本項では、リパラオネ民族における英雄観について解説する。


概要

 リパラオネにおける英雄観は、数々の民族英雄叙事詩から発達し、ヴェルテール・シュテック・レヴァーニに始まる近代哲学と共に、文学史的な変革と歴史の趨勢の中で一定の共通理解を形成してきた。

二つの英雄

 リパラオネ民族における英雄は、大きく分けて「物語的英雄」xenlart)と「近代的英雄」Fjacafi)に分かれる。
 前者は先に述べた通り、叙事詩に由来する英雄観であり、後者は近代以降の歴史の激動の中で生まれた英雄観である。

物語的英雄

 古くはリパラオネ教の教典(ファシャグノタール、アンポールネム)に始まり、スキュリオーティエ叙事詩・アルダスリューレの行・ヴァルガンテとシリス・レーネガーディヤなどの叙事詩を通して近世までに形成されてきた英雄観である。
 基本的に英雄の完成をその死亡に捉えるものであり、英雄たるものは現実に与えられた苦境に勇敢に立ち向かって目的を果たした後に全く関係のないことがらによって死ぬことによって成立すると考えられる。しかし、英雄の死は、死自体が目的であってはならないため、リパラオネ人は自爆攻撃のような行為をする者をこの意味での英雄であるとは捉えない傾向にある。
 この観念は、ヴェルテール哲学における刻印の概念に基づいて、ある個人の死が「英雄」観念の完成として捉える考え方が一般的となっており、リパラオネ思想における善悪観や人間観に通じる通念的な考え方であると分析されている。

 北アレス氏に攻め入られて継承順位にある家族が軒並み戦死し、苦境に陥った際に家長となって味方を鼓舞して戦いに勝利する。しかし、後の宗教問題で敵視され、暗殺される。
 町民を愛する高貴なる青年アルダスは、公国の娘がドルムに拉致されたことを知る。宮廷に押し入ったアルダスは、大公に自らが娘を救い出すのだと述べ、大公の信任を得て討伐の旅へと出発する。しかし道中、見知らぬ正装の男に将来の死を予言される。
 ヴェガード大公ルークロウンの子ヴロイヤは、父王に命じられて連れ去られた美少女ヴェイジアを救い出す旅へと出立する。一瞬にしてドルムを斬り、その滅びを確信して木陰で居眠りをし始める。
 村の青年——ベーシャは、村から去ったブラーイェたちをヴェフィサイトであるラージンと共に討伐する。しかし、村に戻った際に置いてきたラージン配下のヴェフィサイトたちは討ち死にしており、村人はもぬけの殻になっていた。村長のラツが命じた「幼馴染であるベルチェに無事のまま再会すること」という約束に彼は苛まれ、旅に出ることになる。

近代的英雄

 近代的な考え方であるナショナリズムに基づき、伝統的な英雄観を利用した国家的英雄が作られることになった。ターフ・ヴィール・イェスカが主要な存在であるが、後に第三政変以降にこのような英雄観は歪み、一人の人間として受容する傾向が出てくるようになった。
 圧倒的不利な局面で「二正面作戦」を実行することで、戦況をひっくり返したデュイン戦争における総司令官アレス・フレンテャ・シャルデュイン・アレス独立戦争にて傷痍軍人になりながらも、軍や議会において存在感を表し続けたターフ・アレシャなどの軍人もこの枠に入る。
最終更新:2025年04月29日 21:48