎が性能を調整された上でデフォルトで使用可能になっている。
また勝利画面を始めとしたキャラクターのビジュアルが一新されており、新しいタッチで描かれたキャラ達は必見である。
特にピエールなんかイケメン度が上がってて誰だお前となること請け合い
BGMも作曲者本人による新規アレンジ版とネオジオCD版の選択式になり、
ナレーションも小板橋篤記氏並びに石川佳典氏が新たに担当している。

大きな変更点としては、キャラ選択後にシステムを以下の3種類から選ぶ事が可能になった。
  • 【Revenge】:前作『リベンジ』そのままのモード。表記は「RE」
    • リベンジの頃からやっていた人にとっては実家のような性能。
      下二つよりかこっちの方が安定するキャラもいたり。
  • 【Chicago】:本作のために新たに作られたexAオリジナル仕様のモード。表記は「死」
    • 小ジャンプが可能になり、一部キャラの性能にバランス調整が施されている。
      リベンジとはまた違った戦い方が可能で、特にピエールなんかはちゃんと戦える性能に。
  • 【extra!!】:上述のネオジオCD版エクストラモードが元になったモード。表記は「EX」
    • あのハチャメチャな動きがついにACでも可能に。当時いなかった才蔵にもしっかり対応している。
      ただしそのままだと強すぎるため、当て投げや被ゲージ増加といった一部システムは削除され、
      またサドンデスも同モードでないとダメージを与えられないようにされている。
      加えてこのモード選択時は総体力が強制的に半分になるので、油断するといつの間にか死んでるなんてことも。

アーケードモードの他に、10分間のトレーニングモードも選択可能で、
こちらではヒットボックスの確認やトレーニングダミーの使用システムやレベルなどを自由に設定できる。


キャラクター

CPU戦で同キャラ対戦になった場合、CPU側は別人扱いとして名前が変更され、キャラクターカラーがCPU専用のものとなる(白虎を除く)。
なお、このCPU同キャラにも簡単な設定が付けられている。詳細は各キャラクターの項目を参照。
CPU同キャラの名前や設定の一部には『死嘩護』の「宝玉」の設定などが流用されている。
  • 使用可能キャラクター
  • CPU専用キャラクター(ネオジオCD版無印、『リベンジ』では隠しコマンドで使用可能)
黄白虎(ホァン・パイフー)(最終ボス)
  • 『リベンジ』で追加された使用可能キャラクター


システム

ネオジオ筐体専用のためレバー+4ボタン。
ボタンはAボタンが弱パンチ。Bボタンが弱キック。Cボタンが強パンチ。Dボタンが強キックに割り振られている。
挑発にはスタートボタンを使用する。ダッシュはレバー2回。→→か←←。
キャラが右向きなら上段ガードは←。下段ガードは/。投げはレバー入れ+C
ダッシュ性能が前・後ともキャラクターによって走る、前転する、ステップ、テレポートなど違いがある。
独自の特殊動作としてダウン時の「移動起き上がり」(ダウン中にボタン3つ同時押し)がある。
パワーゲージは3本まで溜めることが可能で、相手に攻撃をする、攻撃をガードすることでゲージがたまり、
挑発やダッシュ、移動起き上がりなどの特殊動作でも増加するという、地味に珍しいものになっている。
一部の通常技・必殺技、全ての超必殺技は空中ガード不可。
気絶から復帰した瞬間、移動起き上がりモーション中などで無敵時間が設定されている。

技キャンセルの概念がやや特殊で、連続技の先行入力が可能であったり、
一部の通常技・特殊技をジャンプキャンセルできたり、空キャンセルして超必殺技が出せるものもある。
なお、通常技の先行入力には一定の優先順位がある。

ダメージ補正が細かく設定されており、コンボ補正によるダメージ減少のほか、
ライフによる攻撃力・防御力の根性補正、攻撃を当てないほど攻撃力が増加する我慢補正、
気絶中のダメージ減少、カウンターダメージ増加など、状況によってかなりの変化がある。

ブレイカーズ・リベンジ OP/ED集


MUGENにおけるブレイカーズ

全キャラクターが制作されており、それぞれにデフォルトAIやAIパッチが存在する。
大会出場数もそこそこだが、キャラによって知名度の差が大きく、低いキャラは滅多に話題にならない。

ニコニコでは、○作シリーズで人気を博し知名度を上げたピエール、
発掘絵巻のレギュラーを務める翔、コンドルの3人が有名。

+ 各キャラの入手状況
キャラ、AI入手可能
神威翔、李刀龍、ピエール・モンタリオ、コンドル・ヘッズ、ティア・ラングレー、ライラ・エスタンシア、黄白虎、飛影才蔵

製作者のサイトの閉鎖により入手不可能
シーク・マハール、アルシオンIII世


最終更新:2024年11月30日 20:01