ポケットモンスター The Animation

登録日:2022/10/13 (木) 05:40:27
更新日:2023/01/21 Sat 09:39:40
所要時間:約 10 分で読めます






概要

『ポケットモンスター The Animation』とは1997年11月1日に小学館スーパークエスト文庫から発売した小説。全2巻(未完)。
著者はポケットモンスターのアニメ版『ポケットモンスター(無印)』のシリーズ構成である首藤剛志
イラストは無印~AGまでのキャラデザを担当した一石小百合。

内容はアニメ1話『ポケモン!きみにきめた!』から14話『でんきたいけつ!クチバジム!』までをノベライズしたもの。
単純なノベライズではなく、小説独自の設定や描写が多く、さらに御三家関連のエピソードはカットされている。

アニメの設定の詳細が説明されていたり、主要登場人物の設定が子供向けとは思えないほどシリアスに改変されている。
また、ニシノモリ教授とモンスターボールの関係性やオーキド博士とマサキのフルネームなど、ゲームの設定もある。
こういう事になったのはアニメの脚本そのままだと小説として成立しないし、フイルムコミックも既に発売していたため、本作をアニメの補足にしようと考えたからだそうだ。
首藤氏はゲームの公式ガイドや攻略本を読みながらとはいえ、誰にも相談せず補足の設定を考えた結果、「首藤氏の考えるポケモン世界」になったとの事。
またこれだけ独自設定を加えてもゲームフリークからクレームはなかった。

またあくまでアニポケ放送一年目までの設定を元にしている。
例えばサトシは旅立つまではオーキド博士とほとんど交流がなかったというのが無印初期と本作の設定だが、
首藤氏自らが執筆した『結晶塔の帝王』では昔から家族ぐるみの付き合いがあった事になっている。

本作は1・2巻同時発売であり、その2巻には「3巻に続く」と書かれているが続巻はない。
首藤氏が言うには「アニポケ世界の種明かしをするつもりのため、アニポケの放送が終わらないと書けない」とのこと。
劇場版幻の第3作初期構想最終回に繋げるつもりがあったのかは不明。
もともと首藤氏はアニポケを1年半ぐらいの放送を想定して構成をしており、本作は放送半年経過して発売されたため、
当初の予定では2巻発売から約一年後くらいに3巻を発売する予定だったのだろう。
しかしアニポケは20年以上続き、首藤氏も他界してしまったため、事実上未完作品になってしまった。


あらすじ

10歳になった翌年の4月、ポケモン取り扱い免許を取得したマサラタウンのサトシ。
彼はオーキド研究所からカントー御三家をもらって旅に出るはずだった……が。
遅刻してしまい、ポケモンなのにボール嫌いのピカチュウを貰って旅立つ事になった――

主な登場人物

本作の主人公。10歳。
世界一のポケモンマスターになり、マサラタウンをサトシタウンに改名するのが夢。
本作では小学校入学当初、いじめられていた事が明かされている(ハナコが手を回して解決した)。
ハナコを含め女性が苦手であり、カスミと出会ってから悪化しつつある。
ポケモンについて勉強していたはずなのに相性を知らなかったり、ジム戦はお情けバッジばかりで、その事に悩む心境が書かれている。
サトシの家族も父も祖父もいないが、カスミとタケシが両親揃って行方不明と聞いて、「母親が残った我が家が変なのか?」と思ったりも。
御三家エピソードをカットした結果、ピカチュウ・バタフリー・ピジョンでクチバジムまで突破した。

お馴染みサトシの相棒。
無印初期のピカチュウなのでサトシに懐かずカスミに懐いている。
オーキド研究所育ちなので野生のポケモンの生態を知らない世間知らず。
なお本作ではボールに入らないのはネズミのくせに「狭い所が嫌いだから」と説明されている。
「ボールに入れるとポケットに入るからポケットモンスターだろ? ポケットに入らないコイツはなんなんだ?」とはサトシの弁。
オーキド博士の「人間の友達を「人間」と呼ぶかい?」ともっともな発言から、サトシは当初「ぴかぼう」「ぴかすけ」「ぴかたろう」等ニックネームを付けようとしたが、当のピカチュウが「人間に名前を付けられたくない。種族名で呼ぶのを許してやる(意訳)」と言うので、仕方なくピカチュウと呼ぶ事になった経緯がある。

本作のヒロイン。10歳。
電気を感じ取りやすい体質で、クチバジムでは終始気持ちよさそうにしていた。
本作では両親はジムの運営が難しくなったからと4人の子供とハナダジムを残して失踪していたと判明。
姉である美人三姉妹のハナダジムの扱いが雑なのを、パパっ子だったカスミは許せずに喧嘩して家出したようだ。

2巻から登場するお馴染み女好きのニビジムリーダー。15歳。
本作ではニビジムの跡継ぎである母親がジム資格のある男性と結婚を繰り返し大家族になったという複雑な事情と、幼い弟妹の面倒を見てくれる女性を探したいあまり年上好きになった悲しい経緯が語られている。
またサトシ以外のマサラ出身のトレーナーにどう負けたのかの説明がある。
まず一人目は初心者と思って弱いポケモンを使ったから、二人目はバトルが長引き電気代が高くなるのを恐れ勝負を焦ったから、
三人目であるシゲルは彼の応援団に目を奪われている内に敗北した。
さらにいずれのバトルでもエースであるイワークは使っていなかった。

オーキド・マサラの玄孫であり、三男坊である博士。
彼の二人の兄の内、長男は家の後を継ぎマサラタウンの町長になり、次男は郵便局長になっている。
オーキド博士は20歳の時、「ポケモンはこの星に生きるどんな生物とも異なる生物」と発表し学界から注目され、
25歳の時タマムシ大学携帯獣学部名誉教授になるも、30歳の時から20年以上マサラタウンに引きこもってまともな論文を発表しない変人になったという。
ちなみにフルネームがオーキド・ユキナリであることが説明されているが、アニメ本編では映画まで説明はなかった。

サトシのママ。食堂『マサラハウス・ハナコ』を経営している。
本作ではハナコの事情が詳細に語られている。
詳しくは個別で。

サトシの幼なじみで永遠のライバル。
毎日往復2時間もかけて隣町の小学校に通っていたらしい。
またいつも一緒にいるチアガールは、オーキド博士の兄であるマサラ町長が選挙で利用するキャンペーンガール会社でバイトしている中高生とのこと。

  • サトシのパパ&グランパ
登場はしないがちょくちょく言及されている。
判明している限り父親は旅人の青年でハナコと出会って即結婚、サトシが産まれると同時にトレーナーを目指して旅立つ。
そしてサトシが丸一日(シゲルたちは半日)で到達したトキワシティに行くまで丸四日もかかっている。
祖父もハナコが幼い時に旅立ってそれっきり。
そしてこの二人ともニビシティに到達して以降の詳細は不明。ニビのバッジを手に入れたかも不明。
少なくとも全世界ポケモントレーナー組合の名簿に名前が載っていないので、未だに非公認トレーナーのようだ。

  • サトシの高祖父(仮)
ニビシティのポケモンセンターにいた老人。80歳。
この歳にもなって公認ポケモントレーナーを目指して旅をしている。
しかし75歳を過ぎ、ポケモンセンターの健康診断で引っ掛かったためジム巡りの許可が下りず、
他の街なら良い診断が下りるかもしれないと考え各地のセンターを回っている。
科学博物館で出会ったサトシに雷の石を託す。
サトシの高祖父と確定している訳ではないが、作中高祖父である事前提で説明されるので、十中八九サトシの血縁であろう(祖父か曾祖父の可能性もある)。
この人の話を聞くに旅の中で出会った人と結婚し子供を作るもすぐに旅立ち、
いまだに公認トレーナーになれないので恥ずかしくてマサラに帰れなくなり、今に至ったらしい。


用語

  • ニッポン
地球にある国々の中の一つ。首都はトウキョシティ。
サトシの住むカントー地方マサラタウンはニッポンの一部である。
現実の世界の日本とほとんど同じだが、ポケモンがいる事と下記の『小学校卒業みんなが大人法』を始めとする、一部の法律が違うとのこと。

大昔から人間と共にいたと思われるが、ちゃんとした研究がされるようになったのは18世紀のタジリン伯爵から。
ポケモン――ポケットモンスターの由来は「ボールに入れるとポケットに入るから」であり、それが判明した1925年のニシノモリ教授の一件があってこそ。
じゃあタジリン伯爵の頃は、ポケモンはなんて呼ばれていたのかというと、「わかっていない」とされている。
何故か当時の資料にはリザードンのような種族名は書かれていても総称は書かれていないらしい。
さらにポケモンは次々新種が発見されている一方で、それまでいた他の生物は絶滅していっている。

アニメではポケモンは種族が違う者同士でも会話が出来ているが、本作ではできない。
さらに進化前後でも会話できない。例えばピカチュウとライチュウでも会話は出来ない。ピカチュウはピカチュウとだけである。

またアニメでも言及されていたが、野生のポケモンは人に飼われているポケモンに敵意を燃やす。
例えばサトシのピカチュウは毛並みが整えられていて可愛いが、野生のピカチュウは痩せ細っているし毛並みも悪い。
しかし野生のピカチュウからしたら、サトシのピカチュウの方が気味の悪い存在なので、サトシのピカチュウが交流しようとしても威嚇されるだけに終わった。

  • 小学校卒業みんなが大人法
10歳になったらポケモン取り扱い免許が貰えるというアニメの設定の詳細版*1
義務教育は小学校それも10歳までで、中学以降の進学は行きたい人だけになっている。
そして10歳になると同時に法律上で大人扱いになるので18禁なんてものは存在せず*2、大人の許諾なしで結婚可能。
なのでサトシもカスミもその気になれば結婚可能である。
ただしカスミが「(結婚なんて)まだ10歳ですよ!?」と言っていたので、10歳になって即結婚するのはこの世界でも異例のようだ。
また10歳から税金を大人並みに納めないといけないし、処罰の扱いも大人並み。

ただし10歳から働けるといっても、力も頭脳も10歳相当なので小学校を出たばかりの大人が働けるような場所はない
特にマサラのような田舎では。スーパーマサラ人でも簡単には仕事にありつけないポケモン世界とは……。
なので子供、特に男の子はポケモントレーナーを目指して旅立つ人が後を絶たない。
しかし結局はポケモントレーナーになれるのは一部の才能ある者のみ。多くの人は途中で挫折する。
すると大人になってもモンスターボールの投げ方しか知らない青年が誕生するわけだ。
こういう事もあり、この世界の警察や医者・銀行員といった真面目な職業は、「夢追い人に任せられない」と言う理由で、女性が大半を占めている。

ポケモン捕獲免許も厳密には10歳になった翌年の4月に発行されるものであり、なのでサトシたちも正確には数えで11歳である。

  • ポケモントレーナー
ポケモン捕獲免許を取得した人間のこと。
免許を取得するとポケモンを所有する事が認められる。ただし保護の観点からボールは6個まで。
しかし実は免許を取得しただけではポケモン協会から認められていない非公認のトレーナーに過ぎない。
ポケモン協会から認められた公認トレーナーになるには各地方の地方リーグに出場し優勝することのみ。
しかしそれが出来ず挫折してトレーナーを辞める者、いい年して諦めきれずサトシの高祖父(仮)のように80歳になってもジム巡りしている人もいる。
一応トレーナー志望ならポケモンセンターで無料で食事と寝床を用意してもらえるので、最低限の生活は保障される。
ただし75歳を過ぎると「判断力が落ちてポケモンをむやみに傷つける」とのことで、ジム挑戦前に健康診断が良くないと許可が下りない。

  • 携帯獣通信能力/ポケコム
ボールの転送システムを可能としているポケモンの生態。
ポケモンは体を小さくして容器に入っている時のみ、自身と容器を電気の信号に変える力を持つ。
発見は一人の子供のおかげ。
この子供はどうしてもモンスターボールが欲しくなり、父のボールをコピー機でコピーしようとしたのだ。
しかしそのコピー機にはファックス機能があり、何故かモンスターボールは父の会社に転送されてしまい、中のポケモンは行方不明になってしまった。
この件で上記の性質と、通信環境が悪いとポケモンが行方不明になる事が判明した。

現在安全にボールを転送できるのは、ポケコム能力を最大に活かせる専用のモンスターボールの開発と、ポケモンセンターにある専用の回線があってこそ。
あくまでポケコム能力で転送しているためボール単体では送れないし、極論を言えば(事故る可能性が高いが)財布の中に入れれば財布を転送できるらしい。


余談

本作でサトシ達のフルネームが明かされているという情報をたまに見かけるが、それは完全なデマである。

なお本作のオファーがあったのは31話『ディグダがいっぱい!』の少し前くらいであり、ディグダ執筆後に本作の執筆に取りかかっている。
さらに同時進行で『ロケット団よ永遠に』の作詞と『ミュウツーの逆襲』も。
首藤氏は脚本を書けなくなるためアニポケのレギュラー脚本家を増やしており、本作発売後も首藤氏は映画の脚本も担当する事になったため、アニメの脚本に参加することは稀になった。

社会現象になったアニメの小説版のため、国語の教育教材や読書の副読本に使った小学校もあったらしく、首藤氏は「(子供向けに作ったので)ほっとした」と語っている。




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最終更新:2023年01月21日 09:39

*1 原作は10歳未満どころが未就学児でもなれる。

*2 10禁はあるのだろうか?