グフ飛行試験型

登録日:2012/05/05 Sat 23:51:52
更新日:2025/03/20 Thu 22:36:22
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『MSV』、『機動戦士Ζガンダム』に登場するモビルスーツ(MS)。



■緒元

型式番号:MS-07H
全高:19.3m
頭頂高:18.8m
本体重量:63.9t
全備重量:76.6t
出力:1,034kW
推力:50,875kg
センサー有効半径:3,600m
装甲材質:超硬スチール合金

武装:
75mm5連装フィンガーバルカン×2
180mmロケット砲×4
ジャイアントバズ

パイロット:ビリー・ウォン・ダイク


■機体解説

ジオニック社が開発したジオン軍試作MS
名称からも分かる通り、MSに単独飛行能力を付加するための実験機である。
アイザック・ウーミヤックが開発責任者で、サイド3にて改造された。
ベースとなったのはプロトタイプグフA型3機とB型1機で、前者は1~3号機、後者は4号機になっている。

両脚に飛行するための新型熱核ロケットエンジンを搭載しており、同時にエアインテークやファン、スラスターが内蔵されている。
背中とリアスカートには離陸用のロケットを設置。更に背中に空中での姿勢制御を安定させる目的で小型の翼を装備させた。
また、左腕だけでなく右腕もフィンガーバルカンに換装されている。
肘にはカートリッジも付けられた。
脚部前面の穴にはロケット砲が搭載されている。……が、後述のフライトタイプではオミットされているため忘れられがち。
あろうことか公式による書籍等でも言及されないことが多く、フライトタイプにロケット砲(あるいはその代替武器)がないのはデザイナーがこの武器について知らなかったからではないかとも言われる。

しかし、前述の新型エンジンの制御系が上手く動かず、エンジン自体の構造も複雑な上に燃料の容量が少なすぎてごく短距離しか移動できないなど多数の問題点があげられている。
何より機体が全備重量70tオーバーと重すぎるのが最大の問題点。
とはいえ、キャリフォルニアベースで行われた実験の結果の方はそれ程悪いものではなかったらしく、特に3号機が一番良い結果を出していたという。
この後も改修と実験が繰り返された。

一年戦争後に本機は地球連邦軍が接収し、ジオン系の技術を吸収すべくこちらでもテストが行われた。その際、両脚は熱核ジェットエンジンに、コクピットは全天周モニターとリニアシートに換えられている。
中にはキャリフォルニアベースの設備を使って新たに製造された機体もあるらしい。

なお、グリプス戦役でのエゥーゴによるジャブロー降下作戦時に防衛戦力として4機配備されていたのが確認されている。この時はジャイアントバズを装備し、ホバーで移動するという、とうとう飛ぶのを諦めた ドムと似たような運用がされていた。
エゥーゴのMS隊と交戦したが、全機が撃破されている。(しかしカミーユ・ビダンはこの戦いでフライングアーマーをグフにぶつけて失う羽目になったため、この後のアッシマー戦で苦戦することになる)
ちなみに、この時のグフは手首がフィンガーバルカン仕様のままでバズーカを持っていた。



余談ながら、地球連邦軍も空軍が主体となって「ガンダムGT-FOUR」という空中用のMSを開発している。
飛行能力獲得のため変形機構も組み込んでおり、不安定ながらもそれなりの研究成果を残していた。
またGT-FOURはテスト中に「ザクスピード」なる謎の飛行用MSと遭遇しているが、グフ飛行試験型との関連は不明。



■派生機


◇H-2型

型式番号:MS-07H-2

3号機の背中に使い捨てのプロペラントタンクを追加。
燃料の容量は増えはしたものの、根本的な解決にはならなかった。
後に起きた4号機の事故(後述)のこともあり、結局単独飛行からホバー走行による運用に切り替えられ、そのデータはドムの開発に活かされている。


◇H-4型

型式番号:MS-07H-4
頭頂高:18.8m
重量:65.2t
装甲材質:超硬スチール合金

武装:75mm5連装フィンガーバルカン×2
180mmロケット砲×4

パイロット:フランク・ベルナール


4号機を改造した機体。「グフ飛行型」と呼ばれることも。
脚のエンジンを新型に換え、腰に安定翼を追加。両肩もスパイク型から直線的な物に変更されているなど、かなり手が加えられた。

フランク・ベルナールがテストパイロットを務め、かなり良いテスト結果を出したが、新型エンジンのご機嫌とりに相当苦労させられていたという。
そして最終テストの最中、とうとうエンジンがへそを曲げたのか乗っていたフランクごと自爆してしまった。

その後はサブ・フライト・システムによる運用法が確立され、そちらが採用されている。


◇グフ・ホバータイプ

型式番号:MS-07H-6


スマホアプリゲーム『U.C.エンゲージ』オリジナルMS。
グフ・カスタムをベースにツィマット社から提供された熱核ジェットエンジンのデータを基に1G環境下でのドム並みの高速ホバー機能を実現した機体。
……ドムでよくない?
左腕にはスラスター噴射の勢いを利用した打突武器のブーストナックルを持つ。

ジオン本国で開発されていたが、キャルフォルニアベースが陥落したので地球に送られることはなかった。
開発データは戦後連邦軍に接収されたようで、連邦軍仕様の飛行試験型の運用に活かされたという。


◇グフフライトタイプ

型式番号:MS-07H8
全高:18.7m
頭頂高:18.2m
本体重量:61.5t
全備重量:77.6t
出力:1,130kw
推力:108,400kg
センサー有効半径:3,600m
装甲材質:超硬スチール合金

武装:
3連装35mmガトリング砲
シールド
75mmガトリング砲
ヒートサーベル

パイロット(小説版):
ノリス・パッカード
ハンス
ウォルター
ジューコフ


MS-07Hシリーズの完成版。
でも開発された経緯は一切不明な謎機体である。何コイツ
一応、ギニアスがアプサラスの護衛としてサイド3からラサ基地にパーツを持ち込んで完成させたとされる。

配備はオデッサ陥落後とされるが連邦軍でも早期から存在を掴んでいたらしく、「三次元の戦い」では型式番号、名称共に知られていた。

グフ・カスタムを基にしていて、脚のエンジンを更に高出力な物に換装している。
H型の中でも一番優れた性能を持ち、遂に単独飛行を可能とした…とされているが、問題点が全部解決された訳ではなく、燃料の容量やら冷却機能やらのせいで飛行時間は短い。
というか、実はこの機体をもってしても未だに「ただ浮いてるだけ」と言わざるを得なかった。
当然、空中戦など以ての外である。
これ以降、MSがSFS無しでまともな空中戦ができるようになるにはバイアランまで、完全な空中戦はΞガンダム等の第5世代MSまで待たなければならなかった。

結局諸問題が解決に至らず生産数は極僅かに留まった上にほぼ全機が鹵獲されることなく戦闘で喪失、ギニアスの戦死と部下の開発陣もギニアスに謀殺されてしまった為に飛行試験型から続く開発の系譜は本機を以て失われてしまった。
…が、どこかのタイミングで実機が流失していたらしく、なんとU.C.0096年にもなって海賊で使われていた。

武装はグフ・カスタムとほとんど同じだが、唯一ヒートロッドがオミットされた。まあ飛行しての高機動戦闘が出来ない機体に格闘用の装備はなくても問題ないが。

OVA『第08MS小隊』に登場。
2機がラサのジオン軍基地からアプサラスⅢと共に現れ、ケルゲレンに収容されたところをジムスナイパーに狙い撃たれて、片方は艦と共に爆散。
残ったもう片方も爆炎から姿を現したところを狙撃され撃墜された。なんて不憫な…。

メモリアルBOXのシュートフィルム「三次元との戦い」では敵役として登場。
パイロットはジューコフ。
損傷して固定砲台化されたザクとの連携と橋梁を活かした立体的な一撃離脱戦法でシロー・アマダEz-8を追い詰めるがミケルとサンダースの奮闘で出現位置を見破られ、接近戦の末に撃破された。
ガトリングシールドやヒートサーベルを使用するなどようやくまともな戦闘シーンが描かれたが、「浮いてるだけ」と言い切れるのかギリギリなアクションをしている。
しかし、あくまで地の利を活かした戦法で優位に立っていただけでスピード自体はそれほどのものではなく、水没してエンジンが不調を来す様子が見られ、やはり信頼性は高くないようだ。

小説版ではノリスらが乗ってビッグ・トレーを奇襲。
ノリス機はシローのEz-8と戦い、ビッグ・トレーのブリッジを潰した後に撃破された。



■立体化

ガンプラ

飛行試験型が旧1/144で発売。
膝下が大きく膨らんだ形状になっているせいで、両足が干渉してしまいきちんと接地できないという欠点がある。
Ζガンダム」放映時にはパッケージと成形色を変えた物が発売された。

フライトタイプはHG1/144として、グフカスタムから一部パーツを流用して発売。
可動は当時なり*1で、合わせ目が多い・ポリキャップ剥き出しといった気になる点はあるものの、造形やプロポーションは今の目で見ても素晴らしい。

後にHGUCでも、やはりグフカスタムのキットをベースとしてリニューアルされ、プレミアムバンダイ限定品として発売された。
旧HGより更に可動や造形が洗練されているが、入手が面倒なのがネック。
さらに、ガンダムベース限定品として「21stCENTURY REAL TYPE Ver.」も発売。
「21st~」はガンダムベース東京もしくは福岡、もしくは地方イベントの限定品として直に購入するしか入手手段がなかったが、後にプレミアムバンダイでも通販で購入可能となった。こちらはカラーリングがキットオリジナルのものとなっており、シールではなく水転写デカールが付属する。



ゲーム

ギレンの野望

空は飛べないが移動力が高く、地上をスイスイ高速移動できるドムに近い機体だった。
「アクシズの脅威」では離陸コマンドが追加され、本当に空を飛べるようになった。しかもジャイアントバズを抱えたままである。まさにジオン脅威のメカニズム。
だが生産コストが高い上、攻撃力も値段不相応に悪いため生産する価値はない。
開発済みだとドム開発に必要な技術レベルが-1されるので、ホワイトベース隊をランバ・ラルで討ち取りたいなら、倍額投資も視野に入れよう。

Gジェネ

初期の作品では飛行試験型とフライトタイプが両方存在したが、現在ではフライトタイプオンリーとなっている。
(そのため、Zのジャブロー戦でもフライトタイプが登場する)
以前は飛行できなかったり武装が貧弱だったりしたが、現在ではフライトタイプは普通に飛行出来て武装も最低限(ガトリングシールドとヒートサーベル)揃っている。
ここからドム系へ開発し、ドライセンリック・ディアスへと繋がる意味でも重要。

◆ガンダムアサルトサヴァイブ

マイナーすぎて歴代作品には流石にお声がかからなかったが、アサルトサヴァイブにてフライトタイプが参戦。
ガトリングガン(メイン)とヒート剣(格闘)だけのシンプルな機体だが、特筆すべきはサブ武装の「ホバリング」
これを使用すると浮遊状態になり、機体の挙動が変化する。
具体的には「無重力(宇宙や水中)時の挙動」になり、こうなってしまえば飛行MAのように地上目標を一方的に攻撃可能。
しかも再使用で取り消すまで無尽蔵に飛行を続けることが可能という超性能を誇る。
元の機動性が低いことが数少ない弱点だが、これをチューンアップで高速化させると気持ち悪い高速移動を見せる。

◆ガンダムバトルオペレーション2

飛行試験型は汎用型の機体カテゴリーに分類され350コストで登場。「飛行」のスキルによりスラスターが続く限り空中に浮くことができ、空中からロケット砲やフィンガーバルカンで攻撃し続けることが主な戦い方となる。登場当初は武器の威力が弱く微妙な評価だったが、ロケット砲が強化されたことで見直された。また飛行中はよろけ武器をある程度無効化できるため、一発で墜落させるには「強よろけ」を取れる武器を当てる必要がある。たが、機体修正により通常よろけ武装一発(バズーカ等)で墜ちるようになった。

フライトタイプは強襲型の機体カテゴリーに分類され400コストで登場。「飛行」によって地上に陣取る敵機を振り切り、遠くに陣取る支援機を刈り取りに向かいやすい。
なお、シールドが破壊されるとガトリングシールドは使えなくなる…ことはない(盾の機能のみが失われる)。
実装直後は機体の射撃補正が高く、ガトリングシールドの射撃のみで支援機を撃墜or瀕死に持ち込めるほどだった。
その射撃火力が「飛行」特性と噛み合いまくった結果勝率が高くなりすぎ、本ゲームでは数少ない弱体調整を食らった機体の一つ。
こいつと主兵装を共用したばかりにただでさえ死に体のグフ・カスタムがなかなか強化調整されない原因の一つ。




追記・修正はグフの飛行に成功させてからお願いします。

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最終更新:2025年03月20日 22:36

*1 同じ08小隊版のHG1/144ザクよりはだいぶマシ。というかあちらが酷い。