Kirby’s Avalanche

登録日:2023/03/25 Sat 19:52:28
更新日:2023/05/19 Fri 00:04:05
所要時間:約 16 分で読めます






“Kirby’s Avalanche”

あなたはこのゲームをご存知だろうか。
ゲームタイトルに「Kirby」の名を冠しているように、このゲームは星のカービィシリーズのうちの一作品である。

だがカービィのゲームであるにも関わらず日本国内では知名度がかなり低い。それもそのはず、この作品は星のカービィシリーズで唯一日本で発売されておらず、海外専売であるからだ。

では肝心のゲーム内容は何か。一言で言うと落ちものパズルであるが、同じカービィの落ちものパズルである「カービィのきらきらきっず」とは別物となっている。

ならばこのゲームの正体は何なのか?ここで実際のゲーム画面を見ていただこう。


















そう、まんまぷよぷよそのものである。


それもそのはず、このゲームは日本の「す~ぱ~ぷよぷよ」を海外向けにローカライズするにあたってキャラ等を差し替えた移植版だからである。
では改めて解説を。


Kirby’s Avalanche”(ヨーロッパ版タイトル:Kirby’s Ghost Trap)は、1995年にコンパイル・バンプレスト*1ならびにHAL研究所が開発したSuper Nintendo Entertainment System(海外版スーパーファミコン)用ゲームソフトである。

概要

前述の通り、本作は「す~ぱ~ぷよぷよ」(以下日本版)のキャラ差し替えローカライズ移植作となっている。勘違いしないために言っておくと、決してファン作成のハックロムではない。そのため、基本的なゲーム内容も日本版そのまま。
よって、「ぷよぷよ通」以降のルールとの差異についても、
  • おじゃまぷよの相殺不可
  • 縦1マス分の隙間でぷよを回転する「クイックターン」は未実装
  • NEXTぷよの表示は直前のもののみ
  • 全消しボーナスはなし
  • 予告ぷよの最大は岩ぷよ(おじゃまぷよ30個分)で画面上では計180個分予告が表示される
となっており、「通」以降のルールの要にもなっている相殺がないということで、平たく言えば先に5連鎖を組めた方の勝ちというかなり大味なルール。*2
ただし連鎖ボイスは日本版の4段階から6段階へ増加している。

そもそも当初は日本版をそのままローカライズしてリリースする予定だったが、任天堂からコンパイルに直接キャラ差し替えの要請があり、HAL研の開発協力によって発売されたという。*3
同様にメガドライブ版などのセガハードのコンシューマー向け移植タイトルも当時海外で放映されていたソニックのアニメのキャラへ差し替えが行われており、タイトルも“Dr. Robotnik's Mean Bean Machine”(邦題:Dr.エッグマンのミーンビーンマシーン)となっている。
更には日本のアーケード版をそのまま翻訳したものも出回っていたので、当時の海外はガワは違うが中身は同じゲームタイトルが3種類もあるという妙な事態が起こっていた。

キャラの他に、BGMもほぼ全て差し替え。「夢の泉」と「カービィボウル」からのアレンジで占めているが、タイトル画面及びモード選択時のBGMは完全新規のもので、ピンチ時のBGMは日本版と同一である。*4

海外専売ということで長らく日本で遊ぶにはハードルが高かった作品だが、2022年に海外のスーパーファミコン Nintendo Switch Onlineにて配信されたことにより、いくつかの手法で海外版を入手することで日本でも気軽に遊ぶことが可能になった*5

ストーリー

一応ストーリーも存在する。と言っても日本版同様ないのも同然ではあるが

プププランドで今流行りのぷよぷよ。ある日カービィはプププランドのぷよぷよチャンピオン決定戦を提案する。こうして第1回「夢の泉杯」が開催。
ルールはいたってシンプル。夢の泉まで徒歩で向かい、ぷよらー同士が出会ったらぷよ勝負をし、勝った方が先へ進めるというもの。こうして決まった勝ち残りが夢の泉での本戦に挑める。
果たしてカービィはプププランドのぷよぷよチャンピオンになれるのか。


ゲームモード

  • COMPETITION
日本版の「ひとりでぷよぷよ」。練習ステージのEASYとNORMAL、HARDの3種類の難易度から選択して始める。なお、NORMALとHARDの違いは開始ステージのみで、難易度自体はオプションから弄る必要がある。
  • 1P VS.2P
日本版の「ふたりでぷよぷよ」。BGMは「夢の泉」のアイスクリームアイランドのアレンジ(エンディング曲と兼用)。
  • PRACTICE
日本版の「とことんぷよぷよ」。BGMは「夢の泉」のバタービルディングのアレンジ(練習ステージと兼用)。


対戦相手

COMPETITIONモードにて対戦する相手は全員初代と「夢の泉」からの選出となっている。
更にはぷよぷよらしく漫才デモまで備わっているが、問題なのはその中身。なんとこの漫才デモ、全体を通してカービィが非常に毒舌という現代のカービィ像では考えられないようなクセの強いものに仕上がっている。
とは言っても、漫才デモ全体を通して海外特有のノリが強く、日本人である我々にはピンとこないものもあるかもしれない。
また、CPの思考ルーチンも日本版と対応する相手と同一のものとなっている。
なお、日本版で対戦時に見られる踊るカーバンクルはカービィに差し替え。奇しくもどちらも同じ「カーくん」呼ばわりされていたり。
以下では漫才デモの原文とその意訳も同時に掲載する。

元となったCPはスケルトン-T。日本版同様このステージではガイドが出現する。
最メジャーなザコらしく一番弱く、性格も臆病な様子。
練習ステージの漫才デモのBGMはヨーグルトヤードのマップ画面のアレンジ。

元となったCPはナスグレイブ
やたらとカービィ相手に強気な模様。

元となったCPはマミー。
こちらがピンチになると憎たらしい目で見つめてくる。


元となったCPはドラコケンタウロス
実はスーパーデラックス以前にこの時点でデザインが現在のものと同一になっている。
ここからステージ7までBGMは漫才デモ時は「カービィボウル」のデモプレイ、勝負時はヨーグルトヤードのアレンジとなる。

元となったCPはすけとうだら。
漫才デモ時は背景にある木から表情を出して登場する。

  • ステージ3 カブー
元となったCPはスキヤポデス。
無表情そうな顔に反して言ってることがかなり怖い。

元となったCPはハーピー
よってハーピーの十八番であるぷよを左右両端に積む通称「ハーピー積み」を披露する。
HARDを選択した場合はここからスタートする。

  • ステージ5 スクイッシー
元となったCPはさそりまん。

元となったCPはパノッティ。

元となったCPはゾンビ。
漫才デモは全体を通して一番あっさり。

元となったCPはウィッチ

元となったCPはぞう大魔王。
どうやらここからは夢の泉での本戦のようである。
ここからステージ11までBGMは漫才デモ時は「カービィボウル」のコース5後半ホールのBGM、勝負時は「夢の泉」の飛行船ステージなどで流れるBGMのアレンジとなる。

元となったCPはシェゾ

元となったCPはミノタウロス。

元となったCPはルルー
こちらが勝つとなんと降参なのか白旗を揚げるあれ?仮面は?
アニメ化でメタナイトのキャラ像がはっきりと定まる以前の作品ということで、かなりブレブレである。

元となったCPはサタン
このステージのみ日本版のぞう大魔王のようにぷよを置いたときに相手の画面が揺れる演出が発生する。
漫才デモと勝負時のBGMはそれぞれ「夢の泉」の闘技場、「カービィボウル」のメカデデデ戦のアレンジ。

デデデ大王に勝利すると夕日をバックにトロフィーを構えたカービィが映し出され、日本版同様キャラ紹介のあとスタッフロールに突入する。


余談

  • タイトルにもある“Avalanche”は日本語で「雪崩」の意味。降りかかってくるぷよ(特におじゃまぷよ)を雪崩に例えたのだろう。
    同様にゲーム内では色ぷよのことを“Blob”、おじゃまぷよは“Boulder”(丸石)と呼称されている。*6

  • ステージ8以降の背景をよく見るとナイトメア(パワーオーブ)が夢の泉に鎮座している。

  • ゲームオーバー画面も日本版のアルルをそのままカービィに置き換えているだけの全く同じ構図となっている。

  • Nintendo Switchで配信されたことで遊ぶハードルが低くなった本作だが、逆に海外ではSFC版「きらきらきっず」は展開されたことがない。本作と同時にSFC版「きらきらきっず」が配信されたことで、海外でも当作を遊ぶ敷居は低くなっている。

  • 2023年3月現在スーパーファミコン Nintendo Switch Onlineに「す~ぱ~ぷよぷよ」自体は配信されていないため*7、ガワこそ違えどSFC版の初代ぷよぷよを現行ハードで遊ぶ唯一の方法となっている。

  • 同じくこれまでBGMのアレンジ収録が叶わなかった「カービィのピンボール」や「カービィのブロックボール」、「コロコロカービィ」は「カービィのグルメフェス」にて念願の初アレンジを果たしたものの、海外専売かつベースがぷよぷよである本作はBGMのアレンジがここでも行われなかった。こればかりは仕方がない面もあるのだが。

  • スタッフロールには名前が入っていないが、桜井政博氏も監修に参加していることを本人のYouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」の「メテオス 【企画コンセプト】」で明かしている。


追記・修正はカービィたちとぷよぷよ勝負をしながらお願いします。




画像出典:『Kirby’s Avalanche』
制作・著作 株式会社コンパイル/株式会社バンプレスト/株式会社ハル研究所/任天堂株式会社
現権利関係 株式会社セガ/株式会社バンダイナムコエンターテインメント/株式会社ハル研究所/任天堂株式会社

©1992-1995 COMPILE/BANPRESTO
©1995 HAL Laboratoly,inc./Nintendo


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最終更新:2023年05月19日 00:04
添付ファイル

*1 現在の権利関係はコンパイルはセガに、バンプレストはバンダイナムコに移行

*2 これ以外にも「デスタワー」などのより少ない連鎖数で致死量のおじゃまぷよを送る手段もあるが、総じて上級者向けのテクニックとなる。

*3 実際にスタッフロールを見ると日本版と同じコンパイル・バンプレストのスタッフが大半を占めていることが分かる。

*4 聴き比べると音源の差異によって音色は異なる。

*5 詳細は各自検索してほしいが、日本版のオンライン会員になってさえいれば追加料金などはかけずに合法的にダウンロードできる。

*6 現在の英語圏の呼称はぷよを総称して“puyo”、おじゃまぷよは“garbage puyo”と呼ばれる。

*7 アーケード版・メガドライブ版は配信されている。スーパーファミコンは次作の「す~ぱ~ぷよぷよ通」のみ配信。