失敗国家

登録日:2011/10/06 Thu 10:27:01
更新日:2022/05/16 Mon 13:42:06
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失敗国家とは、文字通り政府が国家の運営に失敗し、その責務を果たせなくなってしまった国家のことである。

+ 目次

◆失敗国家とは

別名「破綻国家」「崩壊国家」「脆弱国家」
我らが日本にも深刻な社会問題や政治上の失策は数多く存在する。が、本項で取り上げる失敗国家にはとても敵わないし、ここに日本が挙がることもない。
なぜなら失敗国家は完全に国が国として機能しなくなっている国家の事を指すからである。
この「国として機能しない」という言葉の意味するところは、政治家同士の争いで政治が進まないなんて生易しいレベルではなく、
「国に頼るより俺自身でやった方が早いぜヒャッハー!という価値観が国民全体に染み込んでいるレベルを指す。

そもそも(まともな)国家というものは、権力を持っている政府が国家の構造*1を制御し、政府が果たすべき基本的な責務、
例えば正常な法体系の維持や国民への公共サービスの提供などを果たしているものである。
これによって国家の三要素と言われる「領域」「人民」「権力」を維持していることで国家として認められるのである*2

失敗国家には国土全体に対して権力を行使できる統治機構なんてものはない。せいぜい首都近辺にしか影響力がなく、独断で行動する地域の有力者、すなわち軍閥の方が実質格上になっていて警察を送る事すらできない。
戦国時代の日本を思い浮かべればわかりやすいと思うが、統治機構である天皇家や貴族は最早単なるオカザリとなり、
国の正規軍であり事実上の三権を掌握する室町幕府は京の町一つ支配できず、地方は戦国武将が血で血を洗う激戦地帯。
つまりは、そんな戦国時代を21世紀の今になってもリアルでやっているような国こそが失敗国家という訳である。
つーか600年にも渡って軍部が王家と分離して政権を掌握していたのに、一向に易姓革命が起きなかった日本というのは世界的に見れば異常である

他にも
  • 肝心要の統治機構は賄賂や私腹を肥やす者ばかりで腐敗だらけ。かと言って彼らを追い出したら統治をする者がいなくなる。
  • 徴税権はあっても名目だけで、徴税しようにも徴税する官吏に力がなく「払うのは嫌」の一言で徴税を断念するしかない。あるいは経済が破綻していて「無い袖は振れない」ため徴税しようが無い。
  • 財源なんてものはなくせいぜいODA(先進国からの貸付)や資源収入がある程度なので、国が行うべき公共サービスを提供できるわけもない。このような状態なので、病気になっても医者に診てもらえなかったり、安全な水や適切な公衆衛生が手に入りづらく子どもの栄養失調・はしかなどによる病死も少なくないため、平均寿命は40代後半〜50代前半、または辛うじて60代に食い込めているのがデフォ。
  • 外交をしようにも国家代表を送れない、あるいは国家代表の代わりに複数の「自称国家代表」が現れる
  • なぜ国が消滅しないのかといえば、国際的に国家主体として認められているからにすぎない*3
そんなレベルの国家が本項目の失敗国家なのである。


◆失敗国家ランキング

失敗国家の指標として失敗国家ランキング*4が存在してしまっている。
これはアメリカの平和基金会(FFP)が2006年から毎年発表しているもので各国の状況を数値化してランキングしたもの。
ちなみに、ソマリアは失敗国家ランキングで6年連続1位に輝いている。
「あの」ソマリアですら6年連続程度なのかよと突っ込んではいけない。その後も3位以下になってないし。

なお、実際は情報が乏しく全貌が不明な地域も割とある為、仮にこれの上位に書かれていなくても、まだまだ危ない所は存在する。(ジャーナリスト等の専門家ですら危険すぎて割に合わない等の理由であまり立ち入らず、また政府にしっかりした統計を取るだけの能力もない(あるいは統計の情報操作が疑われる)等)
あと国際的に国家承認されてないとかで、そもそも載ることができない国というか「自称国家」も存在する。
その他にも幾つかの条件があるため載ってない国家がある。コソボとか台湾とか西サハラとか。
イスラエルに関しては、2020年まではヨルダン川西岸地区を併せた「イスラエル・ウェストバンク」として掲載されていたが、2021年からは「イスラエル」と「パレスチナ」で別に掲載されている。

日本は179か国中161位(2021年)。2006年がピークで、その後のリーマン・ショックや東日本震災、熊本地震の影響などで評価は少し落ち気味になっているが、失敗国家と言える様な状態では全くない。
イギリス150位、ドイツ167位、フランス159位と、欧米の先進諸国とさほどの差はないのである*5
なお世界一の大国アメリカでさえ143位という順位からもわかる通り、「国がお金持ちかどうか」ではなく「国民が快適に生活できるかどうか」を示す指標である事を留意されたい*6
またアメリカ自身も同じ年月で日本とほぼ同程度評価を落としている。

栄えある最下位はここ11年はフィンランド。
ノルウェーも最下位経験があり、隣のスウェーデンも含めて北欧三か国は順位が低い。

ちなみに上記の失敗国家ランキングは、12の項目を10.0点満点で数え、合計120.0点満点。点が高い程危険。
なので1項目だけ10点近い物があっても他の項目が低ければ、合計点は低くなり失敗国家ではなくなる。意外と忘れ易い点なので注意。
例えば2021年の日本は「人口構成圧力の増大」が5.7点と高めだが、他の項目が平均2.2点と低いため合計32.2点となっている。

逆に言えばこのランキングの上位に存在する国家、すなわち失敗国家というものは、大半の項目において失敗している国家だと言える。
ちなみに2021年第1位のイエメンは120点満点中111.7。10.0点満点の1つを含めた9.7点以上の項目が8つ、一番低いのが6.7点。
もはややばくない項目が存在しない。まあトップランカーはだいたい全項目がやばいのだが。
トップ20は当たり前のように8点台、9点台が存在し、点数の低い項目でも5点を下回ることは滅多にない。

我々にとって比較的身近なヤバい独裁政治の国、北朝鮮ですら2021年現在で30位(90.0点)。
「国家の正統性」が9.9点を取るなど確かに国家としてかなりやばい状態ではあるが
  • 国内の不満分子がそこまで強くない
  • 育った人材が海外に逃げていない
  • 難民による社会不安が起きていない
等という点でトップランカーからは一段落ちる評価をされている*7


◆失敗国家の指標

上記の失敗国家ランキングの指標として掲げられているのは以下の12項目。

1.安全保障装置の状態

軍や警察といった安全保障の為の組織がしっかり機能しているか?汚職はないか?

アイコンは警察官。

日本は1.8点。
全国各地に警察署や交番が存在し、自衛隊も強力である。

2.利己的(派閥的)なエリートの台頭

私利私欲や偏った政治思想を満たす為だけの政治家や官僚が力をもっていないか?
また、権力闘争や政治的な争いが起きていないか?

アイコンは対立し合う2人。

日本は2.6点。日本の政治家も多々批判されているが、利己的なエリートとはみなされていない。
訳の分からないことを言って選挙に出る人たちもいて、そういった人々が当選する事も無くはないが、それでも国会で有力な勢力を取ったりはしていない。

3.不満分子の存在

選挙などで選ばれておらず正統性を持たないテロリストや革命組織が力を持っていないか?

アイコンは握り拳。

日本は2.5点。日本では野党の議員も選挙で選ばれているし、選挙で負ければ与党もちゃんと政権を明け渡す。
オウム真理教や革マルの様な選挙に基づかない過激派組織自体は無くもないが、力を持っているとまでは言えない。
ここ5年近く点数が下がり続けている。
そもそもこのランキングが始まったのは2005年で、オウム真理教の幹部らは前年に死刑判決を言い渡されている。

4.経済状況の悪化と貧困

貧困にあえぐ者が増えていないか?また、麻薬や人身売買などといった違法なビジネスが横行していないか?

アイコンは落ちるチャート。

さまざまな貧困は日本国内でもかなり問題になっているが、それでも国家が責務を果たしていないという程の状態ではない。
ちなみに2015年に点数が4.5点と大きく上昇しているが、これは円高から円安に移行しドルベースのGDPの下落、輸入価格の上昇を想定されたためである(日本は食糧・エネルギー自給率が低いためより考慮される)。

5.不均一な経済発展

国民全体が経済発展の恩恵にあずかれているか?一部の権力者や都市部の住民にばかり富が集中していないか?

アイコンは円グラフ。

日本は1.9点。日本全国物価はさほど変わらないし、どこに行っても公的サービスが受けられる。
均一性はかなり高いと言えるだろう。

6.人材及び頭脳流出

国内で育った人材が海外に逃げていないか?

アイコンは飛行機とカバン。

日本は2.9点。
現段階ではどうという訳ではない。島国・日本語が日本国内でしか通じないという点もあるだろう。
ただ、近年は大学などの研究者や優れた人材が安い賃金に耐えかねて逃げているという指摘が多くなってきておりじわじわとポイントが上がってきている。

7.国家の正統性

現在の権力者は国家の正統な代表者と言えるか?
政権が政治プロセスを透明にし、国民の支持を受けているか?*8

アイコンは投票箱。

日本は0.5点。皇室も幅広く支持されているし、選挙はさほどの混乱なく適正に行われ、そのような選挙で与党は国民的支持を受けている。
失敗国家だと名ばかりの翼賛選挙だったり、選挙結果を不正だと攻撃する等の形で堂々と無視して政権に居座ろうとする権力者がいたり、そもそも選挙が行われないケースさえある。
日本の指標で最も点数が低い。

8.公共サービス

医療・教育・水と公衆衛生・輸送インフラ・電気などといった国民にとって不可欠な公共サービスが整っているか?

アイコンは道路。

日本は1.8点。人が住んでいればどこの地域にも学校や病院、水道局などの公共設備がしっかりある。
抜けがない訳ではないが、それでもかなり整っている部類だ。
東日本震災直後は5.0点まで急上昇したがその後しっかり点数を落とした。

9.人権及び法の支配

国民に表現の自由や信仰の自由、裁判を受ける権利などの基本的人権が法律で保障されているか?
国内のどこに行ってもそれらの保障がきちんと機能しているか?

アイコンはテミス像。

失敗国家の場合、言論や表現の自由は容赦なく弾圧される。
処罰も裁判なしであいまいな法律に基づいて行われる。あるいは裁判とは名ばかりであり、本人の言い分も聞かれず、弁護人もいないようなケースがしばしばだ。言論の自由に関しても、大変厳しいネット検閲を敷いたり、政府に都合の悪いニュースを揉み消すこともザラにある。
また特定の宗教の教義や地域の不合理な因習に基づいて政治が行われ、結果として女性等が爪はじきにされる例も多々ある。ブラジャーをした女性を鞭打ち刑に処したり、レイプ被害者を死刑に処すなどの行為が横行している。*9

日本は3.0点。男女平等・労働者・難民に代表される外国人の権利保障など、国際的に十分でないとみなされている権利保障も少なくない。
それでも、裁判は誰でも訴えられ、裁判なく刑罰に処されることはないし、生存権や表現の自由など、幅広い権利が実効的に保障されている部類である。
良くも悪くも安定していて15年間点数の上下が0.5点に収まっている。*10
ちなみに余談であるが、死刑存置国はほぼ必ず点数が3点以上になるという特徴がある。

10.人口構成圧力の増大

人口が多すぎたり、人口構成が高齢者や未成熟者ばかりで労働人口や社会保障が持たなかったりしていないか?
また、国民が平等に食料品を手に入れられ、安全な水にアクセスできているか?
病気が蔓延していたり、自然災害に対して脆弱になっていないか?

アイコンは大人と子どもの男女。

日本は5.7点。唯一まずい事になっている。主な原因はいわゆる少子高齢化。
なお震災直後は8.3点と本項目の失敗国家とタメをはれる状態にまでなっていた。

11.難民および国内避難民の大量移動

戦乱や大災害などで難民がキャパシティを越えてやってきたり、避難民が国内を移動し、不安定になっていないか?

アイコンは難民テントと難民。

日本は3.2点。当初は1.0前後だったが、東日本大震災で4.0点になって以降2020年まで3.5点を切っていなかった。
震災そのものより原発問題が大きいのだろう。

12.他の国家又は外部の主体の介入

外国から侵略や深刻な政治的圧力を受けていないか?また、国連や他の国からの支援に依存していないか?

アイコンは降り注ぐ矢印。

日本は2.6点。島国である日本は外部からの圧力にはかなり強いし、震災直後を除けば国際的な支援も特に必要とはしていない。
在日米軍との関係も一部軋轢があるものの基本的には良好であるし、かといって完全に依存している状態ではない。

2021年は3,4,5,6,9には10点の国家は存在しない。

これらの点数が
  • 90点~120点だと「警報」
  • 60点~89.9点だと「要注意」
  • 30点~59.9点だと「安定」
  • それ以下だと「持続可能」
と評価される。
日本は最盛期は持続可能の域に入っていた事もあったが、現在は「安定」ランクである。
G7各国は軒並み「安定」以下だが、G20まで広げると「持続可能」〜「要注意」まで千差万別となる。下はカナダの171位(21.8点)、上はトルコの57位(79.7点)。


◆失敗国家と普通の国家の違い

指標だけ見せられてもイメージが湧きにくいかもしれないので、もう少し簡易で一般に見やすい基準を考えてみよう。
分かりやすい失敗国家と普通の国家の違いとしては
  • 警官と軍人に給料が払えている
  • 教師に給料が払えている
この二つが大きなポイントであるらしい。

警官と軍人は国家権力の象徴にして国の統治の手足となる。例え反乱が起きたり、外国から侵略があったり、犯罪が起きても彼らがしっかりしていればとりあえずは鎮圧できる。
末期のカダフィ政権のように「逆らう市民をカラシニコフで掃討するだけの簡単なお仕事です。日給一万円」とか募集しているようでは、そこにまともな人材が集まっていない証拠であり、国がマズいというのは簡単に想像がつく。
警官も軍人も武器を所持している。給料を遅配したりすれば簡単に反乱を起こされたり、無法者に武器を与えただけという結果になってしまう。
失敗国家にありがちな「軍部・軍隊出身者のクーデター」からもそれがわかるだろう。
さらに警察も軍人も、法や政府に従い命令を遂行する為にはそれなりの頭脳がいる。
訓練を受けた専門家である民間軍事会社ならまだしも、そこらへんの市民をろくに教育もせず警官や軍人にするのは人員に困っている証拠なのだ。
そして国家にとって「暴力の独占*11」というのは非常に重要な要素である。
暴力を独占できていないという事は政府以外に武力・暴力を持つ勢力がいるという事で、その勢力が国家権力に成り代わりうるという事だからだ。
そんな状況では治安維持もできないので、自警団や民兵が出現する。彼らは国家からの法律の統制も無い為、略奪や残虐行為も行う無法者集団同然になってしまう事が多い。
ろくな教育も受けていない末端の兵にまで統制を行き渡らせるのは至難である。他の自警団との諍いで更に治安が悪化してしまう事もある。
行き着く所は軍閥による群雄割拠である。

もう片方の教師というのは、教育によって国の方針を子どもに伝える存在であり、また人材育成の点からも極めて重要な存在である。(旧西側諸国は北欧諸国や東欧諸国に比べて教師の社会的地位が低い為分かりづらいが)
というか、教師に給料を払えている=学校が維持できているという事であり、すなわち国内各地にある学校の維持管理が出来ているという事になる。
つまり統一された政府が国内各地をきちんと統治している証拠にもなるのだ。
教育施設というのは割と切り捨てられ易い部門*12なので、そこがしっかりしているという事は政府が安定している事の証明になる。

政治家が多少駄目だったり政権がすぐに交代してしまうような国でも、それを支える各種の専門知識を持つ官僚組織がしっかりし、政治家が官僚の言う事にある程度でも従っていれば安定した国になる。
失敗国家の多くは、「官僚組織?何それ美味しいの?」レベルの国である事は忘れてはならない。
そういう国家では国内にまともな産業が無い事が多く、国家組織=国内最高の就職先であり、支持者に職を与える為に官僚の地位をばらまいている事すら多い。
そうして官僚になった者に力量など望めない為、情実による気まぐれ政治や賄賂が横行する事になる。


◆独裁国家と失敗国家

強権的な独裁政治体制は日本や先進国目線からすれば妥当な政治体制ではないと取られがちである。
だが、失敗国家かどうかという観点からすると深刻な経済破綻でもやらかさない限り失敗国家ランキングの上位に食い込むことは少ない面がある。
指標のうち「国家の正統性」は低評価になるし、統治体制によっては「人権及び法の支配」等は低評価になりやすい。
一方で、独裁者もそこまでバカではないケースが多いし、国民の自由は保障されない代わりに強力な統治が敷きやすくなり、ある程度政治安定する為だと思われる。
不満分子の抑圧や経済不均一、国内の有能人材確保などもある程度強権で対処可能なので、総合的に見れば評価が上がる可能性もある。
北朝鮮が一線を越えないで済んでいるのもこれが理由であろう。
ルーマニアではチャウシェスク独裁政権がルーマニア革命によって倒れた後、一時的とはいえ国民生活は逆に苦しくなったとも言われている。

「独裁国家かつ失敗国家」というケース自体は確かにありうるが、「統治能力など元々ない名ばかり独裁者で、有力者が祭り上げただけ」「元々失敗国家を何とかしようと仕方なく強烈な独裁に頼っているが、それでも立て直せない」というタイプも多い。
あるいは独裁で持ちこたえていた国でも独裁者の死亡等で強権力が誰にも引き継がれずに瓦解し、そのまま失敗国家一直線という事もある。
例としては、現在は失敗国家ではないものの、チトー死後のユーゴスラビアがわかりやすいだろうか。民族紛争の火種があるとこうなり易い。


◆代表的な失敗国家

以下、スコアと順位は2021年のものとする。また、上記の失敗国家の例示から人間開発指数、民主主義指数、腐敗認識指数(データは2019年)、平均寿命、乳児死亡率を掲載する。

ソマリア

スコア:110.9点 (2位)
人間開発指数 N/A
民主主義指数 N/A
腐敗認識指数 13/100
平均寿命 57.4歳
乳児死亡率 72.7/1000人

失敗国家ランキング6年連続1位
その後も2位と1位を行ったり来たりしている絶対強者
リアルGTAカオスモードマニアック。権力の及ぶ範囲が首都を中心として半径数百メートルなんて事もあった。
あの最強国・アメリカ合衆国が諦めた国でもある。
詳しくは項目で。


○コートジボワール

スコア:90.7点(28位)
人間開発指数 0.498
民主主義指数 4.22
腐敗認識指数 36/100
平均寿命 57.78歳
乳児死亡率 57.9/1000人

昔は独裁者の下で発展を続けており、西アフリカでも安定した国だったが、独裁者が死んでから迷走開始。
クーデターと内戦をやった挙げ句、失敗国家ランキングが始まった2005年度では1位を獲得。つまり失敗国家ランキング初代チャンピオン
2010年の前大統領と現大統領との内戦というどっかのRPGのような展開があったが、前大統領の失脚・拘束で収束した後は順調に順位を落としていき、2016年には上位20位から消えた。
なお、これらの情勢の推移には同国のサッカー代表選手・ディディエ・ドログバ*13の尽力によるものも大きな要因となっている。


○中央アフリカ共和国

スコア:107.0点(6位)
人間開発指数 0.372
民主主義指数 1.43
腐敗認識指数 24/100
平均寿命 53.28歳
乳児死亡率 77.5/1000人

20世紀の袁術、皇帝ボカサ1世を産んだ国。
元々クーデターや宗教対立で治安がよくなかったが、2013年に国内のゴタゴタにより一時期無政府状態に陥ってしまい経済もガタガタに。
資源に乏しい為それを目当てにした大国の介入も見込めず、キリスト教徒を中心としたアンチバラカとイスラム教徒を中心としたセレカの抗争が今なお続き、難民の増加にも歯止めが効かない。
2014年から17年まで4年連続失敗国家ランキング第3位を堅持し続け、その後も5位6位と上位の一角。
国民の約9割が1日2ドル未満で暮らさなければならないと言えばヤバさが分かるだろう。
また、上記でも触れた通り公共サービスの提供もままならず、テロによって学校や病院が襲撃される事件も多発していること、極貧層が多いことから2021年現在平均寿命は約53歳と世界最下位である。
「1日2ドル未満」というのは「世界貧困線」という、最低限の生活を行えるか否かのボーダーラインである。


○ジンバブエ

スコア:99.1点(10位)
人間開発指数 0.573
民主主義指数 2.92
腐敗認識指数 23/100
平均寿命 61.49歳
乳児死亡率 37.9/1000人

旧ローデシア時代*14「南アフリカ以上」とも呼ばれたアパルトヘイトと白人による土地寡占で悪名を馳せていたが、黒人反政府ゲリラとの内戦の末に改名・独立し、黒人への参政権付与後は融和路線に成功。
農業に有利な国土に支えられたローデシア経済*15もあってアフリカでも屈指の安定した国を実現した。
……そのはずだったが2000年代辺りからムガベ長期政権のひずみが見え始め、第二次コンゴ内戦への介入や白人地主の土地強制徴用などやらかした末にハイパーインフレを起こす。
何度通貨切り下げをやってもインフレが止まらず、2009年には100兆ジンバブエ・ドルなんて紙幣が出る始末。
もはや外貨でないと商取引が成立せず、国民からもいらねえと言われ、イグ・ノーベル賞のネタにもされた末に2015年6月11日についにジンバブエ・ドルは廃止された。
ジンバブエ・ドルの暴落っぷりをネタにした話がゴルゴ13に存在する。

しかしムガベは政権に居座り続け、「いつまでやるんだ、てかいい加減寿命が近いだろう」と誰もが思っていた2017年に後継争いからクーデターが発生。93歳の老独裁者はようやく政権から追放された。
そして、2019年の9月6日にシンガポールの病院で死去。享年95歳。
その豹変っぷりと寿命の長さから「本人は既に暗殺されていて、替え玉がやっていたのでは?」などとも言われた。


コンゴ民主共和国

スコア:108.4点(5位)
人間開発指数 0.462
民主主義指数 1.4
腐敗認識指数 19/100
平均寿命 60.68歳
乳児死亡率 63.8/1000人

かつてのザイール。
レオポルド二世の私有地「コンゴ自由(嘘だッ!!)国」のなれの果て。やっぱり内戦の繰り返し。
こと1998年から2003年の第二次コンゴ内戦は「アフリカ大戦」の異名を持つ、周辺諸国が派兵と介入と諸勢力支援を繰り広げた大戦争だった。
2018年にようやく選挙で決着がついた…か?けど19年のランキングは中央アフリカを抜き去り5位に
なんもかんも宗主国のベルギーが悪いといえば悪いが、独立から内乱まで1週間も持たなかった辺り、独立を性急に行ってしまった事も原因かもしれない。


チャド

スコア:105.8点(7位)
人間開発指数 0.403
民主主義指数 1.67
腐敗認識指数 20/100
平均寿命 54.24歳
乳児死亡率 67.4/1000人

リビアの南、スーダンの西隣。
例によってトップの政権基盤偏重による国内対立が起こり、カダフィが油を注いで独立後5年で内戦突入。
それ以来大統領が変わる時は毎回クーデターという惨状で、7代目のデビ大統領も世界の独裁者ランキング上位であった。
…しかし2021年には前線を視察中に死亡。何と軍人である息子と彼が率いる暫定軍事評議会が跡を継いだ。
デビ政権はクーデターで政権を獲得した後に「一応」選挙を行っており、憲法も制定している。そして憲法に従えば本来は「国会議長が暫定大統領→大統領選挙」という流れになるという。
それに逆らった……つまりまたクーデターである。
でもって反政府勢力はまだまだ絶賛活動中。
霊圧が消える人ではないが、テロと地雷で霊圧(命)が消えかねない。
近くに死神がたくさんいそうである。友達になりたくねえな!
地味に失敗国家ランキングで2桁になった事が無いという有難くない実績がある。


南スーダン

スコア:109.4点(4位)
人間開発指数 0.388
民主主義指数 N/A
腐敗認識指数 11
平均寿命 57.85歳
乳児死亡率 63.3/1000人

2011年に住民投票によりスーダンから独立。
建国から現在まで内戦・紛争、ハイパーインフレ等政経共に数多くの問題を抱えている、近年における失敗国家の代表格
登場直後に失敗国家ランキング4位に入ると、ソマリアのランキング1位の連続記録を2014年に止めた挙げ句、2015、2017、2018年も1位になってしまった。
2019年にはイエメンが1位になったが、情勢が大きく変わった訳ではない。2020年まで続けて3位だし、2021年も4位。


スーダン

スコア:105.2点(8位)
人間開発指数 0.505
民主主義指数 2.47
腐敗認識指数 20
平均寿命 65.31歳
乳児死亡率 39.9/1000人

エジプトの南隣、南スーダンの北側。
2006年、2007年失敗国家ランキング1位。その後ずっと3位だったが、最近は徐々に落ちてきている。
しかしダルフール紛争が長期化しているうえに南部で採掘していた石油が南スーダンの独立によって無くなりどう考えても紛争フラグが立っている
というか上記の南スーダンと一緒に、内戦と国境紛争の真っ最中である
また、刑法の27条に、被害者と同じ方法で死刑に処すと言うハンムラビ法典ばりの刑罰が存在している(余談だが、そのような趣旨の日本の漫画、助太刀09が存在する)。


○ナイジェリア

スコア:98.0点(12位)
人間開発指数 0.525
民主主義指数 4.11
腐敗認識指数 24/100
平均寿命 54.69歳
乳児死亡率 72.2/1000人

アフリカ最大の人口とGDPを誇り、最近は石油に頼る経済からの脱却を進めているアフリカの大国。
しかし徴税機構がザルなので政府の歳入は未だ石油に大きく依存しており、さらに政治の汚職により石油収入150億ドルのうち100億ドルが使途不明のまま消えていく
経済大国であるため国内の市場そのものは大きいが、国民の半分が貧困層なため購買力が低く、市場を活かしきれていない。
学校教育の水準は比較的高くIT教育も盛んだが、学卒者の4分の1は失業状態で、それらがインターネット詐欺等に関わる高度な教育を受けた犯罪者と化している(所謂『ナイジェリアの手紙』が有名)。
国内は多数の民族・言語・宗教が入り乱れる闇鍋で、特にイスラム教徒の多い北部では『ナイジェリアのタリバン』ことボコ・ハラム*16が跳梁跋扈している。
GDPが高ければ豊かという訳ではないというのがよく分かる悪い例といえる。


○イエメン

スコア:111.7点(1位)
人間開発指数 0.442
民主主義指数 1.95
腐敗認識指数 16/100
平均寿命 66.13歳
乳児死亡率 45.7/1000人

インド洋と紅海を繋ぐバル・エル・マンデブ海峡の東側でアラビア半島の端っこにある国。2019年〜2021年失敗国家ランキング1位
その立地から古代ローマ時代より海上交易の中心地、物資集散地として大いに栄え、また香料の産地でもあった事からローマからは「幸福のアラビア(Arabia Felix)」とまで呼ばれ、その取引での資金流出がローマ衰退の原因になったとすら。

だが裏を返すと大国の勢力争いに巻き込まれやすく、名目上の宗主国だったオスマン帝国の統治も次第に行き届かなくなった結果イエメン王家その他の土着勢力が小競り合いを重ねていた。
そこへ19世紀からオスマン帝国とエジプト(ムハンマド・アリー朝)、イギリスによる勢力争いも重なった結果南北分断に陥り、その後も冷戦構造に組み込まれて1990年代に入りようやく悲願の統一。
しかし内情は北イエメン軍出身の大統領サーレハによる独裁体制がイエメン全土に拡大しただけで、なおかつ土着勢力が相変わらず実権を持つ部族主義的社会に宗教対立も抱えた国情にお決まりの国内格差で内部の不満は拡大。
そこに「アラブの春」の影響でサーレハは退陣。南部出身のハーディ副大統領が暫定大統領になるも、復権を狙うサーレハはあろうことかかつては迫害した反政府勢力のフーシ派*17と接近した。
軍や政界の支持・影響力の強いサーレハが味方になったことで勢いづいたフーシ派は2015年にクーデターを起こし、同時にアル・カイーダやISILといったイスラム過激派も勢力を拡大させ内戦に至る。

一時はボートで脱出する羽目に陥ったハーディ暫定大統領がスンナ派アラブ諸国の軍事支援によりなんとか挽回したり、そのハーディー政権寄りだった南部暫定評議会が独自路線を打ち立てたり、スンニ派諸国の動きが面白くないイランがフーシ派を支援したり、和平を仄めかしたサーレハ前大統領をフーシ派が暗殺したり……と平和的解決の目が見えぬまま紛争は続き、
2019年現在は
  • ハーディ政権派・有志連合
  • フーシ派
  • AQAPやISILなどのイスラム過激派
  • 南部再独立派の南部暫定評議会
による4勢力入り乱れるこれまでで最悪の状況となっている。


○アフガニスタン

スコア:102.1点(9位)
人間開発指数 0.502
民主主義指数 0.32
腐敗認識指数 16/100
平均寿命 64.83歳
乳児死亡率 45/1000人

20世紀に入りイギリスから独立、王政を敷くも内情は部族主義的で、急進的改革派によるクーデターが起きてからは一気に政情不安定化。
親ソ派が政権を得るも内部対立が絶えず、見限ったソ連は1979年に侵攻・直接介入し支配を行うも、各地で反ソ連を掲げる勢力がゲリラ戦を展開していた。
1989年にソ連がアフガニスタンから撤退すると、その直後から各勢力が戦後の主導権を握ろうと国内で紛争が多発する様になる。
イスラム神学校出身者による非軍閥のタリバン政権が一時はアフガニスタンの九割を掌握したものの、スーダンを放逐された札付きの反米テロ組織アル・カイーダを匿い続けたのが運の尽き。
2001年にアル・カイーダによる同時多発テロでブチ切れたアメリカがアフガニスタンに侵攻しタリバン政権は崩壊。
アメリカはハーミド・カルザイを首班とするカルザイ暫定政権を成立させるも、タリバンを始めとする反政府勢力はカルザイ暫定政権をアメリカの傀儡政権と見做して従わず、また暫定政権自身も汚職の横行などで国民の支持を得られず各地でテロを繰り返される。
結果的に国内の治安は急速に悪化し、首都カブールの周辺以外はカルザイ政権の支配が及ばず無政府状態に陥った。
一応2019年9月にアメリカとタリバンが和平基本合意をした。ただこのまま落ち着くとは誰も思っていない

2021年、米軍撤退と時を同じくして、予想通りと言うべきかタリバンの攻勢が始まり、首都カブール、および国土のほぼ全域を制圧。ガニ大統領は国外脱出。再びタリバンがアフガンの政権に戻るという結果に……。
よりによって8月15日。つまり第二次世界大戦が終わった日の出来事である。*18
報道ではアフガンの民衆が群がるのを無視してアメリカの飛行機が飛び立つ映像が流れ、「アメリカはアフガンを見捨てた」と非難する声や「戦う気のないアフガン政府にこれ以上アメリカ軍が肩入れする義理はない」など、様々な意見が飛び交っている。
2022年のスコアや順位は果たしてどうなるのやら。

○シリア

スコア:110.7点(3位)
人間開発指数 0.543
民主主義指数 1.43
腐敗認識指数 13/100
平均寿命 72.7歳
乳児死亡率 18.4/1000人

地中海東岸の一角にあり、かつては「肥沃な三日月地帯」とも呼ばれる古代オリエントの中心地帯の一角で、かつ地中海交易やシルクロード交易の要衝だった。
なのでオリエントの覇権を握らんとする国家が太古よりぶつかり合い、加えて途中からエルサレムとかいう係争地が南に出来る始末。
それでもオスマン帝国が中東一帯の覇権国家として君臨していた時期は良かったが、第一次大戦で帝国が崩壊すると雲行きが怪しくなる。

イギリスやハシーム家との紆余曲折の末に地中海東岸を勢力圏とするフランスの委任統治領(という名の植民地)となるが、多彩な宗教や部族民族を利用した分割統治を敷いたものだから社会的な亀裂が発生。
でもってフランスへの反発心は収まらなかったので戦間期から独立が取りざたされており、1946年にフランスから独立。
しかし独立直後から7回もクーデターや反乱が発生し、非常にゴタゴタしていた。
1963年3月8日に革命によりバアス党が政権を握るが、握った後も党内でも対立が発生し1966年と1970年にクーデターが発生。ハーフィズ・アル=アサドが大統領となるもその後も虐殺が発生した。
そのハーフィズ・アル=アサドは2000年に死去し、後を継いだ息子のバッシャール・アル=アサドは最初は民主化を進めていたが、アメリカのフセイン政権打倒を受けて独裁政治に転身して、言論統制や権力強化をしてしまう。
2011年にアラブの春が起きると政府に対する不満によって内戦が勃発。ISILによって国の一部を支配されてしまう。これによって大量の難民が発生しトルコなどに流れ込んだ。
ロシアやイランによる援助でISILは壊滅し、国土を奪い返したものの、未だに北部が激戦区になっており、解決の目処は立っていない。


○イラク

スコア:96.2点(20位)
人間開発指数 0.697
民主主義指数 3.51
腐敗認識指数 23/100
平均寿命 70.6歳
乳児死亡率 21.3/1000人

チグリス・ユーフラテスという大河に恵まれた「肥沃な三日月地帯」の一角でメソポタミア文明発祥の地。
とはいえオリエントの諸勢力が切り取り、ぶつかり合う場所なのはシリアと大差ない。

第一次大戦で宗主国だったオスマン帝国の崩壊後、委任統治を任されたイギリスは、アラブの名族ハシーム家のファイサルを王位につけイラク王国を樹立させる。
が、元々スンニ派、シーア派、クルド人を内包した立地*19に加えて親英反英勢力の対立があり、第二次大戦頃にはクルド人反乱や反英クーデターが起きたりしていた。
そして第二次大戦後に「反英・汎アラブ」なナセル率いるエジプトと「中東の狂犬」イスラエルがブイブイ言わせ始めるとクーデター(7月14日革命)により王国は崩壊。
その後もクーデターが4回も発生する不安定さで、クルド人との戦争で功を挙げたバアス党員で軍部のフセインが実権を握る。

そのフセイン政権もイラン・イラク戦争辺りから狂い始め、湾岸戦争でアメリカから危険視された末に2003年のイラク戦争で政権崩壊。
2004年にイラク暫定政権が成立したものの、フセイン政権で主流派だったスンニ派はこれに反発。
隣国シリアからイスラム国家樹立運動が起こると旧フセイン政権の残党がこの運動に合流。イラク、シリア両国の国境付近を武力制圧して「国家」樹立を宣言した。
このISIL*20は一時は両国のかなりの部分を制圧したものの、アメリカ主導で有志連合からの集中攻撃を受け消滅した。


○ハイチ

スコア:97.5点(13位)
人間開発指数 0.501
民主主義指数 3.48
腐敗認識指数 20/100
平均寿命 64歳
乳児死亡率 46.7/1000人

失敗国家中南米代表のような国。
アメリカ合衆国に次いで南北アメリカ大陸で独立を達成し、「世界初の黒人による共和制国家」という輝かしい肩書を持つ。

大航海時代、コロンブススペインによってイスパニョーラ島が「発見」されると、元々住んでいた人達が文字通り「絶滅」させられたのが受難の始まり。
でもって17世紀に入ると絶賛衰退中のスペインは大同盟戦争で占領された本土やネーデルランドの代わりにハイチを割譲し、フランスの植民地になる。
その後フランス革命の機運に乗って独立する(ハイチ革命)……が、この時すでに深刻な人種間地域間対立を抱えており、ナポレオンにより一度鎮圧されたり、独立達成後も内紛に突入したり、スペイン系住民の手でイスパニョーラ島の東側が分離独立、ドミニカ共和国を建国したりとちっとも安定しない。
加えて革命時に旧体制回帰防止と往時の報復として奴隷解放や統治層であった白人の処刑や農地を接収したのが見事に裏目に出て、独立承認と引き換えにフランスから巨額の賠償金を課せられ、重くのしかかる返済負担が不幸を決定づける。
更にドイツ帝国がちょっかいかけるわ、それを警戒したアメリカに1915年に占領されるわと大国に振り回され続けている。
おまけにそのアメリカが首都への権力と産業の集中や軍部の強化*21と失敗国家フラグを一通り立てた結果、
安定した政権が少なく、独裁政権すら続くことが難しい有様で、建国以来混乱が200年ほど続いている状態に近い。
1958年から1986年の間のデュヴァリエ父子による独裁は、当時「北半球最悪」とも謳われた。
それも軍事クーデターによって倒されるものの、その後も軍事クーデターと反政府組織の武装蜂起が度々起こっている。
そしてそのほとんどにアメリカの関与が判明、もしくは疑われている。本当にこの国は…

2010年にはM7.0の地震と津波に襲われており、首都に直撃したことと社会インフラの脆弱さもあって死者・行方不明者数約32万人という近代では類を見ない甚大な被害を被った上、国会議事堂の倒壊により政治機能が麻痺*22、更にはよりによって国連の救助隊がコレラを持ち込み大流行。ダメ押しの如く1万人以上の病死者を出した
ハイチの情勢が現在まで不安定を極めているのは、この大規模災害と復興の遅れのせいだからという見方も強い。

2021年7月、現職であったモイーズ大統領が自宅で武装集団の襲撃を受けて暗殺される事件が発生。2月にもクーデター未遂が発生していた中での出来事であった。
追い打ちをかけるかの如く翌月にはM7.2の地震が発生し、再び大きな被害を受けている。アフガニスタン同様、スコアと順位の大幅上昇が予想される。

ちなみに上述したドミニカ共和国は失敗国家ランキングでは107位(64.7点)。つまり、問題点はそれなりにあるものの国家運営としては成功している部類。
リアル環境テロリストことホアキン・バラゲール大統領の独裁政治による強引な環境保護政策*23により、自然保護とそれらを基盤とする産業の振興にも成功し、一時は「ドミニカの奇跡」と持て囃された。
国境線における豊かな森林が残るドミニカ側と不毛のハゲ山と化したハイチ側の印象的なコントラストは『不都合な真実』でも取り上げられた。
まあドミニカはドミニカで米軍占領や軍部独裁、内戦と波乱に満ちた歴史で、軍部独裁の流れを汲むバラゲール政権も格差の拡大や対立する革新派の非合法な排除などなど後ろ暗い面が多いのも事実ではあるが……
いずれにせよハイチよりは遥かにマシな状況の国家であるため、ハイチからドミニカへの(不法入国含む)人口流出にも歯止めがかからない状況となっている。

ナウル

人間開発指数 N/A
民主主義指数 N/A
腐敗認識指数 N/A
平均寿命 N/A
乳児死亡率 23.8/1000人

詳しくは個別項目参照。
1990年代前半までは、島から算出するリン鉱石の輸出で世界有数の富める国であり、国民は無税・医療と教育無料、更には全年齢に年金支給…と
政治家と公務員と医療関係者以外働く必要がなく(公務員ですら、外国人が3割ほどいたり…)、
毎日の食事に至るまでその辺の外国人経営の飯屋で適当に済ます、国民総ニート状態の国家であった。

しかし、1990年代後半に事態は一変する。
リン輸出産業の衰退により経済崩壊、財政破綻、インフラ崩壊と外国からの援助がなければ明日の食事にも事欠きかねない状態へと突入。
更には1世紀近くまともに働いた事がない国民が大半な為、そもそも「働くって何?」状態。(国内の労働者はほぼ中国を中心とする出稼ぎ労働者が担っていた)
一応政府が小学校の高学年で働き方を教える授業を行い、将来の国を担う子供たちの労働意欲を与えようという対策がなされていた。
しかし、労働意欲を育んだ所で国内には働く場所がない。国の産業構造がリン産業に頼り切っていたためそもそも他の雇用などなく、国内失業率も2011年で90%
更には
  • マネーロンダリングで儲けようとしてアメリカから怒られる
  • 突如連絡が取れなくなり「太平洋の島国が消息不明」「クーデターが起こったか?!」などと情報が錯綜するも、情報インフラの維持費が払えずに死んでいただけだった
  • 中国と台湾に国家承認と断交とを繰り返して手玉に取り援助を引き出す
  • ナウル共和国政府観光局日本事務所のTwitter公式アカウントのフォロワーが人口より1桁多い
と、話題に事欠かない国家である。

そして失敗国家的にこの国最大の特徴と言えるのは、あまりに情報が無い為に失敗国家ランキングに載ってすらいない事だろう*24
既に挙がっている国々と異なり、戦争や暴動、外圧と言った物騒な方面の問題は特に生じていないため、「深刻な経済破綻」とそれによる影響だけならば40位前後と予想はされるが。

元はと言えばオーストラリアとかがリン鉱石の無計画な採掘を行ったのが原因なので、オーストラリア政府は支援を続けている。
リン鉱石の無計画な採掘のせいで土壌の大半が石灰岩で覆われているのも発展を阻害しているし。
なお、リン鉱石の更なる採掘のおかげで現在の経済はある程度回復基調にあるが、こちらも尽きるのは時間の問題と見られ予断を許さないのが現状である。


◆余談

チャベス政権末期から大統領死去後にかけて政治の混乱と常軌を逸した貧富の格差とインフラ崩壊が取り沙汰され、
地元の犯罪集団ですら「必要な備品を確保できない」「あまりにも物がなく、何をやっても何も盗めないため、強盗をする意味が無くなってしまった」「というか、強盗に必要な弾丸などの支出と強盗によって得られる物の収入のバランス的に、強盗をするだけ赤字になる」
コメントするまでに荒れまくった近年話題のベネズエラであるが、2021年現在トップ20には入っていない。
ただし順調にポイントは上がっているので予断を許さない。25位(92.6点)だし。

またミャンマーも近年ではロヒンギャ族虐殺や軍事クーデターにより予断を許さない状況にあるが、こちらもまだ23位(93.8点)である*25。過去最高順位は08,09年の13位。





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最終更新:2022年05月16日 13:42

*1 主権国家体制という

*2 これに加えて「他国と関係を取り結ぶ能力」、すなわち外交能力も含んだ4つとも言われる

*3 第一次世界大戦前後より前ならばともかく、現代において「独立国家」の重みはものすごく重い。政治体制に問題があるから国家として認めないなどということはできないのである。そして一度独立国家になれば、政権を倒した後の新政権も「独立国家としての地位」を使いたいので独立国家の後継を名乗るようになり、簡単に消えない

*4 2014年からは脆弱国家ランキングに名称変更

*5 フランスは黄色いベスト運動とその影響が評価範囲に入っていないことに注意

*6 アメリカは日本とは比較にならない程の格差社会であり、また国民皆保険が存在しないため貧乏人はろくに医療も受けられず、自己破産の6割は医療費が原因である

*7 前半2つが独裁政治によるものであるのがアレであるが

*8 民主制であることが基本だが、民主制でなくとも政権が国民の支持を受けていれば高得点にはなりにくい

*9 そうした国では、婚姻外交渉は厳罰の対象となり、レイプ被害さえも「婚姻外交渉」とみなされ、被害者まで死刑とすることが容認されてしまうことがある。国家権力は処罰しなくとも、民間で「婚前交渉をするなんて我が家の恥なので殺すしかない!」という「名誉殺人」が支持されてしまい、国家権力の取り締まりむなしく横行ということもある。

*10 日本では実感がわきにくいが、国によっては法制度が政権交代などによって目まぐるしく変わることがある。

*11 一定の領域内において武力の使用を国家が独占すること。日本の場合、警察は規則に則って犯罪者を拘束したり何十年も監禁して労働させたり、場合によっては「死刑」という形で殺すことができる。これを国家組織以外の個人や組織が実行した上、それを国家組織が認知したのに法律に従った裁判にかけることすらできないような状態になると「失敗国家」となるわけだ。

*12 日本ですら、教育予算や研究予算を巡って教員の増員予算を求める文科省と、予算には効果が無い、少子化なんだから削減しろと主張する財務省の熾烈なバトルが恒例行事になっている。

*13 折しもランキング1位となった2005年にW杯本選へコートジボワールが初出場を決める事となった当時28歳の立役者であり、今なお国民的英雄と讃えられている

*14 旧ローデシアの内、北はザンビア、南はジンバブエとして独立した

*15 長期間に渡る世界中からの全面経済制裁や反政府ゲリラとの内戦にしばらくは耐えられる程度の経済力はあった。南アフリカ共和国とポルトガル領モザンビークの支援もあったが

*16 あのISILと並び称される程の凶悪なイスラム教過激派組織。自爆テロは勿論の事、警察署や学校を襲撃して多数の死傷者を出したり、2014年にはとある女学校の生徒らほぼ全員を奴隷として売り飛ばすとの名目で拉致、強制結婚や性的暴行を行っている。

*17 北部の国境地帯から起こったシーア派ザイド派系宗教運動組織。大体反アメリカ、反イスラエル、反スンニ派

*18 ただしこの認識は日本のみで、日本がポツダム宣言に調印した9月2日を終戦記念日とする国が多い

*19 イギリスの名誉のために付け加えると、シーア派はともかくクルド人までもを纏め上げる事を危惧する声もあったのだが、親スンニ派の専門家に押し切られた

*20 イラクとレバントのイスラム国。別名ISIS。いわゆるイスラム国だが誤解の原因となるためこのように表記する。

*21 現在まで続く地方の衰退や、後の軍事独裁政権成立は大体このせい

*22 首相ですらホームレス状態に陥るという有様だった

*23 違法伐採業者のキャンプを軍用ヘリで襲撃し壊滅させる、環境保護政策に反対した政治家にあらゆる圧力をかけて辞任に追い込む、貧しさから止む無く国立公園内に住んでいた人々に銃を突き付けて立ち退かせる、等々

*24 ナウルだけではなく、国家規模の非常に小さいミニ国家15カ国は情報が足りないため上記の通り評価対象外

*25 2021年時点。これは同年の30位(90.0点)である北朝鮮より悪く、東アジアで一番不安定な国家と言える。