天空シリーズ(ドラゴンクエスト)

登録日:2011/06/27(月) 23:05:48
更新日:2024/02/04 Sun 20:54:21
所要時間:約 10 分で読めます





スクウェア・エニックス(旧エニックス)が発売している国民的RPGドラゴンクエストシリーズの第456作目の総称。
またの名を天空三部作。

+ 目次

概要


ロト三部作()からさらに発展したシステムや魅力的なキャラクターの登場により、ドラクエシリーズの人気を不動のものとした作品群。

3作品ともシナリオのボリュームやゲームの難易度などが程よいバランスでまとまっているため、「これからドラクエシリーズを遊んでみたい」という人の入門作に向いている。
また、“天空シリーズ”と題しつつも物語や世界観、登場人物に濃い繋がりはなく各作品でほぼ独立・完結しており、どの作品からプレイしても作品単体で楽しめる。

現在は3作品ともスマホアプリとして発売されている(いずれもDSリメイク版を移植&バランス調整したもの)ため、今から遊ぶならそちらがオススメ。


主な特徴


AI戦闘

Ⅳで初登場し、ドラクエシリーズの定番となったAIによる自動戦闘システム。
プレイヤーが戦闘中の味方キャラクターの操作をCPUに委ね、CPUは戦闘の状況に応じて攻撃や回復などの行動を選択する、当時としては非常に斬新なシステムだった。

プレイヤーが指定する『作戦』によって、AIの行動傾向をある程度制御できる。
主な作戦は、とにかく攻撃に集中する「ガンガンいこうぜ」、回復や守りを重視する「いのちだいじに」、MPを極力温存してボスに備える「じゅもんつかうな」等。


天空城

天空シリーズに共通して存在している場所。
Ⅳ・Ⅴ・Ⅵのワールドマップ(大陸の位置や形など)は作品ごとに大きく異なり、さらに登場する町なども全く違うため、一見すると3作品とも何の繋がりもない無関係な作品に思えるが、この天空城は3作に共通して登場する。
いずれの作品でも物語後半に訪れ、そして主人公達が数多の真実を知ってゆくことになる。

Ⅵのみ名称が「ゼニスの城」*1または「クラウド城」となっているが、Ⅳ・Ⅴの天空城と構造はほぼ同じであるため、天空城と同一の存在といっていいだろう。
ちなみにzenith(ゼニス)とは「天空・頂点」などを意味する英単語。


天空の装備

ロト三部作における「勇者ロトの装備」に相当する、天空シリーズの勇者専用装備。
戦闘中にどうぐコマンドで使うと、特殊な効果を発揮するものがある。
ⅣやⅤでは「てんくうのよろい」「てんくうのかぶと」など名称が“天空”で統一されているが、Ⅵのみ「オルゴーのよろい」「セバスのかぶと」など装備ごとに固有の名前がついている。

Ⅵの伝説の装備は名前こそⅣ・Ⅴと違うが、攻略本漫画で明かされたその形状は天空の装備と同じであり、時系列順ではⅥが天空シリーズ最古の物語であるため、この装備が後に天空の装備と呼ばれるようになったと思われる。
もちろん、この流れはⅢ勇者の装備が後の時代で「勇者ロトの装備」と呼ばれるように事のオマージュだろう。


仲間モンスターシステム

ⅤとⅥで採用されている、戦闘で倒した魔物が一定確率で仲間になるシステム。
仲間にした魔物は、人間の仲間キャラと比べて装備できる武器・防具の種類が少なかったり、かしこさが低いと命令をきかない等の欠点はあるものの、人間が覚えられない個性的な特技を覚えたり呪文や属性ブレスへの素の耐性が優秀だったりと、モンスターごとに様々な強みを持つ。

何より、ドラクエシリーズの魔物は鳥山明の優れたデザインセンスによってスライムを始め人気が高く、それらを仲間にして共に旅ができるというのは極めて魅力的な要素であった。*2
このシステムは形を変えての『モンスターパーク』やの『スカウト』『チーム呼び』など、後のシリーズにもしばしば引き継がれている。

天空シリーズではⅣのみ仲間モンスターシステムは実装されていないが、戦士ライアンが主役となる第1章においてホイミスライムのホイミンが味方NPCとして期間限定で加入するため、この時点で『魔物を仲間にする』という着想があったことがうかがえる。

本システムが初登場したⅤにおいては、ストーリー中盤で人間の仲間キャラが居なくなり主人公が一人旅をする期間があるため、仲間モンスターを活用したパーティー構築がほぼ必須となっている。

Ⅵでは人間の仲間キャラも充実しているためⅤほど重要な要素ではないものの、スライムナイトのようにⅤで人気の高かった魔物や、Ⅵで初登場し高い人気を得たキラーマシン2などを仲間にできたため、活用していたプレイヤーも多かった。
しかしDSリメイク版では特定のスライム系モンスターおよびバトルレックスのドランゴしか仲間にできない仕様に変わり、一部のプレイヤーからは落胆する声も聞かれた。

なお、仲間モンスターシステムを主軸にした作品としては、1998年に『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』が発売されている。
こちらはⅥの登場人物・テリーを主人公としたスピンオフ作品であるが、優れたゲームシステムにドラクエブランドと当時のポケモンブームが上手く重なった結果大ヒットを記録し、後に主人公や世界観を変えつつもシリーズ化された。


ドラマ性の増したストーリー/キャラクター

ロトシリーズでは基本的に「物語冒頭で勇者である主人公が王様から魔王討伐を依頼されて旅立つ」という、RPGの王道中の王道とでも言うべきスタイルが共通となっていたが、天空シリーズではそれぞれの作品における主人公の旅の目的や物語上の立ち位置が多種多様であり、より深みのあるストーリー展開が行われる。

また、主人公以外の仲間キャラにも多くの個性付けがされはじめたのも特徴の一つで、ロトシリーズの仲間キャラはプレイヤーの想像に委ねる部分が多かったが、天空シリーズの仲間キャラはそれぞれに固有の名前や個性的な性格、旅の目的などの背景設定が与えられている。

ストーリー性やキャラクター性が増したことによって、天空シリーズはドラゴンクエストの更なる魅力を引き出したといえるだろう。


不幸な主人公たち

天空シリーズの主人公たちはいずれも不幸体質で有名だったりする。
ロトシリーズと比べたとき、ドラクエⅢの勇者もわりと悲惨な目に遭っている気がするが*3、天空シリーズの主人公たちはそれ以上であろう。

以下、各作品のネタバレを含むため格納。

+ DQⅣ
詳細はこちら→勇者(DQⅣ)
  • 人知れない山奥の村で平和に暮らしていたかと思いきや、魔物の襲撃によって村は壊滅し住人たちも皆殺しに。
  • 特に仲良くしていた幼馴染の少女シンシアは、勇者である主人公を庇う形でその命を散らす。
  • 裏設定では主人公の実の父親を殺害したのは、何と味方の筈のマスタードラゴン。(リメイク以降ではマスタードラゴンの部下の天空人に変更)
  • 諸悪の根源を倒し仲間たちがそれぞれの生活に戻っていく中、自分は1人寂しく滅んだ村へと帰っていく……。

+ DQⅤ
詳細はこちら→主人公(DQⅤ)
  • 母親の顔も知らぬまま父に連れられ幼い頃から旅に出るが、とある国のゴタゴタに巻き込まれた末、魔物によって父を目の前で嬲り殺しにされる。
  • 子供であった主人公はそのまま魔物によって連れ去られ、10年もの間奴隷として扱き使われ多感な少年期を棒に振る。
  • ようやく奴隷生活から解放されるも、父と過ごした思い出のある村・サンタローズは壊滅している。
  • 旅の途中で訪れるカボチの村では、村人の誤解からとんでもなく冷たい扱いを受ける。
  • 妻を迎え、自身の出自も明らかになり、子供も生まれてようやく運が向いてきた…と思った矢先、妻が誘拐される。
    主人公は何とか妻を助け出すが、敵によって妻ともども石化させられる。
  • 石化している間に妻の石像は男たちに持ち出されてしまい、妻と離れ離れに。主人公も石化したまま、またも8年も時間が無情に流れていく。
  • 立派に成長した子供たちに救出され妻とも再会し、諸悪の根源のいる魔界へ乗り込み遂に母と再会したかと思いきや、またも目の前で死別。

+ DQⅥ
詳細はこちら→主人公(DQⅥ)
  • 自分の生まれ育った世界は、実は現実ではなく夢の世界だったと明かされる。
  • 現実世界の自分は魔王の策略で魂が分離していた上に、肉体の方が勝手に動き回っていた。
  • 長い間肉体と魂が分離していたために、再融合の際にはそのどちらでもない、ある種“歪な存在”となってしまう。
  • 狭間の世界に潜む大魔王を倒すも、その影響によって馴染み深い夢の世界の故郷・ライフコッドと妹同然の存在であるターニアと別れることに。
  • 現実世界のライフコッドの住人からは、自身が王族であることを理由に余所余所しい態度を取られてしまう。
  • しかも仲間の一人であるバーバラが現実世界で肉体を得ていなかったことにより、最後の最後でまたしても悲しい別れとなってしまう。

その不幸具合に目が行きがちではあるが、少なくとも主人公の活躍で世界は救われているし、どの作品の主人公も最後は一定の希望が持てる終わりとなってはいる。


発売作品


ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち

1990年発売、FC最後のドラゴンクエスト。
2001年にPS、2007年にDSでリメイク。

初のAI戦闘を導入した作品。
しかしFC版のAIの独自仕様があだとなり、ザラキを連発するクリフトが伝説となる。

ストーリーは章立てによる特殊な構成となっており、主人公が本格的に登場するのは第5章から。(PSリメイク版以降は追加シナリオである第6章も存在)
1~4章では後に主人公の仲間になるキャラクターが主役となり、それぞれの旅の背景が語られる。

キャラクター人気が高い作品で、特にパーティーの華である3人の女性キャラ(アリーナマーニャミネア)は現在でもイラスト投稿サイトなどにファンアートがよく投稿される。
また、後に商人トルネコを主役とするスピンオフ作品(トルネコの大冒険シリーズ)が発売された他、様々なDQキャラが共演するアクションゲーム『ドラゴンクエストヒーローズ』でも本作から多数のキャラがプレイアブル参戦しており優遇気味。


ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁

1992年発売、SFC最初のドラゴンクエスト。
2004年にはPS2、2008年にはDSでリメイク。

オリジナルはV以降唯一300万本の売り上げを達成できなかった作品だが、リメイク版は最も売れた部類。

ドラゴンクエストシリーズでは初の試みとなる要素が多い挑戦的な作品。(主人公が勇者ではない・主人公が子どもから大人へ成長する・親/子/孫の三世代に渡る大河的なストーリー・魔物を仲間にできるシステム……等々)
今日では、天空シリーズのみならずドラクエシリーズ全体で見ても人気の高い作品であり、シリーズ最高傑作に本作を挙げるファンも多い。

物語の途中で主人公が結婚するという一大イベントがあり、「2人のヒロインのどちらを結婚相手に選ぶか?」というテーマでファンの間でもしばしば論争になりがち。
DSリメイク版以降はヒロイン候補がさらに1名追加された。


ドラゴンクエストⅥ 幻の大地

1995年SFCで発売。
2010年には15年の歳月を経てDSでリメイク。

天空の物語の知られざる伝説が明らかになる作品。

Ⅲ以来となる転職システム採用。
ただし仕様はⅢとは異なっており、やりこみ要素としては十分だがやりこめばやりこむほど「戦闘でのキャラの個性が薄くなってしまう」というマイナスな意見もあり、賛否両論
Ⅴで登場した仲間モンスターシステムは(やや規模は縮小したが)続投しており、転職システムと組み合わせた幅広い育成が可能になった。
しかしリメイクでは仲間モンスターの候補がスライム系統のみに限定され、こちらも意見が割れている。

やや難解なシナリオに加えて、上記の通り賛否両論なシステムもあるが、作品全体としての完成度は高く、ファンも多い。


余談


天空シリーズを時系列順に並べると、Ⅵ→Ⅳ→Ⅴと繋がっている。
地形は作品ごとに大きく変わってしまっているが、名残があるところがいくつかあったりする。
例えば、天馬の塔(Ⅵ)→天空への塔(Ⅳ)→天空への塔[荒廃](Ⅴ)…などはその代表例だろう。
いずれも内部構造は共通しており、ⅣとⅤにいたっては世界地図上でほぼ同位置に立地している。


ロトシリーズと天空シリーズの関連性(世界観的な繋がり)は公式からは特に言及されていないものの、シリーズファンの間ではしばしば考察の対象となっている。




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最終更新:2024年02月04日 20:54

*1 ちなみにリメイク版のⅢにも「ゼニスの城」なる場所が存在するが、こちらは内部構造が完全に異なる。

*2 「モンスターを仲間にするRPG」として確固たる地位を築いた初代ポケモンが世に出るのは1996年2月。ドラクエⅤの発売は1992年9月であるため、ポケモンより数年早い。

*3 物語終盤で父親に目の前で死なれた挙げ句、元の世界へ帰還する通路が閉じてしまう。