登録日:2019/09/28 Sat 02:21:42
更新日:2025/01/29 Wed 21:26:52
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1998年にジャンプジェイブックスより刊行された。なお、発行日がちょうど『
バイオハザード2』の発売日と同じ日である。
のちに角川ホラー文庫等で出版されたシリーズの小説と違って挿絵があり、扉絵にはプロローグの
漫画も描かれている。
著者は朝倉究、挿絵は坂本眞一。
設定的に1と関連している描写があるものの、本作の内容が
ゲーム本編と
矛盾する描写があり、登場人物がほぼ本作
オリジナルキャラクターのみであるため、今となってはその後のシリーズとは繋がっているかどうかは不明である。
その一方では、『舞台が孤島』、『外界と隔離された場所での生活』、『黒幕が名門貴族』、『遺伝子工学で生まれた天才』と、
『
バイオハザード CODE:Veronica』に通ずる要素が多数登場しており、本作が後の作品に影響を与えた箇所もあるかもしれない。
ドラマCD版と同じく、シリーズには欠かせない用語であるアンブレラが作中では「アンブレラ薬品」と呼称されている。
【あらすじ】
舞台は北の孤島、ガディウォール島。
主人公ノルス・シーラックは過去の出来事から安住の地を求めて世界中を旅していた。
ガディウォール島行きのフェリーに乗り込んだノルスはふとしたキッカケで女子学生のレインとケイトの2人と同行する事ととなり、レインの伯父が住んでいるガディウォール島を訪れたのだが、そこでノルス達はゾンビの襲撃を受け、その最中にケイトが崖から落ち行方不明になってしまう。
ケイト捜索のためアンブレラの研究所に忍び込んだノルスとレインは、ビアズレー家が行なっている異常な研究を目の当たりにするのであった……
【用語】
北に浮かぶ孤島。
レインの故郷であり、漁師達が村で代々暮らしている。漁が盛んだった頃は人口が5000人以上であったが、現在は300人程度にまで減っている。
外界との交通手段は基本的に
イギリスとの間を移動するフェリーのみで到着まで約5時間かかる。
島を統治しているビアズレー家の出資で病院や港などのインフラが設置されており、電力発電所からの電力を村に配電している。
また、20年前にアンブレラの研究所が森に建設され、そこで行なわれているT-ウイルスの研究が原因で
ゾンビが島で目撃されるようになった。
この頃から島の人々はゾンビの存在に気づいていたが、前述の通りガディウォール島の村はビアズレー家に頼り切っている状態であった事に加え、数世紀に渡って維持しているビアズレー家の威光によって誰も表立って追求しようとはしなかった。奇しくも
ラクーンシティに近い封建社会と言える。
ガディウォール島を統治している名門
貴族。
500年前に建てられたビアズレー城に住んでおり、現在はミレーヌ・ビアズレーが十七代目の当主となっている。
先代の当主は強大な権力を持った領主であり、城を拠点にして敵国を次々と滅ぼしていたが、18世紀初頭に民衆の蜂起で専制君主制が崩壊した事でビアズレー家は衰退に追いやられた。
現在は世間的には単なる大地主の富豪となっているが、島内ではイギリス特有の階級意識を持つ島民に畏敬の念を持たれている。
実は脳生理学や細菌分析学などの生化学に精通している大家でもあり、近年では遺伝子研究にいち早く着手してアンブレラとのコネを築いている。
ミレーヌが開発した改良型のT-ウイルス。
作中では詳しく説明されなかったものの、「感染した生物に著しい知能低下をもたらす」という致命的な弱点を持ったT-ウイルスの欠点を克服しているらしく、後述のミレーニアのように「命令に従う事が出来るだけの知能」を維持した安定性重視のB.O.W.がN・Tウイルスの産物となっている。
英国陸軍の対テロリスト部隊。
正式名称は
「カウンター・レヴォリューション・ウォーウイング・チーム」……今で言うと厨二病っぽいネーミング。
対テロリストであるだけに
「テロリストに対しては、たとえそれが子供でも確実に息の根を止めるまで容赦なく弾装一個分を撃ち込むこと」が鉄則となっているが、隊員だった当時のノルスはアイルランドの事件でテロリストの子供を撃つのをためらい、直後にその子供が自爆して部隊が壊滅してしまった。
【登場人物】
本作の主人公。
元軍人で逆立った髪と鍛えられた体格が特徴。
後述の理由で
超人的なゲーム本編の主人公達に匹敵するほど生身の戦闘能力が高く銃器の扱いにも長けている。
かつては対テロリスト専門部隊「CRW」に所属していたが、2年前にアイルランドで起きたIRAによる国連の要人誘拐事件で要人の救出に失敗した上に自身のミスで仲間を死なせてしまった事が原因で
軍を除隊して現在に至る。
目的地に辿り着いた後は成り行きでビアズレー家およびアンブレラの野望に関わる羽目になり、地獄のような惨劇の中で元凶であるミレーヌ一派を倒し、もう1人の生還者であるレインと共にボートでガディウォール島を脱出して生還。
本作のヒロイン。
髪型がブラウンのショートボブでやや
巨乳。
イギリスにある聖ルチア女学園の女子学生であり、幼い頃に両親を亡くして伯父に育てられた。
現在は寄宿舎暮らしで3年ぶりに伯父に会いに行くために生まれ故郷のガディウォール島へと帰郷する事になるのだが…
3年ぶりに戻ってきたガディウォール島がクリーチャーの巣窟と化しており、そこで伯父や親友を失ってしまい、自身も元凶であるミレーヌ達に捕まってしまうが、最終的にノルスに救出された。
レインのルームメイト。
ブロンドの巻き髪と黄色の
パーカーが特徴の少女で彼女もやや巨乳。
レインと比べると好奇心旺盛の明るい性格でボーイフレンドがいる模様。
上述の通り、中盤でゾンビに襲われ、
逃げる途中で崖から転落して行方不明となってしまう…
崖に落ちた後はかろうじて一命を取り留めたようであったが、その際に運悪くミレーヌ達に拉致されてしまい、自分を救出しにビアズレー城に乗り込んだノルスと再会したが、既にゾンビ化していた上に
両目を抉られていた。ちなみに
彼女の両目はスープの具にされ、ミレーヌが嫌がらせ目的で
目玉入りのスープをレインに差し出していた。…当然ながらレインはその場で絶叫。
最期は、変わり果てた姿を見かねたノルスの手で射殺された。
なお、生前に自慢していたボーイフレンドの存在はケイトの見栄から出た
嘘である。
物語の途中で黒幕に捕まってウイルスの実験台にされる点では『CV』のスティーブ・バーンサイドの先駆けとも言える。
レインの伯父。
孤児となったレインを引き取って実の娘のように育てていた。
現在はレインと離れて暮らしている。
中盤でレインと再会したが、その時点でアンブレラの差し金に撃たれて致命傷を負っていた。
元は軍人であり、20年前にT-ウイルスの存在を知った上に森で偶然ゾンビを目撃した事が原因でアンブレラに目をつけられ、以後追っ手から逃れるために島中を転々としながら生活していた。
最期はレインに看取られながら息を引き取った。
レインの
幼馴染である青年。
ガディウォール島生まれで物心がつく前に孤児となって漁師の老人に引き取られたのだが、13歳の頃に老人が亡くなって現在は天涯孤独である。前述の経緯からベイルを親のように慕っている。
中盤でケイトが行方不明になった事をベイルに伝えていたが、その行動が原因でアンブレラの差し金に殺害されてしまった。
本作の黒幕。
名門ビアズレー家の当主を務める17歳の少女であり、銀髪と金色の瞳が特徴。
今は亡き父親から受け継いだ会社と後述の才能によってアンブレラ第一研究開発部長(ぶっちゃけ幹部)という役職に就いている。
容姿端麗でまるで物語の世界から抜け出してきたようなお姫様と言える美少女であるが、その本性は高飛車で子供じみた残虐性を持ち、自分以外の人間を見下しているエゴイストである。
その性格は彼女の研究方針からも見て取れ、N・Tウイルスを開発するためなら人体実験も一切躊躇わない容赦の無さを見せており、相当数の人間が検体として犠牲になっている。
彼女の正体は、父親が開発した遺伝子組み換え技術で誕生した優性人間で、『CV』のアレクシア・アシュフォードに近い天才児と言える。
ミレーヌの場合は脳のポテンシャルが常人以上に活性化しており、成長と共に脳内の情報が拡張してやがて脳をコンピュータとリンクできる電脳技術と言える「DNA遺伝子型の相互書き換えプログラム」を生み出す事に成功していた。
その能力で軍の最高機密であるノルスの経歴を調べ上げる等の
便利なハッキングが可能となり、
その気になれば軍事用コンピュータを乗っ取って世界中に核攻撃を仕掛ける事すらできる模様。
終盤で自身の最高傑作であるミレーニアを差し向けてノルスを始末しようとしたが、あと一歩のところで
執事のギリアムを筆頭とした部下達に裏切られ、追い打ちと言わんばかりに役職の解任を告げられてあっけなく全てを失ってしまった。
実は被験体となった際にギリアム達の手で密かに悪魔的な性格に目覚める細工を施されており、その事を知らずに彼らの掌の上で踊られる形で「歪んだ頭脳でしか生み出せない発明」を行なっていたのである。
人為的に性格を歪められた道化だった事実を突き付けられた上に研究成果を横取りされて崩壊寸前のビアズレー城に置き去りにされたミレーヌは、失脚のキッカケを作ったノルスから大事なものを奪おうとレインを射殺しようとしたが、ノルスの返り討ちで逆に自身が射殺されてしまった。
ビアズレー家の前当主。故人。
生前は自身が興した会社でアンブレラと共同経営していた。
実はアンブレラの総帥
オズウェル・E・スペンサーの知り合いであり、アンブレラが創設される際にビアズレー家の生化学研究を提供してスペンサーを支援していた。
ビアズレー家の執事。
肩まで伸ばした金髪と整った顔立ちが特徴の
イケメンであり、基本的にミレーヌに忠実である。
また、人並み以上の戦闘力の持ち主でもあり、
45口径のリボルバー(キングコブラ)を難なく扱い、元軍人のノルスと互角にやり合えるほどの体術を披露している。
おっと、お姫さま気どりはこれで終わりにしてくれませんかね。元・アンブレラ第一研究開発部長、ミレーヌ・ビアズレー
実はもう一人の黒幕。
(ギリアムが直接関わっていたかどうかは不明であるが)ミレーヌの人格形成に悪影響を及ぼした元凶であり、彼女を「自分達が出来ない研究を代行可能な天才児」に仕立て上げて影で操っていた。主人であるミレーヌに対しては忠義など全く無く、内心では「脳みそだけ不気味に発達した失敗作」と見下していた。
やがてミレーヌがアンブレラの頂点に立つために暴走を始めると、自身と同じくミレーヌに不満を持つ人間達を集めて謀反を画策。その準備として独自に開発した「脳内情報書き換えプログラム」で密かにミレーヌの記憶から研究成果の情報をデータディスクにコピーして、ミレーヌの番犬であるミレーニアの弱点を把握していた。
悪戯が過ぎたようだな、ミレーヌ。おとなしく会社の言いなりになっていれば、こんなことにはならなかっただろうに……
終盤でゾンビの襲撃とノルスの介入でビアズレー城が崩壊した際には全ての責任をミレーヌに押し付け、ミレーニアの動きを止めて逃走。
その後、
ヘリで脱出しようとしたが、ノルスの妨害で墜落してしまい、その時の衝撃で
データディスクが破損してしまった。
かろうじて生き延びたものの、アンブレラへの手土産にするはずだったビアズレー家の研究成果を失ってしまい、計画を妨害されたことへの憤怒と憎悪からノルスを殺そうとしたが、最期はミレーヌが事前に仕掛けたトラップで再び動き出したミレーニアの爪で胴体を真っ二つに引き裂かれて死亡した。
ノルスの介入がキッカケで破滅したものの、それ以前の内部抗争の顕在化も敗因だったのが皮肉と言える。
こうした背景を踏まえるとミレーヌとギリアムのどっちが悪いかといった単純な問題ではなく、どちらも上手く立ち回る姿勢があれば、もう少し上手く組織を存続出来るような流れになっていたかもしれない。
更に皮肉だったのは、アンブレラものちに内部抗争で内側から崩壊してしまったという事実であろう。
ビアズレー家はアンブレラの始まりから終わりまでの縮図とも言えるかもしれない。
【登場クリーチャー】
T-ウイルスに感染した人間のなれの果て。シリーズではお馴染みのザコだが、本作では20年前からガディウォール島で目撃されている。
終盤ではビアズレー城にいた使用人やセレブ達もゾンビ化してしまった。
T-ウイルスでゾンビ化したワンちゃん。
作中では2匹登場しており、レインに襲いかかろうとしたところをベイルの
ショットガンで狙撃されてあっけなく死亡。
N・Tウイルスで生まれたクリーチャー。
屈強な肉体で醜悪な
ゴリラの姿をしているが、赤茶色の毛皮で覆われており、両手が
カマキリっぽい
鉤爪となっている。
ぶっちゃけエリミネーターと
キメラを1つにしたような不気味なデザインとなっている。
こちらもN・Tウイルスで生まれたクリーチャー。
男性型と比べると人間の近い姿をしており、全身が短い銀の体毛で覆われていて長い
尻尾が生えている。
本作の
ラスボス。
N・Tウイルスとクローン技術で生み出した最高傑作のクリーチャーであり、ミレーヌの忠実なる分身。
ミレーヌの遺伝子が使われているため、彼女と同じ銀髪と金色の瞳で人間に近い姿をしているが、鋭い鉤爪と牙が生えている上に右胸にはむき出しの心臓が付いている。早い話が女
タイラント。
B.O.W.としては成功例と言えるクリーチャーであるが、発信機が
弱点となっており、終盤でミレーヌを裏切ったギリアムが発信機を破壊した事によって活動を停止してしまった。
だが、ミレーヌが死亡した後、彼女の
死に呼応するかのごとく活動を再開していた。
実はミレーヌはあらかじめ電脳技術の応用で自身の記憶をミレーニアの
脳にコピーしており、ミレーヌが死亡した時にミレーニアの中の記憶が覚醒するように
プログラミングされていたのである。
そして、ノルスの妨害で脱出に失敗したギリアムを惨殺した際には…
ミレーヌの記憶を受け継いだミレーニアは人間と同等のレベルに知能が発達してミレーヌと同じ声で人語を操れるようになっていた。
私はミレーヌ、そしてモンスターミレーニア。この頭脳とこの肉体で、私を陥れたすべての人間に復讐してやる!
実質的にミレーヌ本人の復活と同然の現象を起こせたものの、その時点で地位も権力も失った怒りで狂気に飲まれており、良くも悪くも人間と同じ思考を受け継いだ故にタイラントとは別の形で暴走状態に陥ってしまった。
生き残っていたノルスも殺そうとしたが、死闘の末に45口径のリボルバーを至近距離で全弾撃ち込まれて上下真っ二つとなって海に落下。
クライマックスでは上半身だけになりながらも、ノルスとレインが乗ったボートにしがみついてあがくが、最期はボートのイカリを脳天に叩きこまれて今度こそ死亡した。
結論から言えば、
ジェームス・マーカスやアレクシアの要素を1つにしたようなラスボスと言えるが、2人は曲がりなりに研究成果を後世に残せたのに対し、ミレーヌは長年の苦労も研究成果も主人公のせいで完全に闇に葬られるという惨めなものであり、バイオハザードシリーズにおけるマッドサイエンティストの中では最も悲惨な運命と言えよう。
追記・修正は、ガディウォール島を訪れてからお願いします。
- ミレーヌってもしかしたらアレクシアやウィリアムに強い劣等感を持っていたんじゃないかな -- 名無しさん (2019-09-28 13:55:15)
- 「アレクシアが生まれたのは1971年であるが、仮に本作の時系列が『1』に近い時期(1998年)であれば、ミレーヌが生まれた年がちょうど1971年になる。」ミレーヌが17歳なら1981年にならない…? -- 名無しさん (2019-09-29 13:00:14)
- ↑修正しました。 -- 名無しさん (2019-09-29 14:09:41)
- ヴィレッジのドミトお姉さんはミレーヌとミレーニアの要素を1つにしたようなキャラだと思う -- 名無しさん (2021-06-05 19:41:58)
- CRWって実在する部隊(第22SAS連隊の即応対テロ部隊)なんだな。 -- 名無しさん (2022-02-12 13:20:49)
- 発行日から27年も経ってる -- 名無しさん (2025-01-29 21:26:52)
最終更新:2025年01月29日 21:26