ザンスカール戦争

登録日:2020/01/02 Thu 21:47:04
更新日:2025/01/06 Mon 00:06:09
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概要

ザンスカール戦争とは機動戦士Vガンダムにおいて描かれた架空の戦争
サイド2に勃興した新興国家「ザンスカール帝国」と民間の武装組織リガ・ミリティア及び地球連邦軍との間で行われた争いである。


時代背景

宇宙世紀が140年代に入った頃、
地球連邦政府の強大な権力は著しく形骸化が進み、それに伴ってコロニー間の武力衝突が頻発するようになっていた。
いわゆる宇宙戦国時代の到来である。

この時代の大きな特徴は「かつてのスペースノイド対アースノイド」から「スペースノイド対スペースノイド」という形に対立構造が移り変わっていることであろう。
地球に住む者と宇宙に住む者との軋轢は決してなくなっていた訳ではなかったが、宇宙に慣れ切った人々にとっての地球シャアの反乱の時のように最早特別な存在ではく、単なる一惑星以上のものではなかったのだ。

そういったこともあって、いくつかのコロニーは政府としての自治権を欲しはじめ、連邦政府もこれを容認
やがてコロニー間での経済格差や住民意識の隔たりが大きくなると、自治を認められたコロニーは独自の軍事力でもって争い始めるようになっていった。

自治権獲得運動の再熱と連邦政府の不干渉が引き起こした戦乱の時代は、後のザンスカールの勢力拡大とリガ・ミリティアといういびつな武装集団が誕生する契機となったのである。


……まあぶっちゃけ「連邦は宇宙に干渉するな! スペースノイド国家が自立するのに邪魔するな!」と一年戦争のころから散々言ってきたのがいざ実現したわけだが、
やってみたら思ったよりもうまく行かないし大変だし*1、慌てて連邦に泣きつこうとしたら、
連邦軍も連邦政府も地球環境自体も何もかもガタガタなんだよ! 念願の自立だろうが! てめえのケツぐらい手前で拭け!!!」と突き放されたという、
スペースノイドの長年の理想がかなった結果の無惨な末路、というしかない事態である。


マリア主義、ガチ党の台頭

宇宙戦国時代が始まって数年がたった頃、サイド2のアメリアでは「マリア」という一人の女性が支持を集めていた。
幼少期に両親の離婚で社会に投げ出された彼女は売春婦の傍らでを育てる極貧生活をおくっていたが、0141年にを妊娠したのを機にヒーリング能力を中心とした不思議な力に目覚め、それを使う人生相談所または代替医療的な医院を設立。少なからず人々の支持を集めて行く。

0144年にはマリアを信奉する集団が発足し、そのメンバーの1人が彼女の御言葉をまとめた本を出版すると、それは宇宙戦国時代に対する不安を背景に大きな反響を呼んだ。
そしてマリアを信奉する集団は「マリアの光の教団」という団体を設立し、いわゆる「マリア主義」という新たな宗教を打ち出した。
と、ここまではマリアのカリスマによって成り立っている新興宗教に過ぎないマリア主義であったが、これに木星公団の重役であったフォンセ・カガチが着目。翌0145年にはマリアとの接触を果たし、協力を取り付ける。

0146年
カガチは政治的武闘集団として政治結社「ガチ党」を結党。
ガチ党は急進的に成長を遂げているマリアの教団と手を結んだことで彼女を信奉する民衆の支持を獲得し、瞬く間にサイド2アメリア政庁の第三勢力にのしあがる。

0147年
ガチ党は贈収賄で起訴された首班グループをギロチンにかけて処刑。
救済や慰謝を基調とするマリア主義を支援していたガチ党が極刑を実行した事実はサイド2の人々に大きな衝撃を与えた。しかし、同時にスペースコロニーという人工環境に慣れすぎて、血を目にする事の無くなっていた当時のスペースノイドにとって、「血の粛清」は人間の内側に眠る狩猟本能を刺激し、同時にギロチンはスペースノイドに取って新鮮な物にもなった。
カガチはこの処刑を「時には血であがなわなければならない人の業がある」と演説した上で民衆に理解を求め、そして受け入れられた。
彼はこの時、民衆の結束と反抗勢力の恫喝を同時になし得ることに成功したのである。


リガ・ミリティア結成

0148年
民間ネットワーク内にてかねてより持ち上がっていた「神聖軍事同盟構想」が有志らの手によって「リガ・ミリティア」という実戦的な組織として再結成がなされた。
連邦政府の形骸化・弱体化やそれを契機とする各コロニーの自立化などにより発生した紛争が、再結成を促したと考えられる。


ザンスカール建国、V 計画発動

0149年
ガチ党はマリアを女王に押し立て「ザンスカール帝国」の建国を宣言*2
この際にサイド2駐留の連邦軍部隊とサナリィのサイド2支社、月面のアナハイムの都市やサイド4の一部のコロニーを接収したり、志願兵や学徒兵を集め軍備の増強を推し進め、それはやがて「ベスパ」と呼ばれる強大な軍隊を形成していくことになる。
これに対して尚も無関心を決め込む連邦軍に業を煮やしたリガ・ミリティアは独自の対抗手段をとるべく、新たなモビルスーツの開発計画「V計画(ヴィクトリープロジェクト)」を発動。
月面にて基本型MSであるガンイージを開発後、ゲリラ構想に基づいてマルチプルMSを計画し、往年のガンダムタイプを模したMSヴィクトリーガンダムを抵抗運動のシンボルとして開発することになる。
アナハイム・エレクトロニクス社やサナリィ等からの支援を得て開発されたこれらのMSは、レジスタンスが運用するものでありながら、その性能は当時の連邦軍のそれを大きく上回っていた。


降下作戦開始~ラゲーン占領

0152年 10月
ベスパは地球侵攻の第一歩として東欧のラゲーンを制圧。
同地にある航空施設を接収して軍事・陸戦MSの開発拠点とした。
一方、V計画の責任者であるオイ・ニュング伯爵は大型トレーラー「カミオン」で各地に点在する秘密工場を周って新たなガンダムのパーツを回収し、運用テストを始めた。


ウーイッグ空襲~伯爵の処刑

0153年 4月5日~11日
ラゲーン基地所属のMS部隊イエロージャケットは、地下にリガ・ミリティアの拠点がある連邦の特別区ウーイッグに空襲を仕掛け、街を壊滅に追い込む。
その2日後、遅れて到着したカミオン隊はヴィクトリーガンダムの実戦テストも兼ねてイエロージャケットと交戦。
遂に完成したヴィクトリーはイエロージャケットのMS数機を撃墜せしめる戦果を挙げ「ガンダム伝説の復活」を内外に知らしめたが、驚くべきことにこの新たなガンダムを操っていたのは熟練パイロット…では無く年端もいかぬ13歳の少年ウッソ・エヴィンであった。
だが、その途上でニュング伯爵が潜入していたベスパのクロノクル・アシャー中尉によって捕らえられギロチンにかけられてしまう。


バグレ隊の奮起

4月17日~19日
ザンスカール帝国は降下作戦と並行して衛星軌道上に宇宙要塞カイラスギリーの建造を進めていた。
このカイラスギリーは巨大な2つの丸い粒子加速装置とそれに挟まれるような位置にある垂直に長く伸びた砲身からなる「ビックキャノン」と呼ばれるビーム砲で地上のありとあらゆる場所を狙い打ちして地球側を恫喝することのできる恐るべき兵器だったのである。
この状況を打破すべく、いくつかの連邦軍の艦艇が集まってバグレ隊を名乗り、タシロ・ヴァゴ大佐の率いるカイラスギリー艦隊に攻撃を仕掛けるものの、奮闘も空しく返り討ちにあう。


カイラスギリー攻防戦

4月20日~24日
ビームでの恫喝をなんとしてでも阻止すべく、ヨーロッパに集結していたリガ・ミリティアの戦力は連邦軍のアイルランド駐留部隊と共にスペース・アーク級巡洋艦リーンホースに乗り込み、宇宙へと上昇。
カイラスギリーから派遣された艦艇との戦闘を経てアレキサンドリア級重巡洋艦ガウンランドと合流した。

4月27日
リガ・ミリティアは再びカイラスギリー艦隊と交戦。
マイクロウェーブガンの照射やガウンランドをおとりに使う等して敵を撹乱し、旗艦のスクイード1を拿捕することに成功。カイラスギリーは陥落することとなった。
リガ・ミリティアはこの時手に入れたスクイード1に先の戦闘で大破したリーンホースとガウンランドのパーツを溶接して新たなる戦艦リーンホースJr.を建造し、組織の新たなる旗艦とした。

首都空襲~ビック・キャノン発射

5月4日
カイラスギリー艦隊を打ち破ったその一方で、連邦軍とサイド2の反ザンスカールコロニーによる連合艦隊がベスパの中核をなすズガン艦隊の前に敗北を喫していた。
ズガン艦隊の注意を引き付け、敗走する連合艦隊の生き残りを逃がすべくリガ・ミリティアはザンスカールの首都アメリアに奇襲を敢行した。
帰還したズガン艦隊に包囲されたリーンホースJr.であったが、どうにかして戦線から離脱。しかし、ウッソ・エヴィンら一部のメンバーが離脱に失敗しベスパに捕らえられる。

5月6日
マリアの恩寵を経て行われたギロチンの儀式で、タシロ大佐他拘束されたパイロット二名が処刑されそうになるがリガ・ミリティアと連邦軍のMS部隊による妨害で儀式は中断。ウッソ・エヴィンとマーベット・フィンガーハットの二名はアメリアより脱出できた。
その後、リガ・ミリティアによってカイラスギリーのビック・キャノンが発射されズガン艦隊は戦力の半分を失うことになり、艦隊の編成を余儀なくされた。


地球クリーン作戦

5月19日
月面に潜んでいたベスパのモトラッド艦隊が地球へ向けて発進しこれを阻止せんとするリガ・ミリティアのMS部隊と衝突。
旗艦であるアドラステアはV2ガンダムのコア・ファイターによる特攻でダメージを受け、侵攻が一時停止する。

5月24日
モトラッド艦隊がメキシコ湾のタンピコ村より上陸し特別区の街々を艦のタイヤで踏み潰しながら北米大陸を北上。
対するリガ・ミリティアの作戦は後手に後手にまわり、停戦協定が結ばれるまでの4日間まで有効な手立てを打つことができなかった。


停戦協定発効

5月28日
リーンホース部隊とモトラッド艦隊の交戦の最中、連邦とザンスカールの停戦協定が発効される。
だが、ザンスカールにとってこの協定は「最終兵器」を完成させるためのいわば時間稼ぎで、戦争を辞める気等毛頭なかったのだ。

それを示すかのようにリガ・ミリティアのホワイトアーク隊がベスパのドゥカー・イク隊やゲリラ化したラゲーン基地の残党部隊から攻撃を受けている。
6月8日には極めつけとばかりに連邦軍が駐屯していたラゲーン基地が長距離狙撃を受けて壊滅。
ザンスカールが戦争を続けるつもりだと悟ったリーンホース部隊は再び宇宙へと上昇する。

連邦軍集結

6月10日~12日
ムバラク・スターン大将が率いる連邦軍の艦隊とリーンホースJr.が合流。急編成の「リガ・ミリティア艦隊」として行動を始め、2日後にはモトラッド艦隊から分離したラステオ艦隊を打ち破る。

最終兵器、起動

6月18日~21日
ザンスカールの最終兵器であるエンジェル・ハイロゥ(以下AH)は中心部にある「キールーム」と呼ばれる部屋でコア・ユニットが祈りを捧げると、中心を取り囲んでいるリングに格納されたサイキッカー達がそれをサイコウェーブとして放射する仕組みになっている。
カガチはマリアに「闘争心を忘れさせ、争い無く地球圏を平定させるため」と説明してキールームで祈るように誘導しているが、その真なる目的はサイコウェーブによって地球圏の人間たちから闘争心を忘れさせるに留まらず、強制的な眠りに陥らせて最終的には衰弱死に追いやるという恐るべき計画だったのだ。
18日からの起動テストで地上への絶大な効果を確認したカガチは21日に地球へとリングを降下させる。


タシロ反乱

6月22日
AHの恐るべき効果を目の当たりにしたリガ・ミリティア艦隊は前衛のタシロ艦隊に攻撃を仕掛ける。
分が悪いと見たタシロは、土壇場でエンジェル・ハイロゥのキールームから女王マリアを自身の旗艦であるシュバッテンに連れ去る反乱行為に及ぶ。
マリアを人質にして戦線からの離脱を図ろうとするタシロであったが、リガ・ミリティア艦隊の追撃を振り切れずに艦隊は壊滅。
追い詰められて女王マリアを射殺する凶行に走った彼は、V2ガンダムビームサーベルによって絶命した。



天使の輪、崩壊

6月23日
タシロ艦隊の撃破によって勢いに乗った連合艦隊は、エンジェル・ハイロゥの陥落を目指してベスパのモトラッド艦隊やズガン艦隊に攻勢を仕掛けるものの、AHの大気圏突入によって中断を余儀なくされる。
この間、シュラク隊らリガ・ミリティアのMS隊がAH内部に侵入して中枢機能の破壊を試みていたが、大気圏突入には間に合わなかった。
AHが降り立った成層圏で再び戦闘を開始した両軍は旗艦同士の衝突等によって互いに戦力を消耗しあう統制のとれない戦闘を展開。
そんな最中、マリアに代わってキールームに入ったシャクティ・カリンの祈りによって、AHは当初の想定にない超常的な力を発揮。光の粒子を撒き散らしながらリングを形作っていたパーツを切り離し、両軍の艦艇やMSを巻き添えにして宇宙の彼方へと飛翔し、戦闘はなし崩し的な形で終了した。







その後

連邦軍ではなくレジスタンス組織にすぎないリガ・ミリティアが中心となってザンスカールを打ち果たしたという事実はもはや連邦にかつての勢力がないという現実をより内外に知らしめる結果となる。
他方、リガ・ミリティアも単独で勝ったのではなく、実際には連邦軍ムバラク艦隊と合流してやっと優位に立てたという事実は、各コロニーやスペースノイドにも問題を自力解決する能力がないことの証明でもあった。

連邦にはもはや宇宙をまとめる権威がなく、かといって各コロニー国家やコロニー勢力にも連邦に取って代わるだけの権力機構が存在しない、という全宇宙で権力の空白が生じた結果、
独立していく各コロニーは急速に暴走を始め、いつしかそれは互いに勢力を消耗するだけの泥沼のような混戦となっていく。
そしてわずか十数年後には文化・技術までもが大幅に衰退し、その影響で、かつての戦争で活躍した巨人(MS)達は再び目を覚まし、塵どもの物語が始まる。



余談

  • あまりにも大きいエンジェル・ハイロゥは守るには不向きであり、シミュレーションでも防衛は不可能と判断されていた。なのでザンスカールはAHを守るために別の切り札を入手しようと企んでいたが、それを巡る戦いの末断念し、AHのみで最終決戦を強行した。

  • この頃になると一年戦争からの戦乱続きで地球圏を本格的に見限る者も出ており、そうした者達を集めてスペースコロニー「ダンディ・ライオン」を宇宙船に改造し、外宇宙に進出する計画が企てられた。出発直前でザンスカールにコロニーの改造をコロニーレーザーにするつもりかと勘違いされ、交戦に入ったが辛くも撃破し旅立っている。






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最終更新:2025年01月06日 00:06

*1 歴史上では、ジオン公国が最初に独立した国だったが「ジェガンやヘビーガン等のマイナーチェンジで精一杯」だったこの時代のコロニーとは異なりむしろ、ア・バオア・クーやキャリフォルニアベース、オデッサ、ソロモン等の拠点を複数所有し更に比べ物にならないほどの量産機、試作機、MAを作っている。

*2 なぜ「帝国」を名乗っておいて、マリアを女帝ではなく「女王」としたのかは不明。海外版でもそのままZanscare empiresとQueen Mariaなのであちらの視聴者がツッコミを入れている。