深海の戦士(遊戯王)

登録日:2020/05/14 Thu 22:14:05
更新日:2024/04/16 Tue 09:23:14
所要時間:約 13 分で読めます





『深海の戦士』とは遊戯王のカードである。

効果モンスター
星5/水属性/戦士族/攻1600/守1800
「海」がフィールド上に存在する限り、このカードは魔法の効果を受けない。

ステータスは低めかつ上級モンスターだが、フィールド魔法「」がある限り魔法の効果を受けないというなかなか強力な耐性を持つ。
海の効果も受けなくなるのはお茶目だが

また上級モンスターではあるもののレベル5なので《伝説の都 アトランティス》があればリリース無しで召喚することが可能である。
名前だけが戦士のアトランティスの戦士等と違いしっかりと戦士族なので《戦士の生還》等の豊富な戦士族サポートカードが使用できるのも利点であろう。
ただし手札からリリース無しで召喚してもフィールドに出てしまえば「魔法の効果を受けない」事となりレベルが5に戻る為、ランク5エクシーズ等それらを活かすデッキなら採用価値はある。

一見強そうだが、この低攻撃力では戦闘向きとは言えず魔法による強化ができないので戦闘面でも頼りない。
同じ問題を抱えた《マジック・キャンセラー》(攻撃力1800)よりもさらに低い。
また当時流行していた《激流葬》や《奈落の落とし穴》と言った強力な罠カードは普通に通る。
逆に言えば《鎖付きブーメラン》や《竜巻海流壁》の加護を受けられるのは大きい利点。
しかし現在ではモンスター効果による破壊や阻害も非常に多い為、海や罠カードによるサポートがあっても思ったより活躍できないであろう。


伝説のフィッシャーマン》とは相互互換の関係にあるが、こちら側の利点は少なくあちらはサポートカードも登場しているので、
実質的にはこちらは伝説のフィッシャーマンよりも使い難いモンスターと言えるだろう。

尤も登場したのはOCG黎明期の2000年。単なるコモンカードだった為現状では活躍の場がないのは仕方ない事だろう。
というか当時でも使いにくく、よほどの事が無い限りデュエルに出てくることは無かった…。


だがアニメにて登場した彼は、今までの地味な印象を払拭する活躍を見せていた。
尤もそれは悪役としてであるが…。





【アニメでの活躍】


数の上での物量戦が戦いにおいて有効なのは、古今東西の兵法書に記されている。
例えば、古代中国では『多兵に傷つくことなし』とあり、あるいはフランスでも『勝利は多兵に存す』という言葉が伝えられている。
だがその一方、かのプロイセンの軍事理論家は『数の優勢というものは、勝利の要因の一つに過ぎない』との提言も残しているがね

なんとアニメオリジナルエピソード「乃亜編」にて、BIG5の1人である
BIG1(ビッグワン) 大下(おおした) 幸之助(こうのすけ)のアバターとして登場した。
CVは園岡新太郎氏。若干しゃがれているがダンディなボイスが魅力的である。
余談だがデュエルモンスターズクエスト編では斉藤信行氏が担当していたが、どちらにせよ鼻にかかったような嫌味な声(褒め言葉)なのは間違いないだろう。


元々は多くの企業の買収を手がけ「妖怪」の異名で呼ばれている。
…が、実は海馬コーポレーションでどのような部署、役職だったのか一切不明だったりする。
ちなみにバーチャル世界でのルール説明は彼が行った。
その正体は、世界中の格言を自慢気に披露するいけ好かないおっさんである。

立ち振舞は紳士っぽく知的であるもののどこか他人を小馬鹿にした態度と、場も弁えずに知識を披露する傾向にあるという、いかにもプライドの高い知的キャラがするような言動を続ける。
大人の事情か実名は出さないため、余計に胡散臭いと感じる視聴者も多い

【デッキマスター能力】


OCGとしての深海の戦士のステータスは冒頭の通りだが、BIG1大下のデュエルでは場に出ることがなく終始デッキマスターとして活躍。
その際の効果は以下の通り。

相手モンスターが自分フィールド上のモンスターを攻撃した時に発動できる。
自分フィールドのモンスター2体をリリースし、相手モンスターの攻撃を相手プレイヤーに跳ね返す。
モンスター同士の戦闘時に自分モンスター2体をコストとして発動できる《魔法の筒》
一見すると多大なるディスアドバンテージに見えるが、モンスター同士の戦闘が主流だった当時としては破格の効果である。能力名は「リフレクターホール」。
ただし直接攻撃に使用することはできず、そこを突かれて敗北することとなる。

ちなみに深海の戦士をデッキマスターにした理由は「自身の手腕と能力(会社の乗っ取り等)をイメージした」とのこと。
あがけばあがくほど水底に引きずり込まれる、
もしくは「自らの得意フィールドであれば相手の魔法=奇策など問題ではない」といったところだろうか。



【デュエリストとして】

知的なだけでデュエルは弱い、なんてことは全くない、
どころか、実はアニメ屈指の実力者である。
ステータスは低いが優秀(すぎる)効果を持つモンスターでアドバンテージを稼ぎ、残ったモンスターはデッキマスター能力や上級モンスターの為の生贄として役立てるという手堅い戦法を駆使し、更に「口撃」により精神を揺さぶるという非常に嫌らしい戦法を取る。
その戦術は一刻も早く仲間と合流したい闇遊戯も「うるさいぜ!! 少し黙ってろ!!!」と完全にガチギレ。
デュエルもBIG1のペースで進んでおり、ほんの僅かな油断さえ無ければ遊戯に勝利できていた可能性が高い。

しかし知識を披露するプライドの高い男というものは、自然と相手を見下してしまう悪い癖があるもの。
相手はバトルシティ決勝戦に来るほどの相手だというのに優位だからと言って「このまま一気に決めても面白みがない」と最善手を打たなかったり等油断した結果、
役不足とバカにした(なお後述するがこの使い方は誤り)《クリボー》のデッキマスター効果により敗れ去ることとなった。

ちなみに遊戯王式ショットガンシャッフルの使い手でもある。
加えてアシニグライをリバースする際にカードにしわが寄るほど曲げるなど、
いくらバーチャルとはいえカードを大切にする気は全くないことがうかがえる(生粋のデュエリストではないことも後押ししているとは思われるが)。

使用カードはオーストラリア、アボリジニの神話に登場する生物や神を元としたモンスターを多く扱う。
自分の知識の豊富さをアピールするように日本では知名度の低い神話を題材としたカードを使う辺り彼の性格が現れているが、デュエルした場所がジャングルだった事もありシチュエーションはバッチシだった。
そしてそれらのカードは当時はもとより、20年経過した今でも十分に通用するパワーカードが多い
……というか、当時としては明らかにオーバーパワーな連中がずらりと揃っており、戦術と合わせて「未来を見据えすぎ」と言われることも。
(特にヨーウィーやアシニグライはある程度事前対策を用意していないと現在でもだいぶ苦しい)

【OCG化済み】


・イピリア
効果モンスター
星2/地属性/爬虫類族/攻500/守500
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する。
自分はデッキから1枚ドローする。
出すだけでドローできるという破格の効果。
アニメでは1ターンに1度の制限は無かったが1枚しか出てないので実質変わらない。
能力値は低いもののBIG1のデッキマスター能力はモンスターの「数」だけが重要なのでこういった強力な効果を持ったカードを愛用していたのだろう。


・メルキド四面獣
通常モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1500/守1200
単なるバニラモンスター。元々は「光の仮面」が使用した仮面モンスターである。
フレーバー的な採用かと思われるが、能力値が低いおかげで《翻弄するエルフの剣士》を戦闘破壊するという活躍を見せた。
余談だがこの戦闘で受けたダメージの影響でボロボロになった闇遊戯の一連のセリフ
「冗談じゃなくダメージはこれで限界、これ以上一発でも食らったら『やばい』って、体全体が悲鳴をあげているのがわかるぜ!」
は言葉の区切り方が若干不自然なのでネタにされることも。やばいって!


効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1000/守1850
このカードを攻撃したモンスターは持ち主の手札に戻る。
ダメージ計算は適用する。
早めにデュエルに勝利し仲間を探しに行きたい遊戯はダメージ覚悟で「リフレクターホール」を使わせモンスターを減らす戦術に出た。
翻弄するエルフの剣士》に切り裂かれ白目を向くほどのダメージを受けるもなんとか敵モンスターを減らせた…と思ったらいつの間にかフィールドにいたモンスター
守備力がそこそこ高く更に攻撃をしたモンスターを手札に戻すという、遅延に特化した効果を持つ。
これで遊戯の追撃を防ぐという地味な活躍をした。


装備魔法
800ライフポイントを払い、自分の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。
ご存知禁止級汎用蘇生カード。
BIG1にとってイピリアやヨーウィなどの効果を再使用しつつ盤面展開もできる蘇生カードは重要だが、このカードのコストとして自ら削った800ライフが後々響くことに…。
なお当時は装備魔法のサーチやバウンス手段が少なかった為《死者蘇生》の下位互換のような扱いであった。


・死者への供物
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターを破壊する。
次の自分ドローフェイズをスキップする。
BIG1のデッキは攻撃力が低いモンスターが多くビートダウンには不向きである為、強力カードは魔法カードで始末する手段を取っている。
デメリットが重いものの遊戯の《有翼幻獣キマイラ》を破壊し十分に元を取っている。


・伝説の都アトランティス
フィールド魔法
このカード名はルール上「海」として扱う。
(1):フィールドの水属性モンスターの攻撃力・守備力は200アップする。
(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
お互いの手札・フィールドの水属性モンスターのレベルは1つ下がる。
・伝説のフィッシャーマン
効果モンスター
星5/水属性/戦士族/攻1850/守1600
(1):このカードがモンスターゾーンに存在し、フィールドに「海」が存在する限り、
このカードは魔法カードの効果を受けない。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在し、フィールドに「海」が存在する限り、
このカードは攻撃対象にされない。
(この効果が適用されたモンスターしか自分フィールドに存在しない状態での
相手の攻撃は自分への直接攻撃になる。)
乃亜編の終盤にBIG5として遊戯&城之内に挑んだ時に使用。
しかしこれらのカードを出した瞬間BIG2に意識を乗っ取られてしまった。
フィッシャーマンは先鋒として活躍、アトランティスは《カタパルト・タートル》のリリース無し召喚に活用された。


・絶対防御将軍
効果モンスター
星6/闇属性/戦士族/攻1550/守2500
このカードは召喚・反転召喚に成功した時、守備表示になる。
フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードは、
守備表示の状態で攻撃する事ができる。
その場合、攻撃力の数値を適用してダメージ計算を行う。
デッキマスター能力の説明の際のデモデュエルにおいてデッキマスターとして登場。
厳密には彼の使用カードではないがここに明記。
デッキマスター効果は「1000ライフポイントを支払うことで攻撃モンスターを破壊する」という、ソウルテイカーの亜種のような強力な効果(しかもターン制限無し)。
名セリフ「絶対防御バリアー!!」はこの時に発せられた。


・ヨーウィー
効果モンスター
星3/地属性/爬虫類族/攻500/守500
このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できず、
この効果を発動するターン、自分は1回しかモンスターを特殊召喚できない。
(1):このカード1体のみが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
次の相手ドローフェイズをスキップする。
コンビニ感覚でドローを封じるヤバイやつ。
これで遊戯の動きを封じただけでなく、返しのターンではデッキマスター能力のために生贄に捧げられ、大ダメージを与えた。
アニメでの効果は使用回数と特殊召喚制限がなく非常に強力なためOCG化はしないと思われていたが、2021年6月発売の「ANIMATION CHRONICLE 2021」でまさかのカード化となった。
さすがそのままでは強すぎるため特殊召喚制限とデュエル中の回数制限がついたが、それでも嫌がらせには十分であろう。
ちなみにアニメでもこいつの効果はデュエルで1度しか発動されておらず、また効果発動ターンでは特殊召喚は1度しかなされていないため、アニメでの使い方は忠実に再現可能である。


【未OCG化】


・虹蛇のエインガナ
効果モンスター
星7/水属性/海竜族/攻2200/守2400
このカードが墓地へ送られた時、相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。
パワー前振りすぎるやばいカード。どこからだろうとどんな方法だろうと、墓地に送れ《サンダー・ボルト》をぶちかます。
引いたBIG1も「これはいい!」と内心非常に喜んでいた。
能力値は低いが効果を考えれば十分にお釣りが出る。
ただしこのカードで一気に勝負を決めるのは「面白くない」などと言い出し、ドローしても手札に温存していた。
最終的に登場し遊戯を苦しめるも…。


・アシニグライ
効果モンスター
星3/風属性/鳥獣族/攻撃力600/守備力500
リバース:相手プレイヤーは手札を1枚捨てる。
このカードが戦闘で破壊された時、自分のデッキまたは手札から
「アシニグライ」を裏側守備表示で特殊召喚できる。
ハンデスするだけでなくボードアドバンテージまで維持できるこちらも優良カード。
BIG1の戦術はとにかく相手の動きを封じ、自分は展開を続けるという事に終止している。
ちなみにコイツ、手札に残ったものを含めて3体すべて登場していたりする。


・精霊王ルクランバ
効果モンスター
レベル8/闇属性/悪魔族/攻撃力1000/守備力2000
自分のライフが1000ポイント以上のダメージを受けた時、
このカードを手札から特殊召喚できる。
自分フィールド上に存在するこのカードをリリースして発動できる。
手札から攻撃力の合計が2000以下になるように手札からモンスターを特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
条件を緩くした代わりに能力は低いが、リリースすることでさらなる展開をすることが可能な《冥府の使者ゴーズ》。
しかも展開効果が誘発即時効果なので相手ターンでも使用可能な上に同名制限すらないという恐ろしいカード。
ついでに多くのリクルーターにも対応と隙が無さすぎる。
これで2枚目の《精霊王ルクランバ》と《幻影の壁》を召喚し、遊戯に絶望を与えた。
イラストは水木しげるの描いた同名の妖怪の妖怪画ほぼそのまんまという、ヨーウィーとは別な意味でOCG化へのハードルが高いモンスター。
なお、コイツの元ネタはオーストラリア先住民族の伝説に語られる同名の精霊王なのだが、ネット上には「全てのマラサイ(精霊の戦士)を束ねる存在である」くらいしか情報がない。「ルクランバ」で検索した場合このカードが真っ先に引っ掛かる。



【セリフ集(というか半分格言集)】


  • 「絶対防御将軍は自らがデッキマスターを兼ねているため、ライフコストを1000ポイント払うことでデッキマスター能力を発動。絶対防御バリアー!
デッキマスター能力説明の際に発した台詞。妙にノリノリである。


  • 「お前達は我らと入れ替わり、電脳世界でさまようことになるのだ!永遠になぁ!」「これは我々のお前達に対する復讐なのだよ!」
海馬だけでなく遊戯達にも復讐心を顕にするBIG1。
後のデュエル中とは違いかなり感情的になっている。
ちなみに5人揃っている場合は別にリーダーでもないのにBIG1が主に喋っている。口が回るために説明役に抜擢されたのだろうか。


  • 「ほう、クリボーに決めたのかね」「残念だが一度出現したデッキマスターを換えることは出来ない」
クリボーが勝手にデッキマスターになった事を弁明する遊戯に対し非常に言い放つ。
しかし後の描写的に途中でデッキマスターの入れ替えは可能なため、厳密にはこの台詞は間違いである。
だが「最初に選んだデッキマスターは変更出来ない」事を説明したのなら嘘ではない。
「デュエル中も変更できないとは言ってないが勝手に勘違いした」という道理が通るのである。
やり口が詐欺師のそれであるが、口先八丁で相手を騙すのはまさしく「妖怪」の面目躍如と言った所か。


  • 「お前の若い肉体でもう一度青春を謳歌するというのも一興だ」
遊戯の若い体を見て一言。
しかし遊戯の身体に入ってもあの髪型で格言を得意げに話す姿はシュールを通り越して奇妙である。


  • 「事前の調査は基本だからね。敵を知り、己を知らば百戦あやうからずというだろう? 」
遊戯を「お前の思考パターンが2種類あることは研究済みだ」と言った後の台詞。孫子の言葉である。
遊戯側も余り隠してはいなかったものの一般市民の素性まで調べ上げるBIG1の能力は破格である。
余談だがこの言葉は本来「敵だけでなく自分のことも把握しないと勝てない」という戒めの意味が強い。


  • 「ではお見せしよう、大人のデュエルを」
確かに相手の動きを阻害し自らは自由気ままに動くデュエルは強力で得意になるのもわかる。
尤もこれは「大人げないデュエル」とも言うのだが。
だが「若者」を見下しているというのはこの台詞からもわかるだろう。


  • 「事前の調査によれば、このような場合タイプBの遊戯の行動は八割以上の確率で先制攻撃を選択。
    怪しいと思っても手を出さざるを得ない*1その性格が命取りとなる。」
データに基づき戦術を建てるのが彼の基本戦術。
8割どころか10割と言っても過言ではない果敢な攻めをする遊戯だが、この時はBIG1の言う通りまずい事となった。


  • 「かつてルネッサンスイタリアの政治思想家は言った。勝ち続けるための条件は3つ。
    その1、チャンスを身に付けること。その2、技量を保有すること。その3、敵を自滅の道に誘い込むこと」
空気も読まず格言や知識を延々と話すBIG1だが、その言葉は他人の言葉とはいえ現状では的を射ているのがまた始末に悪い。
こうして遊戯を罠に嵌め、仲間の元に駆けつけたい彼を煽ったところで第99話は終了する。


  • 「ルネッサンスイタリアの政治思想家は言った。味方より敵を利用することこそ有益であると」
記念すべき第100話でもBIG1はフルスロットル。
事実彼のプレイ枚数はそう多くなく、ダメージソースもほぼ遊戯のモンスターの攻撃を跳ね返したものであった。


  • 「防御は攻撃より安易で強力な戦闘方式である。しかし、その目的は現状維持で消極的である。そう言った将軍もいたがね……現状維持ほど有効な戦闘はない。今にそれが分かる」
一件格言を好みその言葉のまま動いてばかりと思われがちなBIG1だが、彼なりの注釈を入れることもある。
こうすることで、兼ねての知識人に並んだつもりになっていたのだろうか……。
ただ実際問題、リクルーターやルクランバの効果で場をつなぎつつ徹底的にアドバンテージを取る彼の戦術は、OCGにおいても理にかなったものである。


  • 「せめてお前のデッキマスター能力を一度くらいは拝見したいものだがねぇ。まぁ所詮クリボーでは役不足だろうが」
自らのデッキマスター能力を有効的に使いこなすBIG1はその事で相手を挑発するが、海外の格言や知識を好んだ結果、日本語を誤用するというミスをするのであった。
役不足は本来「実力に比べて役割が軽いこと」を指す褒め言葉の意味であり、この場合正しいのは「力不足」である。
闇遊戯も次話で同じ間違いをしているので、メタ的に言うとこの場合は脚本家*2が勘違いしたまま他のスタッフも気付けなかったのかもしれない。
なお闇遊戯側は最終的に大下が役不足(力不足)と侮ったクリボーを絡めたカードコンビネーションで勝利している。
「クリボーを嘗めたデュエリストは敗北する」という情報は彼の元には届かなかったのだろう。


  • 「数の上での物量戦が戦いにおいて有効なのは、古今東西の兵法書に記されている。
    例えば、古代中国では『多兵に傷つくことなし』とあり、あるいはフランスでも『勝利は多兵に存す』という言葉が伝えられている。
    だがその一方、かのプロイセンの軍事理論家は『数の優勢というものは、勝利の要因の一つに過ぎない』との提言も残しているがね」
少しでも戦争ものを齧ったら常識と言わんがばかりに出てくる「質より量」。
そんな当たり前の事をわざわざ格言で説明する(しかも4つも)辺り彼の性格がわかる。
最後のだけは若干意味が違うが、これは自身のモンスターたちの効果の強力さ(=量だけでなく質も高い)ということだろうか。

ちなみに闇遊戯の有名なセリフ「うるさいぜ! 少し黙ってろ!」はこのセリフに対しての言葉である。
物量に押され、精神的にも疲労し吠えることしか出来ないまま第100話は終了する。


  • 「(エインガナを引いて)これはいい。攻撃力2200の一噛みは強烈だ。だが、エインガナの一撃でカタをつけたのでは面白みもない」
まだ勝利は確定していないのに舐めプに入るBIG1。
実はこの時エインガナを召喚するコストは揃っており、闇遊戯の伏せカードは皆無だった為出していれば勝てていた。
結果からするとクリボーのデッキマスター能力(攻撃無効)が残っていたが、後のデュエルの流れを考えた場合ここで攻撃していれば闇遊戯は負けていた。
恐らく彼がやってきた企業買収の相手は「妖怪」と呼ばれた手腕には手も足も出ず早々に諦めて、BIG1はそれらを弄んでいたのだろう。
しかし…。

  • 「何!?こいつ、まだ立ち上がる力があるのか!倒れていれば楽になれたものを…、立ち上がったのなら仕方ない!もう一度倒してやるまで!」
相手は不屈のデュエリスト。痛めつけても立ち上がる相手を見てBIG1は気合を入れ直す。
しかし一瞬の油断のせいで流れは確実に遊戯の方に移っており…。


  • 「絶望の淵にあるお前に希望の言葉をプレゼントしよう。かのプロイセンの将軍曰く、
    『栄冠は最後の勝利者に与えられるものだ。その経過がどうであれ最後に勝ったものが勝利者だ』
    頑張りたまえ。フハハハハハ!」
  • 「有利な時のピンチは勇気を奮起させるが、不利な時のピンチは気力を失わせる。
    お前の気力は大丈夫かな?あまり考えすぎるのも良くないようだぞ」
流れが変わったBIG1はまくし立てるように敵にアドバイスを送り出す。
一見励ましているように見えるが、結局の所知識をひけらかしてるようにしか見えないセリフ集。
自らがピンチだというのにそれでも自分のペースを崩さないようにする一連の行動はもしかしたら自分に言い聞かせていたのかもしれない。
だが、相手へのそのアドバイスは最悪の形で自分に降りかかることとなる。
そして一瞬の隙を突かれたBIG1は…。

  • 「お、おのれ…!もう少しで肉体を取り戻し元の世界に戻れる筈だったのに!うわあぁあ!!」
罵ったクリボーに逆転の一手を打たれ敗北するBIG1。
そして彼は3000年前のエジプト王からありがたい言葉をいただく事となる。


【王の格言とその末路】


  • 「アンタに言っておきたい事がある! いくら昔のありがたい言葉をたくさん知っていても、そんなのは自分の言葉じゃない。大人ならそれをちゃんと自分の言葉にしてから語ることだ」
  • 「『栄冠は最後の勝利者に与えられるものだ』……さっきアンタから聞いた言葉だ。今、オレはその言葉をオレ自身の言葉にしてアンタに返すぜ!」

そして宣言通り、闇遊戯は逆転を果たす。

こうしてBIG1は海(池)の藻屑となった。
しかし紛れもなく強敵だった彼の戦いを得て、遊戯は諸念を入れなおし、再び仲間たちを探すのであった。

強力なカードとデッキマスター効果を使い、アドバンテージを維持しつつ遊戯を少しずつ追い詰めていた。
微かな油断で負けはしたもののその実力(といやらしさ)は正にトップクラス。
しかしその後もプライドを捨ててまで他のBIG5と共にしつこく遊戯たちに挑むも、せっかくの出番はすぐエロペンギンに潰され、それ以降は何も出来ずに敗北。
結果的に他のBIG5もろとも情けない悲鳴を上げながら黒幕に消されてしまった。

ゲーム「遊戯王デュエルモンスターズ8破滅の大邪神」では乃愛編とはパラレルの設定になってるのか、普通にリストラされており、モクバに仕事をねだったところ着ぐるみの悪役としてカイバーマンショーのやられ役として働くこととなった。勿論BIG1の着ぐるみは深海の戦士。
それが幸せかどうかはわからないが消されたり、無職のままよりかはマシだろう。
なお、ネオグールズ事件の際にネオグールズに寝返ろうとしたが、失敗。再度リストラされてないか心配である。

なお彼が活躍したのは遊戯王DMの記念すべき100話目の事である。そういう意味でも印象に残る相手であった。



【余談】

  • 非常に嫌らしい性格とデュエルで遊戯を苦しめたBIG1。こんな奴が先鋒として出てくる乃亜編は余程の強敵揃いかと思われたが…?結果としてBIG5のデュエルの強さにはだいぶムラがあった。
    まあデュエルにあまり詳しくない杏子や静香まで狙われた上、オリジナルカードに加えてデッキマスター能力(に加えてさらにカード処理にイカサマを仕込める)という俺ルールの押し付けができる意味では5人とも十分脅威ではあったが。
    メタな話をするとアニメ上圧勝では面白くなく、追い詰められて反撃するなどの見せ場を作らないといけないので、実力者の遊戯や海馬の相手をしたBIG1とBIG5は比較的強く見え、素人の相手をしたBIG2とBIG4がイマイチに見えるのはやや仕方ない面もある。
  • なお先鋒BIG1大下はアニオリカードをフル活用しつつも見事に遊戯を追い詰めているが、一方で最後に登場したBIG5大門はOCGで比較的再現しやすい戦い方*3をしながら海馬を苦しめた。
    ついでに大門もOCGプレイヤー目線でプレイングにミスがあり、こちらは切り札を出し急いだ結果ライフを削りそこねて海馬に勝つチャンスを逃すという、
    使ったカードの種類に加えてこの点も切り札を出し渋って負けた大下と見事に対のようになっている。
    詳しくはBIG5を参照。
    • なおBIG1大下のように切り札を温存しておくことは、手札誘発(当時はほぼなかったが)や未知のカード効果等を警戒した上の安全策としては立派な戦術ではある。
      しかしBIG1が「全力を出して叩き潰さない」という選択肢を取ったのは「このまま攻めたらすぐに終わって面白くない」という自らの勝利を確信した慢心から来るもの。
      大下の行動は結果として勝機を逃し逆転負けをくらうことになるが、これはミスというよりかは自分の優位と勝ちを信じきった故の甘さというべきだろうか。
      どちらにせよ勝負師としての格は闇遊戯の方が上だった、ということだろう。
  • 名前の由来は、恐らく松下電器(現パナソニック)の創立者「松下 幸之助氏」。
    だがあくまで名前だけが由来で実際の松下氏とは何ら関係ない。








ルネッサンスイタリアの政治思想家は言った。追記・修正をする力があるのなら、積極的にそれを振るえと。


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最終更新:2024年04月16日 09:23

*1 アシニグライをセットのみ、場に他のカードはない状態。さすがにこのレベルだとOCGプレイヤーも罠を疑いつつも攻撃を選びそうな布陣ではあるが。

*2 BIG1登場話の担当は早川正氏

*3 デッキマスター能力で一方的に罠カードを封じるかなりのハンディマッチであるが