ルシウス・マルフォイ

登録日:2024/01/28 Sun 20:30:00
更新日:2025/02/12 Wed 12:37:46
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やらかし インフレの被害者 ウィーズリー家と真逆で犬猿の仲 ジェイソン・アイザックス スネイプの数少ない友人 スリザリン ハリー・ポッター フォイ フォイのある項目 ヘタレ マルフォイ家 ルシウス・マルフォイ レイシスト 中ボス 何故かなかなか立たなかった項目 何気にキーパーソン 保身の天才 勝ち逃げ 厳格 反面教師 名士 名誉不死鳥の騎士団 家族共々無事生き延びることにかけてはガチで有能な男 差別主義者 当主 彼の世渡りは見習おう!! 愛すべきフォイ 死喰い人 父上 父親 狡猾 理事 立ち回り上手のフォイ 純血主義 聖28一族 裏切り 親子仲は良好 話が進むに連れ凋落 諸角憲一 貴族 貴族主義 金持ち 金髪ロング 闇の魔法使い 陰謀 魔法使い



「マルフォイ家の名前は、まだそれなりの尊敬を勝ち得ている」

【概要】

ルシウス・マルフォイ(Lucius Malfoy)とは、『ハリー・ポッター』シリーズの登場人物。
映画版ではジェイソン・アイザックス氏が担当。日本語吹き替えは諸角憲一氏。

魔法界で「間違いなく純血の家系」と称される「聖28一族」の雄、マルフォイ家の当主。
ナルシッサ・マルフォイも「聖28一族」の一つであるブラック家の出身で、彼女との間には一人息子のドラコ・マルフォイを授かっている(ちなみに息子ドラコのミドルネームは「ルシウス」)。
本編開始時点ではホグワーツ魔法魔術学校の理事も務めていたほか、魔法省にも先祖代々から多大な寄付を施しており、魔法省トップの大臣にすら対等以上の物言いで意見するほどの権勢を振るう(ただし、ルシウス本人が魔法省でどのような地位・役職にあるのかは不明)。

そして裏に回れば、闇の帝王ヴォルデモート卿の信奉者・死喰い人の一員、そしてリーダー格でもある。
闇の帝王全盛期には、ウィルトシャーにあるマルフォイ邸を死喰い人の拠点にもしていた。


顔つきは青白く尖った顎、薄いブロンドの髪と冷たい灰色の目、高貴な尊厳をたたえた風貌が特徴。この顔つきは息子や孫に強く遺伝している。
また、左前腕の内側に闇の印を刻んでいる。

美男の部類には入るが、アズカバンでまる一年間過ごした結果、吸魂鬼によほど絞られたのか、はたまたヴォルデモートにさんざん折檻を受けたためか、目は落ちくぼんで声はかすれ、肌は黄ばんで見る影もないほど落ちぶれてしまう。


【マルフォイ家】

「間違いなく純血の血筋」とされる「聖28一族」の一角……というよりも筆頭に挙げられるほどの、長い歴史と莫大な財産と広範な人脈を誇る、魔法界有数の実力派名門。

表向きは純血主義・反マグル主義を掲げているが、実際には投資などさまざまな面で権力を伸長してきた実業家一族の側面もある。更に裏では必要とあらばマグルの勢力とも癒着し、勢力を扶植していくという、狡猾を通り越して融通無碍な一面を持つ。
そうした資金力と実業家気質故に、マグル社会以上に貴族が強い魔法界では強大な権力を握っている。
魔法省にも先祖代々から多大な寄付を施しており、役職以上の影響力を誇る。


始祖はアーマンド・マルフォイ
1066年に征服王ウィリアム(1027~1087)*1がフランスからイギリスに進出した際、彼に仕えて渡英。魔法使いとして貢献したため、報酬としてウィルトシャーの豊かな土地を与えられた。以後、一族はここに本邸を置く。
(同じようにウィリアム征服王とともにやってきた家柄がイギリス魔法界の名門には多いそうである)
その後は、一面では魔法族の純血至上主義を掲げて魔法界貴族の求心力を得ながら、一面ではマグル社会の貴族層にも食い込み続けていた。
ルシウス・マルフォイ一世はエリザベス一世(1533~1603)*2と結婚しようとして断られた過去があるという。
マグルの経済界にも進出しており、赤ワインを製造・販売していた。これは魔法界でもマグル界でも良質のブランド品として取引されたという。

しかし1692年に国際魔法機密保持法が可決されてからは、最初こそこの法案に反対していたが、すぐに受け入れると急速に立場を転換
これまでのマグル社会との関係をすべて断ち切り、エリザベス一世への婚姻政策などの歴史さえ否定した。
以後は魔法界貴族層の雄として振る舞う。既に十分なまでの資産を持ち、さらに資産運用のノウハウまで待っていたため、そうした大転換も可能だったようだ。
意外にもマルフォイ家から魔法大臣が出たことはないが、自ら魔法大臣となるのではなく、資金と謀略を用いて自分好みの大臣を作り出して裏から操ることを好んだ。

実際数多くの暗躍を仕掛けたらしく、
  • 14世紀のニコラス・マルフォイは自身に不利益なマグルを黒死病に見せかけて殺した
  • 18世紀後半のセプティマス・マルフォイは魔法大臣アンクチュアス・オズバートを傀儡にした
  • アブラクサス・マルフォイ(ルシウスの父)は史上初のマグル出身の魔法大臣ノビー・リーチを1968年に病気にかけて退陣させた
……等と噂が立ったらしい。
いずれも証拠は出なかったようで裁かれたという記録もない。これを単なる陰謀論でしかなかったと見るか、歴史書風の暗喩と見るかは人それぞれだろう*3

一方、純血主義を掲げる一方で、閉鎖的な近親交配が遺伝的に危険であることも知っていた。
そのため貴族会の通婚のみならず、時にはひそかにマグルの両親をもつ魔女を妻として迎えてきたこともある。
そうしたマグル界出身者は、家系図に工作してあたかも魔法界出身であるかのように偽ってきたという。
しかしそうしたことをしていながらも、純血主義を掲げて一族内の通婚を重視したブラック家、レストレンジ家、ゴーント家などとの関係も良好であった。



【性格】

そうしたマルフォイ家の当主として生まれ育っただけあって、ルシウス・マルフォイはほかの純血の名家の例に漏れず純血主義者で、かつ貴族主義者だった。
その為、マグル&マグル生まれ融和派のアーサー・ウィーズリーとは思想信条・経済力・子供の数などあらゆる面が真逆なため激しく対立しており、街中で取っ組み合いの大喧嘩を繰り広げるほど犬猿の仲。

家族愛は強く、妻と同様に息子を溺愛している。
しかし、しつけや教育に関しては厳格で、私情よりも風紀を優先する一面がある。
息子ドラコの成績が悪ければ人前であろうと詰り、息子が「ハーマイオニー・グレンジャーが贔屓されるからだ」と見苦しく言い訳をすれば「魔法界出身でもなく予備知識もない小娘に、全科目で負けているお前が恥じ入って然るべきだ」と厳しく指弾するほど。
(同時に、相手がたとえ思想的に合わないマグル出身者であろうとも、認めるべきところは認める大人らしい一面もある。血筋はしっかり軽蔑しているが)
さらに当初はドラコを北欧のダームストラング専門学校に入学させようとしていたほど*4で、一人前に育てるためなら親元から離すことも辞さない。
そうした厳格さは周囲にも知られており、一巻でドラコが処罰を受けた際、「父が黙っていない」とドラコが発言すると、ルシウスを嫌うルビウス・ハグリッド「お前の父親ならこの処罰を当然だと言うだろう」と断定していた。

それほど厳しく接していながらも、同時に強く愛しているのが特徴。
それこそ七巻で描かれている通り、戦場で息子が巻き込まれた際には敵味方の立場も無視して息子のもとに駆け寄り、家族を守ろうとしている。
また厳格であっても家庭内暴君ではなく、前述の「ダームストラング専門学校への入学」は妻のナルシッサが強く反対したことで、自分の意見を取り下げてホグワーツへの入学を許している。

そうした諸々の面から、厳格であっても息子ドラコからは敬愛されており、彼がアズカバンに収監された際にはドラコが深い怒りを抱いたほど。


友人としては、在学中の知り合いだったクラッブ、ゴイル、ノットといった面々のほか、ダームストラング校長のイゴール・カルカロフ、魔法省の処刑人ワルデン・マクネアなどがいる。いずれも死喰い人繋がりでもある。
セブルス・スネイプは在学中の後輩で、出自や性格、能力への嫉妬からさげすまれていたスネイプを、当時からその実力を認め、交友を結んだ。
本編中でも、ダンブルドア失脚時には後任の校長にスネイプを推薦するつもりだったらしい(ただし、彼からは本心を明かされることはなく、ルシウスの側もついに悟ることはなかった)。


収集癖があり、闇の魔道具や貴重な歴史ある物品を集めて飾っている。
屋敷には他にもアルビノの白クジャクや大型犬など、贅沢な動物もたくさん飼っているようだ。


ただし死喰い人の一員だったこともあり、冷酷で邪悪な闇の魔法使いであることも間違いない。
登場のたびに陰湿な嫌みを縷々と述べ、マグルを公然と蔑視し、屋敷しもべ妖精には高圧的に当たり散らす。
普段の貴族らしさに反して粗野な面もあり、敵対するアーサー・ウィーズリーとの口論の果てに殴り合いの喧嘩を起こす、同窓会気分で近隣のマグルに呪いを掛けるなど、暴力も平気で振るう。

特に二巻では元凶
主君から預かっていた「リドルの日記」を、敵対するアーサー・ウィーズリーの娘・ジニーの持ち物の中に紛れ込ませ、己の手を汚さずして『秘密の部屋』事件の犯人になるように仕向けた。
ヴォルデモート卿の手による魔道具を危険性を承知で利用する、しかもそれが敵対する相手を陥れるための私的な悪意によるものとあって、完全な悪人である。
(もっとも、当のルシウスはその古ぼけた日記がヴォルデモートの分霊箱だとまでは知らなかったと思われる。日記はヴォルデモート復活の鍵となり得るものであるが、ルシウスは明らかにヴォルデモート復活を望んでいない*5
 主からは「ホグワーツに送り込めば秘密の部屋を開いて怪物を起こす鍵。自分の命令が下ったときにだけ使え」と命じられていた。
 かつてホグワーツで『秘密の部屋』事件が起きた1943年にはまだ生まれていなかったこともあり、当時具体的に何が起きたかは知らなかったらしい)

四巻では死喰い人の残党たちを率いて小規模なテロを起こしていた。
このテロの目的も「死喰い人の恐怖に怯える人々を嘲笑うため」という実にくだらないものだったらしい。


こうした「リドルの日記の私的利用」「闇の帝王の名前を利用した示威行動」からわかる通り、実のところ闇の帝王にも忠誠心を持っておらず、純血主義さえも「自分の権威を保持する思想的な道具」としか思っていないフシがみられる。
ヴォルデモートが失脚した際には、いち早く「協力を強制された」と言ってアルバス・ダンブルドアの側に逃げ延びた。
そしてヴォルデモートが復活するやまたも最初に寝返り、闇の陣営に帰参。
しかしその後は(相次ぐ失態からヴォルデモートに見限られ、処刑の危険性も高くなったからだが)ヴォルデモートへの恐怖心を露骨に表すようになった。
こうした露骨な寝返りの速さと腰の定まらなさは、「ヴォルデモート」「純血主義」に彼が軸足を置いていないからである。


では彼が本当に大事にしているものは何かというと、第一に「家族」、第二に「マルフォイ家の保身」。
「ヴォルデモート」も「純血主義」も、それらに比べれば二の次・三の次でしかない。

というより、ヴォルデモートが失脚するや闇の帝国も無残に崩壊したことから、ヴォルデモート復活後も熱意を持っていなかった節もある。



【能力】

保身を第一にする中途半端な小悪党なのだが、それでも「名門貴族の当主」「魔法界の重鎮」「死喰い人のリーダー」を務めただけあり、魔法・魔術に関する腕前はそれなり以上に高い

「半端な人間が使っても鼻血一つ出させられない」といわれる「アバダ・ケダブラ」を使いこなす。
さらに五巻ではベラトリックス・レストレンジの放った攻撃呪文を、横から放った魔術で強引に屈折させる技を披露した。
ハリー・ポッター』世界での呪文は、基本的に一方通行、呪文を止めるには反対呪文で相殺するか防御呪文で弾くかで処理されるのだが、「横から呪文を捻じ曲げる」という魔法は作中でもルシウスしか行っていない。

映画版では押されるばかりで、かついずれも派手にふっ飛ばされているが、
それでも「神秘部の戦い」にて、シリウス・ブラックに対して奇襲ができる状況であったのに、わざわざ「ブラック!!」と呼んで正面から正々堂々と戦う一面もあった。


使用している杖は45.7センチ(18インチ)。材質は楡で、ドラゴンの心臓の琴線を組み合わせたもの。
この長さは作中最長だが、これはルシウス個人のものではなく「マルフォイ家の家宝」として当主に代々伝わる杖らしい。
七巻の序盤にてボスに借りパクされた挙句、ハリーの杖の対ヴォルデモート自動迎撃機能によって破壊されてしまった。歴史的価値も相当であろうにもったいない……
しかし映画版ではそれとは別の杖を所持している描写があり、借りパクされた後はこれを使用している。詳細は不明だが、これがルシウス個人の杖である可能性がある。
また映画版では、ステッキの中に杖を仕込んでいるシーンがある。


【来歴】

◆前歴

1953~54年ごろの生まれ。誕生日は不明。
父親はアブラクサス・マルフォイ*6。ちなみに祖先には「ルシウス」という名前の人物がいるため、正式には「ルシウス二世」である。

ホグワーツ魔法魔術学校在学中はマルフォイ家の例に漏れず、スリザリン所属。
五年生時は監督生を任されるなど、模範生だったらしい。ホラス・スラグホーンの「スラグクラブ」にも招かれている*7
しかし在学中のエピソードについて明かされたことはほとんどなく、得意科目などは不明。
在学中の後輩にはセブルス・スネイプがいる。彼が1971年に入学した際には監督生として出迎えた。
スネイプは半純血の出自や狷介な性格、その割に高い能力などから、周囲に嫉妬され貶められていたが、ルシウスはスネイプの実力を認めて交友を結んだという。
その後のスネイプには特に孤立した描写はないので、ルシウスの引き立てで人間関係が改善した可能性がある。
彼との交誼はお互いが卒業してからも長く続いた。
後に妻となるナルシッサ・ブラック(1955年生まれ)も在学中の後輩。

三年生当時、時の魔法大臣ノビー・リーチ(Nobby Leach)が謎の急病で早期辞任する。
彼はマグル生まれで初めて魔法大臣となった人物だったが、そんな彼が病気で辞任したため、世間ではマルフォイ家の陰謀ではないかとうわさされたという。
もちろん当時学生のルシウスにそんな権力はないため、やったとするならその父親アブラクサスか祖父であろう。なお、前述の通りこの噂に証拠は出なかった。

卒業後はナルシッサ・ブラックを妻に迎え、父の隠居に伴いマルフォイ家の豊富な財産も継承する。
また参加時期は不明だが、ヴォルデモート支持者の死喰い人に所属する。
ヴォルデモート失墜までは死喰い人のリーダー格でもあった。

だが、死喰い人は「ヴォルデモート在学時代の学友達」が最初のメンバーとなっている。
そしてルシウスはヴォルデモート在学中はまだ生まれてさえいない。つまり「死喰い人の最古参メンバー」ではありえない。
にもかかわらずリーダー格に昇りつめ、さらに後年の「神秘部の戦い」では、最古参メンバーのノットが倒れると「放っておけ!」と切り捨てていることから、最古参メンバー以上の地位を持つほどにヴォルデモートから認められていた模様。
また当時の死喰い人は作中本編の時期よりも人数・人員ともに充実していたとされるため、層が厚かったころの死喰い人でも上位に食い込む実力があった模様。


しかしヴォルデモートが消息を絶つと、真っ先にアルバス・ダンブルドア率いる反ヴォルデモート勢力に降伏。
「服従の呪文によって支配されていた」と言い訳し、さらにかつての仲間たちの情報を知りうる限り提供して「貢献」。ヴォルデモートを喪失した闇の帝国を壊滅させるのに大きな役割を担った。
このことと、さらに魔法界有数の人脈と資金力を持つ名門マルフォイ家の当主ということもあって、死喰い人時代の悪事をほとんど咎められることなく戦後を生き延びる
ホグワーツ理事になるなど、社会的地位もほとんど毀損しなかった。
(ホグワーツ理事時代の話として、魔女とマグルの結婚を扱う童話「幸せの泉」をホグワーツの書庫から排除するよう運動したが、ダンブルドアから却下された逸話がある)

その一方、ヴォルデモートから預かった「リドルの日記」を筆頭として、所持が禁止されるレベルの魔道具は吐き出さず、引き続き大量に所有していた。
これら闇の魔術の魔道具は、マルフォイ家が先祖代々培っていたものの他、死喰い人時代に仲間たちから預かった、もしくは死喰い人として活動するあいだに収集したものと思われる。
彼自身、蒐集趣味もあったらしく、本人のコレクションも含まれているらしい。
また自分と同じ「徹底抗戦を選ばず反ヴォルデモート勢力に降伏した元死喰い人」たちとの人脈も維持し続けた。
もっとも、これは「いずれヴォルデモートが復活した時に合流するため」なんかではなく、ただ人脈を保っておきたかっただけらしい。まあ人脈ってのはいろいろ便利ではあるし。


◆二巻

「残念ながら私ども理事は、あなたが現状を掌握できていないと感じておりましてな」

本編初登場。
夜の闇(ノクターン)横丁にて、闇の魔道具を扱う店『ボージン・アンド・バークス』を訪問。
もともとマルフォイ家には危険な闇の魔道具が大量に収拾されているが、近年は魔法省の摘発が厳しくなってきたため、「表に飾ってある」物品を売却に来た。特に「マグル製品不正使用取締局」が動いているらしい情報を得ており、その局長アーサー・ウィーズリーの手引きと睨んでいる。
しかし、手放したのはあくまで目に付くよう置いてあるレベルのもので、本当に自分が価値あるものとして収集している「秘宝」はまた別の、屋敷の応接間の地下にある『秘密の部屋』に隠していた。

息子ドラコには「クィディッチの選手に選ばれるよう、選手全員分の箒として最新型ニンバス2001を買ってやる」と学生生活を支援しながらも、上記の通り「成績が今のレベルのままなら、行き着く先はコソ泥程度かもしれんな」と人前で厳しく叱咤する一面も見られた。
また店長ボージンとの対話では威厳ある大物描写も結構あった。ボージンも別に心服しているわけではなさそうだが、彼の前では卑屈な態度をとり続けている。

その一方、敵視するダンブルドアを失脚させるため陰謀を企てる。
死亡説も主流化していた元主君ヴォルデモートから預かっていた「トム・リドルの日記」をジニー・ウィーズリーの持ち物のなかに紛れ込ませ*8、「秘密の部屋」事件を引き起こす。
半世紀前と同じく、ダンブルドアを筆頭とする学校教師はこの問題を解決できず、数多くの犠牲者が出てしまう。
これを機としてルシウスは学校の理事会で「ダンブルドア停職」を提議。他の理事達を裏で脅迫しつつ理事会全員の承認を獲得し、ダンブルドアに突き付けた。
折しもダンブルドアは魔法省大臣のコーネリウス・ファッジとともにルビウス・ハグリッドの小屋を訪れており、ファッジからも反対意見を受けるが、ルシウスは手続きを踏んでいたこともあって、見事にダンブルドア追放を達成する。
後任は暫定として教頭ミネルバ・マクゴナガルが担当したが、ルシウスは正式な後任にスネイプを推薦するつもりだったらしい。

またこれと前後して、敵対しているアーサーがマグルの自動車に不正な魔術をかけて行使していたことも発覚。
よりによって「マグル製品不正使用取締局」の局長である彼が自分の役職を冒涜するような不祥事を起こしたとあって、ルシウスは嬉々として彼の辞任と、彼が発案していた「マグル保護法」の廃棄を要求した。
それでなくともジニーが「秘密の部屋」事件の実行犯となっているため、このまま事件が推移すればジニーが犯人と分かった場合、アーサーの地位はさらに失墜し、精神的にも廃人化したかもしれない。

しかし、ハリー・ポッターたち主人公トリオの奮闘によって「秘密の部屋」事件は解決される。日記から出てきたトム・リドルもバジリスクも日記そのものも失われ、ウィーズリー家の冤罪も晴れる*9
さらに、ダンブルドア停職のため脅されていた理事たちが、「ジニー・ウィーズリーが殺された」と報告を受けて慌ててダンブルドアを復職させたことで、彼らを脅していたことまで明るみに出る。
おまけに、ハリーの策にはまって自分の屋敷しもべ妖精ドビーを解放してしまった
(映画版ではここで完全に頭に血が上り、ハリーに対して「死の呪い」を放とうとしたが、ドビーに妨害されて失敗に終わった)

その後はホグワーツ理事職をも解任されている。
ただこの理由に関しては実は不明で、事件の首謀者であることまで暴かれたにしては処罰が緩いこと*10や、後に復活するヴォルデモートが「すでにルシウスが日記を使ったこと」をしばらく知らなかったことから、日記を使ってリドルを復活させたことまでは明るみに出なかった可能性が高い。日記は破壊されて、証拠の品とは使えないと言われているし、そもそもルシウスが持っていたという証拠もない。
そのため理事解任に関しては、ほかの理事たちを脅したことが問題視されたか、あるいはポリジュース薬で変身していたハリー&ロンに「屋敷地下に貴重な闇の魔道具を収蔵していること」をすっぱ抜かれているので、アーサーにそれらを暴かれたと思われる。


ちなみに、ルシウスの屋敷しもべ妖精ドビーは「ハリーを守る」「そのために彼をホグワーツから引き離す」という意思のもと、彼に暴行レベルの陰謀を企てていたが、これはドビーの完全な独走で、ルシウスの関与するところではない。


◆三巻

間接的に登場。
息子ドラコがヒッポグリフ(バックビーク)に襲われて負傷したと聞き、ハグリッドの責任問題にしようとするが、ダンブルドアの反論によって失敗。
ならばとバックビークの殺処分を手配し、これは成功。処刑役は旧知のワルデン・マクネアというところまで行った。
しかし最終的に、バックビークにも逃げられてしまった。


◆四巻

「これは驚いた、アーサー。貴賓席の切符を手に入れるのに、何をお売りになりました? おたくを売っても、それほどの金にはならんでしょうが?」

クィディッチ・ワールドカップに観客として参加。原作においては妻ナルシッサはここで本編初登場。
何気に「少し前に聖マンゴ病院に多額の寄付をした」ということがファッジから語られている。
世間の名声を維持するためとはいえ、病院への寄付なのだから善行であることは違いない。こういうところも彼が失脚せずにいられる理由だろう。
またルシウスに何か問題があっても、聖マンゴ病院の関係者たちが弁護してくれることが見込める。

ワールドカップが終わった夜、突然死喰い人のサバトを挙行して会場をパニックに陥れる。近隣住民のマグル一家を地上20メートル近くまで浮遊させて弄んだ。
しかしマグル生まれの連中への示威行動、もっと簡単に言うと嫌がらせ程度の意図で、それで暴行をしているという内実であった。
そんな体たらくであったので、闇の帝王に忠心をささげるある男の激怒を買う。
その男が打ち上げた「闇の印」を見ると、ルシウスたちは「闇の帝王が戻ったのか」と早合点して一目散に逃げてしまった


「ご主人様、我々は知りたくてなりません……どうぞお教えください……どのようにして為し遂げられたのでございましょう……この奇跡を……どのようにしてあなた様は我々の元にお戻りになられたのでございましょう……」

その後、本当に闇の帝王が復活したため、ルシウスも蒼惶として駆けつける。
しかし十数年前の敗北後に真っ先に魔法省に降伏して捜索もせず、また半年前には闇の印を見て逃げ出したことから半分見限られかけ、批判と罵倒の声を浴びている。
とはいえ、豊富な財力ゆえにいまだに魔法省に隠然とした権力を扶植していたことから、利用価値はあるとしてヴォルデモートから引き続き重用されていた。
のちに脱獄を果たす忠臣レストレンジたちは(戦闘要員かつ、後の副官となるベラトリックスを除けば)逆に忠誠心以外には何も持っていなかった*11ため、忠誠心がなくても部下として役に立つという判断だろう。

その人脈やいつも何かしら陰謀を巡らせていた振る舞いから、彼が魔法省に出入りして誰かと密かに話し合っていても誰にも怪しまれないというのも役に立つ点であった。


◆五巻

ファッジに面会して恐怖心をあおって操ったり*12ドローレス・アンブリッジをホグワーツに差し向けたりといった陰謀を巡らせている。
さらには魔法省の役人に服従の呪文をかけるチャンスにも恵まれていた。不死鳥の騎士団メンバーさえも操り、ヴォルデモートの命令で予言の間への侵入までやらせている(予言の入手には失敗した)。

「現実と夢の違いが分かっても良いころだな、ポッター」

「神秘部の戦い」では死喰い人の攻撃部隊のリーダーとして参戦。
シリウスがヴォルデモートに捕まり拷問を受けたという幻覚を見せられておびき出されたハリーの捕縛と、予言の回収のため、ベラトリックスとロドルファスのレストレンジ夫婦、ラバスタン・レストレンジ、オーガスタス・ルックウッド、アントニン・ドロホフ、ノット、マルシベール、ジャグソン、クラッブ、ワルデン・マクネア、エイブリー、そして自分の総勢12人で参戦する。
しかし、ハリーたちたった六人のガキどもに思わぬ抵抗を受けて大苦戦。
時間ばかりかかるうちに不死鳥の騎士団の救援部隊が到着してますます劣勢となる。
ルシウスはニンファドーラ・トンクスの失神呪文を回避しリーマス・ルーピンと一騎打ちするなど善戦するも、ダンブルドアの到着によって完全に戦況が一変。
他の死喰い人ともども一蹴され、重要目標だった予言の球の回収も失敗。遅れて参戦したヴォルデモートも最終的に撤退し、参戦した死喰い人も(ヴォルデモートが唯一回収したベラトリックスを除いて)全員が捕縛。神秘部の戦いは惨敗に終わった。


◆六巻

本人は登場しないが、死喰い人という正体が発覚したため、言い逃れの余地もなくアズカバンに投獄された。
しかも神秘部の戦いから帰還したヴォルデモートに「ルシウスがいつかの日記を使って陰謀を巡らせ、その結果日記が破壊された」ということがバレてしまう。
独断専行の果てに分霊箱まで破壊されたと知ったヴォルデモートの怒りはすさまじかったらしく、アズカバンにいたおかげで即処刑を免れたとまで言われている。リドルの日記が破壊されたこと、グリフィンドールの剣にバジリスクの毒が注入されたことで結果としてハリー側にこの上なく貢献しており「名誉不死鳥の騎士団」扱いされることも。
その埋め合わせとして息子ドラコにダンブルドア暗殺命令が下された。しかしドラコは死喰い人のホグワーツ潜入手引きには成功したものの、ダンブルドア暗殺はできず、それはスネイプが果たした。


◆七巻

「ルシウス。お前には自由を与えたではないか。それで十分ではないのか? どうやらこのところ、お前も家族もご機嫌麗しくないように見受けるが……ルシウス、俺様がこの館にいることがお気に召さぬのか?」
「とんでもない──わが君、そのようなことは、決して!」

ヴォルデモートがアズカバンを襲撃し、死喰い人を解放。
ルシウスも改めてヴォルデモートの部下に戻り、ウィルトシャーの自邸を本部に提供する。
しかしこれまでの数々の失態からヴォルデモートからの信用は完全に失われており、会議では主君から嘲笑され、さらにルシウスの杖(マルフォイ家に先祖代々伝わる家宝)までヴォルデモートに徴発されてしまう。

中盤ではマルフォイ邸で、捕縛されたハリー達トリオと面会。しかしこの時ハリーが顔を変えていたため、本人かどうか確信が持てなかった。
ちょうどヴォルデモートはヌルメンガード城でゲラート・グリンデルバルドと対面し、ニワトコの杖の所在を探していたところである。この重要局面で、もしヴォルデモートを呼び出して「間違いでした」では済まないため、ためらっていた。
しかしその場にいたベラトリックスがついにヴォルデモートを召喚。それと同時にハリーたちが捕縛を抜け出し、屋敷内で激闘が発生。
ヴォルデモート到着までにハリーたちは逃亡し、まんまと逃げられたルシウスたちはベラトリックスを含めてヴォルデモートの激怒を買った。
あまつさえ、捕虜にしたゴブリンから「金色のカップを彼らが持っていた」と知ったヴォルデモートは分魂箱の正体がばれていることを知り、死の魔法を乱発した。
ルシウスとベラトリックスは命からがら逃げだしている。

終盤の「ホグワーツの戦い」にもヴォルデモート側で参加しているが、彼の意志はいまだホグワーツから脱出していない息子の安否ばかりに向けられていた。
戦いが始まった時には「息子の救出に行かせてください」と頼み込んでいるが、嘲笑を買っただけだった。
しかしその結果、妻ナルシッサはヴォルデモートに敗れたハリーから「ドラコがまだ生きている」と教えられ、その瞬間ヴォルデモートを裏切り、生きているハリーを「死んだ」と称して守った。
その後ホグワーツで乱戦となると、ルシウスは妻とともにドラコを探して戦いを放棄していた。

ヴォルデモートの敗北後、ルシウス、ナルシッサ、ドラコは大広間の祝賀会に紛れ込んでいたが、今までのことがあって肩身が狭そうに座っていた(映画版では妻子と合流後、彼らの後を追いながらホグワーツを抜け出した)。

本編終了後は、またも死喰い人残党の捕獲に協力したことから投獄を免れ、家名も存続する
また、これに関してはハリーの命をナルシッサが土壇場で救った(「ドラコは生きている」と聞いた直後にハリーを売る選択肢もあったが、そうしなかった)ことも情状酌量の一つとなった模様。
しかし、二度もヴォルデモートに忠誠を誓ったことは露見しており、かつての社会的地位や人脈は失われた。


◆八巻

戦後はマルフォイ家の当主の座を息子に譲っている。
また、息子ドラコがアストリア・グリーングラスと結婚し、孫のスコーピウス・マルフォイも生まれた。
しかしドラコと嫁アストリアが純血主義に距離を置いたことには不満を持ち、また彼女が病弱で子供を産めるかわからなかったという事情もあったため、離婚して別の妻を迎えるよう要求することさえあったという。
ただ、それでもドラコが妻への愛情を揺るがせなかったことから、最終的に両親のほうが折れた。

一方、セオドール・ノットに完璧な逆転時計(タイムターナー)を作らせている。
ルシウスがこれを作ったのは、ヴォルデモートの破滅を回避するため──とも疑われているが、一方でルシウスがこれを最後まで使わなかったことも事実で、真意は不明なままである。
ドラコはルシウスについて「ヴォルデモートのいない世界に不満は持っていないようだった」と述懐している。
違法で危険な闇の魔道具の収集癖があったので、単にコレクター魂以上の意味はなかったのかもしれない



【余談】

  • ニュージーランドで発見された新種の蜂にルシウスの名前が付けられた。

  • アメリカの経済雑誌『フォーブス』の企画「リッチな架空のキャラクターランキング」の2006年版では、推定資産13億ドルで12位にランクインしている(同年のランキングで日本人に馴染み深いキャラクターは8位に『アイアンマン』のトニー・スターク(推定資産30億ドル)、11位に『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカ(推定資産20億ドル)、15位に任天堂のマリオ(推定資産10億ドル)などがランクインしている)。




「言っておくが、追記・修正が好きではないような素振りを見せるのは、なんと言うか──賢明ではないぞ」

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最終更新:2025年02月12日 12:37

*1 元々は第7代ノルマンディー公のギヨーム2世だったが、世継ぎを残すことなく亡くなったウェセックス朝イングランド王国の第9代国王・エドワード懺悔王の後継者として名乗りを上げ、最終的に後継者争いに勝利してノルマン朝を開いた(この出来事を「ノルマン・コンクエスト」という)。彼が開いたこのノルマン朝が、現在のイギリス王室の祖。

*2 テューダー朝第5代(即位後僅か9日で廃位された上に後に処刑されたジェーン・グレイを含めるなら第6代)にして最後の君主。穏健な統治やスペイン無敵艦隊に対する勝利などでイングランドに安定期を齎し、「エリザベス朝」とも呼ばれるイングランドの黄金期を実現した。一方で生涯に渡って結婚しなかったことから「処女女王」とも呼ばれる。

*3 古い時代の者たちについては、マルフォイ家の歴史として当代の当主名と当該の噂が記載されているのみであるので

*4 遠方なため、マルフォイ家の威光も通用しない。校長とは親交こそあったが、クラッブやゴイルを側近に置くことなどはできないだろう。

*5 4巻で「闇の印」をみて逃げ出したり、そもそも全然探そうとしなかったり。

*6 1996年、本編五巻ごろに死亡。竜痘なる病気にかかったという。ちなみにハリーの祖父フリーモント・ポッターも竜痘で亡くなっている。

*7 のちにドラコが祖父アブラクサスの名前を出して売り込んだことから、アブラクサスもスラグクラブにいた可能性がある。

*8 紛れ込ませたタイミングは、本屋で教科書一式を購入した際のアーサーと取っ組み合いのけんかをした場面。映画版では少しだが分かりやすくなっている。

*9 アーサーの違法改造マグル車については全く冤罪ではない。念のため。

*10 容疑者と疑われたハグリッドがアズカバン送りになったのだから、犯人と分かればいくら彼でもアズカバン投獄は免れないはずである。

*11 スネイプ曰く「アズカバンの不快な思い出の垂れ流しぐらいしかない」。

*12 『服従の呪文』はかけていない。魔法に頼らず他人を操る、政治的な手腕があると言うこと。