タッチ(漫画)

登録日:2018/06/21 Thu 22:49:31
更新日:2025/02/17 Mon 06:41:37
所要時間:約 35 分で読めます





『タッチ(英:TOUCH)』は、あだち充の漫画作品。
小学館の『週刊少年サンデー』に1981年から1986年まで連載された。
本項では漫画およびアニメ作品について記述する。
以降は有名作品ですがネタバレ注意。


【概要】

作者にとっては初の週刊連載作品であり、累計売上総数は様々な販売形態、国外での売上を含めて2004年の時点で1億冊を越えるとされ、2008年に自著の総売上冊数が2億冊を越えた作者にとっても、半分以上が本作の売上となっているあたり、別格的な人気を誇る作品と言える。

スポーツ漫画の傑作であると共にラブコメの傑作でもあり、主人公の上杉兄弟以上にヒロインの浅倉南への人気が集まった。
詳しくは後述するが、現在ではその両方のジャンルを代表する作品、傑作として知られるものの、これ以前のそれらの作品のお約束を無視した作品でもある。
コメディ調ながらリアリティーのある作風は大きな共感を呼び、連載中から人気であったが、アニメ化されたことによって国民的な人気まで獲得することになった。
1980年代を代表する漫画の一つであり、高校野球を扱ったスポーツ物としては歴代最高傑作とも呼ばれる。

タイトルの『タッチ』は、野球用語でもあり、主人公達也の名前でもあり、弟から兄へのバトンタッチでもあり……と、様々な要素を連想させる物となっている。

また、多くの同系列のスポーツ漫画(野球漫画)を描いてきた作者であるが、2012年から連載を開始した『MIX』では、本作と同じ明青学園を舞台とするのみならず、明確に30年後の物語であるとされたことで大きな話題を集めた*1

【アニメ版】

1985年~1987年にはフジテレビ系列で全101話が放送された。
アニメ製作は東宝とグループ・タックで、全作品で杉井ギサブローが監督、総監督としてクレジットされている。

同名のアニメ主題歌(歌:岩崎良美*2)も人気を博した。

前半の山場とも呼ぶべき、上杉和也の死に際しては『あしたのジョー』の力石徹に次いで告別式が開かれ、担当声優の難波圭一が弔辞を述べている。

テレビアニメ放送中には平行して三作もの劇場作品が制作されている。
尚、劇場版はTVアニメが進行中であったこともあってか、時間内に物語として纏めるために漫画やアニメ本編での設定にそぐわない描写が多く見られるパラレル設定にある。

再放送はフジテレビが放映権を喪失してからは、多数のテレビ局で放映されている。
特に日本テレビでは90年代~00年代中頃まで、甲子園と重なる夏の時期に併せて放映されることが多く、リアルタイムを越えた世代にまで人気を獲得し新作を制作するきっかけともなった。
その日テレでは1998年と2001年に『金曜ロードショー』の枠内で新作アニメ『Miss Lonely Yesterday』と『Cross Road』の2作を制作・放送しており、2006年には長澤まさみ主演の実写映画の製作委員会にも参加している。

また、本作を題材としたFCゲーム『シティ・アドベンチャー タッチ ミステリー・オブ・トライアングル』が発売された。
無数の名状しがたい敵を野球のボールをぶつけて倒しながら進行するベルトスクロールアクション
……が、そのあんまりにもあんまりすぎる内容から、原作ファンからは満場一致で「クソゲー」の認識がなされている曰く付きの代物として有名。
ただ後のあだち作品のゲーム化に支障をきたす原因だとか、パスワード関連の都市伝説はさすがに誇張らしい。


【作品の影響】

スポーツ漫画として

それまでのスポーツ漫画と言えば『巨人の星』に代表されるスポ根物が多く、リアリティーを無視した特訓や、無数のライバルが次々と登場する展開等がお約束となっていたとされている。
しかし、本作ではコメディ調のライトな流れの中に落とし込んでいるとはいえ、あくまでも現実的で共感出来る練習風景や、ライバルの数を限定して、彼らも主要登場人物として扱って掘り下げるといった描写となっていた。
また、甲子園出場を果たした時点で漫画の目的は果たしたとばかりに、その後の試合展開は一切描かれず、甲子園前で多数の全国の猛者に名乗りを上げられながらも「多すぎて覚えられん」と、達也に切り捨てさせている。

ラブコメとして

『ナイン』から引き継がれた、あだち充特有のスポーツ物である一方、爽やかな青春、恋愛物でもあるという空気感は本作でも変わらず、当時の編集部は連載終了まで達也→(←)南←和也の三角関係が続いていくと思い込んでいた。
しかし、連載開始時から和也の死は決定されており、それは担当編集者も了解していて編集部にも伝えていたが、まともに聞いて貰えなかったという。
このため、いざ和也の死を描く段階に於いては、忙しい週刊連載の合間にありながら二日間も連絡が取れないようにして描き直しが不能とさせる等、強行手段をとって、作者の案を通している。
和也の死は、その後の達也と南の関係に暗い影を落とし、弟の死によって遂に表舞台に引っ張り出されてしまった達也の野球人生に於いても、おおよそまともとは言えない形に歪めてしまうこととなる。
これこそが作者の意図であり、作品の命題ではあったものの、この後の達也は(自分達が勝手に背負い込む形であったとしても)最終回まで……アニメの場合はTVスペシャルまで死んでしまった和也の呪縛の下に置かれることになってしまった。
この、達也と和也の関係には作者自身の兄への思い*3が投影されているとも言われる。
また、兄弟の確執と愛憎という物語は、上杉兄弟のダークサイドとも呼べる、ストーリー後半の柏葉兄弟の物語にも反映されている。


【あらすじ】

私立明青学園に通う上杉達也は“出がらしの馬鹿兄貴”と呼ばれる鼻つまみ者。
同じ顔をしているのに、成績優秀で野球部の一年エースである双子の弟の和也と“常に”比べられる運命にあるからだ。

そんな周囲の声が聞こえているのかいないのか、悪友達とバカばかりやっている達也に口うるさく接してくるのが幼なじみの浅倉南。
学校を代表する才色兼備のマドンナでもある南だが、彼女だけはぐうたらな達也を何故だか諦めようとしないのだ。

思春期に入り、三人のバランスに変化が訪れようとしていた。
どんなに努力を重ねても自分を振り向いてはくれない南の態度に我慢できなくなった和也は高等部に上がると、幼い頃に南が言った「甲子園に連れてって」という夢を自分が叶え、それを南への告白、結婚の申し込みの条件にすると言い出したからだ。

これを受けて、悩みながらも和也とは別の道を探してボクシングを始めてみた達也だったが、才能はともかく優しい性格が災いして相手を殴れない。
しかし、同時に達也の隠していた才能に気づく人間も増え始めることに。

そんな矢先、夏の高校野球の地方予選決勝の会場に和也が姿を見せないという事態が発生。

……和也は、球場に向かう途中で轢かれそうになっていた子供を助けたことで替わりにトラックに跳ねられ、そのまま死んでしまったのだ。
突然のヒーローの死にショックを受ける多くの人々であったが、哀しみの癒えない中で主将の黒木は、なんと達也を強引に野球部にスカウトしてくる。

当初は、和也の相棒であり元から仲の悪かった孝太郎との確執も生まれた達也だったが、やがては誤解と理解を乗り越えて無二のパートナーとなりチームの支柱に。

和也と常に比較される枷を付けられながらも、遂に表舞台に立った達也の活躍を喜んでいた南だったが、南は南で新体操部のキャプテンの代理で出た大会で、いきなりの入賞を果たしてしまい、野球部のマネージャーでありながら新体操部の救世主として持て囃されることになってしまうのだった。

そして、甲子園への最後のチャンスとなる三年生となった達也と南。
今や、野球部を背負って立つエースとなった達也だったが、明青野球部に恨みを抱く新監督の柏葉に南を退部させられ、自分達も柏葉のシゴキに晒されるのであった。

逆境の中、それぞれの思惑で達也との対戦と甲子園出場を目指すライバルの新田や西村に勝利して、達也は甲子園出場の夢を果たすことが出来るのか?


【主要登場人物】

■上杉達也
演:三ツ矢雄二
本作の主人公。
上杉兄弟の兄の方。ブラコンでツンデレ
当初はバカ兄貴や弟に全てを取られた出がらしと言われ成績も悪く不真面目、帰宅部で何の取り柄もない穀潰しを演じていた。
実際には幼い頃から優れた体力と頭脳の持ち主であり、いたずらっ子であると同時に、和也と南の兄貴として二人を守っていた。
成長してからは努力家の和也への配慮もあって自然にボンクラを演じるようになっていたように、人の感情に敏感で、ひねくれているが他者に優しく、真の天才とも評される才能の持ち主。
南以外の女子にはほとんど見向きもされていなかったが、口が悪くぶっきらぼうな態度の割に友達の数には恵まれていたのも、そうした達也の本質が知らず知らずに伝わっていたからかもしれない。
野球部のエースとなってからは普通にモテてる様子も見られるが、南一筋なので他の女の子には本気では目が向かず*4、新田由加や住友里子に靡くこともなかった。
TVスペシャルでは、ほっとけない雰囲気の水野香織に誘惑されたり、所属したマイナーリーグの「エメラルズ」オーナーの娘のアリスに思いを寄せられたりしているが、アリスの場合には年齢差もあってか異性として好かれていることに気づいていた様子も無いなど、恋愛関係については奥手で南一筋を貫いていたといっていい。
また、あくまでも和也の影を追っているだけなので、自分自身が人気者になったという自覚もなく、そこが(注目されるのに馴れている)南や和也との違いとなっている。
幼い頃の達也を知る南や和也は勿論、得体の知れない原田も達也の才能に気づいており、その実力はボクシング部や野球部での活躍を通じて周囲にも知られていくことになった。
運動神経や反射神経は非凡の一言で、運動不足だった頃から潜在能力の高さを見せていた。
反射神経も中等部で本格的に野球を始めて以来、チームメートの誰も打てなかったという和也の速球に初見でかすらせた程。
草野球ではまぐれとしつつ、ホームランまで打っている。
ボクシング部では優しい性格が災いしてなかなか相手を殴れなかったものの、相手のパンチを完全に見切り、新人賞獲得選手に判定勝ちを収めている。
また、野球部に入部してから二年弱で“本来は凡庸な実力のチーム”と評される明青野球部を甲子園出場を狙える所まで導いた力は、才能のみならず、和也の影を追って血の滲むような努力を重ねた末の結果。
他人には決して苦労している様子を見せようとせず、照れ隠しから悪態すら吐く達也だが、和也の思い出を引きずって、当初は頑として達也を認めようとしなかった孝太郎の態度を変えさせたのも、そんな姿を知られてからであった。
また、野球部で厳しいシゴキに励んでいるにもかかわらず、三年時には成績までもが急上昇しており、本人(と表向き南)は冗談めかしていたが、実際にやる気になった場合のエネルギーは凄まじいものがある。
普段は周囲の様子を見て自分のペースを抑えてしまう達也だが、余裕を無くすと本気で焦った結果、誰も付いていけない程の力を発揮するらしい。
南のことは大好きだが、和也への遠慮があって、いつからか素直に接することが出来なくなっていた。
いっそのこと邪険にして嫌われようとしたが、南こそが達也の最大の信奉者であったために全く通じず、悩んだ末に南を巡る戦いへと重い腰を上げる羽目になった。
……しかし、南以上に和也への想いが強く、和也の後を引き継いで野球に挑戦した後も、和也の影に苦しめられることになる。
尚、現実では和也に遠慮はしていたが、幾度も和也に南を奪われる悪夢を見ており、それは達也自身が野球人として完成するまで続いた。
甲子園出場の夢が現実の物になってきた三年時の夏には南と達也の和也への想いの差が明確になってきており、南は勿論、南の父とすら喧嘩になってしまった程であった。
甲子園出場を決める須見工との地方予選決勝では和也の影を背負った結果、綺麗なピッチングの反面、伏兵の大熊に二本ものホームランを打たれる等、調子が上がらず、柏葉の挑発を聞くまで自分のピッチングが出来なかった。
自分のピッチングを取り戻してからは新田以外の打線を沈黙させるが、限界を越えて放った最後の一球は和也が投げたと思い、尚も和也の影に縛られたままだった。
その後、甲子園までやって来ても尚も蟠りが残る自分の気持ちを試すために、偶然から知り合ったアイドルの住友里子の誘いに応じてみるが、当の里子からは本心を見透かされてしまっており、彼女に背中を押される形で入場式をすっぽかして鳥取県にいる南に会いに行って告白(アニメでは甲子園から電話で告げている)。
漸く和也の影を振り切り、自分の力で和也の目標を越えた甲子園優勝を成し遂げる。
優勝後は肩の故障を言い訳に、殺到したスカウトを断り普通に大学受験に臨む。
TVスペシャル『Miss~』で描かれた“その後”では、受験の当日に川で溺れていた犬を助けたために風邪をひいてしまい、南と同じ大学には行けなかったとされている。
本心では野球に未練を残しつつも普通の大学生活を送っていたが、告白以来、停滞していた南への態度なども含めて、原田から言われた「和也と関係ない野球を目指せばいいじゃねえか」の言葉を受けて再び奮起。
南への再度の告白の後で渡米し、 『Cross~』では、マイナーリーグからの挑戦をしていくことになる。
投手としては、凄まじい地力から生み出される、人並外れた速球と球威を武器にする豪速球投手。
当初は有り余るパワーを制御出来ずにノーカンであったが、孝太郎とのバッテリーを通じて制球力を身につけていった。
……が、コントロール出来ているのは力をセーブしているからであり、本気で投げた場合の速球は孝太郎ですら捕るのに苦労し、コントロールもやっぱり儘ならないというレベルの代物。
経験の浅さを自覚しているが故*5に、ストレートの速球頼みで、投手としては当然身につけるべき駆け引きも「生兵法」として切り捨てていたが、これは、達也の性格からして、孝太郎にリードを任せてしまった方がいいと判断した為だったのかもしれない。
『Cross~』では所属する「エメラルズ」最後の試合でアリスの助言に従い、密かに身につけていたフォークを披露している。
後継作『MIX』では、主人公が幼い頃に見た映像として、甲子園決勝で投げている場面が初めて描かれ、主人公の投球にも影響を与えたことになっている。
アニメでの投球フォームは、当時の甲子園のヒーローであった桑田真澄をモデルにしている。

ちなみに中の人は本作後に同じフジテレビ日曜19時枠で放送された『陽あたり良好!』*6キテレツ大百科』にも続けてレギュラー出演しており、
普通の高校生からスネ夫的な小学生という演技力の幅広さを感じさせるものになっている。

更に2018年に放送された『深夜!天才バカボン』では原作者のあだち充役で登場。本作でバカボンのママ役を演じた日髙のり子から「あだち先生のところに行ったんなら行きたかったわ~~~」と中の人ネタを展開している。


■上杉和也
演:難波圭一
上杉兄弟の弟。
達也とは大違いの優等生、孝行息子、中等部からの野球部のエースであり、鳴り物入りで高等部でも一年エースとして迎え入れられる。
その実力は一年時で明青学園に悲願の甲子園出場を果たさせると言われた程。
野球部に入ったのは、幼い頃に南が「学校が甲子園に行くのを見たい」と言ったのを聞いたからであり、高等部では達也も西尾佐知子に誘われ野球部に入ろうとしたが、入室直前で南がマネージャーになったのを知り、和也の邪魔をしないために野球部入りを止めたりしている。
才能も確かだが、常に努力を怠らない性格で、余りの手間のかからなさから、親の側からも扱いに困っていた様な部分も。
甘えん坊だが負けず嫌いだった和也が、不自然な程に完璧超人になろうとしたのは、何でもできた兄の達也への劣等感からである。
幼い頃から一緒にいた和也は達也の非凡な才能を誰よりも理解しており、自分が如何に努力して周囲から誉められたとしても、そんな差はいつでも引っくり返されると思っていた。
彼もまたブラコンで時には、達也を挑発するような発言もしたが、南と同様に何だかんだで達也がやる気を出した時には嬉しく思う等、恋敵でもある兄を誰よりも敬愛していた。
和也が努力して達也に勝とうとしたのは、南の目を自分に向けさせるためだったが、周囲から理想のカップルと持ち上げられても南の目が自分に向かないことに焦りを感じるようにもなっていった。
そのため、高校生になり甲子園出場を成し遂げたら南に婚約を申し込むとまで言い出し、達也にもハッキリと「アニキには負けないよ」と宣言。
本気になろうとしない達也に奮起を促し正々堂々と戦おうとしたが、この戦いは自身の交通事故により果たせなかった。
尚、和也の死は単行本にして7巻目と、週刊連載にして一年以上が経過した段階で描かれている。
和也の不自然なまでの優等生ぶりに戸惑っていた両親も、南を含めた子供達の気持ちには気づいており、達也が甲子園出場を目前にした時には「甲子園だけは和也に行かせてやりたかった」と語っている。
投手としては、キレと驚異的な制球力を武器としており、達也とは共に器の違いを感じさせる素質の持ち主というのは共通しているが、別タイプのピッチャーと言える。
投手としてのみならず、打者としても活躍したが、これも異常に器用だった達也の影を追っていたからとも思われる。
実際、兄弟共に強打者としてもチームを支えている。
そのは、多くの人間を悲しませたが、矢張り兄の達也のショックは大きく、決して表には出さず、他人には理解されないながらも、和也の影は後々まで達也を縛りつけていくことになった。
達也がどれ程までに実力を身につけても、野球に関しては決して自信を見せることはなかったのもこのためで、死んでしまったことで和也の存在が決して手の届かない相手として、際限なく大きくなっていったからである。
このため、達也は和也の死後に自分と和也を比較しようとする相手を信用せず、今の達也の頑張りを誉めようとしていたとはいえ、和也との比較を口にしようとした南に本気で怒った程。
生前の和也もそうだったが、お互いを愛するが故に相手の存在が何物よりも大きくなってしまった似た者同士の兄弟であった。
一方で、生前の和也が残した助言や何気ない一言が達也に奮起を促した場面も多々あり、和也もまた高い才能の持ち主であることの証明となっている。

■浅倉南
演:いとうあさこ日髙のり子
本作のヒロイン。
上杉家のお隣の喫茶店の娘で、達也と和也とは家族同然に育った。
余りにも三人が活発であったことから、堪りかねた親達から敷地の真ん中に子供部屋として小屋が建てられた程。
美人で性格がよく、勉強もスポーツも家事もこなせる完璧超人で、学園のマドンナとして持て囃されている。
それでいて活発で嫌味が無い性格で、高等部からは野球部のマネージャーを務めていたが、後に代役として新体操の大会に出場したことで、新体操の才能を開花させることになった。
中等部ではバレー部に所属していたらしい。
複雑な人間関係が主軸となる物語でありながら、受け身で暗くならず、ヒロイン自身が能動的というのも『タッチ』が新しいと言われた要素であった。
幼い頃に母親を亡くして家事をこなしていたために料理も得意で、喫茶店の看板娘となっている。
その腕で達也や野球部員の胃袋を満足させている場面が幾度も描かれており、マネージャー時に考案したスタミナ丼は、達也の入れ知恵もあり由加に引き継がれたが、孝太郎に「誰でも作れる」と言われた時には抗議しようとした。
漫画作品の女性キャラでも指折りの魔性の女として有名な彼女であるが、それ以上に達也を想い続け、終始一途を貫いている。
自分が和也や、他の男子から注目を集めていることを自覚はしているが、南には幼い頃から達也のことしか見えておらず、達也が如何に無能を装っても本気を出していないことを見抜いていたし、たとえそうでも達也以外の男子には目が向かなかった。
達也が他の女の子と仲良くしたりモテるとすぐに嫉妬して、表向きは平静を装いつつも陰で釘を刺すなど、達也や真正面からライバルとしてぶつかってきた新田由加に対してだけは、普段からは想像も出来ない子供っぽい行動や報復に出たり、ネチネチと釘を刺すこともあった。
尚、中の人は南の、そうしたズルいとも取れる態度に本気でイラついていた時期もあったという。*7
後には、自身が新体操で活躍するようになりはしたものの、野球部のマネージャーから離れさせられてしまったり、その間に達也が急成長を遂げたために反対に置き去りにされてしまったと感じ、焦った様子を見せるようにもなった。
肝心の甲子園の開幕日に自身の鳥取で行われるインターハイが重なり応援に行けず、途中で合宿所に寄ってみれば達也は不在で不穏な噂を聞き……と、終盤には大きな不安を重ねていった。
実際、周囲から完璧で手間がかからないと思われていた南がバランスを保てていたのは、他ならぬ達也の存在があったからで、甲子園開幕同日の達也からの告白の直前には、過去になく自分を保てなくなってしまい、遠くまで応援に来てくれた三人の男どもを一度に失恋させている。
南にとってもギリギリだったからだが、このタイミングで達也が現れなければ南もどうにかなっていたかもしれない。
尚、後には和也に続いて達也もヒーローとなったことから、事情を知らない人間から、和也が死んで達也に乗り換えた尻軽女と陰口を叩かれたりもしている。
『Miss~』では達也と違い、大学生になってからも新体操を続けていたが、在学中に引退。
その後は、引退試合で自分の本心を捉えていたと感じたスポーツカメラマンの藤村剛に師事することになり、
『Cross~』では、藤村に言われて渡米した達也の試合を撮影しに、単身でアメリカに向かっている。

尚、劇中では達也と二度キスしているが、いずれも南からのキスである。

作品が国民的人気を獲得したことで浅倉南の名は当時を象徴するものとなり、当時フジテレビで放送されていたニュース番組『スーパータイム』内では「南ちゃんを探せ」というコーナーが作られた程だった。
また、野球漫画なのに、本作の影響で新体操を始めた女の子も多かったらしい。

アイドルから声優に挑戦したばかりの中の人にとっても、その後の運命を決めることになった役である。
役を射止めたばかりの頃はまだ演技に難があったそうで、スタッフとしても実戦での成長を期待しての採用であった。
そして、実際の現場に於いても“かなり厳しい指導“があったとのことだが、その甲斐もあって演技は短期間で急成長。
その後、声優として大成することになったのは周知の通りであり、中の人にとっても南は定番の持ちネタとなっている他、自著にて当時のスタッフに感謝を述べている。
また、明石家さんまが理想の女の子として名前を挙げていたことなんかでも有名である。
他にも『爆笑レッドカーペット』でいとうあさこが「38歳の浅倉南」というネタを披露してブレイクするきっかけになっており、後年日高もこのネタを披露したほか、『MIX』アニメ第1期では様々な役を演じる狂言回し役でレギュラー出演している。


主人公達の家族

■上杉信悟
演:千葉繁
■上杉晴子
演:小宮和枝
上杉家の父母。
二人揃って明青学園の卒業生。
いまだに仲がよく、お調子者なおしどり夫婦。
前半までは和也の活躍に大喜びしては、達也の扱いはぞんざいになるという定番ネタがあったが、その実は子供達の性格をよく見抜いて分け隔てなく愛情を注いでおり、達也への扱いも本心を見透かしていたが故のことだったのかもしれない。
実際、達也よりも和也の扱いに困っている様子があったり、父親は他人から達也のことをバカにされた時には軽い調子であっても本気で怒り、後に達也が甲子園まで王手をかけたときには、母親は特に驚いた様子を見せなかった等、子供達の力を信じている様子も見られる。

浅倉俊夫
演:増岡弘
南の父で喫茶店「南風」のマスター。
恰幅のいい体格とパイプがトレードマーク。
子供達同様に上杉家とは仲がよく、親同士で連れだって遊びや旅行に行く程。
和也や達也の活躍も我がことのように喜んでおり、達也がノーヒットノーランを達成したときには、店を締め切って上杉夫妻と昼間から酒盛りをしていた。
和也の活躍の頃から南と和也の結婚話で上杉夫妻と盛り上がったりしていたが、達也の時には南の気持ちもあって本気モードであり、和也のこともあって達也が敢えて身を引いていることを知っていながら、踏み込んだ会話になっても乗ってこようとしない達也に対して怒ってしまったことも。*8
原作では鳥取まで南の応援に来た所で、達也が会いに来たのを目撃。
密かに後を尾け、達也の告白により二人が結ばれるのを陰から見守っていた。
原作、アニメでは死別した妻のしのぶ(南の母親)の姿は登場せず、自身と晴子から南にそっくりだったという情報が伝えられるのみだが、実写映画版では回想シーンで登場している。

■パンチ
声:千葉繁
まんまるとした体型の犬で本作のマスコット的な存在。
上杉家と浅倉家の真ん中の敷地で飼われている。
元は仔犬だった頃に南が拾ってきた犬で、本来の飼い主は南なのだが、中学以降は忙しくなった南や和也と違い、暇だった達也が文句を言いつつ世話を焼いていた。
しかし、デブネコ、肥満ネコと読んでイジメてくる達也に対して反抗的な態度をとっている場面も見られ、達也に鍛え上げられたからか中々にいい性格をしている。
達也まで忙しくなってからは、晴子が世話をしていたと思われる。
チッチ・ポッポなる、パンチにそっくりな仔犬もいるが、原作では普通にパンチの子だが、アニメでは南と達也が拾ってきた他犬の空似となっている。
尚、ポッポは新田と西村のそれぞれの怪我の原因になってしまっている。
TVスペシャルでは、更に次世代のカンカン・ランランが生まれて(拾われて?)いる。
『Cross~』にて、渡米した達也が所属した「エメラルズ」オーナーの家ではパンチそっくりのピンチが飼われており、同じく千葉さんが演じている。


明青学園関係者

■原田正平
演:銀河万丈
とても高校生には見えない巨体と鋼の肉体の持ち主で、表情も常に変わらない。
余りに存在が目立ち過ぎるためか、特にグレてもいないのに初期の頃は毎日の様に喧嘩に明け暮れたり巻き込まれており、達也が相手との待ち合わせ場所に行かされてしまったこともあった。
本当に盲腸の手術の翌日なのに(というか盲腸で苦しんでいる筈なのに)痛い顔も見せずに平然と過ごし喧嘩相手を叩きのめしたり、麻酔無しで親知らずを抜いた等の逸話もある。
見た目に反して哲学的な所があり、世の中が良く見えており人間観察も確か。
何故だか達也と馬が合い、ぐうたらな頃から達也の力を見抜いていた。
達也と南にとっては親友と呼んでも差し支えない程の存在であり、劇中に於いて幾度も助けられている。
南に惚れているようだが、達也に和也との戦いの場に上がるように言ったりするなど、基本的には二人の背中を押すスタンスである。*9
高等部からはボクシング部に入っており、喧嘩に向けていたエネルギーを原田なりに発散させる場を見つけている。
ただし、記録を目指している訳ではないとのこと。
西条高校のエースの寺島の妹の友子(演:伊藤美紀)と、不良から助けた縁で呼び出されたりする等、良い感じになったと思われたが、漫画では和也の登場で兄の影響で野球好きの友子がそちらに夢中になってしまうという結末を迎えている。
アニメ版の方ではその後も西条高校と明青の対決の頃まで登場しており、原田と付き合いもある。
昔は不良グループに属していた新田とも顔見知りで、達也に興味を持った新田の心に火を点けた。
また、由加とも顔見知りだったり、西村とも知り合ったりとバイプレイヤーとしての使い勝手が非常にいいキャラクターである。
漫画の最終回では卒業後に海外を放浪するのにまとまった金が欲しいという理由で宝くじに並んでいる。
『Miss~』では、本当に宝くじを当てて海外を回ってから帰国。
チベットで怪しげな格闘技を習得してきた。
このTVスペシャルでも、国内では和也の影を感じてしまい野球を続けることが出来なくなった達也に新しい道のヒントを与える等、重要な役割を負っている。
『MIX』にも記憶喪失の男性として登場しており、アニメ版は本作と同じキャスティングとなっている。

■松平孝太郎
演:林家こぶ平(現:9代目林家正蔵)
大柄で恰幅のいい体格の、朗らかな性格の酒屋の息子で、中等部時代から和也のパートナーとしてバッテリーを組んできた。
見た目からも解るように鈍足だが、肩が強く強打者。
野球人としては優れた視点の持ち主で、黒木達が引退してからはキャプテンで四番としてチームを牽引した。
和也とは親友であったが、反対に達也とは馬が合わず、顔を合わせる度に「バカ兄貴」や「ブタまん」と罵りあっていた。
また、実際にチームメートになるまでは達也や南にコタローやエータロー等と名前を間違われたりも。
草野球での絡みから達也が高い野球センスを持つことを一目で見抜いており、その試合では和也にスローボールや変化球で勝負するようにアドバイスする等、達也の力を甘く見たことはない。
しかし、和也の死後に代わりとして達也が入部させられてきたことには反発。
当初は達也の無神経に見える態度や自身の頑なな態度もあって喧嘩ばかりしていたが、徐々に達也が裏で努力を重ねていることや、素直ではないが思いやりのある人間であることを理解していき、自然と心を開いて一緒につるむようになっていく。
当初は「上杉」と呼んでいたが、後には和也と同様に「達也」と親愛を込めて名前で呼ぶようになった。
野球部では達也の投球を受けられる唯一の男であり、肩を負傷してしまった事実を隠していた時には達也に秘密にし、柏葉からその事を聞かされた達也から「お前がいなけりゃ俺も終わり」「つぶれる時は一緒だぜ」とまで言われて笑顔で応え、達也の全力の投球を痛みを堪えて受けきり、コールド勝ちを成功させる等、いつしか余計な言葉は無くても互いを支え合える一蓮托生のパートナーと呼べる存在に。
素直ではない達也からはぞんざいに扱われることもあるものの*10それも照れ隠しだと理解し、後には他の誰が何を言おうとも達也を疑う素振りすら見せなくなり、和也の死を受け止めた上で冷静に達也の活躍と努力を認めるようになる等、孝太郎自身も達也に救われたような面もある。
南に憧れていたようだが、和也や当人達(達也と南)の気持ちを知っているだけに早々に諦めている。
いざ甲子園に進んでからは、宙ぶらりんになってしまった達也に振り回され、禁句であった「おれと和也とどっちが好きだ?」と聞かれ、怒気を見せたこともあったものの、動揺しつつも達也を待っていた。
引退後は達也と同様に受験勉強をしていたが、『Miss~』では進学せずに家業を手伝っている姿が見られる。
『Cross~』では、孝太郎自身は登場しないものの、上記のピンチ同様にニック・キャンディなる、孝太郎にそっくりなチームメートが登場している。


■広瀬幸男
■久保田高志
■長尾光記
■中嶋信吾
■丸山一夫
■工藤眞民
■池田孝行
達也が三年時に共に戦ったチームメイト。

■新田由加
演:冨永みーな
達也の最大のライバルとなった須見工の新田明男の妹。
可愛いが、兄が完璧なだけに他の男には目の向かないブラコン気味で、当初は不良とも付き合いのある小生意気な性格に育っていた。
そんな兄がライバルとして執心する上杉達也に興味を持ち、達也を見に明青学園を訪れる。
川に落ちた所を助けられて以来、本格的に気になる存在となり、練習試合で兄から三振を奪った場面を見て本気で惚れてしまう。
こうして“須見工のスパイ”を言い訳に明青学園高等部に入ることになり、新田からは「うちの監督並に嘘が下手」と言われている。
達也を追い、野球部のマネージャーとなってからは猛アピールを開始。
南や孝太郎には睨まれ、達也も呆れてはいたが由加なりに一生懸命で役に立ったことも多く、要領の良さを発揮して柏葉のシゴキから達也達を救ったことも少なくない。
南のことはライバルとして正面から歯向かったばかりか、兄とくっつけようとする等、強かで頭も回る。ついでに合気道二段。
お嬢様育ちだけに料理だけは不得意で、合宿では余りのマズさに皆に食べて貰えない恥辱を味わうが、達也の機転でスタミナ丼を会得することになる。

■佐々木
演:難波克弘/石田彰(『Miss~』)
達也達の二年後輩の野球部員で、由加のクラスメート。
あだ名は委員長。
小、中でスポーツ経験が無いのに由加に惹かれて入部してきた眼鏡のモヤシっ子で、見た目に反して根性と順応性があり柏葉のシゴキに耐えかねて多くの新入部員が逃げ出す中でも野球部に残り、やがては由加への思いを知られた達也にも目をかけられる後輩となっていく。
由加を通り魔から守ろうとして傷ついた時には素直ではない由加に詰られたものの、新田からは“家での由加の言葉”として感謝を述べられている。
ヘロヘロのスピードながら不思議な球威の球を投げ、達也の後の明青のエースとなったと思われるが……?
須見工との地区予選決勝では、佐々木の分析を記していたノートが勝利の鍵となった。
『Miss~』では、由加と受験勉強をしており、由加が南に「(達也を)あきらめてあげたんですから~」等と言っているので、念願叶って付き合ってるのかもしれない。

■黒木武
演:塩沢兼人
達也達の一年先輩で、入学時の野球部主将。
メガネのイケメンで西尾佐知子とは乳くりあう位の恋仲。
高等部からの編入で、西尾監督のラブコールを受け、更に佐知子に惹かれて明青に来たとも噂されている。
元は彼がエースで四番だったが、和也に投手として敗れたことでサードに転向した。
佐知子の勘違いから達也とプールで勝負したが、達也が和也ではないと知ってからは、佐知子が語る達也の潜在能力を噂を根拠に信じようとしなかった。
しかし、和也の死後に達也が投げた速球を見て考えを改め、ボクシング部の主将の沢井から有名人のサイン(漫画は高橋留美子、アニメは吉永小百合)を交換条件に引き抜きをした。
三年時には経験が浅く未完成の達也を励まし、翌年の地区大会優勝の礎を残した。
原作では引退以来の姿が見えないが、アニメ版では佐知子と共に決勝戦を見守っている。

■西尾佐知子
演:鶴ひろみ
明青学園高等部野球部の監督を長く務める西尾茂則の似てない娘。
クールで大人びた美少女というよりは美人。
自ら人を見る目には自信があると語り、過去に間違っていたことはないと語る程だったが、達也が余りの運動不足から失敗した時には流石に呆れていた。
元は和也と間違えていたとはいえ、作中で和也や南以外で達也の潜在能力の高さを最初に口にした人物である。
劇場版では女教師役に置換されており、野球部の部長になっている。

■吉田剛
演:塩屋翼→堀川亮
達也のクラスメートで、元々は目立たない性格だったが弟の評判に腐ることもなく学校生活を送り、今度は弟の代わりに野球部に入った達也に感じるものがあり、憧れの存在として追いかけていくことになる。
飼い犬の名前をタツヤにしたり、自宅に引き伸ばした達也の投球の写真を飾る等、自宅に招かれた達也に「そっち(アッー)の趣味はない」と言われてしまっている。
達也を追いかけ野球部に入り、見よう見まねで達也のフォームの真似をしている内に野球の才能が開花。
更には西村のカーブをも習得する。
新田の一打席勝負で新田に打つ気が無かったからとはいえ記録上の三振を取って以降は自分に自信が持ち、達也を越えることを目標にするようになり、達也にしか感心がない由加に惚れてしまったことなどもあってか、歪な感情で突っ走るようになる。口調も荒っぽくなり、それまで「上杉くん」と呼んでいた達也の事も呼び捨てで呼ぶようになり、時には露骨に見下した態度をとるようになった。
遂には、達也とエースの座を賭けて勝負すると言い出し、達也と孝太郎が生焼けのお好み焼きを食べて腹を壊してしまう最悪のコンディションの中で勝負の日を向かえるが、何と家族で南米に引っ越すことになってしまい、勝負は流れてしまった。
しかし、いつ帰国していたのか三年時には佐田商業のエースとして都大会三回戦で明青学園の前に立ち塞がる。
明青ナインの力を見切っているつもりだったが、柏葉のシゴキに耐えたことで飛躍的にナインの力はアップしており、更には目標を見据えて本気を見せた達也の威圧にビビってしまい、七回(アニメでは六回)までの好調が嘘のように打ち込まれて八回コールド負け(アニメでは七回コールド負け)を喫する。
涙目で球場を後にしようとするが、普段はひねくれているだけに男の純情を笑いのタネにするような所がある由加から、例外的に「ファイト」と然り気無く声を掛けられている。
アニメでは再登場時には肌色が明青在学時の色白から褐色に変化していた。

■西尾茂則
演:北村弘一
明青学園高等部野球部監督で、学校の厚意もあって長年に渡り指導に当たっている。
選手の力量を見る目は確かながら、初見で人格を見抜くまでにはいかず、また、人の好さから余り他人を疑うこともしなければ、選手に無茶もさせないという、人柄はともかく指導者としては凡庸な人。
達也達から十数年前の代である柏葉兄弟も指導していたが、英二郎が野球部員から酷いイジメを受けた末に追い出されていた件について、イジメの事実にすら気づいていなかった。
達也達が三年時に倒れてしまい、過去の自分の教え子で最も優れていた柏葉英一郎に後任を依頼。
しかし、英一郎は海外に移住しており、その事実を隠して英二郎が監督代行としてやって来た事実にも、入院先にやって来た校長からやんわり伝えられながらも気づかなかった。
その後、明青ナインが地方予選を勝ち抜く中で英二郎の存在を知ったOBの島達から依頼する相手を間違えていたことを知らされるも、自分の指導時よりも明青ナインの力が増していたのを見たからか、自ら英二郎の中学時代の恩師に会いに行き嘗ての英二郎の人柄を確認。
自ら合宿所を訪れ、英二郎に謝罪とも取れる言葉をかけて名指しで後任を託す。
地方予選決勝では島達に対して、情けない監督だと語り、部員達のイジメを見抜けなかった過去を恥じている。
決勝戦後、緊急入院した英二郎から反対に後を任されて監督に復帰する。
『Miss~』でも、変わらずに野球部の指導をしている。
須見工の指導者である上村とは、学生時代にライトのポジションを巡って争った仲であり、常に後一歩で勝てずに、レギュラーの座を逃してきた。
上村も名門の監督として普段は威厳のあるフリをしているが、練習試合で引き分けた後で西尾と子供染みた口喧嘩を繰り広げていた。

■柏葉英二郎
演:田中秀幸/鳥海勝美(中学時代)
物語後半からの最重要人物。
上記の経緯を経て雇われた明青野球部の監督代行だが、選手に暴行を振るうことも気にせず、指導の合間に飲酒するのも当たり前という態度をとる。
暴行に関しては、自分になついた犬を守る為とはいえ、他校の生徒……それも、ライバル校のエースである西村までボコボコにした程。
ヤクザか、そうでないにしても堅気とは言えない見た目や粗暴な行動から、西尾監督の言う理想のキャプテン像とは合致しないとして、達也や南の他、校長も密かに過去を探ったものの、何だかんだで指導は継続されることになった。
そのシゴキは凄まじく、当初は達也達もノックの後で倒れ伏せて動けなくなる程だった。
達也には和也のことなども含めて絡むことがあったが、それは己の過去から来る負の感情によるものだったと思われる。
物語の後半は達也達の試合と共に柏葉の過去を探る物語となっており、それによれば三歳歳上の兄、英一郎(演:内海賢二)の影であった英二郎は中学時代には最初はグレていたが、兄の後を引き継ぐべく野球に打ち込むようになる。
その才能は兄にも勝るとも劣らぬものであったが、兄が高校三年の時には世間にも注目されている兄のバイク事故のスキャンダルを隠す為に父親から身代わりにされたり、兄の去った後の明青野球部では英二郎は歓迎されず、壮絶なイジメの末に追い出されてしまったりしている。
詳細は不明だが、その後は再び悪い仲間とつるむようになり、当時に憧れていたか、付き合っていた相手(令子)は英一郎と結婚……と、日陰者の報われない人生を送ってきた。
漫画ではイジメの首謀者が英一郎*11となっており、更に救われない。
また、常にサングラスを掛けているのは持病の眼の病の所為でもあり、徐々に視力を失っていった。
兄との確執や、憎悪ある兄弟関係といい、達也のアンチテーゼとも呼べる人物である。
一方、かつて命を賭けて打ち込んでいた野球の実力は本物で、西村のカーブを三球で見切り、達也にコースを指示してみせた他、厳しい指導や負けさせたいのかと思わせる作戦を提示しつつも、野球の枠内には収めるという部分も見られる。
監督代行を引き受けたのは明青野球部への復讐だ、としつつもシゴキを通して地力を増した明青ナインは予選を勝ち進んでいく。
試合では当初はやる気を見せなかったものの、病の侵攻で視力が低下したことや、自分の正体を見抜いた達也や西尾監督の言葉を聞くなかで意識に変化が見られ、須見工との決勝では佐々木のデータを元に的確な指示を出して、見事にチームを勝利に導く。
しかし、決勝までに視力の方は利かなくなってしまっており、偶然から出会った南に連れられて病院に入ることに。
孝太郎以下のナインとはそれでお別れとなってしまったが、病室を訪れた達也と南からは感謝を述べられ、須見工との決勝戦のウイニングボールを手渡されることになる。
最終回前には手術が無事に成功し、甲子園へと向かうのか新幹線の時刻表を確認する場面が描かれている。

他校のライバル

■新田明男
演:井上和彦
地元ではNo.1の野球の名門校、須見工業高校野球部の不動の四番バッター。
ポジションはサード。
会社社長の息子で学業も優秀なイケメンで、更には野球の才能もあり、と地元ではスター扱いされており、新体操で持て囃されるようになった南と高校生ながら対談の企画まで出されている。
須見工は二年連続で甲子園に進んでいるが、いずれも決勝で敗れている。
特に二年時には自ら打点を稼ぎなから、最後は自分のエラーで勝利を逃しており、三年目のリベンジを狙っていた。
……一方、甲子園に行くこと以上にこだわっているのが達也との対決で、元々は中学まで野球をやっていなかった新田が高校から野球に打ち込むきっかけになったのが、野球部の助っ人として中学時代に和也と戦い、一番打者として出場したが三巡目で試合が終わり、四巡目が回ってこなかった経験からであり、その幻の四巡目を和也との対戦で求めてのことだった。
しかし、一年目の夏に和也が死んでしまい、その夢を果たせなくなったと思った通り所で達也と出会い、達也との戦いに和也への挑戦を夢見るようになる。
三年時の地区大会予選決勝の対戦では、自分のピッチングを取り戻した達也に打線が沈黙させられる中でただ一人だけ三振を許さない等、食らいつくが、最後は和也の力も借りた達也に打ち取られ、試合後に「上杉和也に負けるなよ」と声を掛けている。
クールな印象ながら打ち込んでいる野球については全力で、手の豆を全て潰し、家に帰った途端に倒れ込んで眠ってしまう程の猛練習を自らに課している。*12
達也と一緒に知り合った南を好きになったようで、由加からもくっつくようにと工作されていたが、漫画では南の気持ちを知っているためにあっさりと身を引いている。
しかし、アニメ版では達也の恋のライバルとして『Miss~』の辺りまで食らいついていた。
また、ライバルという出会い方ながら達也とは心の通じあう友人同士となっており、卒業後もいつか戦えることを楽しみにしていると語っている。
『Miss~』では、大学に進学後は大学野球で活躍しており、将来のプロ入りを期待されていた。
中学時代は不良グループに居たということもあってかバイクが趣味で、野球以外では殆どバイクに乗っている場面が多かった。

■西村勇
演:中尾隆聖
勢南高校のエースで四番打者で、小学校時代から野球で才能を発揮してきた自信家。
二年時には地元でNo.1ピッチャーと言われていたが、まだ野球経験一年未満の達也と戦い、その底知れぬ力を経験させられることになる。
新田と共に登場した、達也のライバルで、ストレートが武器の達也に対してキレのあるカーブを武器にする等、全く別タイプのピッチャーと言える。
自身がライバルと定めた新田や達也に挑発的な態度を取り、実際に二人からも実力は評価されているのだが、常に三枚目的な空気が付きまとう愛すべきバカ。
新体操選手として有名になった南のファンで、西村なりに猛アタックを仕掛けたが報われなかった。
南は憧れの存在だったが、本命は普段は邪険にしている幼なじみの鈴子のようで、プライドが高い西村が最後の最後に本音を出せる存在となっている。
二年時は達也の速球に自分を含めて打線が沈黙したにもかかわらず、達也が経験が少なかったことだけで勝てたのに納得がいかず、三年時には達也も新田も倒して甲子園に行くのを目標としていた。
しかし、曰く「小学生から変化球を投げてきたツケ」により試合中にコントロールが付かなくなり、自らの押し出しで敗北。達也との再戦は叶わなかった。
由加によればマウンドでわんわん泣いたとのことだが、その後で達也の下を訪れ甲子園に行けとの言葉を残している。
この言葉に奮起した達也は、勢南の敵討ちともなる準決勝に於いてノーヒットノーランを達成しているが、これは達也が西村と戦って勝利することで得たかった自信の替わりだったとされる等、達也にとっても大きな存在であった。
『Miss~』では、卒業後にプロ野球に挑戦して、一年目は新人王を獲るなどして世間の注目を集めるが、二年目に肘の故障が再発。
二軍落ちした上に、そこでも滅多打ちにあって引退している。
尚、プロ野球では当時の流行からか野茂なトルネード投法になっていた。
『MIX』では勢南の監督として息子を含む子供達の指導に当たっており、アニメ版の声優も同じ。

■寺島
演:小杉十郎太
和也編のライバルで、西条高校のエースで四番だった。
達也達が一年時の地元No.1投手として君臨。
準々決勝まで完封勝利を成し遂げ、明青も完封間近まで追い込まれるが、達成したことのなかった完全試合を前に隙が出来、最後は試合中に自分以上の投手と認めてしまった和也にサヨナラ安打を打たれて敗北した。
アニメではバックボーンが掘り下げられており、早くに両親を亡くして友子と共に親戚に引き取られ、その為にもプロへの道を志望していたことなどが描かれた。





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  • 1981年
最終更新:2025年02月17日 06:41

*1 これ以前の他作品でも明青学園の話題が触れられたことはあったが、同作の連載開始と共に設定が変更された模様。ただし、記述や設定の違いは他にも見られるため、完全な続編なのかパラレル的な意味での続編となるのかは不明。

*2 ちなみに南の中の人はアイドル時代岩崎氏と共演したことがあり、作者も兄弟揃ってアニメ開始前からファンだったという。

*3 作者の兄故あだち勉氏も漫画家だったが諸事情により大成せず、赤塚不二夫のチーフアシスタントを経て作者を支えるスタッフに転身した。

*4 ごく初期には和也に化けてデートを楽しんだり、気に入った女の子をメモしたりしていた。

*5 まだ深刻で無い頃は使えないカーブを投げてるが。

*6 これもあだち充作品で、主演は後に同じ枠の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』にもレギュラー出演した森尾由美。

*7 これについては、南に輪をかけて達也が応じようとしなかったのを南が理解していたからとも取れ、のんこさんも後にはリアリティーのある描写として理解を示している。

*8 その後の達也の態度から「早すぎたかな」と自分の非を自覚した挙げ句、裏から二人の会話を南に聞かれて「バカ」と言われるなど、気まずい状況を作っしまっている。

*9 後半に於いてはそれなりに想いを口にしている。

*10 よりにもよって地方予選決勝に勝利して感激の余りにマウンドに駆け寄ったら抱きつきをかわされた挙げ句、はたき込まれてしまった。

*11 自分以上の才能を持つ弟が自分の成し得なかった夢を実現するかもしれないことが許せなかったと思われる。しかし、アニメではイジメには関係しておらず、確執の原因は自分の果たせなかった夢から事情を知らなかったとはいえ、弟が逃げたと思っていたからとなっており、真逆の設定になっている。アニメでは令子と南により和解の可能性が出てくる等、救いのある展開となっている。

*12 それを見た達也が熱血な顔になった程。