ポケモンマスター

登録日:2023/10/06 Fri 00:22:07
更新日:2025/06/04 Wed 14:48:36
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そうさ、俺は全世界のポケモンに宣言する!


最高のポケモントレーナー! いや、ポケモンマスター!


そうとも、それは俺だ!!

出典: ポケットモンスター、第1話『ポケモン!きみにきめた!』、1997年4月1日~1999年1月21日まで放送。
OLM TEAM OTA、テレビ東京、SOFTX(テレビ東京メディアネット)、小学館プロダクション、
©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon


概要

ポケモンマスター』とは、サトシを主人公とするアニメ『ポケットモンスター』シリーズに登場した世界最高のトレーナーに対する称号。
ここでは似た称号である『水ポケモンマスター』『ドラゴンマスター』についても扱う。

『ポケモンマスター』といえば、無印新無印まで主人公を務めたサトシの夢であり、目標。
……という事で有名だが、実は「ポケモンマスターになる事が夢」というのはサトシの夢としては微妙に間違っている。
サトシの夢を正確に表現するなら「世界一のポケモンマスターになる事」なのだ(無印の頃はこのような言い方をする事が多々あった)。
これは本来「ポケモンマスターは複数人いて、サトシはその中で一番を目指している」という設定だった頃の名残の表現だと思われる。

しかし後述のようにポケモンマスターの定義が曖昧になっていく事につれ、サトシは「世界一のポケモンマスター」という表現を使わなくなり、現在に至る。
無印のリファイン映画『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』で久々に「世界一のポケモンマスターになる」と言ったぐらいにはご無沙汰だった。


定義

単語そのものは1997年の第1話から出ていたが、長い事その定義は曖昧なままだった。
その定義をキッチリ定めたのは放送開始26年目の『ポケットモンスター めざせポケモンマスター』の最終回にしてサトシシリーズの最終回。通算すると1245話でのことだった。
つまり主人公の最終目標でありながら、1244話も目標が曖昧なまま放送され続けたのである。
以下サトシがハッキリ「ポケモンマスターとは何か」を定めた時の台詞。


チャンピオンはゴールじゃない。俺はまだチャレンジャーなんだと思っている。

もっとたくさんの冒険をして、ポケモンに出会う。

毎日起こる事全部一つも無駄な事なんてない。あのラティオスとの出会いもね。

俺、世界中全部のポケモンと友達になりたい。

それがきっと『ポケモンマスター』ってことなんだ。


つまりポケモンマスターとは「サトシが考えた造語」であり「世界中のポケモンと友達になったトレーナーのことになった。
シリーズが進むごとにポケモンが増え続ける作品で、壮大な夢となった。

『めざポケ』は最終章でありながら何気ない日常シーンが大半を占める一方で、その日常シーンでサトシが目指すべき『ポケモンマスター』のあるべき姿と、その困難さを描いたシリーズであった。
上記の台詞で出てくるラティオスというのも、ポケモントレーナーの闇に触れたことで人間不信になり、サトシとは最後まで分かり合えなかったポケモンである。
サトシは「友達になれなかったラティオス」、つまり「ポケモンと友達になること」の困難さを踏まえたうえで、「全てのポケモンと友達になる」と言い切ったのだ。

定義の変遷

最終的にはサトシの造語になったポケモンマスター。しかし、ここに至るまでかなりの設定変更の形跡が見て取れる。

元々はサトシの造語どころかアニポケ世界では一般的な用語だったため、初期の頃はサトシが「ポケモンマスターを目指している」と言っても誰も疑問を抱かなかった。
それどころかゲストキャラにもポケモンマスターを目指している人物が定期的に出て来たほどである。
例えばサトシの永遠のライバルであるシゲルも1話で「ポケモンマスターになってマサラを有名にする」と言及しているし、エレブーズファンのナナコだって目指していた。『AG』ではマサムネの目標だった。
ちなみにヒロシの夢は「宇宙一のポケモンマスター」であり、サトシの「世界一」に張り合っている。

何を持ってポケモンマスターなのかは無印の頃から不明。
ただ、ポケモンリーグのチラシに「目指せ明日のポケモンマスター」と書かれていたり、
カントーリーグの運営が「ポケモンリーグ優勝はポケモンマスターになるための通過点」と言ったり、その存在はポケモンリーグ公認の称号である事も分かる。
初期の頃は地方チャンピオン=ポケモンマスターといっても過言ではないと言えるだろう。


転機となるのはDPでシロナが登場してから。
シロナの登場によって、地方チャンピオンがポケモンマスターではない事が明確化された*1
「ではポケモンマスターとは?」と視聴者は思い始めたが、DPではポケモンマスターとは何かについて語られることはなかった。

いつの頃からかサトシは「世界一の」という表現を使わなくなり、『AG』後半からポケモンマスターを目指すトレーナーも登場しなくなっていき、ポケモンマスターの定義が無印以上に曖昧化。
映画『ポケモン・ザ・ムービーXY 光輪の超魔神 フーパ』では、「サトシの望みだがフーパでもお取り寄せできないもの」としてサトシが語りフーパを驚かせたが、その内容は語られず。


そしてついに映画『キミきめ』でサトシ以外の人が「ポケモンマスターなんて知らない」と言い始め、新無印でサトシの造語である事になったのである。
一応この辺りから、ポケモントレーナー業を本格的に極める意志が薄いキャラクターが比較的当たり前に登場するようになったのも要因と言えるが……。


スタッフによる定義・発言

新無印の総監督である冨安大貴氏は、無印~SMまでの総監督である湯山邦彦氏にポケモンマスターとは「子どもの他愛のない夢、憧れのようなもの」と聞かされたという。*2
新無印で造語扱いになっているのはこのため。

一方で無印のシリーズ構成であった首藤剛志氏はポケモンマスターについて、ある程度決めていたらしく、
ポケットモンスター The Animation』にて「全てのポケモンと心を通わせ戦わせるポケモンマスター」と書いてある。
この文面の前に「各タイプのジムで修行しても、各々の専門タイプのポケモンしか扱えない」と書かれており、
その上で理想は上記のポケモンマスターとあるので、ここで言うポケモンマスターとは「全タイプのポケモンを扱えるトレーナー」とも言いかえる事が出来る。

また各国が一人でも多くのポケモンマスターを作ろうとしているなど、ポケモンマスターは複数人いる事がハッキリしており、ポケモンバトルに強いことに重点を置いていた。
さらに、コラムによると映画『ミュウツーの逆襲』の初期プロットにおいて、
ミュウツーは「最強のポケモンマスター」を名乗って各地のポケモンマスターに紹介状を送っているという開幕であり、サトシはその時点でポケモンマスターだったとの事。

これらの事から首藤氏の中では、ポケモンマスターは実在する称号であり、複数人いると考えていた事が分かる。
あくまで「ポケモンマスター」の称号はポケモン使いとしてのバトルの強さに重きを置いており、そして「勝利だけにこだわってよいのか」と考え、アンチテーゼとして最終回のプロットを構想していた様子。
こちらでは最強のポケモン使いとなったサトシと最強のポケモンとなったピカチュウが、ポケモンと人間の戦争に巻き込まれることから終章がスタートする案だった。
つまるところポケモンマスターというのは『終着点』でも何でもなく『通過点』であり湯山邦彦氏の語った「子どもの他愛のない夢、憧れのようなもの」でありサトシの造語という扱いは、
身も蓋もないことをいってしまえば首藤氏がポケモンアニメの脚本を降りたことによって生じた『後付け設定』なのである。


類語

水ポケモンマスター

無印のヒロイン・カスミの叶えるべき夢。
……だが、目指しているのがカスミくらいしかいないので、ポケモンマスター以上に謎の称号。
カスミは水タイプばかりゲットしているので、水ポケモンのエキスパートのこと……だろうと思われる。

カスミが旅を通して「やらなくてはいけない事」が不明確になってしまい、この反省からなのかAGからヒロインには旅を通してやるべき目標が定められた。

ドラゴンマスター

BWのヒロイン・アイリスの夢。
アイリス、というかBWは無印のオマージュが多いので、このドラゴンマスターも上記の水ポケモンマスターのオマージュ。
定義としては「ドラゴンポケモンと心を通わせ力を最大限に引き出せるトレーナー」との事。


ただしこちらはポケモンマスターや水ポケモンマスターと決定的に違う点がある。

それは作中にドラゴンマスターがちゃんと登場すること。

なのでポケモンマスターは新無印で造語になってしまったが、こちらはアニポケにおける正式な称号として残り続けている。
お陰で「ドラゴンマスターに求められる条件をそのままポケモン全体に拡大して適用すれば、それがそのまんまポケモンマスターの定義になるだろう」と上記の定義が明かされる前から散々指摘されてきた。

新無印時点で数多くいるドラゴン使いの中で、『ドラゴンマスター』を名乗る事が出来る最高のドラゴン使いはただ一人。それはソウリュウジムリーダー・シャガである。
「ドラゴンポケモンと心を通わせる事」が重要なため、新無印でチャンピオンになってシャガを超えてなおアイリスはドラゴンマスターを名乗れていない。
また、アイリスが知らないガラル地方で発見されたばかりのサトシのウオノラゴンの事をシャガは知っていたため、ドラゴンマスターになると他地方のドラゴンの情報がいち早く伝わるようだ。

またアイリスの手持ちの項目を見てもらえば分かる様に、アイリスは手持ち5匹中3匹も言う事を聞いていない時期があった。
特にカイリューなんかは言う事を聞くようになったかと思えば、すぐに言う事を聞かなくなる等、やけに問題児だった。
これは前述した通りドラゴンマスターは「ドラゴンポケモンと心を通わせる存在」である事から、アイリスを未熟に描くために意図的に問題児ばかりな手持ちにされたと考えられる。
その結果、BW時点でのアイリスは手持ちに振り回されている未熟なトレーナーという印象を視聴者に与えてしまっていた。

そんなアイリスも新無印ではサトシのカイリューと心を通わし、サトシも知らなかったサトシのカイリューのバトルへのモチベーションを把握し𠮟咤激励できるようなドラゴン使いへと成長するのだが。


備考

一応書いておくと、マスターの意味は名詞としては「主君、雇い主、達人」動詞では「習得すること」となる。

ゲーム版でも『ポケットモンスター 金・銀・クリスタル』でワタルが発言している。


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最終更新:2025年06月04日 14:48

*1 これまでのシリーズでは、シゲルはトレーナー引退、ワタルは四天王、ダイゴはさすらいの凄腕トレーナーと、明確にチャンピオンとして出てこなかったのだ。

*2 『アニメディア』2020年6月号より。