『白い巨塔』(しろいきょとう)山崎豊子の長編小説。
1963年9月15日号から1965年6月13日号まで、『
サンデー毎日』に連載。
当初、第一審までで完結の予定であったが、読者からの予想外に大きい反響のため
1967年7月23日号から1968年6月9日号にかけて「
続・白い巨塔」を『
サンデー毎日』に連載。
正編は1965年7月、続編は1969年11月にそれぞれ
新潮社から単行本として刊行された。
同社の文庫本化は1978年に「白い巨塔(上)」・「白い巨塔(下)」・「続・白い巨塔」。
1993年には「白い巨塔(上)」はそのままに、「白い巨塔(下)」は「白い巨塔(中)」に
「続・白い巨塔」は「白い巨塔(下)」に変更された。
2002年には分割の位置を変更し、「白い巨塔(上)」と「白い巨塔(中)」は
「白い巨塔(一)」・「白い巨塔(二)」・「白い巨塔(三)」に、「白い巨塔(下)」は
「白い巨塔(四)」・「白い巨塔(五)」に編成された。
浪速大学に勤務する財前五郎と里見脩二という対照的な人物を通し
医局制度などの医学界の腐敗を鋭く追及した社会派小説。
山崎豊子作品の中でも特に傑作と名高く、1966年の映画化以来、何度も映像化されており
それぞれ細部が異なる。
映像化作品などについては映像化作品セクションとラジオドラマ作品セクションを参照。
なお山崎は初版の単行本あとがきにおいて、この作品を書いた理由を
ジョージ・マロリーの言葉を引き合いに出して、大学病院の医局には
「そこに重厚な人間ドラマがある」からと述べている(文庫版あとがきに詳細な記述あり)。
あらすじ
食道噴門癌の手術を得意とする国立浪速大学第一外科助教授・財前五郎は、次期教授を狙う野心に燃える男。一方、財前の同窓である第一内科助教授・里見脩二は患者を第一に考える研究一筋の男。
食道噴門癌の若き権威として高い知名度を誇る財前の許には、全国から患者が集まってくる。その多くは、著名な有力者やその紹介の特診患者。その卓越した技量と実績に裏打ちされた自信と、野心家であくが強い性格の持ち主である財前を快く思わない第一外科教授・東貞蔵は何かにつけて苦言を呈する。
財前は次期教授の座を得るため、表面上は上手に受け流すも[[馬耳東風。次第に東は他大学からの教授移入を画策。後輩でもある母校の東都大学教授・船尾に然るべき後任者の紹介を依頼。寡黙な学究肌の心臓外科医、金沢大学教授・菊川を推薦される。菊川が大人しい性格である上に、妻に先立たれ独身である事に目をつけ、東は自身の引退後の第一外科における影響力確保を目論む。
また、普段から一匹狼の気があり、財前を嫌う
整形外科教授・野坂は、皮膚科教授・乾や小児科教授・河合と共に、第三派閥の代表となるべく独自の候補者として財前の前任助教授であった徳島大学教授・葛西を擁立。それらに対し、財前は産婦人科医院を開業している義父・又一の財力と人脈を背景に、以心伝心の間柄にある医師会長・岩田重吉を通して岩田の同級生である浪速大学医学部長・鵜飼を篭絡。鵜飼派の地固めを狙う鵜飼もこれを引き受け、腹心の産婦人科教授・葉山を通して画策に入る。一方で財前は医局長の佃を抱きこみ、医局内工作に乗り出す。
教授選考委員会では書類審査の結果、候補者は財前・菊川・葛西に絞られる。その後は派閥間の駆け引きや札束が乱れ飛ぶなど、熾烈な選挙戦が展開される。投票当日、開票の結果は財前12票と菊川11票で両者とも過半数を獲得することができず、異例の決選投票にもつれ込んだ。
鵜飼は、白熱する教授戦を憂慮した大河内の「即時決選投票実施」提案を強引に退け、投票期日を1週間後に延ばす。その間、野坂の握る7票(葛西の得票数)をめぐり、実弾攻撃主体の財前派とポスト割り振り主体の東派が水面下で激しい攻防戦を繰り広げる。菊川のもとに佃と安西を行かせ立候補を辞退せよ、さもなくば医局員一同いっさい協力しないと脅迫したり、財前の舅である財前又一が岩田と鍋島を通じて大河内にまで賄賂を送ろうとするなど、なりふり構わぬ財前派。それらの行為への反省の色も無い財前に、東は「決選投票はまだだが、君との人間関係はどうやらこれで終わったようだ」と通告。大河内は財前派の実弾攻撃を激しく憤り、決選投票の席上で暴露するが、財前側が証拠をいっさい残さなかったため不発に終わる。決選投票で財前は菊川に2票差で競り勝ち、第一外科次期教授の椅子に就くこととなる。勝利に沸く鵜飼派。東は失意のまま定年退官を迎え、近畿労災病院の院長に就任した。
教授に就任した直後、財前はドイツ外科学会から特別講演に招聘され、得意の絶頂に。
そんな最中、里見から相談された
胃癌の患者・佐々木庸平の検査、手術を担当するが、保険扱いの患者で中小企業の社長であることから高圧的で不誠実な診療態度に終始。胸部レントゲン写真に映った陰影を癌の転移巣ではなく結核の瘢痕と判断、多忙を理由に受持医の柳原や里見の進言を無視して術前の断層撮影検査を怠り手術。
術後に容態が急変しても、
癌性肋膜炎を
術後肺炎と誤診し、受持医の柳原弘に
抗生物質「クロラムフェニコール」の投与を指示したのみで、一度も診察せぬままドイツに出発。しかし、その後佐々木は呼吸困難を起こし、手術後21日目に死亡する。
里見の説得で遺族は病理解剖に同意し、大河内が行った病理解剖の結果、死因は術後肺炎ではなく癌性肋膜炎であったと判明する。遺族は診療中の財前の不誠実な態度に加え、一家の大黒柱を失ったことにより民事訴訟提訴を決意する。里見はそのことを財前に知らせるべく欧州に何度も電報を打つが、財前は無視する。
ドイツにおける外科学会での特別講演、ミュンヘン大学における供覧手術など国際的な外科医として華々しくデビューし、栄光の絶頂を味わって帰国した財前を待っていたのは、「財前教授訴えられる」という見出しで始まる毎朝新聞のゲラ刷りだった。
失意のまま密かに帰阪した財前は鵜飼宅に直行。激昂した鵜飼に一時は見限られかけるが、巧みに説得して関係を修復し、法律面では老練な弁護士・河野に代理人を依頼。受持医・柳原や渡独中の医長代理であった助教授・金井など病院関係者への工作に加え、医学界の権威に鑑定人を依頼する。一方の遺族側も
正義感あふれる関口弁護士に依頼。里見、東の助力で鑑定人を立てる。
裁判では、「外科手術に踏み切った根拠に必要の度合を超えるものがあったかどうかが問題。仮に術前検査を怠った結果患者が死に至ったのであれば臨床医として軽率だったといわざるを得ない」という大河内の厳正な病理解剖鑑定や里見の証言などにより被告側(財前)はピンチに陥るが、鵜飼医学部長の内意を受けた洛北大学名誉教授・唐木の鑑定、受持医の柳原の偽証(裁判所には全面的に採用されなかったが)もあって第一審で勝訴。判決文によれば、財前の道義的な責任を認めながらも、極めて高次元な場合で法的責任は問えないという理由であった。
一方、原告側の証人として真実を証言した里見は山陰大学教授へ転任という鵜飼の報復人事を蹴り、浪速大学を去る決意を固める。
白い巨塔 (テレビドラマ 2003年)
『白い巨塔』(しろいきょとう)は、フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ(フジテレビ開局45周年記念ドラマ)。
山崎豊子原作の同名小説4度目のテレビドラマ化。近年のゴールデン枠の連続ドラマとしては珍しい半年間放送の大河シリーズで、2003年10月9日から12月11日まで第一部が放送され、2004年1月8日から3月18日までは第二部が放送された。全21回(第一部全10回、第二部全11回)。本編総時間は約18時間45分で、DVDおよびVHSソフト化されている。 最終回の翌週の3月25日には特別編として、これまでのダイジェストと柳原弘のその後が描かれた。
原作での時代設定は1960年代となっているが、本作での時代設定では2003年に置き換えている。
世界で初めてアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所(原作ではダッハウ強制収容所。1978年版では省略されている)でフィクション作品のロケが行われた。このため、国際外科学会の開催地は原作のドイツのハイデルベルクからポーランドのワルシャワに変更された。また、原作では財前はダッハウにちょっと立ち寄っただけに過ぎず、その後一度も言及がないのに対し、このドラマでは死の直前に財前がアウシュヴィッツを回想する、というシーンが登場する。
大学医学部
- 舞台は大学医学部付属病院である。
- 大学医学部の医局という組織において、教授は統括責任者として直接医局の人事権が与えられていた。人事関係はすべて教授が握っており、強大な権力となっていた。教授選という旧体質が残る大学のストーリーがリアル性を与えている。
撮影場所
医療のテーマ
- 今回の財前は、前作の腹部外科医・消化器外科医と異なり、専門が食道外科医である。前作においては、当時死因のトップであった胃癌を取り扱っていたが、今回の作品では転移や進行の早い食道癌に、テーマが変更されている。
キャスト
財前五郎 …
唐沢寿明
(浪速大学第一外科教授)
里見脩二 …
江口洋介
(同第一内科助教授)
花森ケイ子 …
黒木 瞳
(クラブ・アラジンのママ)
東 佐枝子 …
矢田亜希子
(東の娘)
里見三知代 …
水野真紀
(里見の妻)
関口 仁 …
上川隆也
(原告側弁護士)
国平学文 … …
及川光博
(財前側弁護士)
佃 友博 …
片岡孝太郎
(第一外科医局長)
鵜飼医学部長 …
伊武雅刀
(第一内科教授)
柳原 弘 …
伊藤英明
(第一外科医局員)
東 貞蔵 …
石坂浩二
(第一外科元教授)
財前又一 …
西田敏行
(財前マタニティクリニック院長、財前の舅)
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最終更新:2010年08月13日 19:02