ドラえもんのうた(楽曲)

登録日:2023/01/15 Sun 17:00:00
更新日:2025/04/15 Tue 14:06:01
所要時間:約 11 分で読めます





ドラえもんのうたとは、アニメ「ドラえもん」の主題歌である。

作詞 楠部(くすべ)(たくみ)
補作詞 ばばすすむ
作曲 菊池俊輔
発売日 1979年4月25日(初版)




【概要】

「ドラえもん」、ひいては日本を代表するテレビアニメ主題歌。
大山版時代では全期間にかけてオープニング曲に使用され、大杉久美子から始まり26年にわたる放送の中で様々な歌手によって歌い継がれてきた。
特に大山版時代の映画におけるのび太「ドラえも〜〜〜ん!!」からのイントロが馴染み深い人も多いだろう。

2005年に水田わさび達に声優陣が一新されてからは、初代の女子十二楽坊版を最後に使用を一旦終了、「ハグしちゃお」に取って代わった。
以降、長らく「ドラえもんのうた」がOPで流れることはなかったものの、2019年4月に水田ら声優陣の歌う「40th」バージョンとして14年ぶりにオープニングで復活した。

今後も様々な機会で「ドラえもんのうた」が歌われることだろう。


【歌詞の解説】

「こんなこといいな」の歌い出しで始まる歌詞は、次々と湧き出る夢や願いをひみつ道具で叶えてくれるドラえもんについて歌ったもの。
冒頭の部分は「んなこといいな」と間違われがち。

サビの直前で挿入されるドラえもんのセリフも有名。
タケコプター」「おもちゃの兵隊」「どこでもドア」が1〜3番にかけて登場する。
他の2つと比べて明らかにマイナーな上に、「宿題や当番が大変だ」と言ってるのになぜか護身・戦闘用の「おもちゃの兵隊」が出てくる点はしばしばツッコまれがちである。
また、1番にある「ふしぎなポッケ」は言うまでもなく「四次元ポケット」のことなので、計4つのひみつ道具が歌の中に登場することになる。*1

作詞者の楠部は、シンエイ動画創業者・楠部大吉郎の息子であり当時中学2年生だった。中学生の考案した歌詞が採用された出来事は、当時の子供向け雑誌でも特集が組まれ話題を呼んだ。
名義こそ「楠部工」であるものの、本人は家族でアイデアを出し合って考えた合作であると語っている。だが、北海道新聞の取材では、父から「採用されたら一万円をあげるから」と直々に作詞を頼まれ「風呂場で窓ガラスにドラえもんを描きながら考えた」とも話している。
なお、楠部は同時期に「ドラえもん・えかきうた」の作詞も手掛けており、後にもドラえもん関連楽曲の歌詞をいくつか担当している。

ドラえもんのセリフ部分は大山のぶ代が考案したもので、彼女が声を当てているのがオリジナル版なのだが、カバー曲でなぜか日テレ版のドラえもん声優だった野沢雅子がドラえもん役の物がある*2
2003年から使用された渡辺美里版ではドラえもんのセリフのうち「ソレ! とつげき」が「みんな! ガンバレ〜」に差し替えられている。

…かと思ったら、アニメ『ドラえもん』40周年記念として制作された「ドラえもんのうた 40th」では、2番のドラえもんの台詞が四代目以前のものに戻っている。


サビについて

歌詞についてもう一つ話題に多く挙がるのがサビのフレーズ。
これが何を意味しているのかについては諸説ある。

  • スキャット的なもの説
ポピュラー音楽でよくある「Ah」「Uh」「Hum」などを、歌の雰囲気に合わせ「アン」にアレンジした。

  • のび太の泣き声または甘える声説
本編でものび太は「ア〜ン!」と泣くことが多い。
この歌全体がのび太視点であると仮定すれば、ドラえもんが大好きな彼の感情を表現したものという考え方も可能である。

  • 「餡がとっても大好き」説
「『アン=餡』すなわちドラ焼きの中でもあんこが「だいすき」という意味。コロコロコミックの漫画でドラ・ザ・キッドもこの主張を唱えている。

  • 「餡を取っても(ドラ焼きが)大好き」説
すなわちドラ焼きの中でも「皮」にこだわっているとするもの。上記のキッドに対し王ドラもこう主張している。

なお、東京プリン版OP映像では「アンアンアン」の部分でドラえもんたちが手を叩く振りで踊るのだが、見ようによっては「あんこをドラ焼きの皮で挟む」ような仕草にも見えなくもない。
公式が「餡」を意味したものと認めた上で意図して付けた演出か、偶然そのような振り付けになっただけかは不明。

  • 喘ぎ声(!?)説
ダウンタウンのごっつええ感じの漫才コント「妖怪人間」にて、歌詞のこの部分に入った途端、松本演じるベロとYOU演じるベラがいちゃつき始めてしまうというネタがある。
この説が広まったのは奴らのせいかも。


【歴代の『ドラえもんのうた』】

○大杉久美子版

  • 使用時期: 1979年4月2日~1992年10月2日
記念すべき最初の「ドラえもんのうた」は、「アタックNo.1」の主題歌など多くのアニソン・童謡歌手で知られる大杉久美子によって歌われた。
初代かつ使用時期が13年半と最も長いことから「ドラえもんのうた」といえば大杉版を思い起こす視聴者も多いことだろう。


○山野さと子版

  • 使用時期: 1992年10月9日~2002年9月20日
現在までに1300曲以上ものアニソン・童謡のレコーディングに携わってきた山野さと子が歌うこの版は、10年に渡り使用された。
TV版主題歌での使用終了後も、映画では大山版最終作「のび太のワンニャン時空伝」まで継続して使用されていた。
曲の構成はオリジナルの大杉版を踏襲しているが、菊池俊輔によるアレンジにより各楽器パートのバランスに調整が加えられたため真新しい雰囲気となった。
大杉版使用時期の頃より声色が大きく変わったためか、ドラえもんの台詞も録り直されている。
平成生まれの大山ドラ世代の多くが「ドラえもんのうた」といえば山野版が一番思い入れがあるのではないだろうか。


○吉川ひなの版

1998年の映画「のび太の南海大冒険」で使用された。
ファッションモデル・女優の吉川ひなのを起用。編曲は鴨宮諒。
なお、吉川は本作のED曲「ホットミルク」も歌っており、「HINANO」名義で同曲の作詞にも参加している。


○ウィーン少年合唱団版

2000年の映画「のび太の太陽王伝説」で使用。ウィーン少年合唱団という異例の起用が話題を呼んだ。
合唱団による美声と壮大なオーケストラによる大幅なアレンジの「ドラえもんのうた」を初めて聴いて衝撃を受けた人も少なくないだろう。
このバージョンでもドラえもんの合いの手は健在。
編曲は山下康介、編曲監修・ピアノ演奏は羽田健太郎。


○東京プリン版

  • 使用時期: 2002年10月4日~2003年4月11日
アニメ本編がセル画からデジタル制作に完全移行したと同時に使用が開始された。編曲は岩戸崇。
これまでの「ドラえもんのうた」とは異なるアップテンポで近未来的なロック調アレンジ、さらに初となる男性アーティストによる歌唱など、従来とは大きく異なるイメージについては大きく賛否が分かれた。

また、OP映像におけるドラえもんたちの激しいダンスなぜか一人だけダンスシーンからハブられ海パン姿で体操をしていたかと思えばオチで溺れさせられるなど妙に扱いが悪いのび太ドラえもんを模した乗り物がぞろぞろと出てくるなどのややシュールな演出面についても好みが分かれる。
さらに言うと途中や最後に出てくるドラえもんを模した白目のテレビが怖いという意見も。

ただ、作画自体には躍動感があり見ごたえがある映像に仕上がってはいる。
「とっても大好き」の部分はいつものメンバーがドラえもんのお腹や髭を模したジェスチャーをしており、そこが癖になるという人も。

TVサイズは2002年12月までは3番が、翌年1月以降は1番が使われた。
当初3番が使われた理由は不明だが、一応サビ手前では映像で「タケコプター」と「どこでもドア」の両方が登場するため、差し替え後も違和感が出ないようになっている。

歌唱を担当した「東京プリン」については、使用開始から年内まではスタッフクレジット上では「○○プ○○」と伏せて表示され、大晦日SP内の企画で初めて名前が公開された。*3
この時は本人たちが顔出しで出演し、着ぐるみのドラえもんと共にフルコーラスで「ドラえもんのうた」を披露した。
特番でここまでプッシュされていた割には使用期間が約半年という短命に終わったこともあり、ファンの間でもやや影が薄い。


○渡辺美里版

  • 使用時期: 2003年4月18日~2004年4月23日
編曲は金子隆博。渡辺美里という大物アーティストの起用は大きく話題となり((ちなみに渡辺はエピックレコードジャパン、編曲の金子は所属していた(この後2006年に再結成する)「米米CLUB」がソニー・レコーズと、2者ともソニー系列のミュージシャンとなる。)、彼女の力強く温かみのある歌声は、「ドラえもん」の作風ともマッチしており好評を得ている。
前述の通り2番のドラえもんの台詞が改変されている。
前任での反省を活かしたのか、雨上がりの空を見上げ、外へ飛び出すのび太たちや傘を差していたドラえもんの眩しい笑顔、陽射しや雨粒の描写が美しい爽やかなOP映像となっている。
ラストは(『無人島へ家出』でもお馴染みの)「さすとあめがふるかさ」によって乾いた大地が潤い、生い茂る緑と大きな水たまりが地球を覆いつくすシーンで締めくくられる。
この時しずかが取るポーズがちょっときわどい。
2004年に放送25周年を迎えることから冒頭で記念ロゴが表示されていた。*4

2003年7月18日放送の「四次元エレベーター」では渡辺氏が本人役でゲスト出演。自身のコンサートにドラえもんたちを招待し、「ドラえもんのうた」を披露した。


○AJI版

  • 使用時期: 2004年4月30日~2005年3月18日
大山版で使用された最後の「ドラえもんのうた」はアカペラグループ・AJIが歌唱を担当した。
男性グループの起用は東京プリン以来2度目。編曲は橘哲夫(AJI・リーダー)。
初のアカペラによる大々的なアレンジはやや好みが分かれる。\
いつも通りドラえもんの台詞付きだが、後に発売された「テレビアニメ30周年記念 ドラえもんテレビ主題歌全集」に収録されているフルサイズにはなぜか台詞が収録されていない。
映像はのび太たちがシャボン玉に乗って空を飛ぶというもの。結局サビでタケコプターに乗り換えるのだが。のび太ら4人の母親勢もモブで登場。


○女子十二楽坊版

  • 使用時期: 2005年4月15日~2005年10月21日
「ドラえもん」リニューアルと同時に使用開始。女子十二楽坊の演奏によるインストであるため歌はないが歌詞テロップのみが表示される。
編曲は西脇辰弥、古楽器編曲は梁剣峰。
映像は22世紀の工場で造られたドラえもんが耳を失い青くなった理由、そして現代ののび太の下へ向かうまでの経緯が描かれている。

2005年10月28日より、OPが「ハグしちゃお」へ変更されたため、約26年半に渡り使用されてきた「ドラえもんのうた」のOP主題歌としての歴史は一度幕を閉じた。


○40th

  • 使用時期: 2019年4月5日・4月19日
それから14年の時を経て、「ドラえもんのうた」はオープニングとして限定復活を遂げる。
編曲は常田真太郎(スキマスイッチ)*5、そして歌はドラえもん(水田わさび)・のび太(大原めぐみ)・しずか(かかずゆみ)・ジャイアン(木村昴)・スネ夫(関智一)のレギュラー5人が担当。もちろんあの台詞も水田によって新たに蘇った。
なお、渡辺版で差し替えられていた「おもちゃの兵隊」の台詞はそれ以前の歌詞に戻されている。
アニメでOPとして使用された時は冒頭で歴代OPの映像が次々流れるというファンサービスも。
放送時間移転後は、不定期にEDとして使用されることがある。


【余談】


原作第29巻「空飛ぶうす手じゅうたん」では、ラストシーンでこの歌が登場する。
「とぶ」などの言葉に反応するとコントロールを無視して勝手に空を飛び回ってしまう道具「空飛ぶうす手じゅうたん」を生地に自分の洋服を作ってしまったしずか。
事態を知ったのび太とドラえもんはその服を着た彼女がじゅうたんの反応するワードを口に出さないよう奮闘する。
ようやくしずかが自宅へ帰り安堵したのもつかの間、風呂場の脱衣所へ向かったしずかが「あの歌」*6を歌いだしたものだから2人は大慌て。
「♪空を自由にとびたいな」…だが、ちょうど服を脱ぎかけていたところだったため、辛うじて服だけがしずかの体を飛び抜けた形となったため、事なきを得た。
ちなみに、しずかの台詞をよく読むと歌詞が微妙に間違っていることがわかる。*7
もしかしたらJASRAC対策かもしれない…と思いきや単行本末尾に許諾番号が付いているのできちんと許可は取っている模様*8


心臓マッサージをする際に適したテンポの例として、ドラえもんのうたが挙がることが多い。
これは、心肺蘇生のための胸骨圧迫で最適な速度が1分間に100~120回とされており、実際に大杉版などはテンポが120BPMであるので適しているだけでなく、知名度の高さ故に誰もが頭に浮かべやすくリズムの変化も少ない楽曲のひとつであるためである。*9
「心臓マッサージのテンポはドラえもんでやるといい」と言われて違うOP曲をやるジェネレーションギャップネタは有名


アーケードゲーム「クレイジー・クライマー」では、ラッキーバルーンにつかまるとこの曲が流れる。
なお、Wii・バーチャルコンソールアーケード版およびPS4・アーケードアーカイブス版、Nintendo Switch版では、音楽著作権の影響で別の曲に差し替えられている。


同じくアーケードゲームの「国盗り合戦」でも、デモ中BGMとしてこの曲がユリウス・フチークの「剣闘士の入場」と交互に流れる。
2作とも「ドラえもん」とは一切関係ないゲームである。


ドラマ「西部警察」第88話「バスジャック」では、人質が「ドラえもんのうた」を歌わされるシーンがある。


アニメ「星のカービィ」第92話「ワドルディの食文化大革命」では、「ドラえもんのうた」を一部パロったと思われる歌が出てくる。
ワドルディ達が食べてた精進料理をDr.エスカルゴンなぜかノリノリで歌いながら説明する際、「アン アン アン♪」というどっかで聴いたフレーズを口ずさむのだ。


過激な下ネタとパロディに定評のある漫画「銀魂」のとある回では、銀時が恐怖のあまり錯乱しながら「ドラえもんのうた」を歌うシーンがある。
アニメ版でもきっちり再現され、中の人の演技も相まってノリノリで歌う。



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最終更新:2025年04月15日 14:06

*1 ちなみに「おもちゃの兵隊」を除く3つは「夢をかなえてドラえもん」のセリフにも登場する。

*2 キングレコードの「最新アニメ主題歌ベスト28」(1980)より、なお歌そのものは竹田瑛理が歌っている。

*3 あくまで番組内に限った話で、一部メディアではシークレット扱いされることもなく普通に報じられていた。

*4 DVDやテレ朝チャンネルの再放送では非表示。

*5 2006年の映画「のび太の恐竜2006」でED主題歌「ボクノート」を手掛けた。

*6 ドラえもんの弁で作中に曲名は登場しない。

*7 よくある間違いの「あんなこといいな」に加え、「ふしぎなポッケ」が「すてきなポッケ」になっている。

*8 上記のようにこの曲の作詞は藤子先生自身ではないので原作者と言えど許可は必要。日テレ版主題歌「ドラえもん」やシンエイ版二代目主題歌「ぼくドラえもん」なら必要なさそうだが。

*9 他に候補としてよく挙がる楽曲に、ビージーズ「ステイン・アライヴ」、プリンセス プリンセス「Diamonds」、ドリーミング「アンパンマンのマーチ」などがある。また、後継曲「夢をかなえてドラえもん」もBPMが125/分であるためやや速めだが、テンポ合わせに適している。