ギュネイ・ガス

登録日:2011/12/14 Wed 19:24:40
更新日:2025/08/16 Sat 13:54:34
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あれをやりゃあ、大佐だろうが総帥だろうが…!





機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の登場人物。
初期設定ではグラーブ・ガスという名前であり、小説版『ベルトーチカ・チルドレン』ではこの名前で登場する。

CV:山寺宏一松本保典(グラーブ)

ネオ・ジオン軍に所属する強化人間
専用のヤクト・ドーガを与えられている。

パイロットとしての強さを求め、自分から強化されることを志願して強化人間となったといい、
天然のニュータイプ(以下「NT」)への憧れからか、「強化人間」と呼ばれることを嫌う他、
NTと強化人間を等しく嫌っている同僚のレズン・シュナイダーとは険悪な関係である。
なお、劇中ではシャア・アズナブルが「お前はニュータイプ研究所で強化して、金がかかっている」とギュネイに言っているシーンがあるが、
これは久織ちまきの『逆襲のシャア』の漫画では、ギュネイはシャアの理想である「宇宙世紀を生きる新人類であるNTに誰でもなれる」ことを証明するべく、
彼の理想を強化コンセプトとして強化が行われた、実験的な強化人間であることが由来とされている。
それだけによほどの費用をかけて調整されたのか、『Ζ』に登場したフォウ・ムラサメやロザミア・バダムのように、
以前のシリーズに登場した強化人間特有の精神的に不安定な面は、クェス・パラヤと邂逅するまであまり見られない。
不安定さを見せるシーンもないわけではないが、それは強化人間というより「思春期の男の子」の健全なものであり、シャア曰く「若いのさ」とのこと。
少なくともカイザスの言葉を流してフォローしてやる程度にはギュネイに対して大きな期待をかけている事が解る。

ちなみに彼の上司であるシャアは、グリプス戦役時にもNTを人工的に作る方法に興味を示していた描写がある(TV版『機動戦士Ζガンダム』にて)。
ただ、あくまでもその目的は、上述のように「宇宙世紀を生きる新人類であるNTに誰でもなれる」という彼の理想を証明するためであり、
元被験者のナナイだけでは強化技術に不充分だったため、ナナイにタカり来たローレン・ナカモトを補佐役として据えている他、
フォウ、ロザミア、ゲーツ・キャパらに施したような強化はシャアからの強い意向により止めさせている。

その理由は「人類の自然な変革を待っていては時間がかかりすぎる」「宇宙世紀を生きる新人類であるNTに誰でもなれる事を証明する」というもので、
小説版『Ζガンダム』第4巻でもアムロ・レイとの対決を仄めかしており、既に今回の戦いを引き起こす片鱗を見せていたと言える。

こういった事情もあって、シャアからは密かにフォローされているなど、気に掛けられているのだが、
ギュネイの方は彼が天然のNTであることに嫉妬しており、シャアがいないところではあからさまに彼に反発している。
ちなみに、シャアから密かにフォローされていることは、クェスのみならず、周囲の士官達なら誰でも知っている事であった。
また、一年戦争時のコロニー潰しで両親を亡くしているため、アクシズ落としに関しても快く思っていなかった。


ただ、NTへの嫉妬心からシャアに反発する一方で、彼と同じくNTと目されるクェスには心を惹かれている描写があり、
度々彼女が慕っているシャアを扱き下ろし、自分の能力をアピールするというやり方でクェスの気を引こうとしているが、
当のクェスからは、シャアにフォローされていながらその彼の陰口を叩く陰湿さを嫌がられてむしろ反発されている。
しかし、ギュネイは自分のアピール方法が煙たがられていることに気付いていないのか、そのやり方を変えようとせず、
自分に全く靡かないクェスへのいら立ちから、彼女に関心を向けられるシャアへの嫉妬と反発心・対抗心をますます燃やすようになった。

尤も、アピール方法が云々の前に、ギュネイはクェスに惹かれているとは言っても彼女のNTとしての側面しか見ようとしておらず、
無邪気に振る舞う彼女が心の奥底では愛情に飢えていることや、孤独感に苛まれていることには一切関心を寄せないどころか、気付いてすらいなかった。
この辺りは、同じくクェスに惹かれながらも、彼女のNTとしての能力等には一切関心を示さず、彼女が内心に抱えた懊悩にずっと目を向け、
自らの身を危険に晒してでもクェスと真正面から向き合い、救おうとしたハサウェイ・ノアとはまさに対照的であり、
クェスの最期を加味しても、ギュネイが彼女から異性としてはほとんど目を向けられなかったのは、クェスへの接し方に問題があったと推測される*1
なお、人伝の噂を基に、ギュネイがシャアを「昔の恋人に取り憑かれたロリコン」と揶揄する場面があるが、
クェスと彼の年齢差を加味すると、割とシャアをバカに出来る立場では無かったりする。

また、ギュネイがNTとしてのクェスを欲していたのは、強化人間ではなくNTである彼女を手にすることで、
自分がシャアよりも優れた存在になれるという意識も(彼自身はおそらく無自覚だが)少なからずあったと言える(所謂『トロフィーワイフ症候群』の類)。
クェスと同じくNTであるアムロにも対抗心を燃やし、「νガンダムを手に入れ大佐を倒し、クェスを手に入れる」という野心を抱いていたが、
自らの価値を上げるためだけにNTに執着するその虚栄心が、巡り巡って自らの破滅を招くことになってしまった。


そのアムロとの対峙では、一度目はリ・ガズィに撃墜されかけたもののシャアの介入で後退。
二度目ではヤクト機の盾を囮にしてアムロの目を逃れ、その隙にケーラ・スゥのリ・ガズィを中破させると、
脱出したケーラを機体のマニピュレーターで捕獲し、彼女を人質にしてνガンダムの武装放棄を要求。
アムロはその要求を受け容れ、νガンダムの手持ち火器を手放し、フィン・ファンネルも分離させるが、
ネオ・ジオンにおける「ファンネル」のイメージとはかけ離れた形状のそれを「放熱板」だと誤解したギュネイは、
『(彼視点では)「ファンネル」と言いつつ放熱板を分離させた』ことに「ふざけるな!放熱板がなんだってんだ!」と激怒し、
僚機にνガンダムへ攻撃させ、アムロの苦痛の意思に反応したファンネルがそれを迎撃したことで「警告を無視した」と看做し、
マニピュレーターに保持していたままのケーラを握り潰して死に至らしめ、その遺体を放り出してνガンダムに襲い掛かっている。


戦闘では主に彼専用のヤクト・ドーガに搭乗しており、後にクェスが専用のヤクト・ドーガを用意されて戦線に参加した際には、
戦闘に不慣れな彼女と組み、彼女のフォローやサポートをする場面も見られた。
ロンド・ベルがアクシズに向けて発射した核ミサイルをファンネルで全て撃ち落とす場面は、シャアも褒めていた通り強化人間として最大の功績にして見せ場。
一方で、功を焦るあまりに味方機のギラ・ドーガを誤って撃墜したり、フィン・ファンネルの性能を見抜けないこともあった*2

ネオ・ジオンのパイロットとしては、シャアやクェスに次ぐ実力を見せる場面も多く見られたギュネイだが、
何度かアムロと対峙し、それだけでなく彼との間に因縁が出来てしまったことが、後の彼の運命を決定付けた。

クェスのα・アジールと組み、アムロのνガンダムと戦った(ギュネイにとって)最後の戦いでは、
以前の戦いでギュネイがリ・ガズィの分離したバックウェポンシステム(BWS)に一瞬気を取られたことを記憶していたアムロに、
自身の「目が良すぎるため、戦闘中でも余計なモノに気を取られてしまう」癖を見抜かれていたことで、
νガンダムが敢えて手放したとバズーカに気を取られたまさにその一瞬を衝かれ、ビームライフルでバックパックを撃ち抜かれて撃墜・戦死した*3
なお、シャアは互いに生身とはいえ、アムロのワイヤーで遠隔操作したバズーカを用いた奇襲を回避しており、
一年戦争を生き抜いた伝説的なパイロット達との経験値の差も、ギュネイのの要因の一つと言えるかもしれない。
そういう意味では、ギュネイはあまりにも相手が悪すぎたとも言える。
実際、(向こうは5thルナに目が向いているものの)アムロの相手をしながら後にラスボスになるボッシュ・ウェラーのジムⅢを難なく撃破している事から、
シャアやクェスほどには見せ場がなかったとはいえ、一般兵の水準を遥かに超える実力はあったと思われるが…。


ちなみに、冨野監督のインタビューで「(『逆襲のシャア』に)カミーユを出してもギュネイに墜とされる役回りになってしまう」と評された事もある。
なお、スパロボなどでは逆にギュネイはカミーユの噛ませ犬にすらならないという扱いをされることも。これが主人公補正ですか

確かに実力がピークの時のカミーユはシャアやアムロ並と評され、
『Ζ』では互角のハマーンを放り捨ててまで怒り狂っていたシロッコが「シャアとカミーユに挟撃されたら勝てない」と逃げ出す、
小説版『ΖΖ』でアムロがサイコガンダムを「自分とシャアとカミーユの三人がかりでも力押しでは倒せなかった」と恐怖するなど、宇宙世紀でも最強クラスと思われるが*4
TV版『Ζ』の最終回で精神崩壊を起こし、『ΖΖ』では幼馴染のファに介助されながら療養していた上に、
『逆襲のシャア』ではどちらの陣営についても、相手側に恩義のある人物がいる状況のカミーユは士気が上がりそうになく、
仮に連邦に付いたとしても、アムロ以上にガンダムタイプを渡したら危険な人物なので高性能機を回されにくいという状態では、
現役パイロットのギュネイが高性能機に乗っていたら分が悪く、少なくとも冨野監督の言葉には十分説得力がある。

無論、なんらかの形で精神的に折り合いを付けるなどで吹っ切れたカミーユがかつての実力やNT能力を発揮出来れば、
ギュネイを倒すどころか、戦場の帰趨を決めかねないが、そうなれば『アムロとシャアの決着』という物語の根本を破壊してしまう。
『Ζ』の最初期案では、アムロの惨死で世の中に絶望したシャアをカミーユが介錯するという役回りだったので、
そもそもとしてアムロとシャアの決着そのものを否定する構想から産まれているカミーユは、『逆襲のシャア』との相性が徹底的に悪いのかもしれない。
ちなみに、『U.C.ENGAGE』の架空戦記シナリオ「クロスオーバーUCE」ではカミーユ対ギュネイのカードが実現しており、
カミーユにヤクト・ドーガの左腕を斬り落とされるも、クェスのα・アジールのファンネルと共に背後を取るという場面があった。


ちなみにギュネイの最期の言葉は「あっ?」である。
しかもこの時にコンソールから手を離してしまっており、どのみち対応が追い付かず落とされる運命だったのだろう。
ニュータイプである2人の男に執着し、皮肉にもニュータイプの少女を求めた男の末路は、あまりにも呆気なく、そして悲惨なものだった。



ゲームでの活躍

スパロボシリーズに参戦した時は基本的に敵で、プレイヤーからは「ちょっと強いだけの名あり」の認識を抱かれがち。
実際、SFCやPSなど古いシリーズではイベントにほとんど絡まず、ザコ敵に紛れて出現して何度か交戦した後、
主人公が所属する部隊との決戦シナリオで戦死してしまうなどが普通の扱いであった。

…だったが、『スーパーロボット大戦D』ではギュネイが最高の活躍を見せる。

ネオ・ジオンのエースパイロットの一人という立ち位置は原作と同じだが、
本作では序盤に発生した地球消滅という異常事態でアクシズ落下作戦が失敗。
そこでネオ・ジオンはリガ・ミリティアをはじめとした各組織と同盟を結び事態収拾の為に動く事となり、
ギュネイもクェスやシャアと共に、最後まで自軍に参加。
序盤の宇宙ルートでは漂流していた主人公を救助した縁で知り合いになり、共にネオ・ジオンで戦っていくことになる。
場の空気を読もうとする苦労人属性も身に付けた。

多くの人間を取り込んだインベーダーがブラックゲッターに虐殺されていく様子を目の当たりにして「人の死」を感じて戦慄する場面もあり、
強化人間からニュータイプへ進化しつつあるような描写もある。
クェスとの関係も険悪ではなく、終盤には良い感じになる。
よかったね。ハサウェイは涙目になるが

特筆すべきは男主人公であるジョシュア・ラドクリフとの関係だろう。
序盤で彼を助けた事が縁となり、後に「親友」と呼べる関係を築いていく。
年齢が近いことに加え、自分のコンプレックスを理解してくれたジョッシュの存在はギュネイにとって心の救いになったと言えよう。
ジョッシュがルイーナの研究所で爆発に巻き込まれた際には、剣鉄也と共に一番に心配していた。
あとシャワーシーンもある。誰得とか言わない

「良き友人・理解者に恵まれた」という点においては、シン・アスカ碇シンジと並んで救われた人物と言える。
親友繋がりで、同じポジションの鉄也と共に一軍で使うプレイヤーも多い。
ふたりはプロギュネ。


また、νガンダム系の機体でフィン・ファンネルを撃つと「俺だってガンダムに乗れば!」と叫んでくれる。
流石スタッフ、良く分かってらっしゃる。
一軍で使う時は、是非ファンネル付きの機体に乗せてあげよう。
クェスも同様にファンネル付きの機体に乗っていると合体攻撃も使えるようになる。

ちなみに『スーパーロボット大戦R』でも歴史が改編された後のEDでは、
立派に政治家としてコロニー連合の大統領になったシャアの親衛隊長を見事に務めている。
寺田P曰く、この描写は前述のDの布石になったとか。

第3次スーパーロボット大戦Z』では『時獄篇』から登場。
同じくシャアが目をかけていた若者であるカミーユ・ビダンや、Ζシリーズではそのカミーユの親友であるシンとライバル関係になる。
また、ネオ・ジオンでは同じ強化人間であるマリーダ・クルスとも交友を深めるが、フル・フロンタルに心酔するアンジェロ・ザウパーとは馬が合っていない。

中盤から限定的にスポット参戦し、正式に仲間にはならないものの最後まで死亡しない上に、
アクシズ落下阻止の手伝いをしてくれるというおいしい役どころをやってくれた。
「大佐の無茶を止めるのはいつだって俺の役目だからな!」

『天獄篇』ではフロンタル側に付いているが、フラグを満たすことで正式に仲間になる。
仲間にしなくても死亡はしないのでご安心を。

その後、『スーパーロボット大戦T』にも登場。
条件を満たすと、終盤のシークレットシナリオを経て正式に自軍参入する。


余談だが、かつてスパロボの公式アンソロジーコミックに参加していた漫画家・景山まどか氏のお気に入りキャラクターの一人でもあり、
氏が手掛けた漫画では『IMPACT』の一篇『流星群』など、スパロボで扱いが向上した『D』以前よりも何かとピックアップされる事が多かった。
そして当然ながら『D』のアンソロではメッチャ出番が優遇されている

機動戦士ガンダム Extreme vs. MAXI BOOST ON』ではヤクト・ドーガで参戦。
ジオンの先達には純粋な敬意で対応する珍しい姿勢や、恐竜化を続ける機体の最盛期をシャアの機体と比べたりと反応を示す。
一方で、本物の『赤い彗星』を知る者の大半が偽物だと断ずる『赤い彗星の再来』を本物かどうか判断しかねていたり、
ただ小さいというだけで『逆襲のシャア』から見てかなり時間が経った後のMSを過小評価するなど甘い部分も多い。
レオス・アロイの学ぶ姿勢に一定の理解を示す、男女で一緒の機体を操縦する事に否定的、少年兵相手にクェスを重ねるなど妙に人間味のある台詞もある。
一介の軍人、そして強化人間という以前に彼は理想に燃える若者だったということなのだろうか。



追記・修正は研究所で強化されてからお願いします。

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最終更新:2025年08月16日 13:54

*1 クェスが「思わずハサウェイを庇った結果戦死する」という最期を迎えたことからも、クェスの心を真の意味で動かす事が出来たのはハサウェイの方であったのは自明の理である。

*2 クェスと二人がかりとはいえ怒涛のWファンネルによる猛攻でアムロに死を覚悟させるくらい追い詰めており、事実フィン・ファンネルによるバリアがなければ撃墜できていた。

*3 たとえ本体に反応したとしても、後述のシャアに使ったワイヤーによる遠隔操作バズーカでギュネイはどの道詰んでいた可能性もある。

*4 冨野監督の「パイロット技能はアムロ、ニュータイプ能力はカミーユ、メンタルはジュドーが最高」との評価は有名だが、最強クラス3人の中の相対評価なので、高性能機に乗ったこの3人を敵に回した時点でライバル格であるシャアやシロッコ、ハマーンや異様な生存運を誇るジェリドやヤザンでも無ければ死亡フラグである。