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パニッシャー」を以下のとおり復元します。
*パニッシャー
【ぱにっしゃー】
|ジャンル|ベルトアクション|~|
|対応機種|アーケード(CPシステムダッシュ)|~|
|販売・開発元|カプコン|~|
|稼動開始日|1993年|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[Marvel Comics関連作品シリーズ]]''|

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#center{''&big(){悪ある限り戦い続ける事を運命づけられたダークヒーローと、MARVELが誇る名脇役の快進撃}''}
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#contents(fromhere)
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**概要
-MARVEL社のアメコミ「The Punisher」のゲーム化。記念すべき「カプコン初のマーヴルゲーム」であるが、日本ではほぼ無名なうえダークヒーローであるパニッシャーを最初に選ぶあたりに当時のカプコンらしさがうかがえる((当時の日本ではアメコミマニア以外には『超人ハルク』と『スパイダーマン』以外のMARVEL作品は知名度0。更には(アメリカ製ドラマがTV放映されていたハルクはともかく)所謂「東映版」しか放映されていなかったスパイダーマンは日本製ヒーローだと勘違いしていた人間も多数いた。))。
--パニッシャーは仲間がいないので、2Pとしてマーヴル世界共通のサブキャラクターを務める有能な軍人「ニック・フューリー」をゲストに迎えている。なお、ニックだけでプレイした場合ストーリーが異なるため''「ニック・フューリーのゲーム化」という極めて稀有な側面を持ち合わせた作品である''ともいえる。
---おそらくニックは、「ミュータントではない普通の人間」「一応ヒーロー側」「各種火器や兵器の扱いに長けた猛者」といったパニッシャーとの共通点を持つという理由だけで選ばれたのではないかと思われる。
--ちなみに、本作でラストボスを務めるのは同じくマーヴル世界共通の大物ヴィラン(悪役)として名を馳せる「キングピン」。巨体・機敏な動き・極めて多彩な攻撃手段…と驚異的な格闘能力で最後の最後に立ちはだかる。しかし、こいつは何故かダウン投げを決めることができるらしい。

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**評価点
-過剰なまでに高性能に調整されたプレイヤーキャラクターの性能に起因する控えめな難易度。
--本作のプレイヤーの基本操作は従来のベルトアクション同様レバー+2ボタン(攻撃・ジャンプ)とシンプルだが、ジャンプ中に2ボタン同時押しで画面外から手榴弾を投げる(画面内の敵キャラクターに大ダメージを与えることが出来る。持っている数しか使えない)、ダッシュジャンプの頂点で攻撃をすると青白く燃えるキック(通称:流星キック)を放つ、基礎的な操作も隙がほとんど無い等と一見地味ながらいちいちプレイヤー有利になるよう基本性能が凄まじい高さに調整されている。
--更に、ギャング系など銃器を持つ敵やロボット型のプリティー兄弟が存在する場面では、ガンモードになり自動的に拳銃を抜き出して発砲できるようになる仕様を搭載。しかも半自動照準・弾数制限無し・格闘攻撃のリーチ内であれば普段通りの攻撃も出せる、とデメリットは一切無い。
---流石にボス戦では銃器を持つ敵がいないと銃は使えないが、前述のように銃の使用が前提のボスはいないので全く問題無かったりする。
--一部の破壊可能なオブジェは、同期の『[[キャディラックス 恐竜新世紀]]』同様、持ち上げて運べる。
---その時持っている武器や、回復アイテム入りの箱を持ち上げた状態を維持してシーンをまたいで移動可能な仕様も『キャディラックス』から継承。原始肉を難所やボス戦に持ち越す事も可能で、まさしく上級者垂涎のテクニックだろう。
--ステージクリア時のボーナスは、通常のボス撃破やタイムボーナス以外にも、道中で取得したアイテムやストックしている手榴弾もスコアボーナスの対象になっている。

-自機の性能は「コーディーとハガーとガイの長所だけ合わせて向上させ、ダッシュ・ボム・射撃を追加した」ような地味ながら前代未聞の超絶高性能。2面及び5面ボスのガードロイド系以外の全ての敵に何らかのハメが通用する。

-プレイヤーがヤケクソ気味に高性能な上にヤケクソ気味に救済措置だらけでどうしようもないほどプレイヤーが有利、敵は強さも抑え気味、とベルトアクションが持つ爽快感だけを味わえる作品。同一ジャンルのゲームの中ではトップクラスの低難度のため、誰にでもオススメ。
--難易度の低さとプレイヤーが高性能すぎるのが評価点の一つというのも変な話だが、それだけベルトアクションというジャンルの(悪い意味での)ハードルの高さを表しているとも見なせる。
---とはいえ、プレイヤーが非常に高性能がゆえに相対的に難易度が低く見えるだけで、実際の難易度は高めであり断じてヌルゲーではない。''パニッシャーとニック、ふたりのポテンシャルを引き出せずしてクリアはできない。''別の意味でバランスの取れた難易度ともいえる。

-豪快な残酷描写とノリの良さ。
--マフィアに家族を殺され復讐鬼となった元海兵隊員のダークヒーロー・パニッシャーがなみいる悪人達を情け容赦なく素手・凶器・銃火器で叩き潰し、最終的には犯人グループのボス・キングピンにも制裁を下し復讐を果たす、という極端に単純明快で暴力的なスタイルが強調されているため、プレイにも熱が入ることうけあい。
--中でも1面ラストの「情報と引き換えに命乞いするボスから情報を聞き出した後に、『''そうか、ありがとうよ!''』と言い放った直後に射殺」は残酷でありながらも清々しさすら感じられる。
---ちなみにニックの場合は「そうか、ちょっとねむってな!」とサマーソルトで蹴り飛ばすだけで、パニッシャーに比べればかなり穏便。まぁ、こいつ以外の敵は普通に皆殺しにしているのだが…。
---2人同時プレイの場合、「殺すのを前提で情報を聞き出すパニッシャーにツッコミを入れるニック」、という光景が拝める。
--そんなノリでいて、意外にも上品でアダルティなBGM群が暗く激しい本作の雰囲気に非常にマッチ。時に静かに、時に激しくゲームを盛り上げる。特に5面前半&タイトルデモで使用される曲「REVENGER ~復讐のテーマ~」は怒りと悲しみに満ちたパニッシャーの心象を代弁するかのような曲調で、本作のテーマ曲といえるだろう。
---一方ニックは、任務で嫌々やっているだけ+本人のノリが非常に軽いためデモ中の言動が終始かなりソフト。パニッシャーと好対照。2人同時プレイの場合は、頭に血が上りっぱなしのパニッシャーをなだめてばかりという迷コンビぶりも楽しめる((ニックは普段こういう役所のキャラクターではなく、品行方正で殺人をためらう普通のヒーローに代わって汚れ仕事をやったりする人物。悪人の裏に他国の首脳がいたと判明すると、外交問題になるので手を出さないアメリカ政府を無視して独断でヒーローを動員して他国首脳を暗殺。その責任を問われてアメリカ政府から追われ、地下に潜伏していた事もある。決して陽気で気軽なアメリカンではない。本作の描写は「あのニックでさえツッコミ役になるぐらいパニッシャーが凄まじい」という事なのだ。))。

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**賛否両論点
-原作を無視した一部の描写。
--ミュータントではないパニッシャーとニックが「敵が青白く燃える蹴り」を出せる、前述のキャラクター性のイメージぶちこわしの攻撃動作とボイスなど、マーヴルからクレームが来たらしく海外版でははっちゃけ具合が抑え気味(例:パニッシャーとニックのボイスが低音化)。笑いどころ…かもしれない。
---「キングピン」を''でかく描き過ぎて、マーヴルから怒られた''という逸話もある。著作権上の問題と推測される。~
キングピンは本作以前の和製マーベルゲームではセガ『スパイダーマン』でも同様にボスキャラクターとして登場しているのだが、こちらでは至って普通のサイズであった。他社のゲームとの差別化を図ったと思われる((ちなみにボーンブレイカーも同様に他社の和製マーベルゲーのコナミ『X-MEN』で登場していたが、こちらは雑魚としての登場であった。))が、どうしてこうなった。

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**問題点
-使えるプレイヤーキャラクターが、性能的には実質ほぼ1人。
--従来のベルトアクションでは使えるキャラクターが3人~4人程度と多めの作品が多いが、本作はパニッシャーとニックの2人だけ。グラフィックは異なるが、性能は一部技が異なる以外ほぼ同一で実質的コンパチキャラクター。
--プレイヤーキャラクターが少ない分、プレイヤー一人一人の性能も高く設定しているのだが。

-エクステンドが大体3面クリア以降と遅め。
--そのステージクリアに立ちはだかる3面のボスで下半身が戦車のサイボーグ「ボーンブレイカー」は動きがトリッキーな強敵。お供として出現する殆どの敵も銃を所持している奴ばかり現れてボスにターゲットが定まらない等と難所で、初心者はここでゲームオーバーになりやすい。
--逆にカプコンお約束の2面ボスである「ガードロイド」は常時ハイパーアーマー状態であるものの、ボムを併用しつつセオリーを守って戦えば初心者でも楽に倒す事が出来るので、カプコンの2面ボスの中では比較的弱め。

-ガンモードについて
--本作の特徴の一つのガンモードは拳銃で撃ちまくる内容ということから非常に爽快。しかしその反面、連射装置無しだと指に負担が掛かりやすく、プレイヤーの状態によっては撃ち負けることがある。
--ベルトスクロールアクションゲームは基本的に連射装置が無くても大きく遊べる物が多いが、連射装置の使用を前提としたシステムが存在するのはどうかと。

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**総評
とにもかくにも本作は『The Punisher』の存在を日本に広めたかも知れない。~
とはいえ、強力過ぎる自機性能からスコア稼ぎの熱さから、ベルトスクロールアクション初心者からスコア重視の上級者まで多くのプレイヤーにオススメの一作でもある。~
残酷な描写の多い見た目から敬遠しがちだが、ゲームセンターで見かけたら是非プレーするべし。

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**余談
-パニッシャーに似合わぬほど後味の良いエンディング
--パニッシャーにはひとときの平穏が訪れ、ニックはジョークを飛ばしながら愛妻に想いを馳せる…というアメコミものゲームとしては無難な内容であるが、スタッフロールがここまでの暗いムードをぶちこわしにしてくれるカプコン臭丸出しの明るい味付け。後味爽やかに席を立つ事ができる。~
なお、スタッフロールはコンティニューの有無で演出が変わる((コンティニュー有りだとパニッシャーとニックが銃を撃ちまくって文字を出現させ、ノーコンティニューだと登場キャラクター達が画面内を次々と通る形式))ので、ファンなら両方とも見るべきだ。
---ファンの中には首を傾げたくなる方もいるだろうが、本作のパニッシャーは''ゲーム内で復讐を果たした''ので大目に見よう。
--ちなみにエンディングでは''死亡者数=殺した人数を教えてもらえる''。敵は皆悪人なのでさほど罪悪感は無いだろうが、それでも''200人オーバー''はちょっと殺りすぎな気がしないでもない。
//---ノーコンティニュークリア達成時とそうでない時でスタッフロールは計2種類存在する。その内容は、両方ともその目で確かめてほしい。

-業界一有名なメガクラッシュ
--パニッシャーのメガクラッシュの意味不明な動き((有名どころで例えると、『ストリートファイターZERO』シリーズに登場する春日野さくらのスーパーコンボ「春一番」のような動き…といえば格ゲーファンにはわかりやすいかもしれない。))と「''ファイオー!''」((ちなみに実際のセリフは「Die Them All!!(皆殺しだ!!)」と、正にパニッシャーらしいセリフである。))というこれまた意味不明な掛け声がパニッシャーにあまりにも似合わずシュール。その絶大なインパクトに加え、月刊アルカディアの「無差別範疇十傑集」というコーナーの「回転するキャラ十傑」特集回で紹介されたのを皮切りに知名度が爆発的にアップ。その時点で発売から10年近く経つゲームだったはずにも拘らず、一時期の読者投稿コーナーの鉄板ネタとして君臨していた事がある。愛称は「パニシ」。
---ファイオーに隠れてほぼ触れられなかったが''パニッシャーのイズナフォール時の奇声''と、''ニックのメガクラッシュのパニッシャーより変な動作''も必見。ニックのメガクラッシュ時の掛け声は、流石にパニッシャーのと比べるとまだインパクト弱だが、それでも「''オリャーマー!''」と十分意味不明な掛け声なので耳に残る。

-サントラ
--サントラには、「最終面中盤・エレベーターのシーンで流れる曲」と「パニッシャー使用時コンティニュー画面で流れる曲」が収録されていないという致命的なミスがある(どちらも曲名不明)。どちらも良曲なだけに、未収録が非常に惜しまれる。
--なお、本作の音楽は『ストリートファイターII』や『ザ・キング・オブ・ドラゴンズ』などを手がけた下村陽子が担当している。
-ハイスコア
--パニッシャー・ニックともに9999900点でカンスト達成されているが、血の滲むような努力でパターンを作らないと達成不可能なためカンスト達成は本作プレイヤーの勲章のような扱いとなっている。

-隔世遺伝
--本作以降、カプコン製ベルトアクションはもとより他社製ベルトアクションもボタンが増えるなど操作そのものの大幅な複雑化が加速していく。
--しかし、カプコン製ベルトアクション最終作(現在)である『[[バトルサーキット]]』ではシンプルな2ボタン操作に戻り、基本操作はパニッシャーほぼそのままという大胆な操作系の整頓が行われた。操作性は非常に良好でハードルも低く、「パニッシャー」の操作系がいかに遊びやすいものであったかを示しているといえないだろうか。

-マーヴルとカプコンの初の邂逅となったゲームなのだが、[[『MARVEL VS CAPCOM』シリーズ>Marvel Comics関連作品シリーズ]]には未だにパニッシャーは登場していない。
--流石にパニッシャーは悪党を無慈悲なまでに殺戮するダークヒーローという設定なので、その辺に問題がありすぎるからなのだろうか。
--一方、登場人物のニックとキングピンは『[[MARVEL VS. CAPCOM 3 Fate of Two Worlds]]』で特定のキャラクターのEDに登場している。こいつら2人もパニッシャーと負けず劣らじの無慈悲な奴にも拘らず扱いに格差が出ている。
--パニッシャー本人は更に時を経た『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』の「ヒーロー&ヘラルド」モード内の''カード''のみであるが満を持しての登場となった。

-移植
--北米地域及び欧州でGENESIS版・MD版が発売されている。移植はATARI2600時代からゲーム開発を行っているアメリカのSculptured Softwareが担当。AC版同様に2P同時プレイ可能だが、H/W及び容量の制限から「雑魚キャラの種類が減って出現パターンも異なった代わりに、全体の出現数が増えている」、「ボスへの1回あたりの攻撃ダメージがAC版より多く、比較的倒しやすくなった」、「難易度設定がEASYの場合は3面で終了」等、仕様に様々な変更が加えられている。だが、AC版と違い1面クリア後のデモでパニッシャーが『そうか、ありがとうよ!』と言う所は同じだが、その後が&bold(){銃殺せずにどっかに投げ飛ばす表現に変わってしまった}のはとても残念である。
--また、Crystal DynamicsによるPSへの移植版も開発されていた((1996年頃のことで、当時のアイドス・インタラクティブ傘下に入る前の時期))がこちらはお蔵入りになっている。

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