ドラえもん のび太とロボット王国

登録日:2015/11/27 Fri 13:09:56
更新日:2025/04/04 Fri 15:20:42
所要時間:約 7 分で読めます





いっしょが、いちばん強い。


監督:芝山努
脚本:岸間信明
主題歌:KONISHIKI「いっしょに歩こう 〜Walking Into Sunshine〜」
挿入歌:KONISHIKI with 新山千春「ひとりじゃない ~I'll Be There~ 」*1

『ドラえもん のび太とロボット王国〈キングダム〉』とは、『映画ドラえもんシリーズ』の第23作目及び『大長編ドラえもんシリーズ』第22作目のタイトルである。
2002年3月9日に公開で上映時間は81分。
同時上映は『ザ☆ドラえもんズ ゴール!ゴール!ゴール!』と『ぼくの生まれた日』。

大山版の映画としては元になった原作エピソードが存在しない最後の完全オリジナル作品となっている。


【概要】

大長編ドラえもんではロボットをテーマとした作品がすでに二作あるが*2、それらの作品がロボットの反乱テーマ、所謂「フランケンシュタイン・コンプレックス」を題材としているのに対し、本作では「人間とロボットとの共生」そして「ロボットの感情」をテーマとしている。

さらに前二者との大きな違いが、ドラえもんそのものがロボットであることをテーマに組み込んでいる点である。
その為今までは見せ場が少なかったドラえもんが、本作では常にスポットライトが当てられ、まさにドラえもんの為に作られた映画といっても過言では無いほどの目覚ましい活躍振りを見せる。

個々のメンバーにも活躍の舞台が丁寧に割り振られ、ラストの見せ場も(結末はある程度読めるとはいえ)やっぱり感動的。

また、製作者の遊び心も多々あり、上記チャペック博士をはじめ、冒頭に改造される作業ロボットの名前が「ロビー」*3だったりと、マニアには思わずニヤリとさせられるセンスが垣間見える。

主題歌は「いっしょに歩こう 〜Walking Into Sunshine〜」。
同曲を歌ったKONISHIKIは、コニック役で声優に初挑戦した。


【あらすじ】

スネ夫にペットロボットの"アソボ"を自慢されたのび太は、いつもの如くドラえもんにねだるも拒否されてしまう。
そこでスペアポケットを(無断で)使って未来デパートからロボットを取り寄せようとするも、誤って100体のロボットを転送させて街で大騒ぎを引き起こしてしまう。
ドラえもんの返品処理で事態は収束したが、この転送の流れに巻き込まれて異次元のロボット・ポコが地球にやってきた。

故障してしまったポコを直し、元居た世界に帰すため、ドラえもんたちはタイムマシンを使って超空間を移動。ポコの故郷を目指すが、その「ロボット王国〈キングダム〉」ではジャンヌ女王とデスター司令官による恐怖の「ロボット改造計画」が進行していた…!


【登場キャラクター】

【メインキャラクター】

ご存知我らが地球ナンバー1のロボット。今作はロボットがメインテーマである故にドラえもん中心に物語が進み、今までの鬱憤を晴らすかのような大活躍をする。

最初は大長編らしくドジッ子スキルを発揮して四次元ポケットひみつ道具を超空間で落としてしまい(戦闘用のみで全部ではないが)、
その後もポコを助ける際に敵に囚われてしまうが…


本作ではドラえもんの親友として、ロボットの人間らしい感情について理解を示すシーンが多々描かれている。
また終盤ではいつも通りひみつ道具への応用力に頭を働かせ、「なんでも操縦機」で闘技場の巨大ロボットを操縦し、動き出したドロイド宮と対決した。

献身的にジャンヌを看病するポコを見守り、漫画版ではジャンヌが治った際に叱責を与えてその立ち直るきっかけを作った。

ジャイアンは映画では常にいい奴になる。
ラストは「空気ピストル」でラスボス撃破に貢献。
大長編で〆を飾るのはこれで二度目である。

アソボの飼い主。
そしてヘタレ担当でもある。異世界の危険を主張するのはお約束。
それでもドロイド兵に追われる際、「なんでも操縦機」(映画では通常の操縦桿)でタイムマシンを操作して敵の攻撃を凌ぐ等、活躍の舞台はある。

冒頭でのび太からペットボトルペットロボットをせがまれて拒否していた。漫画版ではその結果「ケチ」呼ばわりされてしまっている。*4
ラストでは「いいなあ、みんなママがいて…」と羨むドラえもん*5「ドラちゃんだってわたしの子供よ」の言葉で応じ、物語を締めくくった。

【ゲストキャラクター】

  • ポコ
CV:桑島法子
本作のゲスト・キャラクター。
ドロイド兵たちに追われている所をチャペック博士の電装マシンの実験に偶然巻き込まれ、地球にたどり着く。
元々ポコはジャンヌ王女の養育ロボット・マリアの息子(?)としてジャンヌの弟のように育ってきた。(乳兄弟のようなもの?)
そのため(自分が兵に追われる原因となっているにもかかわらず)ジャンヌを一途に想い続け、デスター司令の罠で溺れかけたジャンヌを助け、また彼女を献身的に看病した。
映画ではのび太より少し年下の少年のように描かれているが、漫画版ではまだ幼い子供として描かれており、性格も少々ワガママ。

  • ジャンヌ
CV:新山千春
ロボット王国の女王であり、「ロボット改造計画」を推進する張本人。
父エイトム国王がロボットを庇って事故で命を落とし、その際にデスター司令の悪魔の囁きに唆されて「ロボット改造計画」を発令する。
ロボットから感情を抜こうとする彼女の声はゲスト声優枠なので結構な重要キャラなのに棒読み気味皮肉にも無感情気味。
だが、デスターの罠にかかって生命を落としかけ、そこをポコに助けられたことやのび太・しずちゃん*6の叱責を受けて改心。
伝説の「虹の谷」を実現させるべく、ドロイド宮へと向かう。


  • マリア
CV:藤田淑子
ポコの母親(オイルが同じなんだろうか?)でジャンヌ王女の養育ロボット。母を早くになくしたジャンヌの母親代わりでもある。
「ロボット改造計画」発令に伴って城に幽閉され、そこでドラえもんと出会う。
ジャンヌはマリアのみ感情を抜く改造を断行することができず、彼女に残された最後の良心だったとも言える。
ポコとは耳のアンテナのようなものが共通しており、これによりポコと電波で通信することができる。これがラストの救出の足がかりとなった。

  • デスター司令
CV:森山周一郎
「ロボット改造計画」の黒幕で本作の実質的なラスボス。常に厳ついフルアーマー姿。
父の死を嘆くジャンヌにロボットの改造を唆し、さらにそのジャンヌをも葬り去って自らが国王になることを画策した。
ロボットは人間に従うだけの道具であればいいという考えを持ち、最終的には全てのロボットを人間に従うだけの道具と化したロボット帝国を創りだそうとしていた*7
異星のテクノロジーを警戒したのか、ドラえもんの兜に発信機を仕込んでいたあたりなかなかの策士。

先述の通り、終盤でドラえもんの最終兵器・石頭によってKOされてしまう。
実は後述するチャペック博士の弟。

森山氏は過去に『ブリキの迷宮』のラスボス・ナポギストラー1世を演じていたが、そのナポギストラーがデスター司令によって支配されるべきと言われているロボットを演じることになるというのは果たして何の因果だろうか…?

  • ドロイド兵
CV:小杉十郎太、中嶋聡彦
ロボット王国の下級兵士で感情を持たず、主人の命令に忠実に従う戦闘ロボット。
戦闘能力では一般のロボットを凌駕する一方、人間を傷つけることはできず(→「ロボット工学三原則」)、その点をチャペック博士に見抜かれて行動不能になった。
番犬ロボットを従え、無機質に標的を追撃してくる姿は正直かなり怖い。

  • ドロイド宮
デスター司令の最終兵器で、王宮そのものが巨大なロボットとして行動する。
のび太の操る闘技場ロボットと対決し、最後は四本足の一本をへし折られてバランスを失った。

  • コングファイター
CV:郷里大輔
ロボット闘技場におけるドラえもんの鋼鉄バトルの対戦相手。
名前どおりゴリラ風の外見の大型ロボットで、右手がトゲ付きの鉄球、左手がオノでさらにブーメランらしき飛び道具も持つ。映画版では両手ともトゲ付き鉄球に変形できる。
闘技場では300戦無敗の戦歴を誇る無敵の存在である。
時限バカ弾にブチ切れ*8、たつまきストローにも耐え抜き(漫画)、ほんものコピー機の分身もまとめて蹴散らす等の圧倒的パワーや頑丈さを見せるが、くすぐりには弱いらしく「くすぐりノミ」の前に降参。
素の彼は結構気のいい関西弁のおっちゃん。敵である自分の身をも案じるドラえもんの優しさに打たれ、自ら追っ手を避ける足止め役を買って出た。

  • チャペック博士
CV:穂積隆信
科学者で、ロボットの医者でもある。
ロボット王国にやって来たポコを修理する。電送マシンでポコを地球に送りつけたのも彼。
その後も要所でドラえもんたちをサポートする働きを見せた。
名前の由来はチェコの作家で「ロボット」の語源となった『R.U.R.』の作者、カレル・チャペックから。
先述の通り、実はデスター司令の兄。かつてはお互い科学者としての道を歩んでいたが、進む道を違えた。
チャペックはロボットとの共生を、デスターはロボットの支配ということになるだろうか。

  • クルリンパ
CV:野沢雅子
オコジョ型ロボットでチャペック博士の助手。
一行のロボット王国における案内役を務める。
中の人は日テレ版の2代目ドラえもん。

  • オナベ
CV:愛河里花子
チャペック博士と共に住む料理用ロボット。
口から材料を入れてお腹の中で調理する。
のび太が100体ロボットを注文した際にチョイ役で登場した芋掘りロボット(ゴン助)同様、藤子・F・不二雄の『21エモン』からのゲスト出演である。

  • ロビー
CV:銀河万丈
農作業用ロボット。アリスの家で働いており、アリスと仲良くしていたが、
「ロボット改造計画」により感情を抜き取られ、ただ農作業を行うだけの無機質な「X-01」と化してしまった。
漫画版では最後には感情が戻されたが、映画ではその描写がないので若干の後味の悪さが残る。まぁ改造令が取り止められたのだから画面の外で助かったと考えるのが妥当だが。

  • アリス
CV:南央美
ロビーが働く家の少女。感情を抜き取られて帰ってきたロビーに「ボールで遊ぼう」と言うが、
ボールを踏み潰された上「そんなプログラムはない」と言われ号泣する。
流石に残酷だとされたか、映画版ではボールを投げるも返して貰えず、感情の入っていない声で「なんなりと申し付け下さい」と繰り返すだけのロビーに涙を流す描写になった。

  • トニー
CV:飛田展男
〈虹の谷〉を開拓して生活する男性。

  • コニック
CV:KONISHIKI
トニーのパートナーのロボット。

  • エイトム国王
ロボット王国の先代国王でジャンヌの父親。故人。
惑星全土の開拓工事を自ら指揮していたが、事故で逃げ遅れたロボットを庇い重機の下敷きとなり生命を落としてしまう。*9
それがジャンヌ王女に「ロボット改造計画」を推進させるきっかけとなってしまった。
名前の由来はAtom=アトムで、おそらく『鉄腕アトム』から。

  • アソボ
スネ夫が飼い主のペットロボット。
飼い主に似たのか、はたまたオーダーメイドの一品物なのか、顔までスネ夫そっくり。
ドクターロボットの注射でケツを掘られてネコになってしまうなど調子が悪くなり、ジャイアンに殴られて暴走。そのせいでポコが故障するハメに。しかも「こわれちゃダメだから」と冒険にも連れて行ってもらえず。ミクロスにはなれなかったか。
名前の由来は言わでもがな、SONY謹製の高性能ペットロボット。

  • ゴンスケ
CV:島田敏
のび太が未来デパートから取り寄せたロボット100体のうちの1体。
21エモン』にも登場した芋掘りロボットである。
いつもの空き地を勝手に芋畑にしていた。

  • コロ助
  • Pマン
キテレツ大百科』、『パーマン』に登場したロボット。
漫画版のみ登場。未来デパートのロボット100体に混ざっていた。
この他、明らかに『オバケのQ太郎』のQ太郎・O次郎っぽいロボットもいる。

  • タイムマシンの時空間ナビ
CV:杉山佳寿子
地球ではない異世界から来たポコの故郷を探すためにタイムマシンに設置。
時空間の台風・タイムホールの接近なども教えてくれてなかなか優秀。
漫画でも装置自体は登場するがしゃべらない。
中の人は『宇宙開拓史』のチャミーや前の年に時渡りする幻のポケモンをやってた。

【用語】

  • ロボット王国
人間がロボットとともに宇宙船で移住してきて開拓された惑星。
現在はジャンヌ女王による「ロボット改造計画」が進行中で、ロボットたちの感情が次々と奪われてしまっている。
超高性能なロボットが多数存在するが、「ロボット王国」の名前どおり中世の牧歌的な世界観である。

なお地球のロボットとは設計思想が異なるらしく、故障したポコをドラえもんは直すことができなかった。タイムふろしきや復元光線は未来の地球にも存在しない物質には使用できないのかもしれない。見たことある回路に改造されずにすんだ。

  • 虹の谷
人間とロボットが協力して作り上げたと言う理想郷。
現実に存在するのは、「ロボット改造計画」に反対する者たちが伝説を目標に作り上げた隠れ里で、人面岩の先にある。
ジャンヌはこの村を見てロボット王国の改革を決意した。


【余談】

ドラえもん映画作品としては最後のセル画制作となったが、EDの一部は試験的にデジタル制作となっており、テロップも電子テロップが用いられた。

KONISHIKI氏の歌う主題歌は、本作の雰囲気に合った良曲である。
なお前述のように、KONISHIKI氏はゲスト声優としても出演している。
演技力に問題があったようにも見えないので、せっかくならSUMOUで戦うロボットかなんかとして活躍してほしかったところである。

公開後に発売された絵コンテ集「THIS IS ANIMATION 芝山努と映画ドラえもん『のび太とロボット王国』の世界」では、
芝山監督による架空の実写版の撮影ドキュメンタリーが公開されている。

「ポコ役・マリア役・ジャンヌ役・チャペック役のキャストはハリウッド出身の俳優」
「チャペック役の本名はクリントン・イーストウド」
「役に成り切る為の小道具を、少々納得いかなそうな表情でつけるポコ役」
「中世ヨーロッパの鎧を着て、ノリノリのドラえもん」
「クランクアップで全員集合」という裏設定満載・且つ遊び心爆発の大量のイラスト群には妙な説得力がある。








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最終更新:2025年04月04日 15:20

*1 OP以外の主題歌が2曲制作されたのは、『のび太と夢幻三剣士』に次いで2度目。

*2鉄人兵団』、そして『ブリキの迷宮』。

*3 アイザック・アシモフの「私はロボット」より。

*4 ラストではのび太がその事を謝り、ママも笑顔でコレを許している。

*5 ドラえもんは工場で製造された量産型ロボットなため「親」が存在しない。ちなみに同じロボットでは『モジャ公』のドンモは「自分を組み立てた機械」を「母」としていた。

*6 しずちゃんは漫画のみ。

*7 しかし、それが成功したとしてもその後どうしようとしたのかは分からずじまい。無論、この発言がのび太の逆鱗に触れたのは言うまでもない

*8 漫画版では自身が笑いの対象となったため、映画ではドラえもんが自爆したのを挑発と勘違いして。

*9 ドラえもんにて明確に人が死ぬ描写がなされた、かなり珍しい場面である。