登録日:2020/06/19 Fri 01:32:03
更新日:2025/03/21 Fri 15:49:11
所要時間:約 17 分で読めます
●目次
プロフィール
所属:東洋電力(企業序列2位)
役職:会長
身長:171cm
体重:67kg
年齢:76歳
誕生日:8月5日
好きなこと:不明(記述なし)
嫌いなもの:つまらないジョーク(奇しくも
黒木玄斎と同じだが、彼との最大の違いは「面白ければOK」の文言が無いことである……)
CV:金尾哲夫
概要
拳願会参加企業の一つである東洋電力の会長。
拳願会最大派閥
「百人会」の頂点に君臨し、派閥の所属企業を服従させて
「次期拳願会会長に最も近い男」と称される人物。
現会長・片原滅堂を打倒する野心に燃え、数々の策謀を巡らせる。
若き頃は片原滅堂と手を組んでいたが、機を見て反旗を翻す。
しかし目論見が外れ、「制裁」の一環として滅堂の相棒的な存在である
呉恵利央に椅子に縛られ、そのまま薬液をかけられた過去がある。
風貌は白髪に口髭を蓄えた端正な老紳士だが、顔の左半分は「制裁」の影響でケロイドに覆われた異相。
速水ほどの財力の持ち主ならば高度な修復手術でそれなりに元通りにできそうだが、あえてそのままにしている事から滅堂と恵利央への恨み辛みを忘れないようにしている事が伝わってくる。
代表闘技者として、通称『モンスター』と呼ばれる禿頭の巨漢
ユリウス・ラインホルトを擁する。
人物
表面的には紳士然とした優雅な物腰だが、内心では他の企業も自分の部下も全てを捨て駒としか見ない傲慢かつ冷酷な野心家。
片原滅堂にすら劣らない強烈な覇気の持ち主で、初めて速水を目にした山下一夫はその重圧に戦慄し、鷹風切己や東郷とまりといった古強者たちはその傲慢な態度に反感をあらわにしていた。
――そして後述する理由(
ネタバレ注意)により、単に悪役というだけでなく、『
ケンガンアシュラ』作中においても屈指の危険人物だと言える。
他人の弱みに付け込み要求を通そうとするなど、滅堂にはない悪辣さも特徴で、最大派閥の長という立場とは裏腹に人望は皆無に等しい。
何のかんので他者との人間的な結びつきが多い滅堂に対して、速水が他人と関わる動機はただ利益のみ。
そもそも速水自身、他人をまったく信用していない様子なのでお互い様なのだが……。
配下
闘技者
CV:白熊寛嗣
身長:205cm
体重:210kg
拳願仕合戦績:51勝0敗
企業獲得資産:1兆6277億1100万円
年齢:36歳
誕生日:4月21日
好きな言葉:「デカい」「キレてる」
嫌いな言葉:「筋肉がつき過ぎたら困る」「細マッチョ」「スレンダー」ほか、多数
テーマ曲:SIRENT SCREEM「Future」
本編ではシリアス一辺倒な性格だが、番外編では常にパンツ一丁なことを指摘されていたり、ファミレスにプロティンを持ち込んだり、シルバーマンジムのCMに出演するなど
ネタキャラとしての要素が強くなっている。
CV:沢城千春
身長:174cm
体重:73kg
拳願仕合:初参戦
年齢:24歳
誕生日:1月12日
特技:動物に好かれること
好きな武将:徳川家康
テーマ曲:Silex「Standing On The Grave of Yesterday」
白夜新聞に送り込まれた配下。
耽美的な
イケメンだが露出度が高めなファッションを好むキザなナルシスト。
速水配下の闘技者の中でも中心的な人物で、正体は旧日本軍特殊部隊
「天狼衆」の長。独自に4人の配下を抱える。
流儀は日式中国拳法「天狼拳」。
白夜新聞の闘技者・武本久安を倒してその立場を奪い、白夜新聞社長・赤野鉄砂希を速水の傀儡にする。
拳法家としての実力も然ることながら、本領は自らが率いる天狼衆を用いた破壊工作や諜報などの隠密行動。
拳による高速のラッシュを繰り出す。
仰向けの状態から瞬時に倒立のような形で真上に蹴り上げる技。
天狼拳奥秘。
●両手を合わせた掌の中で超圧縮した空気を相手の至近距離で炸裂させ爆音で強制的に動きを止める「虚」
●背後に回り耳元で秘伝の呪詛を囁くことで瞬間的な催眠状態にする「幻」
●催眠で無防備となった相手に渾身の発勁を叩き込む「光」
という3つの技巧を組み合わせた複合技。
3つの工程を一瞬で全て行わねばならない性質上、申し合わせ有りの組稽古ですら発動するのは不可能と言われる超高難度を誇るが、片腕が破壊されていても使用できるという利点もある。
いわゆる発勁。単発で使うこともあるが「奇龍」のフィニッシュとしても使われる。
CV:川本宗幸
海一証券代表闘技者。
常に口から舌を垂らし、焦点の合わない血走った目にぼさぼさの蓬髪、ゴリラのような歩き方と、見るからに危険人物。
対戦相手は徹底的に痛めつけるサディストだが本性は生まれつき強い殺人衝動を抱える快楽
殺人鬼。
流派は
「柔道」。まごうことなき狂人だが精神面に反比例して柔道の力量はトーナメント参加者でもトップレベル。
二階堂と組んで暗躍する。
詳細は個別項目を参照。
黒コートにシルクハット、鳥のような仮面という出で立ちの殺し屋集団。
不法占拠地区の「
六蟲区」出身であり、速水の命で島に侵入する。
長剣、鎖鉄球、薙刀などを得物に護衛者二番隊・三番隊と優勢に戦うが援軍で現れた滅堂の息子・烈堂率いる「殲滅部隊」には歯が立たず叩きのめされた。
ニット帽を被った男。
『アグノスティックフロント』という名前で活動し、依頼と金を受け取りあらゆる汚れ仕事を内々に処理する裏の仕事人。
ストライカーとしての高い技量を持つが、格闘技だけでなく武器術も嗜んでいる。
トーナメント出場枠を狙って今井コスモを襲撃し、スタンガンを用いるが返り討ちに遭う。
金のためなら何でもする拝金主義者だが、奇人揃いの東電の襲撃組6人の中では一番の常識人で、単行本のおまけマンガでは、事前に他のメンバーと顔合わせした際は他が変人ばかりであることへのツッコミ役を担っていた。
全身に包帯を巻き、禍の字のマスクをつけている。
若槻を襲撃するが、
コンクリートに自身の身長の倍近い大きさのクレーターができるほどの一撃を食らって倒された。
無口だが、意外とフレンドリー。
顔下半分にドクロの様なマスクを着けた男。御雷零を襲撃するが、22秒で倒された。
しかしトーナメント1回戦をほぼ0秒で突破した超速攻型の零が倒すのに22秒もかかったことから、実はかなりの実力者だったのではと評されている(当初零は5秒で倒すと宣言していた)。
重度の
ゲーマーで、コミュ障気味。
企業関係者
速水傘下。あじろ水産社長。
代表闘技者である賀露吉成ともども、職人気質で豪快な漁師。
漁港を閉鎖されたくなければ東電の駒になれと脅され、不承不承従うが……。
速水傘下。大正7年に開村した拳願会唯一の財団法人・夜明けの村の村長。
思慮深く客観的な人物で、速水とは古い因縁がある。
村の土地を発電所開発で奪われる瀬戸際にあるなど網代と同様の立場で、敗北した賀露の身柄を引き受けようとするなど仁義に篤い男。
ちなみに夜明けの村は元は大規模農場だったが、現在は企業でも何でもない普通の村。
NENTENDO社長。頭部だけが丸く太った外見をしている。
商才はあるが根っからの小悪党で拳願会での地位復権に異常な執着を見せている。
自社の代表闘技者とすべく春男ことハルをスカウトして養子として迎え入れたが、春男がしょっちゅう暴れては家を壊すのが悩みの種になっている。トーナメントで春男が負けたことで春男を見捨てた。
実は速水と通じていた。
ボスバーガー社長で百人会のメンバーの一人。
某ハンバーガーショップのマスコットキャラクターとよく似た外見をしているが、
メイクではなく素顔。実はハンバーガーよりも
ラーメン好きという一面もある。
絶命トーナメントの代表闘技者として
「米国最強の喧嘩屋」パンク・アボットをスカウトすべくテキサス州を訪れたが、目の前でアダム・ダッドリーがパンク・アボットを破ったため、代わりにアダム・ダッドリーを自社の代表闘技者としてスカウトした。
栃木ディスティニーランド社長。野望の大きさに反して器は小さい。
夢の国とは程遠い外見をしており、本人も自覚しているため、各種行事には覆面を付けて参加している。
ディスティニーランドは東電の傘下に入っているが、網代や鎧塚と異なり「速水の背後に潜む者達」との
コネクションを得るために自らの意思で速水の下に付いていただけであり、速水のことも最終的には切り捨てるつもりでいた。
守護者
滅堂の「
護衛者」にあやかって速水が組織した私兵集団。
黒服の「護衛者」に対して、純白のスーツを制服とする。
編成されてから日は浅いものの、ランキング制を取り入れ守護者同士を競わせ、上位陣をランカーと称して厚遇することで練度を底上げしている。
ランキング1位。白髪にサングラスをかけた、傷だらけの顔の屈強な体格の男。
トーナメント中速水の護衛を務める守護者の片割れ。「人斬り軍司」の異名を持つ剣の達人で、かつて呉一族4人を殺害したほどの手練れ。
ランキング2位。セミロングの黒髪の人を食ったような笑みを浮かべた優男。
胸元に百足の刺青をしている。
青龍刀(柳葉刀)の扱いに熟達しており、ガオランをボクシングの間合いに入れさせないほどの手練れ。
ランキング3位。
鎖鎌使いだが戦闘で破損した場合に備えてクロスボウも常備している。部下に致命傷を負わせても表情一つ変えない冷徹な性格。
ランキング4位。レイピア使いだが徒手での戦闘も得意。
負傷していたとはいえ春男を一蹴するほどの実力者。
速水とは別の人物からの指示で「虎の器」である王馬の回収を指示されており、医務室襲撃の指揮をとるも山下商事の面々だけは見逃そうとした。
ランキング5位。薙刀使い。
師岡と共に雷庵を襲撃した。
ランキング7位。棍棒使い。部下とともにSH冷凍職員たちを襲撃した。
続編、
ケンガンオメガに登場する"新生・守護者"の筆頭。
棒術の使い手。
作中の活躍(以下ネタバレ)
作中において初登場したのは35話(コミックス5巻)で、拳願会における反滅堂派の指導者としてシルエットで現れた。同じ5巻の39話で顔と名前が明かされる以前から滅堂によるルール改正に乗じて
拳願絶命トーナメント参加枠を次々と奪い、滅堂の招集の場面では山下の前で彼の親友である義伊國屋書店会長・大屋健を支配下に置いたようにほのめかすなど、不穏な動きを見せる。
そして自らの代表闘技者のユリウスと王馬や理人とも絡みの多いメインキャラの一人である沢田慶三郎の仕合では、沢田の契約社長である戸川好子を、彼女の社員の生活を楯に脅迫して無理やり棄権させた他、
生まれついての殺人鬼である目黒正樹を少年時代に拾って手駒として育て、闘技者としてトーナメントに出場させたことが明らかになるなど、危険かつ悪辣な本性を次々と露わにしていく。
さらに、あじろ水産の賀露吉成、栃木ディスティニーランドの根津マサミなどの仕合を通じて、速水による蜘蛛の糸の如き悪意は次第に増大していく。とりわけ夜明けの村の
鎧塚サーパインの背後にある速水の思惑は、出場闘技者の中でも特に熱血漢で爽やかな彼の魂すらへし折るのみならず、罪もない大勢の一般市民の生活まで狂わせる、悪意とエゴに満ちたものだった。
具体的には、共に速水の駒である賀露とサーパインの八百長仕合――
それを賀露が八百長破りをする事となったのも、「八百長をするなら漁港の閉鎖をやめてやる」と取引を持ち掛けた速水が裏では行政とグルになって賀露たちの港を速水の帝国に作り変えることを企んでいたという絶望の内幕を知ったからだった。
速水の拘束を破ってまでサーパインに本気で挑み、それでもなおサーパインに敗れた賀露。
全ての破局を前にして、同じ速水の駒である鎧塚実光(夜明けの村村長)の勧めで逃亡したあじろ水産社長の網代光臨丸も、速水の手の者に捕らえられてしまう。
――そして何より恐ろしいのは、一連の事態はすべて速水にとって児戯に等しい余興に過ぎなかったことである。
賀露による八百長破りの後も、東洋電力から仕合中止の指示は来なかった。
ユリウスの仕合の時は即座にユリウスの勝利で仕合終了としていたのに、である。
それはつまり、速水勝正という男にとって「革命」は自身の野望の達成だけでなく、
自身の愉悦の手段でもあることを意味していた(このことを察した実光のモノローグのコマでは、悪魔のごとき笑みを浮かべる速水の画像が描かれている)。
民衆の生活も闘技者の尊厳も踏みにじるような速水のやり方に、実光は「……気にいらんのう。勝ちゃん」と、速水との古い因縁を匂わせつつ不快感を露わにしていた。
この辺りで、同じように傲慢かつ残酷であれども、民を治める「王」としての顔を見せる片原滅堂や挑戦者・改革者としての矜持を見せつける乃木英樹と、悪魔的な側面を持つ速水との決定的な違いが明らかになっていく。
その後も、二階堂率いる天狼衆、守護者、「メディスンマン」蕪木などを操り、トーナメントに湧く島内で怪しい動きを展開していく。
謎の侵入者を警戒する護衛者たちの動きすら、速水は全て見通していた。
同時に、怪しい仕事を強いる速水に対して天狼衆からは不信を抱かれ、一見従属したように見えた大屋からは「ありゃ脅迫だよ」と反感を露わにされるなど、人望の無さという点でも滅堂と対照的な姿が描かれていく(滅堂の場合、護衛者たちや
加納アギト、息子や娘たちからは、心からの忠誠や家族愛を向けられている)。
もっとも、後述する真意を考えれば、速水が人望を集めることは決して有り得ないだろうが……。
そして二回戦第三仕合。
ユリウスの対戦相手は三大派閥の一つ「四龍」の一社でもある拳願会の古参・古海製薬の代表闘技者にして拳願仕合歴代最多勝利数闘技者・若槻武士。
作中でも屈指の強者同士の先の読めない対決の中、ユリウスは――
まさかの敗退。
加納アギト、ガオランといった強豪がユリウスの勝利を予想する中の番狂わせは、同時に屈指の強豪企業・東洋電力の敗退でもあった。
数々の策謀を巡らせ、次期拳願会会長の座は盤石と思われていた中での代表闘技者敗北に、百人会脱退を表明する企業も現れ始める。
さらに速水が雇った大勢の殺し屋や始末屋も護衛者に掃討され、守護者の鬼頭すら速水を見限りかける。かくて速水の野望は頓挫したかに見えたが――
拳願絶命トーナメント二回戦が終了し、十鬼蛇王馬が昏睡状態、
加納アギトが薄氷の勝利に苦悩し、
激戦を潜り抜けた闘技者たちも大なり小なり傷を負う中――
コミックス21巻、第174話に「それ」は起こった。
その日の午後、既にトーナメント敗退が決まった闘技者たちを擁する(理人、檜山、高田を除く)主要な拳願会会員である社長たちは、第2VIPルームに集められていた。
当初は敗者復活戦の話ではと思われたが、三回戦進出を決めていた西品治が呼ばれていたことや、彼らは皆、「片原会長の使者に呼ばれただけだ」と言い、誰も状況を把握していなかった。
最後に現れた滅堂は、一同の顔を見て言った。
どうしたんじゃ皆の衆? なんぞ催しでも始まるんかの?
なんと滅堂すらも状況を把握しないまま、その場を訪れたのだ。
それを知って、元闘技者である禍谷重蔵と武人である太宰由紀夫は即座に罠を悟るが――
その場に現れたのは白スーツの守護者の大群。
そして悠然と笑う速水の姿だった。
滅堂を守ろうと進み出た護衛者・淀江は、乱入した男により一撃で倒される。
すなわち、かつて彼自身があっさり倒した「アラブの旋風」ハサドの手によって。
ハサドもまた、速水についていたのだ。
VIPルームの外では剣や槍で武装した守護者の部隊が拳願ドームの制圧に動き、負傷した闘技者たちに次々と襲いかかる。
さらに速水に従う守護者の一人が見せた
パソコンには、捕獲された網代たち元速水派の社長たちが首にナイフを突きつけられた姿が映っていた。
即刻、トーナメントの中止を宣言し、会長職を辞任するのだ。
速水は、武力蜂起によるクーデターと、それを元にした会長の地位の強引な奪取を最終目的としていた。
それは、自分の配下の闘技者たちが次々と敗退し、直属の闘技者であるユリウスまで敗れても速水が微塵も動揺しなかった理由でもあった。
なにしろ最初から、「滅堂主催のトーナメント」をぶち壊し、自分の主催するトーナメントを改めて行うつもりだったのだから、滅堂のトーナメントで敗れようと痛くも痒くもなかったのだった。
……そしてそれは、闘技者として忠実に戦ったユリウスですら捨て駒に過ぎないことをも意味していた。
当然、滅堂は「嫌じゃと言ったら?」と問うが、それに対する速水の回答は常軌を逸していた。
船で「願流島」を訪れ、拳願ドームに滞在している会員達は2000人以上(4巻25話)。それも日本を代表する大企業の経営者たちである。
さらには、アメリカ大統領、ロシア首相など世界各国の首脳たちまで勢揃いしていた。
その彼らを速水は全員爆殺すると言ったのだ。
想像してもらいたい。アメリカやロシアの首脳、そして日本の大企業の社長2000人がまとめて死亡した結果を。
未曾有の大混乱が世界的に起こり、戦争も勃発、経済的な影響もあって数知れない人々が命を落とすことは容易に推測できる。
それを
「微々たる犠牲を恐れて、王座が獲れるか」と笑いながら言ってのける速水は、作中のどんな暗殺者・殺人鬼・狂人よりも恐ろしく、かつイカれた
悪魔的人物であることは間違いないだろう。
こんな男が拳願会会長となり、日本経済を牛耳る立場に立ったとしたら、恐ろしい世の中が来るのではないだろうか。
メタ的にも、「拳願絶命トーナメント」という、『
ケンガンアシュラ』の作品の主題である格闘トーナメントそのものを破壊しようと目論む、最凶のヒールかつ
トリックスターであるとも言える。
もしも速水のクーデターが成功していた場合トーナメントはその場で終わり、作品自体も
「勝ったッ! ケンガンアシュラ完!」となっていたわけである。
しかし速水と協力関係にあったNENTENDO社長の河野秋男とボスバーガー社長のロナルド原口を除いた会員達は義武を筆頭に速水の要求をきっぱりと拒否し、かつての忠臣の息子で自身の最大限の配慮として呼んでいた西品治も、忠臣だった父を自身の傀儡だった瓜田(ペナソニック社長)の父に始末させた(実行犯は因幡良の父)こともあり他の会員達と共に要求を拒否した。
……そして一連の速水の長広舌は、滅堂が「偶然」持っていたレコーダーですべて録音されていた。
当然その場は守護者に包囲されており、滅堂に脱出の手段などないはずだったが、次の瞬間、ドームの屋根を破って
呉一族の精鋭50名が降り立った。
ドームの外では呉一族の最凶戦士・雷庵が暴れ回り、さらには負傷したとはいえ闘技者たちも守護者を押し返し始める。
黒木玄斎、
加納アギト、速水の裏切りを知り怒り心頭のユリウス、昏睡から醒めた王馬といった最強クラスの戦士たちが滅堂側で戦い始めたことも大きかった。
それでもなお、王馬と同じ「前借り」を使う龍旼と蘭城が現れ、爆弾の起爆装置が存在しないことが(速水の内心の独白によって)明かされるなど、危機は去らない。
速水は、滅堂が屈服しようとしまいと、拳願会員も各国首脳も、全て灰燼に帰すつもりだったのだ。
しかしついに転機が訪れる。
分断されていたはずの護衛者が全隊集合し、さらには滅堂がグルカ兵、出場しなかった闘技者、出場選手の師匠といった助っ人を大勢呼んでいたことも明らかになる。
守護者ランカー達もランキング3位の師岡と5位の茂呂は戦闘の末に雷庵に殺害され、ランキング4位の蘭城も互いに前借りを使った末に王馬に倒され、7位の大郷に至っては、闘技者達を追い詰めた先が最凶の死刑囚・坂東が拘束されていた部屋であり、いつの間にか拘束を解いていた坂東に頭蓋骨を叩き割られて殺害されるというある意味一番悲惨な目にあっていた。
速水に一方的にしてやられっ放しで終わるほど、片原滅堂は甘くはないのだった。
そして守護者ランキング1位の鬼頭が護衛者でかつての「牙」候補だった鷹山と戦って敗れ、速水の
スパイだったはずのハサドと蕪木が実は乃木が買収していたダブル
スパイだと判明したことで、速水の敗北は決定的となる。
最大の切り札である爆弾も、速水が天狼衆を切り捨てていたことを蕪木が彼らに伝えたことで、元々速水に不信感を抱いていた天狼衆が解除していた。
滅堂の周到さについに激昂する速水だったが、滅堂の告げた事実はさらに冷酷なものだった。
滅堂「何か勘違いしとるようじゃが、ハサド君を雇ったのはワシじゃないぞい?」
速水「あんな若造が、この速水を出し抜いたというのか!?」
滅堂は、「個人の力ならワシを上回るかもしれん」と、速水を讃えた。
最終的には敗北したとはいえ、クーデターを起こした速水の実行力は本物だった。
しかし、その強大な力に溺れるあまり、格下の人間や部下に足をすくわれた。
結果として人望の無さが速水の最大の敗因となったといえるだろう。
滅堂の嘲笑に無念の形相を浮かべた速水は牢獄に送られた。
速水派として協力させられていた経営者のうち、正闘技者を倒されて速水配下の二階堂と目黒を雇わざるを得なかった白夜新聞と海一証券、脅迫によって無理矢理協力させられていたあじろ水産と夜明けの村は協力を強制されただけとしてお咎めなしとなったが、速水に協力することでその背後に潜む者達とのパイプを得ようと企てていた栃木ディスティニーランド社長は処分を受けることとなり、速水と共犯関係(
スパイ)にあったNENTENDO社長の河野は失脚することとなった(河野と同じ立場だったボスバーガー社長のロナルド原口は不明)。
ちなみに守護者ランカーの中で6位の者だけが未登場だったが、単行本のキャラ紹介によると、6位は福部という剣術使いで、絶命トーナメント開催中は食あたりで入院していたため、島に来ることができず、クーデターにも参加しないまま無傷で生存したとのこと。
かくて無事、拳願絶命トーナメントは再開された。
PM4:44に始まったクーデターはPM6:28に鎮圧。
結果として、明智光秀の三日天下ならぬ速水勝正の二時間天下という結末に終わったのだった。
舞台裏
いかに優秀かつ強大な権力を持つとはいえ、速水がなぜ捨て身といえるクーデターを起こしたのか。
その理由は、秘密組織「
蟲」にあった。
- クーデターの最中に王馬たちが遭遇した、「前借り」を使える龍旼と蘭城の2人の守護者たち。
- かつて王馬に「前借り」の力を与えた、「本物の二虎」を名乗る謎の男。
- 二回戦後に龍旼から「我が主から内々に話がある」と接触を受け、以後登場することなく出番を終えた速水以上の野心家として知られる十王通信社長・高田清助。
- 蘭城が王馬を指して言った「虎の器」なる謎の言葉。
- 最終巻にて、拘束されていた蘭城と島内を逃亡していた龍旼がそれぞれ何者かに暗殺され、
- 最後の場面、香港に現れた謎の三人の男たち――。
それらの謎が明かされるまでは、速水の真意も完全に明かされたとは言えないのかもしれない。
その謎は、続編『
ケンガンオメガ』に引き継がれることとなる。
ケンガンオメガ
「昨日のデモンストレーション」は見ものだったろう?
ケンガンオメガ第45話にて再登場を果たす。
仮にも各国首脳の命まで狙っておきながら社会的抹殺もされず、巨大な豪邸に居を構え、勢力は衰えたものの依然として無視できない影響力を保持していることが明らかになった。
拳願会と
煉獄との対抗戦で人材不足で窮する山下に対して速水は、自らの息子で目黒正樹の弟とされる
速水正樹を闘技者として派遣し、正樹が勝利した時に拳願会副会長の座を得ることを条件に協力しても良いと告げる。
「貴方に頼ることだけは避けたかったです」と苦い表情の山下に、
「だが、頼らざるを得ない。そうだろう?」と邪悪な笑みで言うなど、相変わらず悪魔的な性格は健在の模様。
「蟲」とどういう接点があるのかも、現時点(2020年8月)ではまだ明かされていないが、
- 「蟲」が器官培養された王馬の心臓を保有していた。
- 王馬と瓜二つの顔と王馬の師匠の師匠と同じ名前を持つ臥王龍鬼の存在。
- 拳願会所属企業や採用部門関係者に成りすました「蟲」の構成員。
- 王馬の心臓や龍鬼、速水正樹の存在から滅堂は「蟲」がクローン技術を確立していることや、速水がその技術提供を受けている可能性を疑う。
- 滅堂の予想通り「蟲」のクローン技術を利用して目黒のクローンである速水正樹を生み出す。
etc…
そして対抗戦にて速水正樹は煉獄トップクラスの闘士である
嵐山十郎太に勝利したが、これにより一夫との事前取引どおり、
事実上速水勝正の拳願会副会長就任がほぼ決定してしまい、拳願会は新たな火種を抱えることとなる…
そんな正樹だが、試合後に
光我から事前に預けていた
イヤホンを返してもらい再び耳に入れ、大きなダメージを理由に医務室へ向かった。
…しかし拳願会の者達が知らぬ所で、
父・勝正の手によって、
完成したッッ
完成したぞッッ!!
私を利用した気でいた蟲共!!!!
勝ったのは私だ!!!!
「貴様らの技術」で私は手に入れた!!!!
最強の兵を!!!!
そうほくそ笑んでいた勝正は非人道的な仕掛けを正樹に施していた。
ここで読者に向けてイヤホンから流れているものが明らかにされる。
その正体は生前の目黒正樹の半生の独白でこの独白は延々と繰り返される仕組みになっている。
つまり勝正が秘密裏に行っていたのは、
目黒正樹の半生の独白を何度も何度も正樹に繰り返し吹き込むというもの。
これは3つに分かれた呉氏の分家の一つにして「蟲」の協力者、征西派にのみ引き継がれている秘伝の術
「回生」そのもの。
この
「回生」という秘術の詳しい概要は
呉一族の項目に譲るが、簡単に説明すると、語り部が自身の半生を聞き手の人間に数十年かけて何度も繰り返し吹き込み聞き手に自身の記憶と人格を植え付ける洗脳術。
つまり勝正はケンガンオメガ開始前から
知らぬ間に「目黒正樹」という人格を正樹に埋め込んでいたのだ。
何故まともな思考を持つ正樹に目黒の記憶と凶暴性を回生で植え付けたのか。
それはクローン元の目黒が持っていた、ダメージを快楽に転化する特異体質を「覚醒」させるため。
目黒と違い脳に手術を施していないため、能力は劣るが、その分理性を保っているため制御はオリジナル以上に利くようになっている。
未だ多くの伏線が残っているため、今後もその動向が注目される人物であったのだが…
そして対抗戦終了後、呉恵利央の訃報を聞き心の底から喜んだ。
もはや邪魔者はいなくなった!!!!
最後に笑うのは私だッッ!!!
そんな舞い上がる勝正の前に、
思わぬ人物が突如、立ち塞がった。
速水正樹である。
父さん、もう諦めましょう。
貴方は何も手に入れることはない。
父さんは糞虫だ。
あ!誤解しないで!父さんの事は尊敬しているよ?
経営者としての手腕は、すごいと思ってる。
だけど父さんはやりすぎだよ。貴方がいたら拳願会の為にならない。
立ちはだかった正樹を「調整」する為、"新生・守護者"の筆頭である恋山形を差し向けた。
…が、最終的に恋山形は、首を180度捻じ曲げられてしまう。
怒りに震える勝正だが、こうした事態を考えて「最終手段」を正樹に仕掛けていた。
何とこの男、仮にも息子である正樹に頭部と左胸の2か所に爆弾を仕掛けていた。
それを作動させ、正樹を殺害しようとするが…
あ、無駄ですよ。
爆弾は、除去してあるんで。
この言葉を聞いた勝正は、動きが一瞬固まった。
しかし、この「爆弾を除去した」という発言は、事前に「親切なお姉さん」から、爆弾の存在と父の本性を教えてもらった正樹が隙を作るためについた嘘で爆弾はそのままだった。
まんまと術中に嵌った勝正は隙を突かれて顔面を鷲掴みされ、起爆用のタブレットを右手ごと握り潰された。
「最終手段」も使えなくなり万事休すとなった速水は、正樹を説得しようとする。
正樹……ッお前は誤解をしている!!
私はただ――
父さんこそ僕達を誤解しているよ。
今さら本人には聞けないけど、
兄さんがああなったのは父さんのせいじゃないと思うなあ。
この言葉から、勝正は目黒正樹、及びそのクローンである速水正樹が、狂気にまみれた人の形の化け物であることにようやく気付いたのだった。
そして勝正はそのまま、血の涙を流す正樹に顔面を握り潰され、上半身を折られながら後頭部を地面にたたきつけられ、死亡。
拳願会が抱えた火種は人知れず灰となった。
そして、正樹に助言した「親切なお姉さん」であり、勝正の娘である倉吉理乃は舞台袖から父親である勝正の死を目の当たりにした後、勝正が目黒を家に迎えた頃を少し思い返した後、涙一粒流さずに無表情でその場を去って行った…
勝正の死は表向きでは事故死になっている。殺害の罪は、蟲に押し付けられた。
- 格闘技マンガでスポンサー側の人物の項目がこれほど早く立つのは意外だが、そこはケンガン、充分濃いものに仕上がっている -- 名無しさん (2020-06-19 05:15:13)
- 速水君は天狼衆と連絡がつかないといわれて、別にいいやとか言っちゃう適当さを何とかしない限り、本当の脅威にはなれないと思う -- 名無しさん (2020-06-19 10:39:11)
- 蓋を開けてみればユリウス、サーパインしか二回戦に進出出来ず、革命も手駒にことごとく裏切れる形で失敗、滅堂どころか乃木にすら見破られる…正直あまり良いところがない -- 名無しさん (2020-06-19 21:29:25)
- 倉吉理乃は実娘らしいけどやっぱり愛人に産ませたのかな? -- 名無しさん (2020-06-20 14:09:42)
- 速水自身が理乃の母親にたぶらかされたオスの一匹に過ぎなかったのかもしれない。それを恨んでるから同じDNAを継ぐ娘にも冷淡とか -- 名無しさん (2020-06-20 15:54:24)
- 本編ではシリアス一辺倒な極悪非道な勝ちゃんもおまけ漫画だとツッコミに回る -- (2020-06-26 23:29:37)
- 呉氏の回生もどきみたいな事もやってて、蟲を利用したと思ったら、やっぱり手の平みたいな事になってそう。やっぱり、人の上に立つ器じゃないな、この人。 -- 名無しさん (2021-04-02 10:30:20)
- ↑2 おまけ漫画でユリウスに「(目黒、二階堂、阿久以外の)2人(マスクの人と禍の人)の名前って何だっけ?」って聞くのが唯一のギャグシーンなんだよな。 -- 名無しさん (2021-07-28 14:45:56)
- 予想の数倍糞虫だった。ここまでクズだとあの結末も残当 -- 名無しさん (2022-02-10 20:02:53)
- 「父さんがいなくてもなんとかなるって」と言っておられるが、そのお父さんがいるから東洋電力もここまで大きくなって、君も生まれたんだよなぁ、、、、やはり拳願会とは別に自分の存在意義の為に鞍替えしたな?今後も拳願会に仇なす敵を片付けながら、殺し楽しみそう -- 名無しさん (2022-02-18 00:26:11)
- ↑ いなくなった後の話に、「そのお父さんがいるから~」は全然関係なくね? 忘恩の徒って話でもないな、単なるパパの自業自得 -- 名無しさん (2022-04-21 16:15:29)
- 勝手にクローンとして誕生させた息子に、あろうことか爆弾なんて埋め込むような糞虫なので、その息子に殺されるのは残念でもないし当然の末路。奴が居なくてもなんとかなると言うか、むしろ居ない方がマシとしか言いようがない -- 名無しさん (2022-11-28 21:14:24)
- 勝正の生地で知らぬ間にだと違和感あるなぁ。 -- 名無しさん (2023-02-19 17:10:39)
- 中の人が水星の魔女のグエルパパと同じことに最近気付いた… -- 名無しさん (2023-06-23 20:07:27)
- ついにアニメでクーデターが描かれたけど、速水が原作より小物になってた。原作ではまだ余裕を見せてた段階で動揺してた。あと起爆装置が手動になってた -- 名無しさん (2023-09-22 22:12:04)
- ↑2 -- 名無しさん (2024-06-23 06:44:48)
- ミスった↑2 中の人が同じな上に会長の座を狙ってクーデター実行(但し失敗)、息子に殺害されるなど妙な共通点があったり -- 名無しさん (2024-06-23 06:48:48)
- なんか大物感だして色々策略練ってる黒幕みたいな雰囲気だったけど、この人の策全然上手くいってないよね。トーナメントの枠もわざわざも脅したり奪ったりしても二回戦で全滅してるし本来そこで終わり。そしてクーデター起こしても時間にしたらめっちゃ短い時間で鎮圧されてる。ユリウスや天狼衆を切り捨てたの悪手でしょ、優秀な手駒失ってもいくらでも替えがきくって言ってるけど絶対あいつらの代わりなんてそうそういないでしょ。あの切り捨て癖直さないといけなかった。切り捨てた人材も敵に回す事考えてないのか?あと目黒を切り札にしようとしてたけど正直微妙じゃない?目黒ってそこまで飛び抜けて強いわけじゃなかった気がするけど、戦力としてそんな強力とは思えないからこれで返り咲こうとしてたの結構甘い計算じゃない? -- 名無しさん (2024-12-13 23:08:53)
- 目黒は嵐山から将来的に自分の脅威になり得ると評価される天才だから順当に育っていれば戦力になったはずだ。それはそれとして速水の見込みが甘いところがあるのは事実だけど -- 名無しさん (2025-01-21 03:11:16)
最終更新:2025年03月21日 15:49