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田中


【名前】
田中(本名不詳)
【疾患名】
《Retrograde time homeostasism(逆行性恒時症)》

【所属組織】
モラトリアム


Arcanum The world (世界)
体力 敏捷 知力 感受 器用
5 6 3 3 3

【疾患者カルテ】
身長160cm前後 体重40kg台の13~4歳前後の華奢な少年。日本人。居合使い。髪を浅黄の布で縛り、果てしなく時代錯誤な古式ゆかしい金ボタンの学ランを常時着ている。
しがない左官屋として密かにN国に潜入していた国際的テロリストでもありモラトリアムの創始にも関わりがあったらしい父の正体を知り、
父の更生に腐心するあまり「いっそ時間が巻き戻ればいいのに」と過去への回帰を偏執的に願うようになる。
父の爆死(公安記録上は殻付きダチョウ卵を電子レンジでチンしようとしたための事故死となっている)を機に発症。
本人の主観において危機的状況に陥ると時間を約2秒巻き戻す。範囲は通常視界内程度
(目をつぶったらできないというわけでも背後なら平気というわけでも無い。概ねそれくらいの作用範囲ということ)
頑張ってザ・ワールドしたらたぶん死ぬような気がしているので試したことはないらしい。
何らかの防御的異能の持ち主でもない限りもれなく記憶ごと巻き戻されるので「アレっ?何してたっけ?俺の時計くるってる?」くらいで流されることが多い。
そういう次第なので、塵も積もればの結果、見た目よりは実は結構年を取っている。知り合うと数秒長生きできるのだがそのお得感も気づかれることはないだろう。
口を開けば60代。

【履歴】

「おとうさんのしていたこと、よく知りたいとは思わない?」と、ある日届いた一通のメールにより現在のモラトリアムの組織へ加入することになった。
普段は表向き某お嬢様学校の購買部でアルバイトをしているらしい。学校に通ってる気配がないのを心配される程度には中学生な外見だが、戸籍上は成人。


【炸裂する殻の記憶断章】

―昭和4×年T都S区某所 田中家

「行ってくるぞ。今日も仕事の始まりだァ。電子レンジ、楽しみにしてろよ」

 腰に手拭、軍手に地下足袋、最後に頭にヘルメット。いつものように支度を整えて父は出かけていく。
軽やかに「左官職人なんとか太郎」の歌を口ずさみながら。 
朝食をとり支度を整えた父の出勤を玄関先から見送るのは少年の毎日の日課だった。

「電子レンジ、か……。無理しなくてもいいのに」

玄関先を照らす電球がチラチラと明滅しているのを見上げ、登校する前に交換しなくてはな、と一つ溜息。
父は何やら楽しみにしているようだが電子レンジとかいう高価な最新鋭の調理器具を買う前に、
金が必要な事がこの父一人子一人のぼろ家には山盛りなのにと少年はひそかに思っていた。
左官職人の家だというのに、金がないから屋根の雨漏りだってもう3年もそのままだ。

だがあれほど楽しみにしているのに水を差すわけにもいかなかった。
この家の主は父であり稼いだ金は当然基本的には彼の好きに使う権利があるだろう。早く自分も働いて家計を助けたいものだ。
などと考えながら上がり框で脱いだ靴を揃えて部屋にあがる。
父と二人暮らしの六畳半の畳の部屋。そこで押入れの襖をあけると買い置きの電球を探しはじめた。

「おや……これは?」

押入れの奥の暗がりの中、見つからない電球を探している途中、ふいと見慣れない物を見つけて少年はそれに手を伸ばす。
奥まった場所に隠してあった様子で白い布に包まれた、何か細長い包みがあった。
引っ張り出そうとしてみるとそれは存外に重く、はずみで布の中身がごとりと床に落ちて転がった。

「日本刀……?いや……」

兜金に結ばれた刀緒、幅の狭い鍔、金属製の特徴的な佩鐶、シンプルな諸捻巻の柄糸。
しばらく拵えを確かめるように手に取り、そして引き抜く。――真剣だ。

「九八式……帝国陸軍軍刀」

結論を出せたのは、ひとえに少年がミリオタよりの日本史オタだったからに相違ない。
尤も彼が一番好きなのは帝国陸軍の時代よりもっと昔、
月並みながら鎌倉時代から戦国時代あたりまでの、武士の時代であったのだが。

父や祖父が軍人だったなどと聞いた記憶は無い。
父が生まれたのは終戦後であるはずだし、少年が武士に憧れて戦国時代の歴史を語ったり、剣道や拳闘を習いたいと言うのにすら、
「俺は戦争やらケンカは嫌ェだなあ」と苦笑して肩をすくめるのを歯がゆく思うような、そんな平和な父だった……はずだ。


―― わったっしっはっミネソタのーぅ タ マ ゴ ウ リ~♪


その夜、聞きなれない素っ頓狂に陽気な歌声とともに新品の電子レンジを抱えて帰宅した父は、
すでに少年の知っていた平和で堅実な暮らしを愛する左官職人ではなかった。
地下足袋を現場に片方脱ぎ忘れて気づかず帰ってくるほど、電子レンジに浮かれていた。

思えばそれが異変の始まりだった。
2人暮らしの小さな家でゆっくりと何かが変わり始めていた。

電子レンジのプラグをウキウキと踊るように台所のコンセントに差し込む父の背中を眺めながら
いつしか少年は父の過去と未来に脅えるようになっていた。  (ナンダコレ)

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最終更新:2016年01月09日 00:01