Kirby’s Avalanche

登録日:2023/03/25 Sat 19:52:28
更新日:2025/02/03 Mon 12:52:17
所要時間:約 16 分で読めます






“Kirby’s Avalanche”

あなたはこのゲームをご存知だろうか。
ゲームタイトルに「Kirby」の名を冠しているように、このゲームは星のカービィシリーズのうちの一作品である。

だが、カービィのゲームであるにもかかわらず日本国内では知名度がかなり低い。それもそのはず、この作品は「星のカービィ」シリーズで唯一日本で発売されておらず、海外専売であるからだ。

では肝心のゲーム内容は何か。一言で言うと「落ちものパズル」であるが、同じカービィの落ちものパズルである『カービィのきらきらきっず』とは別物となっている。

ならば、このゲームの正体は何なのか? ここで、実際のゲーム画面を見ていただこう。


















そう、まんまぷよぷよそのものである。


それもそのはず、このゲームは日本の『す~ぱ~ぷよぷよ』を海外向けにローカライズするにあたって、キャラ等を差し替えた移植版だからである。
では、改めて解説を。


Kirby’s Avalanche”(ヨーロッパ版タイトル:Kirby’s Ghost Trap)は、1995年にコンパイル・バンプレスト*1ならびにHAL研究所が開発したSuper Nintendo Entertainment System(海外版スーパーファミコン)用ゲームソフトである。

概要

前述の通り、本作は『す~ぱ~ぷよぷよ』(以下日本版)のキャラ差し替えローカライズ移植作となっている。
誤解されないように言っておくと、れっきとした正規品のゲームであり、決してファン作成のハックロムではない。
そのため、基本的なゲーム内容も日本版そのまま。同じ色のぷよを4個以上つなげると消える、あの「ぷよぷよ」のままである。
ゲームの基本システムは、いわゆる初代ぷよぷよのルール。よって、『ぷよぷよ通』以降のルールとの差異についても、

  • 予告ぷよの「相殺」不可
  • 縦1マス分の隙間でぷよを回転する「クイックターン」は未実装
  • 「NEXTぷよ」の表示は1手先(直前のもの)までのみ
  • 全消しボーナス」はなし
  • 予告ぷよの最大は「岩ぷよ(おじゃまぷよ30個分)」で、画面上では計180個分予告が表示される

となっている。
最大のポイントは、『通』以降のルールの要にもなっている「相殺」がないこと。
そのため、平たく言えば、基本的には先に5連鎖を組んで早く消し終えた方がほぼ勝つという、かなり大味なバランスとなっている*2
ただし、本作の連鎖ボイスは、日本版の4段階から6段階へ増加している。

そもそも当初は日本版をそのままローカライズして海外でリリースする予定だったが、任天堂からコンパイルに直接キャラ差し替えの要請があり、HAL研の開発協力によって発売されたという*3
同様にメガドライブ版などのセガハードのコンシューマー向け移植タイトルも、当時海外で放映されていたソニックのアニメのキャラへ差し替えが行われており、タイトルも“Dr. Robotnik's Mean Bean Machine”(邦題:Dr.エッグマンのミーンビーンマシーン)となっている。
(Kirby's Avalancheにも言えることだが、マッチョイズムないしカートゥーン寄りを尊ばれる北米市場において、「ぷよぷよとしてのゲーム性」は評価されても「魔導物語の萌え的なかわいらしさを持つキャラクター」が率直に言えば「無理!キモすぎる!」と生理的に受け付けなかったという事情もあったりもする。)

更には日本のアーケード版をそのまま翻訳したものも出回っていたので、当時の海外はガワは違うが中身は同じゲームタイトルが3種類もあるという妙な事態が起こっていた。

キャラの他に、BGMもほぼ全てカービィの曲に差し替えられている。
夢の泉』と『カービィボウル』からのアレンジで占めているが、タイトル画面及びモード選択時のBGMは完全新規のもので、ピンチ時のBGMは日本版と同一である*4

海外専売ということで長らく日本で遊ぶにはハードルが高かった作品だが、2022年に海外のスーパーファミコン Nintendo Switch Onlineにて配信されたことにより、いくつかの手法で海外版を入手することで、日本でも気軽に遊ぶことが可能になった*5

ストーリー

本作にも一応ストーリーが存在する。と言っても日本版の「ぷよぷよ」同様、無いも同然の内容であるが

プププランドで今流行りの「ぷよぷよ」。ある日カービィプププランドのぷよぷよチャンピオン決定戦を提案する。こうして第1回「夢の泉杯」が開催。
ルールはいたってシンプル。夢の泉まで徒歩で向かい、ぷよらー同士が出会ったらぷよ勝負をし、勝った方が先へ進めるというもの。こうして決まった勝ち残りが夢の泉での本戦に挑める。
果たしてカービィプププランドのぷよぷよチャンピオンになれるのか。


ゲームモード

  • COMPETITION
日本版の「ひとりでぷよぷよ」。ひとりでCPと対戦するモード。
練習ステージの「EASY」と「NORMAL」、「HARD」の3種類の難易度から選択して始める。
なお、NORMALとHARDの違いは開始ステージのみで、難易度自体はオプションから弄る必要がある。

  • 1P VS.2P
日本版の「ふたりでぷよぷよ」。人間同士で対戦するモード。
BGMは「夢の泉」のアイスクリームアイランドのアレンジ。

  • PRACTICE
日本版の「とことんぷよぷよ」。ゲームオーバーになるまでプレイする、対戦相手が登場しないぷよぷよ。
BGMは「夢の泉」のバタービルディングのアレンジ(練習ステージと兼用)。


対戦相手

「COMPETITION」モードにて対戦する相手は全員初代と『夢の泉』からの選出となっている。
更には「ぷよぷよ」シリーズでおなじみの「漫才デモ」まで備わっているが、問題なのはその中身。なんとこの漫才デモ、全体を通してカービィが非常に毒舌という現代のカービィ像では考えられないような、クセの強いものに仕上がっている。
とは言っても、本作の漫才デモは全体を通して海外特有の“ノリ”が強く、日本人である我々にはピンとこないものもあるかもしれない。
また、CPの思考ルーチンも日本版と対応する相手と同一のものとなっている。
なお、日本版で対戦時に見られる踊るカーバンクルはカービィに差し替え。奇しくもどちらも同じ「カーくん」呼ばわりされていたり。
以下では漫才デモの原文とその意訳も同時に掲載する。

元となったCPは「スケルトン-T」。日本版同様、このステージではガイドが出現する。
最メジャーなザコらしく一番弱く、性格も臆病な様子。
練習ステージの漫才デモのBGMはヨーグルトヤードのマップ画面のアレンジ。

元となったCPは「ナスグレイブ」。
やたらとカービィ相手に強気な模様。

元となったCPは「マミー」。
こちらがピンチになると憎たらしい目で見つめてくる。


元となったCPは「ドラコケンタウロス」。
実は『スーパーデラックス』以前にこの時点でデザインが現在のものと同一になっている。
ここからステージ7までBGMは漫才デモ時は『カービィボウル』のデモプレイ、勝負時はヨーグルトヤードのアレンジとなる。

元となったCPは「すけとうだら」。
漫才デモ時は背景にある木から表情を出して登場する。

  • ステージ3 カブー
元となったCPは「スキヤポデス」。
無表情そうな顔に反して言ってることがかなり怖い。

元となったCPは「ハーピー」。
よって、ハーピーの十八番であるぷよを左右両端に積む通称「ハーピー積み」を披露する。
「HARD」を選択した場合はここからスタートする。

  • ステージ5 スクイッシー
元となったCPは「さそりまん」。

元となったCPは「パノッティ」。

元となったCPは「ゾンビ」。
漫才デモは全体を通して一番あっさり。

元となったCPは「ウィッチ」。

元となったCPは「ぞう大魔王」。
どうやらここからは夢の泉での本戦のようである。
ここからステージ11までBGMは漫才デモ時は『カービィボウル』のコース5後半ホールのBGM、勝負時は『夢の泉』の飛行船ステージなどで流れるBGMのアレンジとなる。

元となったCPは「シェゾ」。

上が青、下が赤で影のようになっている表現が『SDX』より先に使われている。元となったCPは「ミノタウロス」。

元となったCPは「ルルー」。
こちらが勝つとなんと降参なのか白旗を揚げるあれ?仮面は?
アニメ化メタナイトのキャラ像がはっきりと定まる以前の作品ということで、かなりブレブレである。

元となったCPは「サタン」。
このステージのみ日本版のぞう大魔王のようにぷよを置いたときに相手の画面が揺れる演出が発生する。
漫才デモと勝負時のBGMはそれぞれ『夢の泉』の闘技場、『カービィボウル』のメカデデデ戦のアレンジ。

デデデ大王に勝利すると夕日をバックにトロフィーを構えたカービィが映し出され、日本版同様キャラ紹介のあとスタッフロールに突入する。


余談

  • タイトルにもある“Avalanche”は日本語で「雪崩」の意味。降りかかってくるぷよ(特におじゃまぷよ)を雪崩に例えたのだろう。
    同様にゲーム内では色ぷよのことを“Blob”、おじゃまぷよは“Boulder”(丸石)と呼称されている*6

  • ぷよぷよプレイ中のゲーム画面中央でカービィが動き回っているが、これは原作におけるカーバンクルのポジションをカービィに置き換えたものである*7

  • ステージ9以降の背景をよく見るとナイトメア(パワーオーブ)が夢の泉に鎮座している。


  • Nintendo Switchで配信されたことで遊ぶハードルが低くなった本作だが、逆に海外ではSFC版『きらきらきっず』は展開されたことがない。本作と同時にSFC版『きらきらきっず』が配信されたことで、海外でも当作を遊ぶ敷居は低くなっている。後に海外版SNESOnlineでも配信され、さらにその敷居は低くなった。

  • 2023年3月現在スーパーファミコン Nintendo Switch Onlineに『す~ぱ~ぷよぷよ』自体は配信されていないため*8、ガワこそ違えどSFC版の初代ぷよぷよを現行ハードで遊ぶ唯一の方法となっている。


  • スタッフロールには名前が入っていないが、桜井政博氏も監修に参加していることを本人のYouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」の「メテオス 【企画コンセプト】」で明かしている。


追記・修正はカービィたちとぷよぷよ勝負をしながらお願いします。




画像出典:『Kirby’s Avalanche』
制作・著作 株式会社コンパイル/株式会社バンプレスト/株式会社ハル研究所/任天堂株式会社
現権利関係 株式会社セガ/株式会社バンダイナムコエンターテインメント/株式会社ハル研究所/任天堂株式会社

©1992-1995 COMPILE/BANPRESTO
©1995 HAL Laboratoly,inc./Nintendo


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  • 日本未発売
  • ハル研究所
  • 1995年
最終更新:2025年02月03日 12:52
添付ファイル

*1 現在の権利関係はコンパイルはセガに、バンプレストはバンダイナムコに移行

*2 これ以外にも「デスタワー」などの、より少ない連鎖数で致死量のおじゃまぷよを送る手段もあるが、これらは総じて上級者向けのテクニックである。

*3 実際にスタッフロールを見ると日本版と同じコンパイル・バンプレストのスタッフが大半を占めていることが分かる。

*4 聴き比べると音源の差異によって音色は異なる。

*5 詳細は各自検索してほしいが、日本版のNintendo Switch Online会員になってさえいれば、追加料金などはかけずに合法的にダウンロードできる。

*6 現在の英語圏の呼称はぷよを総称して“puyo”、おじゃまぷよは“garbage puyo”と呼ばれる。

*7 因みにこの2体はどちらも「カーくん」と呼ばれており、カーバンクルの方は英語版だと「Carby」になっている。

*8 アーケード版・メガドライブ版は配信されている。スーパーファミコンは次作の『す~ぱ~ぷよぷよ通』のみ配信。