ムーンナイト


「いいか、逃げた先で仲間たちに、こう伝えろ。出会った者全員にだ」

「" 私の姿を見たならば……逃げろ"」

+ 日本語吹替声優
滝知史
『アルティメット・スパイダーマン VS シニスター・シックス』
小松史法
『ムーンナイト』(予告編)
関智一
『ムーンナイト』
赤城進
『マーベル・ライバルズ』

マーベルコミックに登場するヒーロー。初出は1975年の『Werewolf by Night #32』。
当時は狼男ジャック・ラッセルに対するヴィランとしての登場であり、
彼を叩きのめして生け捕りにするも、雇い主の秘密結社がワーウルフを怪物と嘲る姿を見て見限り、
ワーウルフを解放して共闘、秘密結社を撃破して立ち去るといったクールな好敵手的ポジションであった。
やがて人気を博したことで単独ヒーローとしてデビューし、複数の人格を使い分けていることや、
その妄想とも現実ともつかぬ誕生経緯などが描かれていくことになった。

冒頭の画像通り白い覆面に白いフード付きマントで、作品によっては顔の部分に黒い影が掛かり、眼光だけが光っているデザインの場合もある。
また、後述のミスター・ナイト時は『月光仮面』の如く、額に三日月の描かれた覆面と白の背広をコスチュームとして纏っている。

本名はマーク・スペクター。身長188cm。体重102kg。
傭兵時代、エジプトの遺跡盗掘を巡り、民間の学術調査団の皆殺しに反対したことで傭兵仲間に報復を受け、砂漠に放り出されて衰弱死してしまう。
しかし彼はエジプトの神性コンシュー(コンスとも)の力によって蘇生し、神像にかけられていた外套を纏って悪漢共を蹴散らして生還。
以来「夜の守護者」であるコンシューの化身、「コンシューの拳(フィスト・オブ・コンシュー)」となったマークはムーンナイトを名乗り、
クライムファイターとしての戦いを開始した。

その戦いの中で別人格として億万長者のプレイボーイ「スティーブン・グラント」とタクシー運転手の「ジェイク・ロックリー」を作り上げたマークは、
スパイダーマンパニッシャーと共闘し、アベンジャーズのシークレットメンバーとしてキャプテンアメリカからの信頼も勝ち取る。
ノーマン・オズボーンによってアベンジャーズが乗っ取られた時は、死亡したと見せかけて潜伏して活動し、
後にアベンジャーズへ再加入し、X-MENとの戦いに参加するなど様々な活躍を繰り広げた。
だが、複数の人格を維持する中でマークの精神は狂気に蝕まれていき、自分が何者であるのかすらあやふやな状態になっていく。
ついには脳内にスパイダーマン、ウルヴァリン、キャプテン・アメリカの人格を作り上げて口論するなど、紛うことなき狂人に成り果ててしまう。
しかし、マークの強さ(あるいは不幸)は、彼自身がその状況を客観的に理解し、正しく認識しているという点にある。
彼は自分が狂っていることをはっきりと自覚し、このような異常な状況、妄想に飲み込まれる事だけは決して無かった。
時に別人格と相談し、時に戦闘の中で人格を切り替えて戦術を変え、狂気の荒波を乗り越えて悪と戦い続けていく。
そもそもコンシューによって蘇生されたというオリジンですら、自分自身の妄想かもしれないと思いながら。

やがてその状況にも限界が来て行方をくらましてしまったマークは、ついに自分の身に起きた真実を知る。
彼は確かにエジプトでの戦いで死んでおり、超次元的存在によって蘇生され、脳に「拡張」を受けたのだ。
彼の複数の人格はその超次元的存在の介入を脳が理解するために作り上げた説明であって、マーク自身は狂ってなどいなかったのだ。
恐ろしい真実に押し潰されそうになりながらも、マークは再びヒーローとしての活動を再開。
覆面私立探偵の「ミスター・ナイト」という新たな人格を作り出すと、ニューヨーク市警猟奇殺人捜査班「フリークビート」に協力し、
フリント刑事と共に数々の猟奇殺人へと立ち向かっていく事になる。
そしてマークはその戦いの果てに、自分の数々の人格は、幼少期のトラウマから生み出された解離性同一性障害によるものだと知る。
さらにコンシューが蘇生以前から自分に干渉していた事、そして自分を世界を救うために人々を浄化する手駒にしようとしている事を悟り、コンシューと決別する。
その一方、未だコンシューと繋がっている部分がある事を自覚しており、「ミッドナイト・ミッション」という修道会を設立。
コンシューの司祭として、迷える人々のために夜を守る戦いを続けている。

主な宿敵はエジプトで自身を死に至らしめた傭兵ブッシュマン、ムーンナイトに成り代わろうとするブラックスペクター、
決別した兄ランドールが扮するネフティスの使徒シャドウナイト、ラーの化身を自称するカルト教祖サン・キング、
同じくコンシューの使徒を自称するカルト・オブ・コンシュー、そしてコンシューの第二の拳を自称するハンターズ・ムーンなど。
また彼を導くコンシューも上記の通り、自分の目的のためマークを手駒として操ろうとしている節が見受けられる。

一時期は月の満ち欠けによって筋力が増減するという神秘的な能力を持っていたが、
現在は失われている……というより、どうやらマークの妄想、狂気の一つだったといった扱いのようで、
作中でも「月の力で強くなるとかいう超能力の出番じゃないのか?」とヴィランに小馬鹿にされている
(一応コンシューに言わせると「マークが自分の意にそぐわない行動を取るようになったため罰として剥奪した」という事らしい)。
他にもコンシューの加護により幾度も復活している事から、不滅の存在である可能性も示唆されている。
それが真実かどうかはさておき、実際にマークの戦闘スタイルは自身のダメージを厭わず攻撃を仕掛けていくといったもので、
タスクマスターをして「できれば真似したくない」と言わしめるほどだという。
唯一明確に能力と言えるのは、その多重人格めいた複数のアイデンティティの活用なのだが、
アメコミあるあるとはいえ時期によって「多重人格である」「正気で人格を使い分けている」「神の介入」など設定が変わっていて、
結果的に「ムーンナイトは正気なのだか発狂しているのだか分からない不安定なヒーロー」という個性を確立している。

装備は象牙ブーメランとスカラベ・スローイング・ダーツ、危険を探知して光るアンク等だが、
最近は様々な特殊装備を仕込んだ長杖や警棒、三日月型のブーメランを主な武器としており、
加えてコンピューターによって制御される装甲リムジンやグライダーなどを装備として活用している。
長らくムーンナイトの相棒を務め引退したデュシャンによれば「それがベスト。彼と組む人間は必ず死ぬ」とのこと。
実際ムーンナイトと行動を共にした協力者の多くは死亡するか重傷を負って引退しており、
そうでない者も、彼の正気とも狂気ともつかぬあやふやな精神状態に付き合いきれず離れてしまっている。
最初期のヒロインですら、自分が愛した人格、傭兵マーク・スペクター/ムーンナイトが虚構の人格だと知り、
「ではあの時蘇生したのは誰だったのか?」と疑問を抱いたことで彼と決別している。


「もうひとつ言っておこう、SHIELDのエージェントどの。彼は決して止まらん」

「永遠に進み続ける。仲間を使い潰し、底なしの裏金を費やしてな」

「……そして彼は不滅だ」

(参考資料:『マーベル・エンサイクロペディア』)

ゲーム情報サイト「IGN」が開催したコミックヒーローランキング「The Top 100 Comic Book Heroes」では、
ゴーストライダースーパーガールを抑えて89位になった。

+ メディアミックス
こうした狂気と正気の境目があやふやなムーンナイトだが2022年、ついにMCUの一環として実写ドラマ化が決定。
演じるのは実写『X-MEN』シリーズでアポカリプスを演じたオスカー・アイザック氏。

ロンドンの国立博物館で働くうだつの上がらない、睡眠障害に悩まされる青年スティーヴン・グラントが、
やがて自分の中に潜む「誰か」――自分の知らない第二の人格マーク・スペクターの存在に気付き、
『夜』の神コンシューの囁きを受けてムーンナイトとして狂気じみた戦いを繰り広げながら、
自分の過去に秘められた秘密に迫っていく、サイコスリラーめいた作品となっている。

本作のムーンナイトは明確に月の神コンシューのアバターとして超常的な能力を持っているように描かれており、
スティーヴンはミスター・ナイト、マークはムーンナイトの姿へ瞬時に変身している。

「罪を犯した後に裁く」ムーンナイトと、「罪人は罪を犯す前に殺すべき」と主張するカルト教祖アーサー・ハロウとの戦いは、
やがてコンシューとアメミットというの代理戦争の様相を呈していく。
そしてハロウの凶弾に斃れたムーンナイト=マーク/スティーヴンは、真っ白な精神病院で目を覚まし──……。

+ その真実(ネタバレ注意)
スティーヴン・グラントという人物はこの世に存在しない。
幼い頃に誤って弟を死なせてしまったマークは、その事によって母親から苛烈な虐待を受けて育ち、
その過程で、憧れていたTVのヒーロー「スティーヴン・グラント」を模した人格を作り上げていたのだ。
家を出て傭兵として一人暮らしを始めたことで辛うじて精神の均衡を保っていたマークだったが、
傭兵ブッシュマンによって殺された所をコンシューに救われて以降の契約の負担に加え、
母親が病死したことで今まで抱えていた罪悪感などが行き場を無くし、とうとう精神的に破綻。
スティーヴンの方が主人格となってしまい、同時にマークとしての記憶を封印したのだった。

お互いにお互いを邪魔者だと扱っていたスティーヴンとマークは、事此処に至って和解。
困惑するスティーヴンに対して、マークは心からの感謝と許しと共に、彼に思いを伝える。

「俺のスーパーパワーは、お前だった」

再び立ち上がったムーンナイトは、アメミットの力を手にしたハロウとの戦いの中で
コンシューから「二人との契約を破棄する」と伝えられ、ついに契約から解放される。
マーク/スティーヴンは二人で一人、どちらが欠けても成り立たない無二の親友、兄弟、仲間となるのだった。

だが……。

+ さらなる狂気(ネタバレ注意)
マークの中にはジェイク・ロックリーという第三の人格が存在する。
コンシューが契約を解除したのは二人
つまり三人目であるジェイクとの契約は継続しており、最終話にて衝撃の登場を飾った。

実はジェイク自体は第一話から登場しているのだが、マークもスティーヴンも彼の存在を認識しておらず、
視聴者も最終話にてついに彼の存在を知るに至るという、正気と狂気の曖昧なムーンナイトらしい結末となっている。

ちなみにMCU作品の一環として制作されたムーンナイトだが、本編に他のヒーロー達の存在はほとんど描写されず、
プロデューサーも「現在のMCUとの繋がりはありません」と述べているなど、
果たしてムーンナイトが本当にMCU世界で活動していたのか、全てマークあるいはスティーヴンの妄想に過ぎないのではないか、
ひどくあやふやな、ムーンナイトらしい独特の物語として完成されている。

この他、東映とMARVELの間でキャラクター使用権を共有していた頃に、東映によってムーンナイトが制作予定だったものの、
諸事情でボツになり、代わりに「てれびくん」で1979年~1980年にかけて桜多吾作氏によって漫画が連載された。


MUGENにおけるムーンナイト

RgOp氏とArkady氏による共同製作のキャラが存在。
現在は海外サイト「The Mugen Multiverse」にて代理公開されている。
なお、MUGEN1.0以降用との事だがWinMUGENでも使用可能。

操作方法は『MVC』風仕様でチェーンコンボやアドバンシングガード、スーパージャンプが可能だが、
エリアル始動技の打ち上げからホーミングジャンプに移行してくれず、本家のようなエリアルレイヴは不可能となっている。
ブーメランを連続で投げ付ける「Cresent Darts」や、放物線状に爆弾を投げ付けて相手を感電させる「Shock Grenade」等の必殺技の他、
2丁のサブマシンガンを撃つ「Maximum Uzi」や、ごく短時間攻撃力を上げる「Aegis Of Khonshu」等の超必殺技を持つ。
AI程度の強さのものがデフォルトで搭載されている。
紹介動画(リンクは古い物なので注意)

他には改変キャラとしてアワーマンや『スパイダーマン』のヴィラン(もしくはヒーロー)「プラウラー」、
ガワ替えキャラとしてアズラエルが公開されている。

出場大会



最終更新:2024年12月11日 00:14