ONE PIECE(映画)

登録日:2022/10/30 Sun 14:07:26
更新日:2024/12/18 Wed 19:52:01
所要時間:約 8 分で読めます






伝説の大海賊ウーナンが遺した
“伝説の秘宝”ついに発見?!


◆概要

ONE PIECE』とは、漫画『ONE PIECE』を原作とした劇場アニメ作品、その第一作である。
サブタイトルはおろか「劇場版」の冠詞すら無い『ONE PIECE』というタイトルである。
公開は2000年3月4日。上映時間は51分。短編作品を除くと最も短い。
その事や『ONE PIECE』という物語自体が初期の頃の作品である事もあり、そのストーリーは非常にシンプルで、後発作と比べて単純明快で爽やかな冒険活劇の感が強い。
監督は志水淳児、脚本は島田満。

「東映アニメフェア」の映画タイトルの一つとして上映されており、
同時上映は『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』。

なお、公開時点のTVアニメではまだルフィとクロの戦いが決着する前であるため、一味の仲間としてのウソップとメリー号はTVアニメに先駆けて登場している。

OP・EDは当時のTVアニメと同じく「ウィーアー!」と「memories」。
実は本作から『RED』に至るまでの劇場版シリーズ全作で「オープニング」が存在するのは本作のみだったりする。
OPはイントロのナレーション部分の映像・言い回しが異なっているのを除けば歌い出し以降はテレビ放送の流用*1で、一部のシーンにSEが入っているのも全く同じだが、EDはコミックスの表紙絵が使われている。

本作の時系列はシロップ村出港からバラティエ到着までの間の出来事となっている。
ただし、原作ではシロップ村を出てメリー号に麦わらの海賊旗が描かれた直後にヨサク・ジョニーと出会っているのに対し、
本作ではメリー号が「麦わらの海賊船」となってからしばらく漂流状況であるため、原作とは異なる独自時系列という事になる。
アニメ版ではオレンジの町編の直後に位置するガイモンら珍獣島のエピソードがシロップ村編の後に移動しており、メリー号の海賊旗完成直後に珍獣島に到達しているのを見るに、珍獣島とバラティエ編の中間のエピソードと推測される。

アニメはテレビシリーズ開始当初からデジタル制作だが、劇場版だけは本作から数年間従来のセル画制作になっていた。


◆あらすじ

かつて「黄金の大海賊」と謳われた伝説の海賊が居た。
その名をウーナンという。
ウーナンはあくどい者から黄金を略奪し、遂には全世界の黄金の1/3を手にしたと言われ、その輝きは夜であっても辺りを昼間の如く照らしたという。
だが数年前を境にウーナンの消息は突然途絶え、彼の隠した膨大な量の黄金は伝説となった。

一方現代。
麦わらの一味は一同餓死で壊滅の危機に瀕していた。
ルフィが船に積み込まれた1ヶ月分の食料を3日、もとい2日で食い尽くしてしまったためである。
そんな状況のメリー号に乗り込んで来たチンピラ3人組と小競り合いしていた所、
ウーナンの残した黄金を求める海賊エルドラゴとその船が通りがかり、突然メリー号に向けて放って来た攻撃で麦わらの一味はバラバラになってしまう。

三者三様、別個に同じウーナンとその黄金が隠れているとされる島に辿り着いた麦わらの一味とエルドラゴの一味。
ウーナンの黄金を巡る争奪戦が開幕した。


◆登場人物

麦わらの一味

お馴染みゴム人間。開幕餓死寸前という酷い有様を見せつける。
お宝を奪う為にメリー号に乗り込んで来た3人組にも抵抗するどころかおにぎりで無力化されるが、
おかわりを要求したらいきなり銃撃して来たため*2
反撃の為に3人組の小舟に乗り移った所でエルドラゴの攻撃に巻き込まれてしまう。
ゾロ・トビオと共にどうにか小舟の残骸にしがみついた後、おでん屋台の匂いに誘われ図らずもトビオを家に返す事になる。

ウーナン生存を信じるトビオを唯一笑わなかった者であり、「一人でも信じる者が居るなら可能性はある」として、
成り行きからトビオに協力するなど相変わらず挑戦心と冒険心には味方する性分。


お馴染み3刀流剣士。
こちらも空腹のあまり当初はぐったりとしながら冷静に全員餓死までの残り日数を分析していた。
エルドラゴの攻撃に巻き込まれたルフィを助ける為に自らに飛び込み、
ルフィと共におでん屋台でたらふく食べた後で無一文だった事に気付いた事から岩蔵に食い逃げと見做され、ルフィと背中合わせで錨鎖で縛られる事になってしまう。
その後は出奔したトビオを縛られたまま追いかけるルフィに否応なく同行させられ、
縛られている間はルフィが急停止する度に慣性で勢いが付いたアンカーに何度も頭を殴られるハメになる。

上記の通り、中盤まで両手が不自由であるため今回はアクションシーンでの活躍は終盤までお預けである。


お馴染み狙撃手。
こちらはルフィらと同様に空腹で餓死寸前でありながらもお調子者っぷりを発揮、
海に釣り糸を垂らしながら「大物がヒットしたと大騒ぎする→『なーんてね』」というつまらないギャグを何度も繰り返していた。
島に漂着した際には運悪くエルドラゴの一味に発見されてしまい、以降しばらくエルドラゴ一味と行動を共にする事を余儀なくされる。
ちなみに、樽に入った状態でエルドラゴの部下に取り囲まれた際の『勢い良く樽から飛び出し「あー!よく寝たー!」と叫ぶ』という下りは、
おそらく原作第2話(TVアニメ第1話)のルフィのセルフパロディである。

時期が時期であるため、残念ながら本作では戦闘シーンでの華々しい活躍は無し。
その一方でエルドラゴ一味を何度もハッタリで翻弄するなど、「噓つき」の面目躍如というべき場面も。
お調子者ながら比較的常識人である事からツッコミ役を務める機会も多い。


お馴染み航海士。
時系列はココヤシ村編より前、ルフィらとは正式な仲間ではなく「手を組んでいる」という関係であるため、
まだ一味のメンバーとは一歩引いた距離感の珍しい時期のナミで描かれている。
エルドラゴの攻撃で一味が離散した後はエルドラゴの船に忍び込んでおり、島に到着後もエルドラゴ一味とは付かず離れずを保ちながら情報収集をしていた。

こちらも登場初期であるため、胸はまだ常識的ボリューム特にこれといった活躍は無し。
メリー号に忍び込みお宝を強奪しようとする三馬鹿を見咎めるも、
「泥棒? それって悪ぃのか?」「さぁな、あのお宝も泥棒して集めたモンだし」「違ぇねぇ」と一同全く立ち向かってくれず
挙句に空腹で困っている事を見抜かれ投げ込まれたおにぎりを文字通りエサに引っかかってしまった事に業を煮やしたり、
宝の地図をうっかり燃やしてしまったりなどコメディリリーフ的立ち位置。
他方、最初期くらいにしか見せていなかった詐欺師っぷりを披露する珍しい場面もあったりする。


◇エルドラゴの一味

  • エルドラゴ
CV:内海賢二
本作に於ける麦わら一味の宿敵。
巨体と赤毛、黄金の鎧と爪が特徴的。

黄金を溺愛……を通り越して偏執的なまでの執着心を持つ。
その徹底ぶりたるや、部下がメリー号から強奪して来た財宝を前に「金以外捨てちまえ!」と言い放ち、ウソップから宝石の山が眠る場所を聞かされても一切興味を示さず、
しかし黄金の山も眠っていると聞けば途端にニヤニヤしながらご機嫌になるなど、その姿勢はウソップもドン引きするほど極端。

その点を除けば性格はいかにも海賊的な乱暴者。
黄金に目が無く、部下が自分の攻撃に巻き込まれても「そんな所に居たお前らが悪い」と意に介さず、
自身の能力(後述)への自信から雑な手段を用いがちであり、自分に歯向かう者や意に沿わない者には嗜虐性と残虐性を示す。
年端も行かない少年であるトビオが立ち向かって来た際は初めは流石に「おいおい……」と呆れるだけに留めたが、攻撃の意志ありと見れば本気の反撃も厭わない。
一方で上記の様に黄金への異様な執着や、一般論で考えれば簡単な暗号を全く解けなかったりと、初期のワンピースの悪役に散見されたどこかユーモラスな様子もある。

超人系悪魔の実ゴエゴエの実の能力者。
強力な衝撃波(描写上ほぼ口から出るかめはめ波である)を伴う凄まじい大声を出す事ができ、石造りの建物程度は容易く破壊して見せる。
ボイストレーニングと称して非戦闘時でも日々何もない所に向けて放っており、劇中で見せた破壊力は鍛錬の賜物である可能性もある。
また黄金の爪を駆使した徒手格闘でも当時のルフィと互角以上に立ち回る実力を持つなど、そういった意味では「能力にかまけた馬鹿」ではないと言える。



  • ゴラス
エルドラゴに雇われている寡黙な大男。
ネイティブアメリカン風の風体をしている。

凄腕の剣士であり、エルドラゴから渡される金貨と引き換えに仕事を請け負う。
その実力はの一振りで大量の土砂を吹き飛ばし、崖崩れで通れなくなっている山道を無理矢理開啓するほど。
エルドラゴによれば、それすら「ゴラスならこれくらい造作もないこと」であるらしい。


  • ダニー、ドニー、デニー
CV:笠井信輔(ダニー)、境鶴丸(ドニー)、伊藤利尋(デニー)
エルドラゴ一味構成員のチンピラ3人組。
やたら表情豊かな本作の癒し要因。
3人を演じているのはそれぞれワンピースを放映しているフジテレビの(当時)アナウンサー。

◇その他

  • トビオ
CV:今井由香
ウーナンに憧れる少年。本作の裏主人公的存在。
おでん屋台を継がせようとする祖父、岩蔵に反発すると共にウーナンの生存を信じ、
海賊になる事、ひいてはウーナンの仲間になる事を夢見て海に飛び出しては、程なく岩蔵の許に戻って来るという事を繰り返しているらしい。
エルドラゴ一味に捕まって雑用をさせられた挙句そのエルドラゴによって死にかけるが、結果的にはルフィ・ゾロのお陰で帰還する。
しかし自分の意思を全く尊重しようとしないと感じた岩蔵に絶縁を叩き付け出奔、
その際ルフィの麦わら帽子を持ったままだったため、帽子を取り返そうと追いかけるルフィ(と一緒に縛られていたゾロ)としばらく行動を共にする事になる。


  • 岩蔵
CV:青野武松野太紀(少年時)
本作のキーパーソンの一人。
海上おでん屋台の主人。トビオの祖父。
いかにも昔気質な頑固おやじといった風の人物。しかしおでんには強い情熱を注いでいる。
彼の作るおでんは絶品であり、空腹の極みに達していた事もあってルフィ・ゾロが感動でを流しながらガッ付く程。
しかも鍋の中身を食い尽くす程大量に食べてお値段11ベリーと、良心価格を通り越してダンピングに近い破壊的価格設定。
そのお陰でかやはり全然儲けは出ていない様で、トビオは「貧乏暮らし」と言及している*3
その正体は……。


演じている青野武氏は後のワンピース映画でも(『STRONGWORLD』まで)何らかのキャラでレギュラー出演していた。

  • ウーナン
CV:野沢那智
本作のキーパーソンの一人。
かつて黄金を追い求め、膨大な黄金を手にしたとされる。
だが消息が途絶えた今は世間では死亡したと見られており、生存を信じる者は少数となっている。
トビオは黄金が隠されているとされる島でまだ生きていると信じており、彼の海賊団に加わる事を目指している。



◆余談

  • 成績
興行収入は21億円。
これは『STRONG WORLD』が大幅に更新するまで長らく映画シリーズ第2位の成績だった。
現在は総合7位、中間くらいである。

上記の通り、本作はバラティエ到着前の出来事であるためサンジは登場しない。正確にはテレビシリーズの映像をほぼ使ったOPと、EDで数秒だけ映る程度となっている。
公開当時はまだシロップ村編終盤だったため、1ヶ月ほどの先行登場である。

一方で、「食や海上の食事処に関わるエピソード」「食を司るメンバーが居なかった為に窮地に陥る」「再戦を期待してトドメは刺さないという決着を迎える剣士対決」といった、
バラティエ編を意識したかのような描写も散見される。

  • ウーナンの懸賞金と実力について
後に劇場版第9作で明らかになったウーナンの懸賞金6000万ベリーとの事。
平均懸賞金額300万ベリーとされる東の海出身の海賊としては間違いなく破格の数値と言えるが、
本当に世界の黄金の1/3を手にした伝説の海賊ならばその割に額が少な過ぎではないかと専らの評判。
また、同じく劇場版のキーパーソンにして黄金に関わりの深い者であるデゾーロと比較し、
「全世界の1/3の金」と「全世界の20%の現金」のどちらが凄いのか?と考察する者も。

  • 結末について

  • 連動?
2001年に発売されたPSゲームFrom TV Animation ONE PIECE とびだせ海賊団!』が実質的に劇場版第一作の後日談と言える内容となっている。

  • 幻のグランドライン冒険記では
ゲームボーイ&カラー共通ゲーム『From TV Animation ONE PIECE 幻のグランドライン冒険記』でこの物語を追体験出来るが、
◆サンジ、ビビが加入済み
◆時系列がウィスキーピーク編~リトルガーデン編の中間=偉大なる航路(グランドライン)に突入済み
といった相違点がある。

  • 岩蔵のおでん
PSPゲーム『ワンピース ROMANCE DAWN 〜冒険の夜明け〜』に回復アイテムとして、「岩蔵のおでん」が登場している。
効果は戦闘不能状態から復活させ、体力を完全回復させる。おでんスゲー




追記・修正は魂を込めたおでんと共にお願いします。



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最終更新:2024年12月18日 19:52

*1 映画なので当然ながら映像は上下をカットされている

*2 初期の劇場版では「ルフィが撃たれる→普通に起き上がり、銃が効かない身体である事に驚かれる」というやりとりが本作以外でも散見される。

*3 トビオが岩蔵に反発し海賊になろうとしているのはこの面もある。