登録日:2019/06/18 Tue 20:57:26
更新日:2025/04/26 Sat 18:26:36
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「いつまでなごりをおしんでもきりがないから……、じゃ……、元気でな。」
初めて映画になった日本一の人気者!
1億年前へタイムマシンで大冒険!
原作:
藤子・F・不二雄(藤子不二雄)
監督:福冨博
脚本:藤子不二雄、松岡清治
主題歌:大山のぶ代、ヤングフレッシュ「ポケットの中に」
『
ドラえもん のび太の恐竜』とは、『映画
ドラえもんシリーズ』の第1作目及び『大長編ドラえもんシリーズ』第1作目のタイトルである。
1980年3月15日公開で上映時間は92分。
同時上映は『
モスラ対ゴジラ(リバイバル短縮版)』。
今では考えられないが当時は「ドラえもん一本で映画にするのは厳しいだろう」と見られていたが見事その懸念を払拭してみせた。
【概要】
人間の手で育てられた
ライオンを野生に還す小説・映画作品『
野生のエルザ』に感動したF先生が、「これを『ドラえもん』の世界に持ち込めないか」と考えて1975年に執筆した30ページの短編『のび太の恐竜』を原案としている。
TVアニメが放送開始された1979年に、小学館と
シンエイ動画の楠部三吉郎から映画化の話が持ち上がり、当初は「東映まんがまつり」の1本として短編を上映しないかという話だったが楠部氏はこれを拒否、代案としてF先生に同話を原案とした長編映画化を持ちかけ、映画化が決まった。
映画化に際して
コロコロコミックにて執筆された『大長編ドラえもん』では、序盤はいくつかの追加シーンを除いて短編版をそのまま流用している。
短編版のオチはのび太がドラえもんに
「鼻でスパゲッティ食べる機械をだしてくれえ!」と騒ぐシーンで終わっており、完全新規のストーリーはその先から始まることとなる。
本作に登場する恐竜のアニメ設定は
シンエイ動画の創設者である楠部大吉郎氏が直々に手掛けている。
また、1983年に改めててんとう虫コミックスとして出すに当たって大きく加筆修正が加えられている。
本作では恐竜ハンターを敵として描くが、短編の「
恐竜ハンター」では恐竜狩りをスポーツとして描いており矛盾している事はよく指摘される。
ただ、本作では「
恐竜を殺す」ことを問題視しており、短編では「捕まえた恐竜はペットにする」と言ってるので、そのあたりで認められているのかもしれない。下敷きになったのが初期のエピソードである事も勘案すべきだろう。
また、「恐竜ハンター」
アニメ化の際には矛盾を躱すため「捕まえた恐竜はメダルと交換」「メダルを集めると景品がもらえる」「恐竜はメダル交換所で元の時代に戻される」という修正が行われている。
エンディングテーマはドラえもんのキャラクターソング『ポケットの中に』で、武田鉄矢作詞の劇場版主題歌はここから始まった。なお、大長編ではこの歌の歌詞が見開きページで掲載されており、以降の作品でも踏襲された。
当時『
コロコロコミック』編集長だった平山隆氏は、主題歌を長編のどこに入れるかは全体構成の効果を図って描き下ろしていたと、『
超全集』の寄稿にて証言している。
なお、TVアニメ放送開始翌年の映画公開ということもあって、短編としての「のび太の恐竜」自体は長らくTVアニメ化されていなかったが、『
のび太の新恐竜』公開に合わせ、2020年に初めてTVアニメ化された。
【あらすじ】
ある日、スネ夫にティラノサウルスの爪の化石を自慢されたのび太は丸ごとの化石を見つけてみせると見えを切ってしまう。
ドラえもんからも無理だと言われてしまうが、珍しく自力で目的を達しようと勉強し、近所の古い地層を掘るが、おじさんに怒られてしまいゴミを
埋める穴を掘らされてしまう。
しかし、そのゴミ穴から恐竜の卵の化石を発見、ドラえもんの
タイムふろしきで元の姿に戻し、一心に温めると小さな恐竜の
赤ちゃんが生まれた。
のび太はその恐竜…ではなく、首長竜のフタバスズキリュウに「ピー助」と名付け、隠して育てていくが、
ピー助を売ってほしいと謎の黒い男に持ち掛けられ、危機感を覚えてピー助を白亜紀の時代へ戻した。
しかし、黒い男の襲撃で生じたタイムマシンのトラブルが原因で日本産のピー助を北アメリカ太平洋沿岸へ置いてきてしまった事が発覚。
ジャイアン達と共に白亜紀へ向かうが、トラブルを抱えたまま定員オーバーで使った事でタイムマシンが完全に故障してしまう。故障したタイムマシンでも時間移動だけは可能だが、そのためには「将来の日本の野比家の出来る位置」にタイムマシンを持って行かなくてはいけない。こうして日本にピー助を帰し、自分達も未来に帰るため、のび太達の冒険の旅が始まった。しかし、そんな一行を、あの黒い男達が付け狙っていた…。
【登場キャラクター】
【レギュラーキャラクター】
●
ドラえもん
ご存知22世紀のネコ型
ロボット。
自力で事を成し遂げようとするのび太をあったかーい目
…のつもりで見守り、ピー助の育成にも協力する。
日本へ帰るため、夜な夜なタケコプターを整備するなどしていた。
一度現代に戻ってどこでもドアを使えは禁句…というかタイムマシンの空間移動機能故障で不可能。
●
のび太
ご存じ
鼻からスパゲッティを食べると豪語してしまった少年。
ピー助の親代わりとして恐竜ハンターの取引を断固として拒否する。
ピー助との別れ、ピー助の遊んでいたボールを抱きながら眠るラストは涙なしには見られない名シーン。
●
しずかちゃん
のび太のガールフレンド。
のび太を擁護する一方、無理だったのだから素直に謝るべきと諭しており、のび太が恐竜を見つけたことは信じていなかった模様。
着せかえカメラで男用の水着を着せられてしまい半裸を晒したり、
シャワーシーンを披露するなどお色気シーンも今作から。
●
ジャイアン
愛すべきガキ大将。
アニメ版ではスネ夫と共にピー助を渡そう派だったが、原作ではプテラノドンに襲われた際に
タケコプターがはずれてしまい、
のび太に助けてもらった事で最後までのび太に協力する漢気を見せた。
「大長編になると良い奴になるジャイアン」は第一作目である本作から始まったと言える。
●
スネ夫
ある意味今回の事件の元凶。
ピー助を渡すことを主張しつづけるが、アニメ版では月に向かって鳴くピー助を見て何も言えなくなり、原作では多数決の末に泣きながら協力を誓う。
今回提案していた「ラジコンのように適度に休ませながら
タケコプターを使えば、電池が長持ちするのでは?」との考えは、後の作品にも受け継がれている。
●
のび太のママ
ご存知のび太のママ。ピー助を隠すのび太に「また犬とか猫とか拾ってきてるんじゃないでしょうね」と聞く。のび太は「実は恐竜だって聞いたらひっくり返るだろうなあ」とぼやいてた。今回の件があったからか別の話では「イヌとかネコとか恐竜とかかってるんじゃないでしょうね」と聞くようにしている。
●
出木杉くん
初期稿では彼も冒険に参加する予定だった。
そちらでは日本に帰る方法やラジコンで恐竜ハンターを欺く方法など物語で重要な部分を提案するのは出木杉くんの役割となっていた。決定稿では別のキャラに割り振られている。……要するに万能すぎてオミットされてしまった。
そして以後も大長編の冒険に参加できないまま現在に至る。
【ゲストキャラクター】
●ピー助
CV:横沢啓子
のび太が発見した化石の卵から孵化したフタバスズキリュウの子供。のび太に非常に懐いており甘えん坊。
一旦は白亜紀の海に離されるも、場所が日本付近ではなくアメリカ沿岸だったためエラスモサウルスの群れにいじめられ、ドラえもん達が日本に帰すため、そして自分達も未来に帰るために旅立つことになる。
なおフタバスズキリュウは厳密には恐竜ではなく首長竜で、
胎生であったとされているため、卵から産まれないのが2023年現在の研究における解釈。
古生物学的には後年解釈が変わってしまうのも十分にあり得る話なので、1980年公開の本作で描写が違うのは仕方がない。
また、話がおかしくなるためリメイク版でもあえて卵生のままにされている。
声は
ドラミの人だが、ドラミのアニメ初登場は本作公開の1ヶ月後の4月である。
リメイク版ではなんと子役時代の
神木隆之介が演じている。2020年の短編アニメ版では
久野美咲が演じた。
●黒い男
CV:加藤精三
のび太の元にやってきた黒ずくめの恐竜ハンターで密猟犯。
どっかの組織の人間ではない。
人間に慣れた珍しい恐竜としてピー助を買い取ろうとしたが、拒否されたため奪い取ろうとする。
ドルマンスタンに人間狩りを持ちかけるなど、悪徳な人物として描かれている。
なお、原作では頭部がハゲている事がわかる。後に『
2112年 ドラえもん誕生』で再登場する。
長らく名前はなかったが、ミュージカル版で「ハンボス」という名前がつけられた。
●ドルマンスタン
CV:島宇志夫
2314年のメガロポリスに住む大富豪で本作の
ラスボス。黒い男から多数の恐竜を買い取っているらしく、彼の屋敷には恐竜のはく製を飾っている。
「最後の仕上げを自分の手でしてはどうか」と持ち掛けられ、白亜紀へ乗り込む。
ギガゾンビよりも更に1世紀後の人物なのだが、2世紀前のドラえもんの道具にボロ負けしている…。
現在の版では「ドルマンスタイン」に変更されており、リメイク版でもこちらの名前を採用している。後に『
2112年 ドラえもん誕生』で再登場する。
【用語】
●白亜紀
大昔の恐竜が繁栄していた時代。
ピー助をこの時代へ戻すためにのび太たちは向かうが…
●
恐竜ハンター
恐竜を捕まえたり殺したりして金持ちに売る犯罪者。黒い男がそれにあたる。
詳細は項目参照。
ドラえもん「セワシくんときょうりゅうがりに行ってきたんだ。」
【ひみつ道具】
包んだものの時間を進めたり巻き戻したりする道具。卵の化石を
生きた状態に戻すため使われた。
お馴染み空を飛べる道具。長時間飛び続けるとバッテリーが上がる設定が初登場。「肝心なところでバッテリーが切れてピンチ」はこの作品から始まった。
『ドラえもん』の大前提とも言える時間を旅する道具。
本作では黒い男の攻撃と5人乗りによるオーバーワークで壊れてしまい、「空間移動機能」が使用不可能になった(タイムベルトに近い状態か)。
後に日本が出来る海の、のび太の家の机場所までタイムマシンを運ばなければ戻れないという絶望的な事実をドラえもんに突き付けられ、
止む無く身一つで大西洋を横断することになった。
タイムふろしきで直せばいいじゃんとか言ってはいけない
このことの反省か、後の作品では5人乗っても大丈夫なように改良されている。
食べさせた動物を懐かせる団子。ティラノサウルスに襲われた際に食べさせるが、これが終盤での大逆転の伏線となる。
- 成長促進剤
- スモールライト
- タイムテレビ
- 着せかえカメラ
- エラチューブ
- 深海クリーム
- コンクフード
短編『海底ハイキング』にも登場した、ストローで飲む液体状携帯食料。味のバリエーションが少ないのが難点。
長旅が予想されるため、コンクフードが切れた時に備え採取した植物や魚を加工するため登場。植物はパン・魚は缶詰にしたという。
- キャンピングカプセル
- ラジコン粘土
- 立体コピー紙 ※
- 交通安全お守り ※
- 即席エレベーター ※
- 通りぬけフープ
- ひらりマント
※のものは原作のみ登場。
【恐竜】
ピー助の仲間。
ピー助をいじめまくるものすごく人(竜)相の悪い首長竜。
巨大なウミガメ。のび太が島と間違えた。
ジャイアンの音痴な歌を鳴き声と勘違いして襲い掛かってきた。
後にアパトサウルスの群れを襲うが、ドラえもんの投げた桃太郎印のきびだんごで大人しくなる。
尻尾引きずってる。
- ブロントサウルス(原作変更前、アニメ版)/アパトサウルス(原作変更後) ※後述
このころの説を反映してか、湖の中でのんびり休んでいた。(現在では、
カバのような半水中生活説は完全に否定されている)
卵から生まれたばかりの
赤ちゃんが可愛い。
同じ作者の『
T・Pぼん』第10話「バカンスは恐竜に乗って」でも登場したがこちらでは完全な陸生生活として描かれている。
足の速い小型獣脚類。桃太郎印のきびだんごで一行の足になる。
渓谷を渡ろうとする一行をものすごい数の群れで襲うが、恐竜ハンターのレーザーで無残に皆殺しにされる。合掌。
なおF先生はかなりの古生物マニアであり、後発の『
のび太の創世日記』では尻尾を引きずらない復元図で恐竜を描いている。
『創世日記』時代にアシスタントを務めていたむぎわらしんたろうによれば、
描いた絵を
一瞬見ただけで「プテラノドンの指はここから生えてない!」と指摘されたこともあったらしい。
【余談】
ピー助が属するフタバスズキリュウは日本初の恐竜系化石して話題になったものだが、
実は公式に新種認定されたのは、リメイク版公開のすぐ後にあたる2006年6月のことだった。
『
のび太と竜の騎士』共々単行本によっては再販当時の学説に合わせ恐竜名が変更されており、「ブロントサウルス」が「アパトサウルス」になっているケースがある。
これに関しては
抹消された恐竜の名前を参照。
というか、そもそも1億年前にはアパトサウルスは絶滅しており、ティラノサウルスはまだ登場していない。
追記・修正は恐竜の化石を探しながらお願いします。
- 恐竜狩りに関しては、指定した場所であればいい(後実際に恐竜を殺すわけじゃない)ってことなんだと思う。恐竜ハンターの方はそういった店でいうと明らかな違法行為。現実でも禁止されている場所や動物を狩るのは違法行為だしね -- 名無しさん (2019-06-18 21:34:43)
- 出木杉の運命はこの時決まったのだ -- 名無しさん (2019-06-18 21:41:21)
- ドルマンスタンの名前が変更された理由はなんで? -- 名無しさん (2019-06-18 21:52:05)
- 静香が半裸になるシーン、原作とのぶドラ版ではしっかりとお胸が描かれていたが、わさドラ版では背中を向けているため見れない状態となっている -- 名無しさん (2019-06-18 22:26:03)
- ドラえもんにとっての時間軸は「2112年→恐竜」だけど、恐竜ハンターにとっては「恐竜→2112年」なのかな。今作のドルマンスタインは警察に追われているようには見えなかったし -- 名無しさん (2019-06-19 15:47:39)
- ↑多分そういう流れなんだろう。ドラえもんたちの活躍で捕まって、護送中に逃げたか脱獄したかしてそしてドラえもんが生まれて…となんだか因縁が出てくる -- 名無しさん (2019-06-19 19:12:25)
- 来年の映画はのび太の新恐竜らしいが内容は別物になる模様 -- 名無しさん (2019-07-04 20:02:53)
- ↑判明前は「のび太と竜の騎士」リメイクと予想されていたよね -- 名無しさん (2019-07-04 22:15:54)
- 映画の存在で今までやらなかった短編版のアニメ化をやるのか、現在の環境だからできた事かな -- 名無しさん (2020-08-30 11:12:26)
- 今年の映画ではピー助がゲスト出演。ラストの大集合にもそれらしき姿があるのでご安心を。 -- 名無しさん (2020-08-30 11:39:01)
- 食べるならジャイア~ン -- 名無しさん (2020-09-03 10:44:22)
- 恐竜狩りがネタにされるが過去の生物とっ捕まえるのは「モアよドードーよ永遠に」でも派手にやってるよね。死体の蘇生っていう倫理的な問題も地味にある…わざわざ過去に行かんでも化石復活させて狩ればよいのでは、合法の方 -- 名無しさん (2021-09-05 17:51:10)
- 単行本が出る度にその時の定説を採用するからティラノサウルスの前足が変わってたりする -- 名無しさん (2021-10-30 19:33:53)
- 記念すべき最初のドラえもん映画、リメイク版のキャッチコピー「君がいるから頑張れる」も好き。 -- 名無しさん (2022-02-10 20:08:33)
- 恐竜ハンター側の取り引き(ピー助の所有権を譲渡するならタイムマシンで住んでいた時代に送還してあげてもいい)というのを断固拒否していたのはで約束守りそうに無いだろう(送り届けるといっただけで場所は指定しないとか、ゴルベーザみたいにタイムマシン?何のことだあ?とかシラをきる)と本能というか勘で感じ取っていたのだろうか? -- 名無しさん (2023-01-18 21:15:04)
- タイム風呂敷か復元光線あったら映画が終わってしまう。 -- 名無しさん (2023-06-01 19:23:38)
- ↑そもそもタイムマシンに5人乗りは重量オーバーとか言ってたしこの経験を期にドラえもんが手持ちの道具やらなんやらを色々アップデートしたんだと思う。なお短編で既に出てたとかは無視するものとする。……え?タイム風呂敷は同作内でも出てたろって?包めないと効果を発揮しない安物だったんだよきっと -- 名無しさん (2024-08-16 21:21:36)
最終更新:2025年04月26日 18:26