ジオン公国軍の陸上戦力

登録日:2020/01/20 Tue 00:33:51
更新日:2025/04/18 Fri 19:47:22
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宇宙世紀0079年。
地球連邦とジオン公国の戦いは宇宙のみならず地球上へなだれ込んだ。
しかしジオンはスペースコロニー主体の国家。地球を知らない彼らが勝利の為に生み出した兵器は数知れず。

この項目では、そんなジオン公国軍が最先端のテクノロジーと珍発想を駆使して開発・運用した陸上戦力を解説する。






陸戦艇

ダブデ

DABDE

全高: 44m
全長:109m
全幅: 93m
《武装》
大型連装砲 ×2基
連装機関砲 ×2~6基

地上部隊の中核となる大型陸戦艇。
陸上戦艦と形容されるその巨体から「ダブデ級陸戦艇」とも表記され、半ば艦艇として扱われている様子。
100mの全長はちょっとした駆逐艦並みのくせに「艇」とは……まあ分類上の都合だろう。

前線の移動司令部という建造目的は地球連邦軍のビッグトレーとほぼ同様。
ただホバーで移動するビッグ・トレーに比べてダブデは無限軌道による移動方法を採用している為、それらに比べて行動範囲に制限があり、専ら後方からの指揮や火力支援に用いられた。
しかし、前方上部に突き出した艦橋などを見てわかるように建造当初からミノフスキー粒子散布下での有視界戦闘に重きを置いた設計であり、艦橋周囲に備わる大型の機関砲2基、あるいは小型機関砲6基により対空兵装は充実。装甲も厚い。
特にその大型連装主砲の火力は絶大で、4基のダンパーまたは打ち込み式アウトリガーで船体を固定して発射する為に(固定しなくても撃てるが)命中率も高く、ダブデからの砲撃は前線で戦う連邦陸軍の兵士にとっては恐怖の的であった。
艦橋後部には回転翼機やVTOL機の発着場があり、後部格納庫は巡航ミサイルの発射台を増設出来る程のスペースがあるが、意外にもMS搭載能力の有無は定かではない。

主にヨーロッパ方面軍や北アメリカのミサイル基地などに複数が配備され、オデッサ作戦ではマ・クベ大佐など高級将校が搭乗して防衛の指揮を執った。
この際、劣勢に立たされたマ・クベ大佐はダブデに積み込んだ水爆ミサイルで連邦軍を恫喝、実際に発射するが、ガンダムの活躍によって阻止された。

なお、一説には純ジオン製のものではなく東ヨーロッパ占領後にロシアの兵器開発局で建造されていたコマンドポスト(戦闘司令所)からシャーシ等を流用しているとする資料もあり、主砲の開発にも現地のロシア人が協力していたという。

また、アフリカ戦線向けには大型化して武装強化・MS格納庫を追加したビグ・ダブデが配備されていた。
こちらはゲームブック『灼熱の追撃』に登場。
作中ではジオンを裏切った特殊部隊「鉄のサソリ」によって破壊されたものがエチオピア高原に放置されていた。

SDガンダム外伝シリーズでは、ザビロニア帝国のモンスターダブデキャタピラとして登場している。


ギャロップ

GALLOP

全高:48.0m
全長:34.3m
全幅:44.7m
推進機関:熱核ジェットエンジン
最高速度:232km/h
《武装》
大型連装砲 ×1基
連装機関砲 ×2基

ランバ・ラル隊での活躍が印象深い中型の陸戦艇。
ホバークラフトによる浮揚と合計8基ものジェットエンジンによる高速推進により、狭い谷間くらい難なく飛び越えられる程の走破性を発揮するモンスターマシン。
MS3機に戦闘車両数台を搭載・整備可能なスペースに加えてある程度の武装も備えていた為に小規模な部隊の移動基地として重宝された。
航行用の艦橋(正面ハッチ上部)と戦闘用の艦橋(ハッチ左右)が別個にあり、戦闘艦橋の方は緊急時には脱出艇としても機能する。

ただ、流石にこれだけ詰め込んだら手狭になったのか居住や物資の搭載などは牽引式のカーゴに依存していたようだ。
ちなみにギャロップとは「の早駆け」という意味。その名に相応しい快速を誇る高速艇だが、カーゴを牽引する本機の姿はどう見てもカタツムリである。

一年戦争から遥か未来にあたる∀ガンダムにも登場する。
マウンテンサイクルから発掘された物で、宇宙世紀の物よりも一回り小型で主砲の有無やエンジンの数など形状が違うことからレプリカだと思われる。
終盤には新たに発掘、または解析して生産されたと思われる迷彩カラーのギャロップが複数登場した。
こちらは支援用に多連装ロケット砲を搭載している。

SDガンダム外伝シリーズでは、ジオン族の騎士(ナイト)ランバ・ラルの愛馬ギャロップや、ネオジオン族のモンスタースネイルギャロップとして登場している。
やっぱりカタツムリやないかい


ザクタンカー

砂漠地帯でのMS運用の為に開発された陸戦艇。
「こんなのいたっけ?」と思われる方も中にはいるだろうが、ΖΖのアフリカ編でジオン残党軍なんかが使っていたメカ。
ザクの技術や部品が流用されてるとかではなくザクの頭に似たキャビンの形状からこの名が付けられた。
無限軌道のキャビンとホバー式のキャリアで構成され、キャリアには2~4機程度のMSを搭載可能。
キャビン後部左右に武装を載せるスペースがあり、単装ビーム砲やミサイルポッドなどを装備出来る。

主にアフリカ大陸に配備され、一年戦後も降伏を拒んだジオンの残党や地元の反連邦組織などで運用された。




戦闘車両

マゼラアタック

ジオン軍の主力戦車。
MSの火力支援をコンセプトとして開発されている為、どちらかというと自走砲に近い。
詳しくは項目へ。



マゼラ・アイン空挺戦車

MAGELLA-EINS

全高:2.4m
全長:7.7m
全幅:3.4m
乗員:4名
《武装》
133mm戦車砲
主砲同軸機関銃
マズラMG74機関銃

Igloo2で登場した、コロニー侵攻用に開発された戦車
マゼラアタックに似た名前だが全く別の戦車で、こちらは普通の戦車。
マゼラアタックはその性質から対戦車戦に弱かったので、コロニー内のみならず地球降下作戦においても多数が運用された。



ジオン軍M1戦車

マゼラアタックの原型となった戦車。単に「M1戦車」とも。
外観は至って普通の戦車で、砲塔右側にミサイルポッドが付いているくらいしか語ることはない。
一応、車体の形状にマゼラアタックへの繋がりが見える。
派生として M1戦車発展型 があり、こちらは右寄りに砲身の付いた砲塔と、正面に機銃が付いてよりマゼラアタックに近くなった車体が特徴。

旧式だからか、地球上ではあまり見かけなかった戦車だが、
一年戦争開戦前にサイド3・キンツェムで発生した反ザビ派のクーデター事件において反乱軍が使用。
しかし、鎮圧に当たったガデムのザクⅠ部隊には手も足も出なかった。



キュイ

全高: 7.8m
全長: 6.2m
全幅:23.8m
推進機関:ガスタービンエンジン
最高速度:85km/h
乗員:操縦手2名
   輸送兵員10~20名
《武装》
30mm連装機関砲 ×1基

パーソナルジェットを装備した歩兵を敵艦または敵施設目前まで肉薄して展開させる為の揚陸戦車。
そびえ立つ指揮塔とその左右から長く張り出したキャットウォークが特徴の珍妙な見た目は見た者の記憶に焼き付く。
劇中ではMSを失ったランバ・ラル隊がこれでホワイトベースに接近して取り付いた場面が記憶に残る。

ただ、武装は指揮塔の30mm連装機関砲が1基のみと脆弱で、兵員室なんて気の利いた物は無く、
歩兵はシートはおろかハーネスすらないキャットウォークの防弾板にしがみついて移動しなければならない。
というかキャットウォークのせいでやたらと被弾面積が広い。
見た目も戦車というよりも動く防波堤か何かである。
の、乗りたくない……
流石にこのキャットウォークは後方への折り畳みが可能で、閉所や道路上では畳んで走行するらしい。

余談だが、履帯がロケットエンジンに変わった宇宙用キュイが存在することも「宇宙世紀余話」で触れられている。
ジオン公国軍の成り立ちを考えるとひょっとしたらこっちの方が先にあったのかもしれない。

2019年には食玩『マイクロウォーズ2』でまさかの商品化。
付属する兵士のフィギュアを機銃座やキャットウォークに乗せることができ、その構造の珍妙さを再確認させた。
汚ねえ花火ではない。



ウィーゼル

型式番号:PVN.44/1
全高:2.7m
全長:6.9m
全幅:3.8m
《武装》
37mm機関砲
マズラMG74/S機関銃
スモーク・ディスチャージャー

水陸両用の6輪式装甲車。
MSに追従してあらゆる地形を行進する走破性と兵員室を持ち、偵察、警戒、兵員輸送など多岐に渡って使用される。

MSの相手などとても出来るものではないので活躍らしいものは殆ど無かったが、『第08MS小隊』第5話ではエレドアとミケルが奪ったザクタンクを相手に奮闘。
これはザクタンクが非武装でエレドアが閉所恐怖症でコックピットハッチを閉められなかったという事情もあり、コックピット周りを集中的に撃ち続けた結果エレドアに重症を追わせたが、最後はクレーンアームで叩き潰された。

バリエーションとして75mm砲を搭載した シュチューメル が存在する。
ただ、こちらは何かしらの問題があったのか少数の配備に留まったようである。



ヒルドルブ

ジオン軍がMS以前に開発していた巨大戦車にモビルスーツ(MS)の技術を投入して完成したモビルタンク(MT)。
戦車としては破格の性能であったのだが……



自走重迫撃砲

全長:7m
全高:3.1m
全幅:3.8m
《武装》
迫撃砲
スモーク・ディスチャージャー

機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に登場した、ジオン自治共和国軍だった頃に運用されていた車両。
正史にも存在しているかは不明。

小型の装軌車に迫撃砲を搭載したもので、使用時に天面のハッチを解放、砲身を立ち上げてから砲撃を行う。

自治共和国時代の士官学校では訓練用装備ではこれが最大火力であり、ガルマ・ザビ率いる士官学校の生徒による連邦軍駐屯地への襲撃・「暁の蜂起」事件において歩兵支援で活躍した。




輸送車両

サムソン

MS用の輸送トレーラー。
トレーラーにザクまたはグフタイプのMS1機の輸送が可能な他、マゼラ・トップを載せてガントラックとしても運用されたという。
マゼラアタックのようにトラクターの運転席部分が分離して「サムソントップ」になるが、これはあくまで脱出用でトレーラーに補助運転席などは無いのでトップが失われるとトレーラー部は何も出来なくなる。

連邦軍でも利便性は評価されていたらしく、戦後は接収した物だけでなく生産ラインを再稼働、量産して使ったんだとか。

一年戦争開戦以前のMS開発秘話を描いた漫画『Developers 機動戦士ガンダム Before One Year War』では分離機能が無いサムソンが登場しており、その都度モデルチェンジが行われているようだ。

ガンプラではEXモデルの1/144スケールで立体化。
EXモデルということで造形が細かく、サムソントップの分離機能も再現されている。
流石に幌は付属していないが、1/144のガンプラを載せるには過不足ないので是非ザクやグフを載せて遊ぼう。



サムソントップ

サムソンのトラクター部分から運転モジュールが分離した状態。
車体左右のホバークラフトによって最大数十mの浮上走行が可能で、不整地でも高速で移動出来る。
本来は脱出用だが、キャビンが広く通信設備が整っている為に兵員輸送車として運用された例もあるようだ。
ルーフにある2基の連装機関砲での戦闘も可能であるものの、あくまで自衛用の火器であって本来なら前線に出せるものではないのだが、
ハモン率いるランバ・ラル隊の残党によってホワイトベース破壊作戦に使用され、ガンキャノンを翻弄した。



カーゴ

ギャロップなどに牽引されるドーム型のキャンピングトレーラー。
ホバーによる浮上機能こそあるものの、推進機関が無いので牽引されて移動する。
長期作戦中の地上部隊の隊員はこのカーゴ内で生活を送るのである。
初代ガンダムに登場したイエローのものが印象深いが、別にギャロップ専用という訳ではないらしい。

劇中ではランバ・ラル隊壊滅後、その残党によってギャロップの予備エンジンと砲塔代わりのマゼラ・トップ3機を装備し、
爆弾を満載してホワイトベースに突っ込ませる作戦が取られたが、ある人物の犠牲によって失敗に終わった。



軍用トラック

至ってシンプルな人員輸送用のトラック。
通常サイズのタイヤが3対の他にも特大サイズのタイヤが1対キャビンとトレーラーの間に付いているのが特徴。



8輪装甲車

全長:7m
全高:3.1m
全幅:3.8m
《武装》
機銃

『THE ORIGIN』の自治共和国軍に配備されていた装甲車。
こちらも正史に存在しているかは不明。

8輪駆動による高い走破性と厚い装甲を活かして兵員輸送車として運用された。
上部には機銃座が備わっており、支援攻撃も可能。

「暁の蜂起」事件では連邦軍駐屯地への襲撃に用いられ、戦果を挙げた。




その他

モビルスーツ

ジオン軍が開発した機動兵器。
当初は宇宙機に多少の手直しをした機体が用いられていたが、地球への侵攻と共に数多くの地上用MSが開発された。



モビルアーマー

殆どが宇宙用に開発されたが、ライノサラスなど、いくつかは地上用にも開発された。



サウロペルタ

型式番号:PVN.3/2

多目的に運用される軽機動車。平たく言えばジオン版ジープである。
これ自体はさして語ることはないが、第49回静岡ホビーショーにて「プラモデルを1/1で作る会」の手によって連邦軍のジープ・ラコタ共々1/1スケールの模型が製作されたことが話題を呼んだ。
これらは現在もサンライズ公認の下、度々イベントに出展されている様子。*1

どマイナーなメカだが、1/35 U.C.HARD GRAPH「サイクロプス隊セット」で立体化している。



B.M.C.Z78 / 2

全長:1800mm
全高: 800mm
乾燥重量:120kg
最大出力:50馬力
始動形式:キック式
ブレーキ形式:マキシム式ドラムブレーキ
変速機形式:前5段、後2段

軍用の中型オートバイ。「B.M.C(ベンク)」とは「BIEAL MOTOR COMPANY」の略で、開発したメーカーのこと。
走破性に優れていて、長距離偵察や伝令に使用された他、空挺作戦でも評価されたという。
ランバ・ラル隊のゼイガン軍曹がフラウ・ボウの後を付けたシーンが印象深い。

こちらもマイナーメカながら1/35 U.C.HARD GRAPH「ランバ・ラル独立遊撃隊セット」で立体化している。



ワッパ

WAPPA

型式番号:PVN.4/3
全高:2.7m
全長:5.5m
全幅:2.1m(ファン直径1.1m)
動力:電動モーター ×2
乗員:1名
《武装》
マズラMG74/S機関銃 ×1挺

パーソナル・ホバー・バイクの一種。
地球侵攻作戦に際して占領地域の拡大と共に人手不足が問題となった為、少人数で効率良く偵察を行う目的で開発された。

むき出しのコックピットをカウルに覆われたローターで挟んだ独特な形状だが、
小型で扱い易く、機体制御の殆どを自動化しているので操縦に必要なのはレバー1本とフットペダル2つに体重移動のみと、オートバイ感覚で誰でも扱える。
動力はモーター駆動だが意外と出力が高く、短時間ながら最大で数十mまで高度を取れて小回りも良く、どんな狭い場所でも移動出来る優れもの。
オマケに静粛性も良い。
更にオプションパーツによってある程度の物資輸送やあらゆる環境にも対応することも出来た。

武装こそ機銃1挺と侘しく防御力も皆無だが、拡張性も良く数時間の訓練で簡単に乗りこなせるので偵察や連絡任務など、あらゆる任務で広く使用された。
特にクワラン曹長を中心とした第908偵察中隊の若い隊員がガンダムに肉薄して吸着爆弾を仕掛けた作戦は軍上層部でも評価され、オデッサの戦いで用いられている。

戦後は連邦軍が接収したものを運用した他、その扱い易さからあらゆる企業によって類似品や発展機種の販売が行われ、後の時代には「ワッパ」という名前自体がホバーバイクを指す一般名詞として定着した。

余談だが「ワッパ」とは「 W heelless A ero P alletized P ersonal A ctuator」の略称であるらしい。

やはり立体化しているが、1/144 HGザク地上戦セットや1/35 U.C.HARD GRAPH、食玩『マイクロウォーズ5』など立体化の機会は地味に多い。






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最終更新:2025年04月18日 19:47

*1 2018年に大洗で確認されている。