バイオハザード 北海の妖獣

登録日:2019/09/28 Sat 02:21:42
更新日:2023/12/18 Mon 01:50:55
所要時間:約 7 分で読めます





『バイオハザード 北海の妖獣』とは、バイオハザードシリーズの小説のタイトル。

1998年にジャンプジェイブックスより刊行された。なお、発行日がちょうど『バイオハザード2』の発売日と同じ日である。

のちに角川ホラー文庫等で出版されたシリーズの小説と違って挿絵があり、扉絵にはプロローグの漫画も描かれている。
著者は朝倉究、挿絵は坂本眞一。


設定的に1と関連している描写があるものの、本作の内容がゲーム本編と矛盾する描写があり、登場人物がほぼ本作オリジナルキャラクターのみであるため、今となってはその後のシリーズとは繋がっているかどうかは不明である。
その一方では、『舞台が孤島』、『外界と隔離された場所での生活』、『黒幕が名門貴族』、『遺伝子工学で生まれた天才』と、
バイオハザード CODE:Veronica』に通ずる要素が多数登場しており、本作が後の作品に影響を与えた箇所もあるかもしれない。

ドラマCD版と同じく、シリーズには欠かせない用語であるアンブレラが作中では「アンブレラ薬品」と呼称されている。



【あらすじ】

舞台は北の孤島、ガディウォール島。
主人公ノルス・シーラックは過去の出来事から安住の地を求めて世界中を旅していた。
ガディウォール島行きのフェリーに乗り込んだノルスはふとしたキッカケで女子学生のレインケイトの2人と同行する事ととなり、レインの伯父が住んでいるガディウォール島を訪れたのだが、そこでノルス達はゾンビの襲撃を受け、その最中にケイトが崖から落ち行方不明になってしまう。
ケイト捜索のためアンブレラの研究所に忍び込んだノルスとレインは、ビアズレー家が行なっている異常な研究を目の当たりにするのであった……



【用語】

  • ガディウォール島
北に浮かぶ孤島。
レインの故郷であり、漁師達が村で代々暮らしている。漁が盛んだった頃は人口が5000人以上であったが、現在は300人程度にまで減っている。
外界との交通手段は基本的にイギリスとの間を移動するフェリーのみで到着まで約5時間かかる。
島を統治しているビアズレー家の出資で病院や港などのインフラが設置されており、電力発電所からの電力を村に配電している。
また、20年前にアンブレラの研究所が森に建設され、そこで行なわれているT-ウイルスの研究が原因でゾンビが島で目撃されるようになった。
この頃から島の人々はゾンビの存在に気づいていたが、前述の通りガディウォール島の村はビアズレー家に頼り切っている状態であった事に加え、数世紀に渡って維持しているビアズレー家の威光によって誰も表立って追求しようとはしなかった。奇しくもラクーンシティに近い状態だったと言える。

  • ビアズレー家
ガディウォール島を統治している名門貴族
500年前に建てられたビアズレー城に住んでおり、現在はミレーヌ・ビアズレーが十七代目の当主となっている。
先代の当主は強大な権力を持った領主であり、城を拠点にして敵国を次々と滅ぼしていたが、18世紀初頭に民衆の蜂起で専制君主制が崩壊した事でビアズレー家は衰退に追いやられた。
現在は世間的には単なる大地主の富豪となっているが、島内ではイギリス特有の階級意識を持つ島民に畏敬の念を持たれている。
実は脳生理学や細菌分析学などの生化学に精通している大家でもあり、近年では遺伝子研究にいち早く着手してアンブレラとのコネを築いている。

  • N(ネオ)・Tウイルス
ミレーヌが開発した改良型のT-ウイルス。
作中では詳しく説明されなかったものの、「感染した生物に著しい知能低下をもたらす」という致命的な弱点を持ったT-ウイルスの欠点を克服しているらしく、後述のミレーニアのように「命令に従う事が出来るだけの知能」を維持した安定性重視のB.O.W.がN・Tウイルスの産物となっている。

  • CRW
英国陸軍の対テロリスト部隊。
正式名称はカウンター(C)レヴォリューション(R)ウォーウイング(W)・チーム」……今で言うと厨二病っぽいネーミング。
対テロリストであるだけに「テロリストに対しては、たとえそれが子供でも確実に息の根を止めるまで容赦なく弾装一個分を撃ち込むこと」が鉄則となっているが、隊員だった当時のノルスはアイルランドの事件でテロリストの子供を撃つのをためらい、直後にその子供が自爆して部隊が壊滅してしまった。



【登場人物】

  • ノルス・シーラック
本作の主人公。
元軍人で逆立った髪と鍛えられた体格が特徴。*1
後述の理由で超人的なゲーム本編の主人公達に匹敵するほど生身の戦闘能力が高く銃器の扱いにも長けている。
かつては対テロリスト専門部隊「CRW」に所属していたが、2年前にアイルランドで起きたIRAによる国連の要人誘拐事件で要人の救出に失敗した上に自身のミスで仲間を死なせてしまった事が原因で軍を除隊して現在に至る。


  • レイン・ルーベンス
本作のヒロイン。
髪型がブラウンのショートボブでやや巨乳
イギリスにある聖ルチア女学園の女子学生であり、幼い頃に両親を亡くして伯父に育てられた。
現在は寄宿舎暮らしで3年ぶりに伯父に会いに行くために生まれ故郷のガディウォール島へと帰郷する事になるのだが…


  • ケイト
レインのルームメイト。
ブロンドの巻き髪と黄色のパーカーが特徴の少女で彼女もやや巨乳。
レインと比べると好奇心旺盛の明るい性格でボーイフレンドがいる模様。
上述の通り、中盤でゾンビに襲われ、逃げる途中で崖から転落して行方不明となってしまう…


  • ベイル
レインの伯父。
孤児となったレインを引き取って実の娘のように育てていた。
現在はレインと離れて暮らしている。
中盤でレインと再会したが、その時点でアンブレラの差し金に撃たれて致命傷を負っていた。
元は軍人であり、20年前にT-ウイルスの存在を知った上に森で偶然ゾンビを目撃した事が原因でアンブレラに目をつけられ、以後追っ手から逃れるために島中を転々としながら生活していた。
最期はレインに看取られながら息を引き取った。


  • ポール
レインの幼馴染である青年。
ガディウォール島生まれで物心がつく前に孤児となって漁師の老人に引き取られたのだが、13歳の頃に老人が亡くなって現在は天涯孤独である。前述の経緯からベイルを親のように慕っている。
中盤でケイトが行方不明になった事をベイルに伝えていたが、その行動が原因でアンブレラの差し金に殺害されてしまった。


  • ミレーヌ・ビアズレー
本作の黒幕。
名門ビアズレー家の当主を務める17歳の少女であり、銀髪と金色の瞳が特徴。
今は亡き父親から受け継いだ会社と後述の才能によってアンブレラ第一研究開発部長(ぶっちゃけ幹部)という役職に就いている。
容姿端麗でまるで物語の世界から抜け出してきたようなお姫様と言える美少女であるが、その本性は高飛車で子供じみた残虐性を持ち、自分以外の人間を見下しているエゴイストである。
その性格は彼女の研究方針からも見て取れ、N・Tウイルスを開発するためなら人体実験も一切躊躇わない容赦の無さを見せており、相当数の人間が検体として犠牲になっている。

彼女の正体は、父親が開発した遺伝子組み換え技術で誕生した優性人間で、『CV』のアレクシア・アシュフォードに近い天才児と言える。*2
ミレーヌの場合は脳のポテンシャルが常人以上に活性化しており、成長と共に脳内の情報が拡張してやがて脳をコンピュータとリンクできる電脳技術と言える「DNA遺伝子型の相互書き換えプログラム」を生み出す事に成功していた。
その能力で軍の最高機密であるノルスの経歴を調べ上げる等の便利なハッキングが可能となり、その気になれば軍事用コンピュータを乗っ取って世界中に核攻撃を仕掛ける事すらできる模様。


  • ミレーヌの父親
ビアズレー家の前当主。故人。
生前は自身が興した会社でアンブレラと共同経営していた。
実はアンブレラの総帥オズウェル・E・スペンサーの知り合いであり、アンブレラが創設される際にビアズレー家の生化学研究を提供してスペンサーを支援していた。


  • ギリアム
ビアズレー家の執事。
肩まで伸ばした金髪と整った顔立ちが特徴のイケメンであり、基本的にミレーヌに忠実である。
また、人並み以上の戦闘力の持ち主でもあり、45口径のリボルバー(キングコブラ)を難なく扱い、元軍人のノルスと互角にやり合えるほどの体術を披露している。



【登場クリーチャー】

T-ウイルスに感染した人間のなれの果て。シリーズではお馴染みのザコだが、本作では20年前からガディウォール島で目撃されている。
終盤ではビアズレー城にいた使用人やセレブ達もゾンビ化してしまった。


  • ケルベロス(ゾンビ犬)
T-ウイルスでゾンビ化したワンちゃん。
作中では2匹登場しており、レインに襲いかかろうとしたところをベイルのショットガンで狙撃されてあっけなく死亡。


  • 男性型モンスター
N・Tウイルスで生まれたクリーチャー。
屈強な肉体で醜悪なゴリラの姿をしているが、赤茶色の毛皮で覆われており、両手がカマキリっぽい鉤爪となっている。
ぶっちゃけエリミネーターとキメラを1つにしたような不気味なデザインとなっている。


  • 女性型モンスター
こちらもN・Tウイルスで生まれたクリーチャー。
男性型と比べると人間の近い姿をしており、全身が短い銀の体毛で覆われていて長い尻尾が生えている。


  • ミレーニア
本作のラスボス
N・Tウイルスとクローン技術で生み出した最高傑作のクリーチャーであり、ミレーヌの忠実なる分身。
ミレーヌの遺伝子が使われているため、彼女と同じ銀髪と金色の瞳で人間に近い姿をしているが、鋭い鉤爪と牙が生えている上に右胸にはむき出しの心臓が付いている。早い話が女タイラント

「鉤爪と牙による戦闘力」と「銃弾をたやすく回避できるほどの俊敏性」を有しており、腕時計型の発信機によるコントロールで完全な制御が可能となっている





追記・修正は、ガディウォール島を訪れてからお願いします。

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最終更新:2023年12月18日 01:50

*1 作中でノルスと女性2人が並び立つシーンにおいてノルスが一回り大きく見える事から、身長が少なくとも2メートル近くあると思われる。

*2 仮に本作の時系列が『1』に近い時期(1998年)であれば、ミレーヌは1981年生まれでアレクシア(1971年に誕生)より10歳年下という事になる。ちなみに1998年12月にはアレクシアがコールドスリープから目覚めていた。

*3 なお、ギリアムが裏切った時点でノルスはミレーヌ個人よりもアンブレラそのものに怒りの矛先を向けており、むしろミレーヌを見逃そうとしていたが、自暴自棄となった彼女が耳を貸すことなく悪あがきをしたためにやむなく殺害する事となった。

*4 むしろ、唯我独尊で部下達に不始末を押しつけるミレーヌに仕えている生活に関しては日頃から不満を募らせていたらしい。

*5 この台詞から判断すると、もしミレーヌが暴走しなかった場合はそれならそれで彼女を表に立たせる傀儡組織を継続するつもりであった。

*6 脱出した後はアンブレラの幹部の座に就く事が約束されていたようであるが、ギリアム自身はそれで満足することなく「アンブレラの頂点に立つ」という分不相応な野望を目論む等、自身が見下していたミレーヌと何ら変わりないものであった。