強奪(遊戯王OCG)

登録日:2023/12/09 Sat 11:45:00
更新日:2025/04/13 Sun 20:41:49
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強奪
装備魔法
このカードを装備した相手モンスター1体のコントロールを得る。
相手のスタンバイフェイズ毎に相手は1000ライフポイント回復する。

【概要】

遊戯王OCGにおける魔法カードの1枚。
初登場は2000年4月の第2期パック「Magic Ruler -魔法の支配者-」からで、OCGの中でも極めて古参カード。
絵柄は男性が荷物を別の男性に奪われて逃げ去る瞬間の情景。後に革命を起こされる国の一幕であろうか。
長きに渡り禁止カードとなっていたが、禁止制定前には当時のデュエリストではデッキに組み込んだことのない者はほとんどいないであろうかつ、相手に使われた経験のない者は一人もいないであろうほどに環境とともにあったパワーカードであった。

その性能は一言で言えば、数あるコントロール奪取系カードにして装備魔法カードの中でも最強格の1枚。
心変わり》と双璧を成している。

このカードの強みを簡潔に説明すれば、
「発動条件が無く、永続的にコントロールを奪うことができ、攻撃や効果の使用にも一切の制限が無い」
ことになる。
現在のコントロール奪取系カードを知っている人からすれば論外のパワーカードであるのは一目瞭然だろう。

細かく利点を解説すればこのようになる。

長所

  • 発動条件が無い
現在のコントロール奪取系カードは《心変わり》や《精神操作》などの初期のカードを除き、なにかしらの条件やコストを払って発動できるものがほとんどである。
モンスター効果も《No.11 ビッグ・アイ》のようにどんなデッキでも出せるわけではない重いものがほとんど。
霊使いではコントロール奪取に成功するためには入念な準備と運が味方してやっとである。
かなり緩い条件でコントロール奪取できるグレイドルも特定の条件での破壊か戦闘破壊という段階を踏む必要があるが、《強奪》にはそれもない。

  • 永続的にコントロールを奪える
大概のコントロール奪取カードは《心変わり》のように「そのターンのエンドフェイズまで」という制約がついている。
このため、奪ったモンスターをそのターンのうちに素材にして消費するか、そのターン中に勝利を確定しなければいけないというプレッシャーを使い手は強いられる。
だが《強奪》は奪いっぱなしにできるのでその心配はない。なにも考えずに使用しても「1:2」交換が成立する莫大なアドバンテージを得ることができる。コントロール奪取系カードは成功すれば《強欲な壺》以上のアドバンテージを得られる可能性があるが、《強奪》はその中でも発動条件の無さと特にかみ合っている。
上記のグレイドルにもこの点は当てはまり出張要員にもできるが、召喚権を消費することや専用デッキを構築しなければ十全に発動できないため、どんなデッキでも気にせず入れられる《強奪》とは汎用性では比べ物にならない。

  • 攻撃や効果の制限。素材としての使用にも一切の制限がない
《大捕り物》など、特に近年のコントロール奪取系カードには「奪ったモンスターは効果の発動や攻撃ができない」といった何らかの制約がついたものも多い。
要するに強力な封殺能力持ちやフィニッシャー級の《ヴァレルロード・S・ドラゴン》だろうが《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》だろうが奪っても自分の戦力にはできずに素材として消費することを最初から強いられるわけだが、《強奪》はそのままこちらの戦力にできる。
この点は《心変わり》と同等であるが、上記の永続的にコントロールを奪えることと組み合わさって、そのターンにとどめを刺せなかったとしても強烈な妨害効果が相手に向かうことになる。

  • 装備カードであるという点
この点は欠点と利点の両面を持っている。
利点のほうでは、装備カードのサポートを受けることができる。
説明不要の《アームズ・ホール》でのサーチ・サルベージでの使いまわし。通常召喚権の消滅も相手モンスターの奪取に成功すれば気にならない。

  • ノーマルカード
これほどの超絶性能でありながら初出のレアリティは最低のノーマル
昔のストラクでも何度かノーマルで再録されており、サイフポイントの少ないお子様でも簡単に3積みできるほど手に入った。
登場から僅か1か月後に規制を入れてるのに当時のコナミは何を考えていたのか。
ちなみに当時の再録パック「DUELIST LEGACY Volume.1」に収録された際にはスーパーレア、「BEGINNER'S EDITION 1」ではウルトラレアに格上げされている。

これらの数々の利点が抜群に噛み合っていることで、最強のコントロール奪取カードにして最強格の装備カードと呼んで過言ではない。
とはいえこの世に完全無欠のカードというものは無い。かなり大きな欠点も背負っている。

欠点

  • 対象をとる
大半のコントロール奪取カードにも共通するが、対象にとる効果への耐性やカウンターには無力。
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン》や《オベリスクの巨神兵》相手には発動すらできないし、 《青眼の光龍》《シャイニート・マジシャン》などには無効化される。
サクリファイス・エスケープでも回避されてしまう。
類似の弱点として魔法カードであるので魔法封じも効く。
なんの冗談か悪政を敷いて民衆に反乱を起こされる王様の《王宮の勅命》で無効にできる。あの王様も盗賊を取り締まるとかやれば仕事できるじゃん

  • 装備カードであるという点
利点も大きいが欠点も大きい。
まず装備カードの絶対条件として裏側モンスターには装備できないので、裏側モンスターは奪えない。この点は《心変わり》に明確に劣る。
装備状態が確定して初めて効果を適用できるのも装備カードの条件なので、発動に対して《サイクロン》などで破壊されてしまうと奪えずに不発になる。
装備し続けることで効果を適用するため、奪った状態であっても《強奪》が破壊されればそのモンスターは相手の元に帰ってしまう。
一方で裏側表示に変更する《月の書》などでは条件が異なり、《強奪》の発動に対してその相手を裏側にされてしまった場合は対象不適切となってコントロール奪取はできないが、
すでに奪ったモンスターを裏側にされても《強奪》は対象不在となって破壊されるが装備していたモンスターは《強奪》との関係がリセットされるのでモンスターは元の持ち主には帰らない。

  • 相手のスタンバイフェイズごとに1000ライフ回復させてしまう。
インフレが進んだ現在ではほぼ無視できる欠点ではあるが、当時は《光の護封剣》での時間稼ぎが有効な環境であったので、睨み合いになっているうちに相手のライフが万を超えてしまうという事態もままあった。
その為、奪ったモンスターは早々にリリース(生け贄に)してしまうのが定番だった。
一応《シモッチによる副作用》でバーンしたりもできた。

  • 先攻では使えない
先攻制圧が絶対正義のようになっている現在だからこその欠点と言える。
当たり前だが相手モンスターがいなければコントロール奪取カードは意味が無い。《心変わり》が制限復帰しながらも採用率の低いのはここにある。
だが0ターンで展開してくるティアラメンツのようなデッキもあるので、まったく無意味かというとそうでもない。



などの欠点によって対処方法は明確であり、もっとも有効なのは《サイクロン》などの速攻魔法で奪われる前に破壊してしまうこと。
そのため現役時は《サイクロン》を対《強奪》用に温存しておくのは基本戦術であった。

しかしそれでも『入れない理由が無い』というほどのパワーカードだったことは紛れもなく、制限と禁止を行ったり来たりした後に2007年9月以降はずっと禁止入りしていた。
《心変わり》でさえ帰ってきて、しかも採用率がそんな高くない今では禁止カードにするまでもないのでは?
という意見もあるが、こちらには「奪いっぱなし」にできるという点と「装備カード」としての利点があるので難しいという話もある。
少なくとも制限復帰したら《聖騎士の追想 イゾルデ》を使うデッキでは必須カードとなるだろう。
その場合は《焔聖騎士-リナルド》で即座にサルベージしてコントロール奪取するコンボが可能となる。
総じて、戦士族をある程度使うデッキなら入る出張要員となり得ることが予想され、やはり制限復帰は難しいと思われていた。

…のだが(「対象をとり続けるコントロール奪取」の裁定変更もあったとはいえ)、環境の先攻優位インフレが追い越した模様で、2024年10月にノーエラッタで制限復帰。
更に2025年1月には準制限に、4月には無制限カードにとどんどん緩和。
同じくノーエラッタで3枚積めるように戻った《心変わり》と計6枚可能、もちろんそんなデッキはほぼ見ない…という往時を知るデュエリストからすれば魔境環境を象徴する元禁止カード達になった。

海外では2015年1月に一度制限に緩和されたことがあったが、僅か3か月後に早々に禁止カードに逆戻りした。
しかし2024年1月に制限復帰。そちらの動向がOCGでの緩和にも影響を与えたのは想像に難くない。
ただし海外では2025年現在《強奪》《心変わり》共に制限カードのままで、それ以上の緩和は進んでいない。

ちなみに、環境で活躍しまくった汎用パワーカードでありながらアニメで登場したことはない。

【類似カード】

(こちらでは『装備カードとなってコントロール奪取するカード』を紹介。その他の類似カードは《心変わり》を参照)

  • 《薔薇の刻印》
装備魔法
自分の墓地から植物族モンスター1体を除外し、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
(1):装備モンスターのコントロールを得る。
(2):自分エンドフェイズに発動する。
このカードの(1)の効果は次の自分スタンバイフェイズまで無効になる。

アニメ遊戯王5D's十六夜アキが使用した、墓地の植物族を除外することでコントロール奪取できる魔法カード。
比較的緩い条件で発動できるが、相手のターンになると奪ったモンスターが帰ってしまう。
一応さらに次の自分のターンには再奪取できるが、今の環境でそんな悠長が許される可能性は限りなく低い。
植物族には装備カードとのシナジーもほぼ無いため、《心変わり》の下位互換と呼んで差し支えないだろう。

余談だが、DUEL TERMINALで《夜薔薇の騎士》と共にスキャンするとアキをイメージした隠しデッキを使うことができる。

  • 《堕落》
装備魔法
相手フィールドのモンスターに装備できる。
(1):装備モンスターのコントロールを得る。
(2):相手スタンバイフェイズに発動する。
自分は800ダメージを受ける。
(3):自分フィールドに「デーモン」カードが存在しない場合にこのカードは破壊される。

フォーリン・ダウンと呼ぶ。調整された《強奪》としてはもっとも知名度の高いカード。
フィールドに「デーモン」のカードがある場合でないと自壊する条件がついたが《強奪》のメリットはそのまま、相手ターンのデメリットが回復から自分に800のダメージと変わったものの、明確に《強奪》を意識したカード。
ただ維持条件自体は緩いが、相手モンスターを《迅雷の魔王-スカル・デーモン》などを呼ぶために生け贄にしたい場合でもまずは下級デーモンを呼ばないと使えなかったり、呼んだデーモンモンスターを《奈落の落とし穴》で除去されてしまって腐ったりと、【デーモン】でも扱いにはよく考えて使う必要がある。
維持条件になるデーモンカードは魔法・罠でもよいため、《デーモンの斧》や《デーモンの宣告》でも可。
もちろんこのカードのためにデッキバランスを崩してしまっては本末転倒なのでよく考えて詰むこと。
デーモンがいなくても発動自体はできるため、《白竜の忍者》など何らかの方法で自壊を防いでしまえば《強奪》と変わりない運用ができる。


追記・修正は《鉄の騎士 ギア・フリード》を奪おうとして腰を痛めてからお願いします。

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最終更新:2025年04月13日 20:41