カバチタレ!

『カバチタレ!』は、監修:青木雄二、原作:田島隆、作画:東風孝広による日本の漫画作品、およびこれを原作としたテレビドラマ。講談社の漫画雑誌『モーニング』1999年5月から2005年30号まで連載された。その後、『モーニング』2005年33号からは続編となる『特上カバチ!! -カバチタレ!2-』(とくじょうカバチ カバチタレツー)を連載している。2010年1月からは『特上カバチ!!』を原作としたテレビドラマを放送。


行政書士事務所を舞台にして、法律を駆使して社会的弱者を守っていくという物語である。

同じく原作:田島隆、作画:東風孝広により『イブニング』で連載している事件屋をテーマにした作品『極悪がんぼ』とは世界観が共通しており、『極悪がんぼ』の主人公である神崎守と本作の主人公である田村が鉢合わせする場面がある他、『極悪がんぼ』において大野事務所と神崎の対決があった[1]。また、監修者である青木雄二の作品『ナニワ金融道』に登場する帝国金融の広島支店の看板も登場しており、同一の世界観にあることが示唆されている。

タイトルについては、主人公の田村が行政書士試験に合格するまでは『カバチタレ!』、試験に合格して資格を取ってからは『特上カバチ!! -カバチタレ! 2-』と変更されている。カバチとは広島弁で「屁理屈」を意味し、カバチタレとは「屁理屈屋」の意である。また、本作品は台湾や韓国といった日本国外でも出版されているが、台湾での本作品のタイトルは「代書萬萬歳!」である。

作中の行政書士の活動が弁護士法第72条に違反する非弁活動という指摘が作中でもあったが、事件性必要説(但し、少数説・裁判例上も少数派)に立つと非弁行為とはならないと解されている。

登場人物

  • 田村 勝弘(たむら かつひろ)
主人公。『カバチタレ!』ではビルメンテナンス会社社員から大野事務所の補助者。『特上カバチ!!』では行政書士。登場人物の中では珍しく、広島弁で話さない。モデルは田島事務所のT村氏[2]。
『カバチタレ!』では当初、ビルメンテナンス会社で働くごく普通の青年だったが、その後の解雇に絡んで大野と知り合い、大野事務所に入社した。大野事務所では当初は経験不足で半人前扱いされていたが、徐々に経験を積み、有能な行政書士補助者となっていった。
行政書士試験に合格した後の『特上カバチ!!』では大野の好意により所内で開業した開業行政書士となる。同時期に住吉が大野事務所に入社したが、スタンスの違いから対立することも多い。行政書士としては未熟で、主任行政書士として初めてもった事案では大野には「補助者の受け売りを依頼者に薦めるつもりか」と叱責され、セクハラ事案で相手方の要求をほぼ丸呑みした際には「お前は法律屋失格だよ」「頼ってきた依頼者を相手方に差し出す法律屋になるとはの」とすら言われている。また、補助者時代と変わらず暴走することも多く、高校の同級生が営むペットショップの事案では同級生が自殺未遂を図ったことに責任を感じて計画倒産を企図し、行政書士会に懲戒請求を出されている。
法律家としてのスタンスは正義感や情を重視するスタンスで、『カバチタレ!』で重森、栄田の指導の下に動いていた時には、時折暴走と言われるような無茶な行動をとっていた。
  • 住吉 美寿々(すみよし みすず)
『特上カバチ!!』から登場した大野事務所の女性行政書士。普段は広島弁を使わないが、故郷に住む友人や家族と話す時は広島弁となる。モデルは田島事務所のS吉氏[2]。
東京の大学を卒業後、銀行員、司法書士補助者を経て行政書士事務所に勤務。行政書士事務所を退職後、広島に帰郷した際に大野事務所と借金返済事案で争ったことがきっかけとなって入社した。
依頼者に感情移入することなくビジネスとして捉えつつ、依頼者の依頼が全てというスタンスを貫く。ビジネスライクに接する為、時として見せる冷徹な面に田村が反発して対立することも多い。
  • 大野 勇(おおの いさむ)
大野事務所の所長であり、トラックドライバーからのしあがってきた苦労人である。田村や住吉、金田は「大野先生」と呼ぶが、栄田や重森からは「ダイ」或いは「大センセ」と、検備沢からは「イサムちゃん」と呼ばれている。
普段は常に飄々としているが、いざ事件に臨むと強いカリスマ性のもと、駆け引きと法理論を駆使する事務所の責任者である。ただし、書面作成や提出といった作業は普段している描写がなく、金田の独立直後で田村も金田の手伝いに行っていた時にやっていた程度である。この時も栄田や重森より作業効率が悪く、栄田には事務所の経営者であるにもかかわらず「真っ先にリストラすべき」と言われている。
所員には厳しく接することも多く、『カバチタレ!』では栄田や重森が大野の怒りを買うことを恐れて競売妨害まがいのことをするシーンも描かれている。また、『特上カバチ!!』では特に田村に厳しく、住吉と対決した貸付金の事案では安易に栄田を頼ろうとした田村に「補助者の受け売りを依頼者に薦めるつもりか」と叱責し、またセクハラの事案では相手方の要求をほぼ丸呑みしたことについて「お前は法律屋失格だよ」「頼ってきた依頼者を相手方に差し出す法律屋になるとはの」と激怒している。
  • 重森 寛治(しげもり かんじ)
一貫して大野事務所の補助者で、事務所では一番の古株。通称は「重さん」だが、田村や住吉、金田からは「重森さん」と呼ばれることも多い。
大野とは20年来の付き合いであり、補助者であるにも関わらず有資格者(田村、金田、住吉)を差し置いて事務所の管理を任されるなど大野の信頼も厚い女房役である。法律家としてのスタンスは、正しいことが現実と違った時には、不本意ながらも現実に合わせることも考えるべきというスタンスである。
  • 栄田 千春(さかえだ ちはる)
一貫して大野事務所の補助者であり、『カバチタレ!』では大野事務所に入社して間もない田村を指導していた。
『カバチタレ!』では田村がまだ行政書士補助者として駆け出しだったこともあり、教育係として2人で同じ事案を扱うことも多かった。『特上カバチ!!』になってからは行政書士になった田村と、同じく行政書士で田村とは大幅にスタンスの違う住吉の対比で描かれることが多くなり、相対的に栄田が描かれる機会が減っている。
度々遅刻寸前で駆け込んでくる場面が描かれるなど大雑把なキャラクターではあるが、田村の良き先輩であり、田村が暴走した際には上司の重森と板ばさみになりながらも田村をかばうシーンも多い。法律家としてのスタンスは田村に似ており、情を重視する人情派である。また、過去の経験から小規模な店舗などの経営者、貧しい家庭などに対しては思い入れが強く、離婚事案を手がけた際に、栄田自身が暴走して退職を覚悟して有印私文書偽造をやろうとしたこともある。
  • 金田 銀四郎(かねだ ぎんしろう)
『カバチタレ!』では当初は大野事務所の補助者、途中から独立してもみじ行政書士事務所の所長となる。『特上カバチ!!』では引き続きもみじ行政書士事務所所長を務めている。通称は「金ちゃん」だが、実際に呼んでいるのは栄田だけである。田村と同じく広島弁を使わず、標準語を使っている。
行政書士と社会保険労務士の有資格者であるが、当初は行政書士会、社会保険労務士会に登録していない。事務所に入ったのは栄田より早く、重森に次ぐ古参であるが、田村に条文暗記の重要性を語った際には重森に「学生の勉強」「本の知識がすんなり通るほど現実は甘くない」と一蹴され、補助者時代は現実と理想のバランスという点で重森と対立することも多かった。
『カバチタレ!』の終盤で大野の師匠に当たる坂本行政書士の後継者含みでもみじ行政書士事務所を預かることになり、そのまま所長に就任した。『特上カバチ!!』でももみじ行政書士事務所所長として登場し、ときおり田村がもみじ行政書士事務所を手伝いに行くなど、大野事務所とは良好な関係を築いている。
法律家としては法令の厳格な適用を目指しており、不正や脱法行為、法律違反には非常に厳しいスタンスをとっている。田村が暴走した際には助けたり、相談に乗ることもある反面、田村が仕事上の大きなミスをやった際には激怒するなど、やや短気な面もある。また、もみじ行政書士事務所所長となった直後、経営を重視する余り、形式的に仕事をこなそうとして、田村と激しく対立した。
  • 検備沢 太郎(けびさわ たろう)
大野の旧友の弁護士。
行政書士の業務範囲外の問題が起きた際に協力を依頼する弁護士である。当初は重森、栄田は苦手意識を持っている描写がなされていた。



ドラマ

上記の漫画を原作としてドラマ化され、2001年1月11日から3月22日の毎週木曜22:00~22:54[3]にフジテレビで全11回が放送された。全11回の平均視聴率は19.3%である。なお、原作の舞台だった広島では、現在も年に数回のペースで再放送がある。

原作から舞台が広島から東京に変わったり、主人公の田村勝弘や栄田千春が女性に置き換えられていたり、二人が大野勇に一時期恋をしたりするなど、様々な部分でキャラクター設定が大幅に変更されている。登場人物の変更のほか、ドラマ版オリジナルキャラクターも多い。原作と比較すると法律ものとしての色が薄まり、28歳の女二人の友情といった人間ドラマ、恋愛ドラマをより強調した構成になっている。

香里奈のテレビドラマデビュー作。

キャスト

  • 田村希美(28歳) - 常盤貴子
原作から名前を田村希美(たむら・のぞみ)に変更。両親を早くに亡くした苦労人で、第一話で親戚に預けていた弟を広島から東京に呼び寄せる。工務店で働いていたが、社長から受けたセクハラに反抗したところ、解雇されてしまい、途方にくれていた時に、偶然知り合った千春から、解雇予告手当を請求するようアドバイスされる。その後は喫茶店のウェイトレスとして働きながら、千春の補助者として事務所でアルバイトをする。優しく正義感の強い性格が災いし、多くのトラブルに見舞われるが、「信じる者は救われる」という信念のもと、持ち前の明るさと粘り強さで乗り切っていく。その姿勢は千春や大野、後に戦うことになる生田にも高く評価され、「本気で法律を勉強して、行政書士にならないか?」と勧められるほどである。
  • 栄田千春(28歳) - 深津絵里
大野行政書士事務所に勤める行政書士。子供の頃、教師をしている父が「人を信じろ」というあまりに、相談に来たいじめられっ子を救えず、死に追いやってしまったという場面を目の当たりにし、「信じる者は救われない」という信念を持つようになった。以降父と不仲になり、実家には何年も帰っていない。仕事は素早く正確。普段は強気で冷静、かつ理屈っぽいが、想定外の事態に遭遇するとパニックに陥り、思考が停止してしまう。正反対の性格の希美とは時にぶつかることもあるが、いい男に弱く、正義感と結婚願望がとても強いという共通点があり、行動をともにするうちに彼女を親友と思うようになる。
  • 田村優太(16歳) - 山下智久
田村の弟。高校生。よくトラブルに巻き込まれる姉を常に心配している。高校の女子にはもてるのだがあまり上手くいかない(本人曰く「今年は女難の年」)。最終回では春奈と結婚することを決める(年齢が16歳のため婚姻届は提出していない)。
  • 宮城京子(25歳) - 篠原涼子
婦人警官。最初は交通課勤務だったが生活安全課に異動させられる。自分は正義であると信じている。千春とは犬猿の仲。大野と交際している。喫煙者[4]。
  • 長谷川幸男(30歳) - 岡田浩暉
大野事務所の所員で有資格者。千春の先輩に当たる。キャラクター的には原作の金田に近く、以前は給料の3分の2をキャバクラ通いに注ぎ込んでいた。
  • 金田銀四郎(23歳) - 岡田義徳
ドラマ版でも登場するが資格は持っておらず、千春にあごで使われている。千春に恋心を抱いており告白するシーンもある。原作の田村に近いキャラクター。
  • 小原春奈(16歳) - 香里奈
優太の彼女。時々優太の言動に幻滅することがあるが、最終回では海外へ飛び立つ前に優太と結婚することを決める。
  • 重森寛治(45歳) - 田窪一世
原作と同じく、大野事務所の補助者であり、共に事務所を立ち上げた一番の古株。
  • 加藤マキ(24歳) - 伊藤さおり
大野事務所の事務員。最終回で長谷川と結婚する。
  • 生田加寿子(35歳) - 小林聡美
弁護士。一時は大野に協力を求めることがあったが最終回で大野を弁護士法違反で刑事告発しようとする。大野の天敵。卓球が得意で、休日には練習場へ足を運ぶ。
  • 大野 勇(42歳) - 陣内孝則
原作と同じく、大野行政書士事務所の所長である行政書士であるが、離婚経験があり娘と二人暮らしという設定になった。また、鉄人28号が好きという設定が追加され、時々鉄人の(白黒の)カットが入ったり、相手が包丁を持って押しかけてきたときでも鉄人のテーマソングを聴きながら弁当を食べるなどギャグ面が強いキャラクターにされている

最終更新:2010年08月20日 22:01
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