禁止カード(レガシー)

登録日:2017/03/20 Mon 22:23:38
更新日:2025/04/24 Thu 09:56:21
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ここではMagic the Gatheringの公式フォーマットの一つ、レガシーにおける禁止カードについて述べる。


レガシーの禁止カードについて

禁止方針は「2ターン目に確実に決まるコンボを消す」と「環境の多様性の確保」である。
ただ、エターナルの多様性とは「青(と無色)が強い」を大前提とした多様性であることに注意。
また、他の環境、特にヴィンテージで使えないカードを存分に使わせるという目的もあるため、
カードプールが広い程強くなる傾向のある潤滑油系のカードはよほど環境に悪影響を与えない限りそれらのカードは規制されない。
特にヴィンテージでは制限カードになっている《渦まく知識》《思案》《ライオンの瞳のダイアモンド》などが好例で、禁止を求める声が高くなると時折公式から公言される。

レガシーがType1.5*1からレガシーに移行するにあたり、Tyep-1から禁止を引継ぎ、更に追加の禁止が行われたことに加え、
その後もカードプールの広いエターナルとあって案の定禁止カードが多い。というかその他エターナル含めても最多
使用制限カードと考えてもヴィンテージの制限カードより多い。
とはいえそれだけやった甲斐あって環境自体はそれなりに安定しており、エターナルの中では参入しやすい方。ただし青が中心の環境であり、また良くも悪くもメタゲームが動きにくい。

……というのはもはや過去の話であり、モダンホライゾンや統率者セットといった「スタンでの使用を度外視し、パワーを底上げしたカード」がしばしば環境を荒らしては禁止指定されるようになっている。
また禁止指定はよほどぶっ壊れたコンボパーツでない限り「様子見」の時間をかなり長く取ることが多く、特に環境に圧を与えるタイプはなかなか規制されない*2という特徴もある。
「レガシーは限界集落」とネタにされる時期は大体この手のカードが暴れてしまった時で、「規制された時にはもうカードを売った後だった」なんてこともしばしば。

+ 余談:レガシーというフォーマットについて
レガシーとヴィンテージは「エターナル構築フォーマット」というレギュレーションに分類されるフォーマットであり、スタンダードやパイオニア、モダン、(現在は公式サポートを終えた)エクステンデッド、(同じく)ブロック構築が属する「構築フォーマット」とは別所属である。
ローテーションが無く、かつモダンやパイオニアと違ってそのカードが使用可能かを収録セットでは問わないのが特徴。
そんなエターナルの一角を担うレガシーというフォーマットの成立は、実は2004年のことである。意外と新しいフォーマットなのだ。

かつてレガシーはType1.5(Type1=ヴィンテージとType2=スタンダードの中間の意味)と呼ばれていた。
そこでの禁止カードは「Type1の制限は自動的にType1.5の禁止に」というものすごく大雑把なもので、その事情もType1側に引きずられるというものだった。
一応「Type1.5専用の禁止カード」もあったが、その基準も微妙なもので「ヴィンテージでは大丈夫だがレガシーでは危険なカード」が4枚使えたり、「ヴィンテージでは危険だがレガシーでは問題ないカード」が禁止されていたりしていた。
前者の例としては「クリーチャーデッキが一線級なのに4枚使えてしまう《頭蓋骨絞め》」、後者の例は「2004年1月にType1で制限入りしたせいで禁止されたが、9ケ月後にレガシーに移行して禁止解除になった《ライオンの瞳のダイヤモンド》」辺り。
2004年にType1.5が廃止されて、それを引き継ぐレガシーというフォーマットが新しく制定され、そのフォーマット内で独自の禁止カードが定められたことで、オーバーパワーなカードの多くが規制され環境も秩序を取り戻した。
同時にType1はヴィンテージという名前に変わり、以降は《渦まく知識》《ライオンの瞳のダイヤモンド》などの規制(レガシーでは両方とも4枚使用可能、また《思案》はヴィンテージでも制限解除された)なども進み、すっかり別のフォーマットである。

制定当初のレガシーの隆盛は皆の知るところであり、特に2010年前後は「東京では毎日どこかの店でレガシーの大会が開かれている」といわれるほどのレガシーブームだった。
これはまだモダンというフォーマットが制定されていないこと、カードが今に比べると非常に安かったこと、そして遊戯王をはじめとした他TCGからの移行者がスタン落ちを嫌ってレガシーに参入したことなどもあり、
カジュアルプレイヤーからガチガチな意識高い系のスパイクまで様々なプレイヤーがしのぎを削っていたことも由来する。お遊び要素を入れたデッキ「甲鱗BTB」「七英雄Zoo」「続唱《誘導路》」「○○ストンピィ*3」といった話もよく聞いたものだった。
カードもまだまだ安かった時期で、青絡みのデュアルランドで最も高額だった《Underground Sea》ですら13000円ちょっとで入手できたので大学生でもバイトを頑張ればかなり良質なデッキが組める。メタの変遷が遅いこともあり、デュアルランドと一部のレアカードさえどうにかできれば一生遊べるフォーマットとまで言われた。
さらに《不毛の大地》の存在が単色デッキを肯定してくれたことや、特に青単や黒単のように根強いファンのいる単色デッキが存在していたことなどもあり、安いデッキだと1~3万円で始めることすらできたのである。
そしてレガシーのオールスター的なデッキである【チームアメリカ】【サバイバル】【カナスレ】【Zoo】【ヘルムヴォイド】のようなデッキから、
他の環境ではまず見られないような個性派デッキの【土地単】【多色BTB】【マナレスドレッジ】【黒単コントロール】【スタックス】、
往時のスタンダードのデッキをレガシー基準で強化・調整したような【エルフ】【親和】【白ウィニー】【ハイタイド】【ランドスティル】【ステイシス】等々、
まさにMTGというゲームの話題になったデッキの梁山泊であり、さらにここに懐古要素として「【カウンターポスト】に寄せたデッキ」「【(旧)ファイアーズ】要素を突っ込んだデッキ」「フィニッシャーを懐かしの《虹のイフリート》にした青単」「《集団意識》対策の《Word of Command》でサイドボードとルールの深淵を覗いてくる(現在は不可能)」なんてお試しを兼ねたお遊びまで加えるのだ。
当時の盛り上がりはものすごいものがあり、特にミラディンの傷跡期前半はスタンダードと同等の盛り上がりを見せ、往時の名プレイヤーである黒田正城や高橋優太が公式サイトで記事を連載していた。
なんと海外のレガシー勢が遠征したり、それどころかレガシーを好きな日にやりたいがために引っ越しすることすらあったほど。
2015年には日本でもアジア初のレガシーのグランプリが開催された。

しかしその後は「(レガシーに比べて)安く始められる上に競技フォーマット」であるモダンの登場・流行や、新しいカジュアルフォーマットの統率者戦の大流行、一時期の環境の膠着化(特に当項目で紹介されるカードは「環境が膠着化してメスが入る」ことが多い)、
さらに時を下ってパイオニアやMTGA限定フォーマットの制定、一部カードの異常なレベルの高騰、これらのカード的な事情のほかにも高額化や不況、高齢化などに伴うプレイヤーの減少などもあってかなり先細ってしまっているのが現実。
テーブルトップのプレイヤーに人気が高く、noteなどでも戦果報告を兼ねた戦略記事が掲載されるようなフォーマットだが、現在の実際の主戦場はデジタルゲームのMO。これはカードの高額化が比較的抑えられており、暇な時間にいつでもプレイすることができるため。
だがここ最近は多人数戦用のセットやユニバースビヨンド、Unfinityといった特殊なカードが増えてしまい、MOでは「環境を定義づける一部のカードが未実装なのでメタが異なる(=メタの一角がごっそり存在しないので研究が成り立たなかった)」という状態が長く続いており、かなり複雑な様相を呈している。
最近は割と持ち直しているようだが、一時期はフォーマット自体が「限界集落*4」「対人メタや時間メタ*5が成り立つ」と揶揄されるほど人口が少なかった時期すらあった。

他にも黒枠でも使える初のジョークセットである「Unfinity」のカードが【ステッカー】系こそ禁止になったがまだメタの一角を占めており、これらのカードを軸にしたデッキが存在しないMOとメタが異なっているという、
「サイコロを振ってランダム性と向き合う」「MOのメタ研究がテーブルトップで役に立たない(逆もまた然り)」という、レガシーでは今まで起こらなかった非常に奇妙な事態まで起きてしまっている。
現在はカードの高額化も相まってエターナルの中でもかなり参入ハードルが高く、「モダン」「統率者」「パイオニア」「Pauper」などフォーマットが増えたこともあって、大会が行われる頻度もすっかり減ってしまった。2010年頃は本当に盛り上がってたんだけどね……。

これらの諸問題で人口が減っていることに加え、カードの高騰や品薄という参入ハードルの高さ、他のフォーマットの制定などもあり、2022年時点では競技フォーマットとして採用されることは皆無に近い。
往時の盛り上がりを知っていると「かなり落ち着いてしまった」という印象は否めない。今後は「スタン落ちしないフォーマット」の役割はモダンやパイオニアあたりが担っていくようになるだろう。

競技志向の強いプレイヤーが好む傾向からかなりお堅い印象を受けるが、むしろその競技志向の高さゆえに面白い評価を持つカードが多い
たとえば「Unfinity」で登場した《Comet, Stellar Pup(星の子犬、コメット)》がレガシーの定番カードになったり、アトラクションやステッカーが真面目な需要を持ったり。
神河統率者デッキで登場したエヴァンゲリヲンこと《開闢機関、勝利械》が非常にまじめな理由で青白コントロールに積まれたり。
多人数戦用のカードやジョークに片足を突っ込んだカードが使えるという特殊な環境の都合、「勝ちを突き詰めた結果、他環境では考えられないようなものに光が当たる」というレガシーならではの面白い話題も多い。
再録禁止問題がスムーズに片付けば、また往時の輝きを取り戻せるかもしれない。


禁止カード一覧

Type1.5からの引継ぎ組

  • アンティ関連のカードや別ゲー化するカード等の、ヴィンテージでも禁止カードとなっているカード
詳しくはヴィンテージの項に譲るが、どれも法的な問題があったりルールを根本的に反する問題児、要は『おい、MtGしろよ』と言いたくなるカードばかり。

黎明期の壊れカード。《Black Lotus》《Mox Pearl》《Mox Sapphire》《Mox Jet》《Mox Ruby》《Mox Emerald》《Ancestral Recall》《Time Walk》《Timetwister》の9枚であり、アーティファクト6枚・青3枚の大変バランスの悪い陣容を誇る、ある意味MtGを象徴するカード群。
たまにGPのサイドイベントで行われる「禁止解除レガシー」でもP9は禁止枠に入ったまま。それほどに別格である。

通称"イカリング"。1マナで出せるデメリットなしの2マナアーティファクト。カードパワーもイカれてます。
パワー9でないのはこのカードがアンコモンだから」と言わしめた。
統率者戦では必須カードであり、「統率者戦のデッキは統率者+《太陽の指輪》+その他98枚」とまで言われる程。
まあそのおかげで統率者戦デッキには必ず再録されており、凶悪なカードパワーとは裏腹に「リバイズド・エディション(3ED)」版以降であれば500円、「統率者(CMD)」のイラスト*6であれば50円で買えるほど安かったりする。

  • 《魔力の墓所/Mana Crypt》
デメリットはあるがこっちは0マナで出せる2マナアーティファクト。
統率者戦では上記イカリング共々必須と言える一枚だが、こっちはイカリングと違ってやや値が張る。
はるか昔に小説付録のプロモーションカードとして出たという異色のカードでもある。
日本語名の獲得はそれらから20年以上経ってのエターナルマスターズでの再録時。おかげで今でもしばしば英語名の「マナクリプト」で呼ばれる。

通称"デモチュー"。アンコモンなのでパワー9には入れてもらえなかったがヴィンテージでの使用率は負けていない。たった2マナの万能サーチカード。サーチ系の中でもこいつはライブラリトップではなく手札に直接持ってこれるため危険度は段違いに高い。ソーサリーではあるがそこまで問題になることは少ない。
これに限らず軽すぎるサーチカードはキーカードを水増ししていることになるので規制される事が多い。
ヴィンテージで言えば制限カードを何枚も入れてるようなものといえばわかりやすいだろうか。
一度英語限定のセットで再録された後、そこから9年後のアルティメットマスターズに再録され、日本語名を得ている。

  • 《Wheel of Fortune》
3マナ7枚ドロー。以上!
単純に引きすぎなのに加えて相手の手札を引っかき回せる。

  • 《チャネル/Channel》
ライフをマナに変換する。古えの【チャネルボール】ほか、強烈すぎるマナ加速は悪用手段なんていくらでもある。
しかもこれでマナを出す挙動はマナ能力とほぼ同じ扱いで、通ってしまうとどのようなタイミングであっても好きなだけマナが出せるようになってしまうので《チャネル》を出された段階でこれ自体をカウンターしないといけないというタチの悪さ。
ブラフに使ってWillを切らせればハンドアドバンテージ1枚得、通れば「打ち消し不能、唱えているので追加ターンも誘発して対抗手段がない」《引き裂かれし永劫、エムラクール》に繋いでゲームエンドと実質《チャネル》の1枚コンボとなってしまう。
まあ《実物提示教育》→《エムラ》も同じような状況になるが、こちらは「エムラ読み《平和なべ》《平和な心》」があったので許されていた感がある。あと《実物提示教育》なら追加ターンが発生しないし。
その後《全知》の登場で《実物提示教育》もかなり怪しいカードにはなってはいるが。

最強最悪の手札破壊呪文。マナコストに対するハンデス枚数はほぼすべての手札破壊呪文の上位互換という壊れっぷり。
黒は今や赤の役割となった古の一時的マナ加速呪文も複数抱えているし、1ターン目から何枚も捨てさせられたらゲームにならない。
手札消費が激しいレガシーでもそういう意味でも許されない。

項目参照。いろいろ平等化すると言うが、実際は全然平等にならない。
一応旧ルールよりかは弱体化してるけどね。

  • 《露天鉱床/Strip Mine》
最強の土地破壊カードにしてマジック史上最強の土地の一枚
基本土地だろうが土地を片っ端からパリンパリン割られたらゲームになりません。
実は上で説明していた「Type1の制限カードがType1.5の禁止カード」から逸脱し、1998年のT1制限入り前の1996年にT1.5で禁止カードになっていたという珍しい一枚。

1マナ→3マナはやはりダメだった。
強化された部分もある《厳かなモノリス》がその後解禁されてるところを見るに、
元手が1マナか2マナかの差はやはり大きいのだろう。

  • 《ネクロポーテンス/Necropotence》
レガシーなら《暗黒の儀式》も現役なため、解禁はまず無理。

  • 《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
通称"ヴァンチュー"。デッキトップとはいえ、1マナインスタントの万能サーチは強すぎた。
インスタントなので、前の相手ターンの終了時にでもデッキトップに積んでおけばそのまま手札に加えることができ、直接手札に入るのと大してかわらない。
それでもデッキトップに置くので実質2:1交換で枚数アドバンテージを失ってしまうが、それを帳消しにするほどのアドバンテージを奪ったりそのまま相手を殺してしまえば全く問題はない。

項目参照。条件付とはいえ、「実質1マナ相当で毎ターンカードを引ける」狂ったカード。土地の能力なのでそのドローを咎める事はほぼ不能。
後世の人によって特別にパワー9に加わることを許され「パワー10」と呼ばれることも。

  • 《Fastbond》
「土地は1ターンに一度まで」のルールを 露骨にぶっ壊す ルール破壊カード。
日本発祥のコンボデッキが禁止の原因となったことも特筆すべき点だろう。フランスにはバレていたが。
《不毛の大地》連打の不毛ゲーや、2マナランド大量設置からの拘束カード連打とかやられて困るムーブが多すぎる。今なら《世界のるつぼ》や《壌土からの生命》からのフェッチランド連打で1ターンでライブラリの土地を全部出すなんて事もできてしまう。
後にヴィンテージで制限解除され、他環境では見られない土地コンボデッキが何種類も生まれて話題を呼んだ。膠着状態が強いヴィンテージでは、メタゲームの激動が非常に好意的に受け止められた。

デメリットにさえ目を瞑れば《デモチュー》・《ヴァンチュー》以上に凶悪なサーチカードが許されるわけはない。
さらに《タッサの神託者》着地からETB能力にスタック*7で《デモコン》(あえて入っていないカードを指定)→ライブラリーが空になった後にタッサの能力が解決して勝利という【オラクルコンボ】の登場で解除は絶望的になった。
そもそもリンク先に詳しいが、【オラクルコンボ】でもない限り競技性と相反する要素が強すぎるので、そういう意味でも解除は絶望的である。

【クラフトコンボ】はレガシーでも許されなかった。
解除議論にたまに出てくるがエルフがいる以上絶望的。まだ《マナ吸収》の方が望みがある。

  • 《大あわての捜索/Frantic Search》
手札は減るがデッキを掘り下げつつマナが減らない、場合によっては増えるのはやはりおかしい。
たまに解除候補に上がるが解除されたらエクステンデッド同様、【ストーム】が凶悪化する。
フリースペルといえば下記の《時のらせん》が有名だが、今となっては最凶のフリースペルはこちらである。

  • 《記憶の壺/Memory Jar》
メグリムジャー】でなくとも7枚ドローというだけでレガシーではコンボの危険性が大きすぎる。
ただ「《修繕》が禁止カード」「レガシーで5マナで即座に勝負が決まらない」「お互いにドローさせるのでピッチカウンターを引かれる可能性がある」
「ドローしたカードを次ターン以降保持できない」など禁止を疑問視されることもある。それでもやっぱりダメだとは思うが…
ウィザーズとしては二週間で禁止した黒歴史を思い出したくもないのだろう。

  • 《修繕/Tinker》
論外その1
3マナと生贄にするアーティファクトがあればライブラリーの好きなアーティファクトのマナを踏み倒して出せる
言うまでもなくコストにする、場に出す(ゲームを終わらせる)アーティファクトは目白押し。
例として1、2ターン目に適当な軽量アーティファクトをコストにワンパンマンこと《荒廃鋼の巨像》が降臨されたらたまったものじゃないし、状況次第でデッキ内に入ってさえいれば別の選択肢を好きに選べる柔軟性はやりすぎ。
ベルチャー】や【逆説ストーム】など他のコンボにも使えるし。

論外その2
MtGの歴史の中でも最強格の土地の一枚。
歴史上の軽量アーティファクトが群れを成して出てくるだろう。

  • 《意外な授かり物/Windfall》
一応上記《Wheel of Fortune》の調整版ではあるが調整しきれていない。というか色も相まって下手したら本家より強い
カラーパイ的には適正なのだが、青いということがレガシーで何を意味するかは……。
一時期WotCの中でヴィンテージでの制限解除が議論されたが結局解除されなかったあたり、レガシーでは更に望み薄である。

マロー曰く「最大の過ち」
エクステンデッドでさえダメだったのによりカードプールが広いレガシーで、カードプールが広ければ広いほど強くなるこのカードが許されるはずもなかった。
このカードの調整版にしてリメイクである《意志の大魔術師》ですらごく一部とはいえ使われているのを見れば、このカードの壊れ具合がわかるだろう。

  • 《ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth's Bargain》
コンボ性能が高すぎるので当然ではあるのだが、後の世に出た《グリセルブランド》がこのカードに比べて「サーチ・踏み倒しやすいクリーチャー」
「2マナしか増えてないのに飛行絆魂7/7のボディがセットに」「一度にペイ7ライフ7ドローと小回りがきかないが結局大量に引くのであまり変わらない」
「払ったライフを取り返す絆魂が 何故か ついてる」というものだったので「実はこのカードを解禁しても問題ないのでは?」と言われている。実際、ヴィンテージでは制限解除された。
ただ《グリセルブランド》はメインから入ってない方が珍しいクリーチャー除去で対処し易いけど、こいつはエンチャントなので除去るには専用カードが必要、カードカラーによっては対処不能という事を考えれば解禁の可能性は薄い。
ヴィンテージでもその点は変わらないのでは?と思いがちだが、【オース】がトップメタの一角なため、エンチャント破壊を最低でもサイドに積んでおくのが共通認識という事情がある*8

  • 《噴出/Gush》
通常のマナコスト以外に島2枚を手札に戻して唱えることもできるドローカード。
せっかく出した島を2枚戻す必要はあるが、一気に莫大なハンド・アドバンテージを得られる。上記《Fastbond》とのシナジーも凶悪だった。今なら《僧院の導師》等か。
手札に土地がなくても土地をタップしてマナを浮かせておく→このカードで島を戻す→戻した島を出し直す、でマナ加速のようなことができるのもダメだった。
ヴィンテージにおいては反復横跳びのごとく制限と解除を行ったり来たりしていることで有名。2017年4月に3度目の制限を喰らってからは音沙汰なし、もう戻ってくることもないだろう。
パウパーでは長らく禁止カードになっていなかったが、【デルバー】を止める為に遂に投獄された。


レガシー制定時に禁止

作られた当初はそこまで酷くなかったのだが、カードプールが広がり禁止に。特に【ドレッジ】とは最高のシナジーを形成する。
ヴィンテージのドレッジでは「このカードを引くまでマリガンする」と言われるほどのキーカード。

  • 《Mishra's Workshop》
なんか3マナも出ちゃうアホ土地。出したマナはアーティファクトにしか使えないがそれでもぶっ壊れ。
元々悪評は高かったが、強力かつ中程度の重さのアーティファクトがそれほど存在しなかったのでマシだった。しかし超強力アーティファクトが山ほど詰まったミラディンの登場で最悪のマナ加速と化した。
例えば1ターン目これから《三なる宝球》というムーブはそれだけでマジックからの逸脱とまで言われる。相手は同型か特殊なカードを採用してない限り3ターン目まで何も出来ないのに、こっちは2ターン目から4~6マナ捻出できるので、茶単デッキであれば普通に動ける。
他にも【5/3】や【スタックス】などの茶単ストンピィや茶単ロックデッキの後押しをしすぎていたので監獄行きに。

  • 《マナ吸収/Mana Drain》
対抗呪文》の上位互換
一応マナバーンがあった頃はその危険性があったが、ルール変更でマナバーンが無くなってからは本物の上位互換になった。
このカードからX呪文、例えば上記《精神錯乱》などに繋げられたらゲームが終わってしまう。
長らく英語名しか存在しなかったが、アイコニックマスターズに収録された際、23年越しに日本語名が与えられた。

  • 《ゴブリン徴募兵/Goblin Recruiter》
好きな数の任意のゴブリンをライブラリーの上に積み込み、以後のゲームを完全な詰将棋にする。
エクステンデッドの【ゴブヴァンテージ】で猛威を奮ったことから禁止カードとなり、レガシーならエクステンデッド以上にコンボに使うことができることからこちらでも投獄された。
とはいえかつてのエクテン時代から時が経ち、他の部族の強化も進んでいたことから一時期「次の禁止解除はこいつか《マナ吸収》かな」とも言われていたが、ライブラリートップの上のゴブリンを唱えられる《人目を引く詮索者/Conspicuous Snoop》が出てしまいヴィンテージで通用するクラスのカードパワーだと証明されてしまった。流石に帰ってくることはないだろう。
また相手のデッキによって積み込み順が違うことからプレイ時間をいたずらに増幅するという側面もあり、下記の《師範の占い独楽》宜しく時間泥棒だからというのも解除を難しくする要因だろう。
ちなみにこれのドワーフ版である《ドワーフ徴募兵》というのもいるが、こちらは積み込み対象がドワーフ(と多相)のみと層もサポートも薄い為、使われてはいない。まあ使われる日が来たら禁止される日だろうし。


  • 《隠遁ドルイド/Hermit Druid》
基本土地が出るまで山札をめくり、その土地を手札に加えるカード。が、デッキに基本土地を入れなければライブラリーすべてを墓地に送れる。あとは大量の墓地からコンボして勝つ。
デュアルランドなどの歴代の基本でない土地が使えるレガシーでは特に土地を絞る必要もなく、安定してコンボを開始できる。
似たような形で墓地を肥やせる《欄干のスパイ》《地底街の密告人》は未規制だがそちらは4マナな上基本でない土地が捲れても止まる。
2マナの差と基本土地だけが対象になっていることの差は大きかった。こっちはタップ能力で1ターンのラグがあるのにである。

  • 《ドルイドの誓い/Oath of Druids》
《禁忌の果樹園》でマナを出す→相手にトークン押し付ける→自分より相手のクリーチャーが多いことで《ドルイドの誓い》の誘発条件を満たす→グリセルエムラどーん。
この2枚のコンボはヴィンテージでトップメタの一角であるといえば危なさが分かる。
更にこのクリーチャーを落とす過程で《ライオンの瞳のダイヤモンド》を落として【サルベイジャーコンボ】につないだり、
《太陽のタイタン》を出ししつつ《サヒーリ・ライ》を絡めた無限トークンコンボがあったりとパターンも充実。

レガシー制定時にようやく禁止となった(=前身のType1.5では普通に使えた)ことに驚く人も多いだろう。
その理由は先述の通り、Type1の制限=Type1.5の禁止というシステムの影響である。
ちなみにType1の後身となるヴィンテージでは2021年1月時点でも規制されてないのに使用者が皆無な辺りがヴィンテージの魔境ぶりの例としてよく挙げられるが、
これは《黎明起こし、ザーダ》がレガシーでは禁止だが上の環境では健在なのとまったく同じ次元の話だったりする。この理屈だとスタンダードは魔境である。


制定以後に書き加えられたもの

  • カード・タイプが策略であるすべてのカード
コンスピラシーで新たに生まれ、コンスピラシー:王位争奪で追加された、特殊なドラフト専用のカード群。
カード自体の裏面や形状は普通のものと同じだが、そもそも普通の構築で使うように作られていないので禁止。
もちろんまともにマジックするカードではないのでこれらはヴィンテージでも禁止である。
当初はすべてのカードが一つ一つリストに書かれていたが、リストの簡略化のためにこのようにひとまとめにされた。
仮に使えると「マリガンの回数を事実上増やせる」でも十分強いのだが、複数種類を組み合わせると「確定0ターンキルまで可能」
それは詰将棋どころかゲームですらない。
レシピやプレイングは大本の禁止カードの方で紹介。

  • ステッカー・アトラクションを用いるすべてのカード
ジョークセットUnfinityで追加されたカード群で、アトラクションはカードの能力に応じてアトラクション・デッキからカードを戦場に出すメカニズムで、ステッカーに至っては実際にカードにシールを貼って*9能力を書き換えるというぶっ飛んだメカニズム。どちらもゲーム外部に専用デッキを用意する点で共通する。
ジョークセットとしては初の試みとして統率者戦で使用できるように一部は黒枠として追加された。当然、黒枠で出した以上エターナルフォーマットでもリーガルになってしまった。
開発部的には「まあこんなジョークカードが環境に影響与えることなんてないやろHAHAHA」とタカを括っていたが、その中の《“_____” Goblin》*10がトーナメントでも使われるパワーを有していることが発覚した。
競技レベルで使用実績が生まれた以上、それをコピー出来るカードを使用する場合は勿論、全く関係ないデッキですらマリガンの判断材料を与えないために専用の盤外カードを用意したり固有ルールを覚えたりする必要が生まれて、トーナメントに参加するハードルが不当に高くなってしまった。
更にはMOでは「そもそもUnfinityがリリースされていない」せいで、紙とMOでレガシー・ヴィンテージのメタゲーム自体が変わってしまうという弊害もあった。
これは開発部が意図した状況でない上に、テーブルトップでもデジタルでも健全で楽しいものではないと大勢が感じていたためにメカニズムごとまとめて禁止送りに。
ちなみに《“_____” Goblin》についてはMO専用で同イラストの別カード《“Name-Sticker” Goblin》としてリニューアルされた*11のだが、こちらも同時に禁止されている。MO限定カードなのでMO公式サイトの禁止カード改定記事にのみこっそりと記載されていて、普通のプレイヤーが見るMtGJPの禁止カード改定記事には一切記述が無かったために、本稿に長らく「こちらは使える」と誤情報が乗り続けていた。

  • 《伝国の玉璽/Imperial Seal》
吸血の教示者のポータル三国志仕様で、ソーサリーだがそれでも強い。こちらも禁止に。
禁止理由はまあ吸血の教示者と同じである。1マナでキーカードを持ってこられたら困るのだ。
ちなみにポータル系のエターナル解禁に併せて禁止となっている。*12

  • 《閃光/Flash》
手札のカードをクリーチャーを場に出せるがマナを支払わないと即座に生贄に捧げられるインスタント。
一時期ウィザーズは「パワーバランス調整エラッタ(パワーレベル・エラッタと言う)を元に戻す」作業を頻繁に行っていた(実際のカードの挙動が印刷されたテキストと違うのを直すためである)が、その結果エターナル環境に登場。《変幻の大男》とのコンボ【ハルクフラッシュ】で大暴れしすぐに禁止or制限に。文字通り「閃光」の如き活躍となった。
ちなみにどれだけ壊れてたかというと後手自分のターンが来る前に勝利(正確に言うと先手が土地を置く前、アップキープ・ステップに勝利)が可能だった。なんじゃそら。
自分のターンで決めるのが1ターンキル(1キル)なんだから、これは0キルって呼べばいいの?というネタがある。
流石に成功率はかなり低い上に相当弱いパーツをたくさん入れないといけないが、無理に0キルを狙わなくても安定2~3キル、たまに1キルという構築もあったため上記のようにエラッタ解除後2ヶ月で禁止。その後ヴィンテージでも《商人の巻物》を巻き込んで規制、凶悪さを存分に示していった。
たまに解禁論が出てくるが、今はもっとヤバいETB持ちが多いので環境が一瞬でぶっ壊れることは想像に難くない。

項目参照。《通電式キー》や《求道者テゼレット》でお手軽無限ターン。
存在自体がバグのようなカードであり、何度もエラッタをされている。最終的に《閃光》と同じくパワーレベルエラッタが解除され、お手軽無限ターンが発生するようになってしまったため禁止に。

  • 《神秘の教示者/Mystical Tutor》
インスタント・ソーサリー限定とはいえ1マナインスタントサーチは(ry
上記【ハルクフラッシュ】などで使われ、直接的には【ANT】での活躍が原因で禁止カードになった。
「カジュアルプレイを見ていると自主的に使わないようにしている人が多いし、そっちの方が楽しんでいるように見えた」のでレガシーでの禁止を決めたという話も残っているカード。

  • 《適者生存/Survival of the Fittest》
愛好者が多かった【サバイバル】系デッキの主軸カード。マナと手持ちのクリーチャーカードを糧に、クリーチャーカードをサーチするエンチャント。
サーチとして使われるデッキもあれば、サーチと言うよりかは「任意のクリーチャーを2マナで墓地に落とすためのカード*13」として、リアニメイトの補助に使われるデッキもある。
レガシー制定時には《憤怒》や《貿易風ライダー》と組んだ【ATS】が流行していたが、《適者生存》の起動を止められる《真髄の針》の登場で一気に衰退。その他のタイプも《適者生存》に頼った構築は難しくなった。
その後【Zoo】の補助で使われていたりしていたが、ゼンディカーでの《復讐蔦》の登場で【青緑サバイバル・マッドネス】という形で脚光を浴び、
ミラディンの傷跡で《壊死のウーズ》を手に入れ、墓地に特定の2枚を落として無限ダメージを狙う瞬殺デッキ【ウーズ・サバイバル】が猛威を振るうも2ヶ月後にこのカードが禁止カードに指定されてしまった。
クリーチャーしかサーチ出来ないカードが規制されるのは割と珍しいのだが、《獣相のシャーマン》ですら結構強いのだから「破壊されにくい上に1ターンに何度も起動できる」シャーマンがどれだけ強いかは推して知るべし。

  • 《精神的つまづき/Mental Misstep》
本来は「青以外でもメインから高速コンボに対抗できるようにしよう」ということで生まれた、マナの代わりにライフでも打てる対1マナ限定打ち消し。
しかし実際には「相手の最序盤の動きを、マナを使わずにどの色でもカウンターできる」カードとして使われてしまう。
MtGの基本である1マナ呪文からスタートする基本的なデッキの動きを否定できることはこのゲームにおいて大きな意味を持つ。
更にこのカード自体が1マナのため「《精神的つまづき》に対抗するには自分も《精神的つまづき》を使うのが最適」ということもあって、
このカードを投入することが半ば義務付けられる事態に。「デッキ構築は(《精神的つまづき》4枚とその他)56枚から」なんて言われたことも。
そして青いデッキにおいては、相手の最序盤の動きをカウンターする際に、今まではアドバンテージを失う《意志の力》しか無かったのに、これが出来たおかげで意志の力を温存することができるようになった。
しかもゲームが進みこのカードが腐ったら、逆に意志の力のコストとして使えるという無駄の無さ。
結果、このカードを投入する余裕がないデッキは最初からハンデを負っているに等しくなり、逆に無駄なく使える青いデッキが勢力を伸ばして環境が大きく膠着化してしまう。
「多様性を守るために青以外でも使えるようにした打ち消し」のはずが「青いデッキを大躍進させ、多様性へ大きな圧力を加えた」という正反対の結果をもたらしてしまい、結果5ヵ月で禁止となった。
1マナの凶悪呪文が飛び交う故に「《精神的つまづき》は抑止力」と長年言われてきたヴィンテージですら、《精神的つまづき》複数投入が構築の前提条件、及びその状況を読んでこのカードが効かないデッキがメタゲーム上で上位に居続けていることがよろしくないという理由で制限カード入りしてしまった。
よく解禁論が持ち上がるが、「1種類だけ禁止解除を許すレガシー」のようなカジュアル大会では大体《精神的つまづき》を解禁したデッキが上位入賞・優勝することを付記しておく。
このように下環境では「弱い部分がどこにあるんだ」となるカードだが、その一方でスタンダードでは仮想敵の少なさも相まってそんなに見かけたカードではなかった。

3ドローソーサリー。8マナと重いが探査*14付きのため最大で1マナ3ドローという驚異の船。
しかも対象を取らないので《誤った指図》で曲げられない、ヴィンテージではさらに「《精神的つまづき》を喰らわない、《三なる宝球》で3マナ余計に払わされない」というアドバンテージがあり、
「ソーサリーだけど《Ancestral Recall》より強い」とまで言わしめた。
軽量火力やドロー、ピッチスペルカウンターがモダン以上に存在し、高速で墓地が肥えるレガシーで許されるはずもなく、当然のように沈没。
全盛期ではモダン共々「【赤単バーン】がこのカードを入れるためだけに青をタッチしていた」なんてことも。まあ大体は【デルバー】系です。

  • 《時を越えた探索/Dig Through Time》
デッキの上7枚見て2枚手札に加える探査付きインスタント。宝船の巡航とは同期で立ち位置としても似ているがこちらは探査をフルで使っても2マナ掛かる。
モダンとは異なり宝船の巡航禁止後も9か月間、合計1年生き延びた。より早い環境であるエターナルでは最低1マナと2マナの差は大きいと判断されたのだ。
しかし相変わらずすぐに墓地が肥える上、マナコストを踏み倒せる《全知》を用いた【オムニテル(全知実物提示教育)】との相性が良すぎた。
タダで探索を唱える→見つけた探索をまた唱える→また探索を(ryとかやられた日にゃ…。全知が出る前にも打てることや、インスタントなので使い勝手が良すぎたのもあった。
それ以外にも青系デッキの隆盛、それに対抗するためにハンデスよりも《赤霊破》か《紅蓮破》をメインからフル投入することが肯定されるというレベルで他のデッキの構築が歪められているとのことで禁止に。
禁止されるまでの1年で与えた圧力は非常に大きく、上述の「限界集落」ネタはこの時期のもの。やっぱ同時に禁止しておくべきだったんじゃないかな……。

  • 《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》
1年半ぶりに出たレガシー禁止カードはまさかのこのカード。デッキトップを色々いじくる1マナのアーティファクト。
理由はモダンと同じで 時間を異常に食うから ということと、当時数年覇権を握っていた【青白奇跡コントロール】へメスを入れるため。
スタンダードの頃から活躍し続けてきた独楽もついにヴィンテージ以外で使えなくなってしまった。
エタマスでこれが再録されたこと、改訂直後に発売予定だったアモンケットで【奇跡コントロール】のパーツの一部がMasterpieceに指定されていることが決定していた中での禁止指定のため、ちょっとした騒動になった。
禁止には異論もあったのだが、相手の一つの行動ごとに独楽を回す必要があり、非常に時間のかかるデッキであり、
小回りが利くがゆえに起動回数が多く、しかも独楽を回すに際して様々な小技があり、気付くと時間を持っていかれる。
MOなどでは時間がかかる分には時間切れ負けが近づくだけなので問題はないのだが、これが当時レガシーが流行していたテーブルトップだと大問題。
当時の使用者からは「弱い奴が奇跡を握るな」「ヤソ並のプレイが出来るまで野試合でスパーリングしてから大会に出ろ」という上から目線な声が出るレベルの遅延発生機となっていた。
トップメタのキーカードである以上に、様々なデッキにおける潤滑油だったカードの禁止ということで賛否両論あったが、「禁止後のレガシー大会が前よりも1時間以上早く終わった」といった時間に関する改善が各地で報告されるに至りそうした声も少なくなっていった。

レガシーの長い歴史はこのカードとともにあったと言っても過言ではなく、【相殺コントロール】以外にも【黒単コントロール】や【マイティ・クイン】といったデッキトップを参照するギミックを仕込んだデッキに用いられた。
現役時代はアーティファクト対策がヴィンテージより緩めなこと*15もあり、レガシーのことを「独楽が使える最後の公式フォーマット」と呼ぶこともあった。一応、ヴィンテージでも軽くて便利なアーティファクトということでそれなりに使われてはいる。

  • 《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
黒/緑どちらか1マナで出せる癖に「毎ターンごとに」色マナ加速、ライフゲイン、1/2の序盤のアタッカーを兼ねたブロッカー、種族エルフ、
果てにライフロスによるフィニッシャーまで何でもござれしながら、ついでのように墓地対策までするというおかしなグッドスタッフクリーチャー。
記載されている長いテキストにはおかしいことしか書かれていない。唯一おかしくないのは種族シャーマンであることぐらい。
あまりの滅茶苦茶な性能に「アンシーから出てくるマナクリ」「漁る渋面の極楽鳥」「オリカ」等と呼ばれ、果ては1マナのプレインズウォーカーとまで評価された。半年前に出た試作の失敗作こと2マナのあいつが弱すぎたのに何でこっちは強いんだよ。
一応「終盤にドローしても嫌にならないマナクリーチャー」というものを作ろうとしていた時期にできたものであるが、明らかにやりすぎであった。

それでも並大抵のグッドスタッフクリーチャーは規制のきの字もない程にクリーチャー対策が跋扈し、
毎ターンごとのアド生成能力の比重がかなり制限されるそれなりの高速環境故か、散々規制議論がされつつもしぶとく生き残っていたが、
【グリクシスデルバー】、【4Cレオヴォルド】といった死儀礼を4枚投入するデッキが長期間に渡って環境を掌握しており、
  • 「3色・4色デッキのくせにマナトラブルも少なく、不毛や月など特殊地形対策もかわせる」
  • 「容易に多色化できるため強力なカードを詰め込み放題=メタゲームで対処できず多様性が減る」
  • 「ナチュラルに墓地対策してくるためローグデッキや墓地利用コンボに自然に防御力がつく」
  • 「上記の利点を持つマナクリが、なぜかタフネス2なので昔のデッキのクリーチャーを一方殺できる」
などの理由から環境が悪化するだけでなくプレイヤーからのヘイト値も溜まりに溜まり続け、ついに禁止カードに指定された。

非規制派のプレイヤーからは「死儀礼は必要悪」「むしろ多様性を与えてくれる良質な環境の立役者*16という意見がたびたび出ていた。
しかし実際には、禁止直前の「青を利用した非コンボデッキ」はほぼこの2種類に集約されていた。多様性をセールスポイントにしたいレガシーでは、さすがに許されるものではなかったのだ。

スタンダードでは土地を墓地に落とす手段が限定されていたので、墓地指定がリミッターとして機能した(つまり肝心のマナクリーチャーとしての信頼性が低かった)ため適正なカードパワーだった。
2019年にレガシー、モダンに続いて制定されたパイオニア環境でも、当初はすぐに規制されると思われていたが生き延びている。
安定したマナクリーチャーとして機能するのに貢献しやすいフェッチランドがなければこんなもん、逆にこれがあると途端にオーバースペック化する、というところなのだろう。……これ悪いのフェッチランドなのでは?

  • 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
少し前にモダンとヴィンテージで規制された0マナ2点ペイでドローとピーピングができるインチキカード。あと墓地肥やしとストーム稼ぎもできる。そのうえ青い。
3キル容認と2ライフの支払いが割と厳しいレガシー環境でも事実上タダでピーピング出来てしまうと一方的に駆け引きを無視してしまい、更に1枚ドロー出来てしまうのはやりすぎなためか禁止行きに。
これだけの事をしでかしながら同期の《精神的つまづき》と違って長らく放置もされていたという、傍から見たら不思議なカードでもある。似たような役割の《通りの悪霊》がまったく悪さをしていない点などが判断を遅らせたのかもしれない。
大体どこのフォーマットでも同じことが書いてあるが、それだけおかしなカード。様々なデッキの潤滑油や安全確認のために投入されており、中には「ライフを減らすこと」を主眼に置いた使われ方すらした。
長らく4枚フルで使えるのはパウパーだけとなっていたが結局こちらでも2019年5月の禁止改定で無事4冠達成と相成った。《宝船の巡航》に続き2例目。
とにかく分かりやすくぶっ壊れているうえ、環境を蹂躙されたことが記憶に新しいせいか、現在は《精神的つまづき》を差し置いて「一番壊れているΦカードは《ギタクシア派の調査》」という意見も強い。

詳しくは当該項目参照。
『モダンホライゾン』にて収録された赤緑2マナのプレインズウォーカー。レガシーでは《死儀礼のシャーマン》が一応クリーチャーなので初となるプレインズウォーカーの禁止カード。
[+1]で墓地から土地回収、[-1]で1点火力。[-7]で全部の墓地の呪文に回顧*17を与える紋章という忠誠度能力なのだが、特に[+1]で墓地から土地回収というのがレガシーではまずかった。
レガシーは《不毛の大地》がある環境。全部の基本でない土地が逐一不毛で割られていては相手のマナ基盤がズタズタである。一方で自分はフェッチを回収すれば自分のマナ基盤は盤石になるためガンガン差が開く。
これだけなら3マナアーティファクトの《世界のるつぼ》と似たようなものだが、こいつは 2マナの プレインズウォーカーであり、この能力は プラス能力 なので放置していたら奥義にたどり着かれてしまう。
そして奥義は通ったらほぼ勝ちに等しい。本来なら切れるはずの土地カードは+1能力で永久回収されるため、極端な事を言うと「《時間操作》→[+1]能力で墓地の土地を回収→回収した土地をコストに墓地から《時間操作》」を毎ターン繰り返せば疑似無限ターンとなる。
一見地味な[-1]能力も、《スレイベンの守護者、サリア》や《闇の腹心》と言った優秀なタフネス1クリーチャーが活躍するこの環境ではかなり凶悪。後、忠誠度が1残ったプレインズウォーカーの処理や-能力の防止にも使える。
放置することもできず、かといって下手なクリーチャーは出しても焼かれてしまう。しかもこいつは初期忠誠度が3なので、出して即[+1]を使えば《稲妻》1枚では落ちない。もうどうしようもない。
結果的に【RUG Delver】を大幅に強化し、レガシーの光景を完全に換えてしまった。他のすべての主要デッキに勝ち越す状態になってしまい、使用者ですら「つまらないから禁止にした方がいい」と発言したほど。MOのプレイ人口にも打撃を与え、最終的に禁止カードに指定された。
禁止カードに指定された時は「モダンでは禁止されていないカードがレガシーで禁止される」「しかもそれが、当時の考えだとあまり強いとは言えない色の組み合わせだった」という初の例だったため驚きの声を持って迎えられた。

調整版《ヨーグモスの意志》。墓地のカードを唱えるための追加コストとして、墓地の他のカードを追放する必要があったのだが…
本家より1マナ軽い、 墓地から唱えたカードが追放されないので使い回せる 等の独自のメリットもあったため、早速《ライオンの瞳のダイアモンド》《思考停止》を使い回すストーム系デッキ【ブリーチストーム】が登場、程なくしてレガシーのトップメタに食い込むようになる。
しかし、野放しにしておくと今後の環境に悪影響があると判断され禁止リスト入り。【ブリーチストーム】は登場からわずか2ヶ月ほどでレガシーから姿を消すことになった。
なお当初は《レンと六番》に続き2例目となるレガシーでのみの禁止カードだったのだが、後にパイオニア・モダンでも禁止された。
ヨーグモスの意志での「以前に壊れたシステムがあれば、それはまた作っても、高確率で壊れている。」という結果を、そのリメイクカードでまたも繰り返してしまうことになった。
「いい加減《ライオンの瞳のダイアモンド》を禁止するべきではないか」という意見も強かったがそもそもブリーチ自体が危険であり、さらに上述の通りレガシーには「LEDを存分に使ってもらうためのフォーマット」という意義もあるので難しいだろう。

自ターンで一度、2マナ以下のパーマネント呪文を唱えられる簡易リアニメイトカード。相棒能力を持っており、このカードの場合はデッキ内全てのパーマネントカードのマナ総量が全て2マナ以下であればサイドボードから各ゲームで1度唱えるソーサリー・タイミングに3マナ支払って手札へ加える事が可能。
相棒の実装当初の仕様からヴィンテージでカードパワーが理由で禁止という史上初の特殊措置を受けたが、ヴィンテージほどでなくとも軽量カードだらけのレガシーでも十二分に凶悪。後述の《王冠泥棒、オーコ》の使用率すらルールス禁止まで落ち込んでいた、と言えばそのカードパワーの高さが分かるはず。
【デルバー】系の息切れ防止だけでなく、たとえ相棒で使えなくとも3マナ3/2絆魂でメリット能力持ちは十分使用範囲内。
とりあえず《ミシュラのガラクタ》とセット運用するだけでも毎ターン追加ドローが可能である。
MOデビューから禁止まで要した日数32日は、あの《記憶の壺》をぶっちぎってレガシーでは歴代3位であり実質1位*18である。
後に相棒のルールが変更され、ヴィンテージでは2021年2月15日を以て(「妥当なカードパワーに落ち着いたか様子を見たい」として)解禁されたが、その時点でのウィザーズの判断としてはそれでもレガシーではオーバーパワーであるとの事。
実は《意志の力》のような「3マナ以上の非パーマネント呪文」はルールスの相棒指定の対象外。戻ってきたら魔境再来である。

《夢の巣のルールス》同様の相棒にできるカードで、こちらの条件はデッキ内全てのパーマネントカードが起動型能力を持っている事。
だが本命は「起動型能力の起動マナが(2)減る」の能力。タップで(3)を生み、アンタップに(4)かかる《厳かなモノリス》orタップで(3)を生み、アンタップに(3)かかる《玄武岩のモノリス》と組み合わせると、アンタップ能力がタップ能力で出るマナ未満で使用可能になってしまうためお手軽無限マナ。
しかも《歩行バリスタ》も起動型能力を持つ故相棒の邪魔をしない上に、上の無限マナと組み合わせると無限ダメージが成立する*19。これらをサイドボードからシルバーバレット出来る《大いなる創造者、カーン》も忠誠度能力が起動型能力となるため、相棒条件を違反しない。
MOでメタゲームを歪めているまでは至って居なかったが、これは《ルールス》と《深海の破滅、ジャイルーダ》*20のせいで影が薄かっただけで「《ルールス》を禁止にしたらこれが暴れるのが確定的に明らか」という状況までは来ていたために《ルールス》と一緒に投獄された。
上のと同時規制なため、こちらも禁止指定は実質1位。

詳しくは当該項目参照。
その強さと万能さでスタンダード・パイオニア・モダンを次々出禁となった後、舞台をレガシーに移し氷雪コントロールデッキ【Snowko(スノーコ)】のキーカードとして活躍するほか、【ティムールデルバー】にも採用されていた。
パワーカードの溢れるレガシー環境においても「これを出せば大抵のものに対処できる」といった雑な強さを発揮していたが、「強い上に万能」という性質がメタゲームの多様性を失わせることになるため、禁止カード入り。
これでブロール、スタンダード、ヒストリック、パイオニア、モダン、そしてレガシーと 6つのフォーマットで禁止 という記録を打ち立ててしまった。公式フォーマット6つで規制というとかつての《トレイリアのアカデミー》以来*21級である。

詳しくは当該項目参照。
「安定性を犠牲に色を増やして出来ることを増やすか、出来ることを絞って安定性を取るか」というゲームの根幹に関わる部分をたった1マナで壊すマナフィルター。しかも戦場に出た時に1ドローできるので手札が減らない。
みんなこれで多色化と事故対策の両立(例えばみんながみんな《オーコ》や《テフェリー》でビーダマン勝負したり、緑マナが出る土地一切無しからの察知不可《夏の帳》でお手軽カウンター、そもそも多色のくせに《基本に帰れ》《血染めの月》《不毛の大地》などの多色化への安全弁をまったく問題にしないetc……)を行われては読み合いも多様性もクソもなくなるということで、
モダン・パウパーに続いてレガシーでも禁止された。まーたモダンホライゾン超えちゃったよ……

  • 《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》
攻撃時、自分の墓地にあり、点数で見たマナ・コストがこれのパワー以下であるインスタントかソーサリーをタダで唱えられる能力を持ったクリーチャー。
お手軽な再利用系カードではあるが素のパワーは1なので、「別途でパワーを上げて重いカードを一気に吊り上げる」か「弱くてもいいのでチマチマ回数を重ねてアドを稼ぐ」ことを本来想定したであろうカード。
だがレガシー環境では《渦巻く知識》《思案》《定業》《稲妻》といった1マナでも優良&レガシーのスタンスがなければ禁止化されたであろう強力呪文が多いため、特に工夫せずとも、それらをおかわりできるだけでかなり強力。
実際「2ターン目に出てきたこいつを除去できるかどうかでその後の展開が変わる」とも言われるほどであり、秘儀術師を採用した【イゼットデルバー】や【ティムールデルバー】がメタゲームの上位に位置していた。
序盤から大きな優位を築けてしまうことに加え、《王冠泥棒、オーコ》の禁止でクリーチャーが動きやすくなる=こいつも暴れまわることが危惧され、禁止カード入りとなった。

詳しくは当該項目参照。
モダンホライゾン2で登場した、対戦相手にダメージを戦闘ダメージを与えることで、宝物と相手のライブラリートップを持ち帰る1マナ2/1の伝説のクリーチャー。ターン終了時に手札に戻る代わりに2マナで速攻を持たせて唱えることもできる。
伝説であることを加味してもこのサイズのクリーチャーとしては(モダンホライゾンらしく)明らかに突出したスペックを持ち、登場直後からモダン及びレガシーでデルバーから母屋を盗みながら活躍。特にレガシーでは《意志の力》や《目くらまし》といったこのカードを守るピッチスペルが豊富であり、これを守って攻撃を通して優位に立つ、という行為がモダンより容易。
結果的に【イゼットデルバー】改め【カウンターモンキー】*22がトップメタとなり、序盤のやりとりの改善の意味も込めて禁止された。

  • 《表現の反復/Expressive Iteration》
デッキの上3枚を見て1枚をドロー、1枚を衝動的ドロー、1枚をデッキの一番下に送る青赤のソーサリー。
実質的な2マナ2ドロー相当の強力なドローソースで、スタンダード、パイオニア、モダンなど多くのフォーマットで実績を重ねパイオニアでは禁止に至ったストリクスヘイヴンのトップアンコモン。
レガシーでは青赤絡みのコントロールでも多用されたが、トップメタの【イゼットデルバー】の地位を盤石なものにしていた。従来の【イゼットデルバー】は1対1交換を繰り返し相手を妨害しながら軽量クリーチャーで削りきるという、妨害が強い代わりにアドバンテージを稼ぐのは得意ではない線の細いデッキだったのだが、これのおかげでお手軽にアドが取れて消耗戦にも強くなっていた。
そのため、デルバーデッキ本来の長所と短所をハッキリさせるために禁止となった。
スタン時代は土地を追放してそのままセットする事が多かったが、デルバーデッキは1マナのカードが多いため序盤から土地追放以外の選択肢があるというレガシーならではのプレイングも存在しており、スタンでも強かったが下環境だともっと強く使えるカードでもあった。

  • 《白羽山の冒険者/White Plume Adventurer》
戦場に出た時にイニシアチブを得る3マナのクリーチャー。相手のターンにクリーチャーをアンタップする能力も持つ。
イニシアチブは、それを得た際とイニシアチブを持っているプレイヤー自身のアップキープ毎に専用のダンジョンである地下街を探索できる。また、イニシアチブを持っているプレイヤーにダメージを与えることでそれを奪い取ることができる。
本来は多人数戦用のメカニズムであるが、1対1対戦の場合は多人数戦より安定してイニシアチブを維持して莫大なアドバンテージを得られてしまう。
そんなイニシアチブを得られるクリーチャーを《古えの墳墓》《裏切り者の都》等の2マナランドや《水蓮の花びら》《金属モックス》といったマナ加速を絡めて高速で展開する【白単イニシアチブ】【ボロスイニシアチブ】といったデッキが誕生。たいてい《魂の洞窟》もあるので打ち消しが通らず、戦闘ダメージを与えてイニシアチブを奪うことも苦手なコントロールデッキに対してめっぽう強く、メタゲームを窮屈なものにしていた。
中でも【Death&Taxes】でもお馴染みの白の妨害クリーチャーを集めた【白単イニシアチブ】は【イゼットデルバー】と並んでレガシー2強環境を形成するほどに。しかも【イゼットデルバー】はデッキの性質上【白単イニシアチブ】に強く【白単イニシアチブ】は【イゼットデルバー】をメインからメタっていたため、2強デッキはその他大勢を駆逐すると同時に互いを潰し合っているというなかなかな環境であった。
そうしたイニシアチブデッキを支えていたのがイニシアチブ獲得カードの中で最軽量のコイツであり、デッキの速度と安定性を落とすために禁止となった。
ちなみにちょっと前にパウパーでも軽量(といっても4マナだけど)イニシアチブクリーチャーが禁止送りになっている。

  • 《悲嘆/Grief》
手札コストの「想起」持ちエレメンタルの黒担当。
本体は4マナ3/2威迫で、出た時に相手の手札を見て土地以外の1枚を捨てさせる。

レガシーにおいて特に凶悪なのが軽量リアニメイト呪文の《再活性/Reanimate》や《動く死体/Animate Dead》との組み合わせで、
  • 想起した《悲嘆》をピッチスペルで打ち消す→2:2交換で、その後《再活性》が通れば有効なカード1枚をハンデスされたうえで3/2威迫が残り、打ち消されても打ち消しとの1:1交換
  • 想起した《悲嘆》を通す→2:1交換だが一番有効なカード1枚を捨てさせられ、その上で《再活性》の対処を求められる
と、どう対処しても大きな消耗を強いられ、加えて各種対策カードもハンデスで抜かれてしまえばどうしようもない。
こうした動きが【青黒リアニメイト】の地位を盤石のものとしていたことから禁止に。

  • 《超能力蛙/Psychic Frog》
青黒2マナの1/2で、攻撃を通すとドロー・手札を捨てると+1/+1カウンターが乗る・墓地3枚追放で飛行を得るという3つの能力を持つクリーチャー。令和に蘇った《サイカトグ》+《影魔道士の浸透者》といった感じのカードだが、サイカトグと違い強化が+1/+1カウンターで残るのが現代MtGクオリティである。
3つの能力が強力なシナジーを形成しており、軽く優秀なクロックとして【青黒テンポ】の主力を務めていた。このクリーチャーの登場により《稲妻》の除去としての信頼性が低下したこともあって、それまで青赤系が主流であったクロック・パーミッション系のデッキ*23は青黒系が主流となった。
さらに共鳴者であることから【青黒リアニメイト】でも手札に来てしまったフィニッシャーを墓地に落とす手段として活用され、それに加えてサイド後のフェアデッキプラン(墓地を使わず、手札から唱える強力なクリーチャーで殴り倒す)の主軸となり相手がサイドインした墓地対策を腐らせるなど、《悲嘆》を失った同デッキの強さを支え続けていた。
このカードの存在によって、【青黒リアニメイト】が墓地対策に高い耐性を得ていたことと、リアニメイトとクロック・パーミッションにおいて青黒系が支配的となりそれ以外の色の組み合わせが抑圧されていたことが問題視された結果禁止されることとなった。

  • 《苛立たしいガラクタ/Vexing Bauble》
唱えるためにマナを支払わなかった呪文を打ち消す無色1マナのアーティファクト。1マナとタップで生け贄に捧げることでドローに変換することもできる。
ヴィンテージでは《Black Lotus》とMoxenをたった1マナで止められるという理由で規制されたカードだが、レガシーでも環境の安全弁であるFoWといったマナを支払わない青い打ち消し呪文を、色を問わず採用できるたった1マナの置物で止められるのはやり過ぎだった。しかも任意のタイミングでドローにも変えられるので2枚目以降が腐ることもなく、自分の動きの邪魔になったらロック解除もできてしまう。
案の定【スニークショー】【ペインター】【カーンフォージ】といった各種コンボデッキや【赤単プリズン】のようなロックデッキに採用され、これらのデッキが青への耐性を獲得する結果となってしまったため禁止されることとなった。

  • 《カザド=ドゥームのトロール/Troll of Khazad-dûm》
強化版威迫と沼・サイクリング(1)を持つ6/6/5のコモン。
一見凡庸なコモンに見えるが、たった1マナで任意の沼タイプ持ちを持ってこられるのは事故抑止に非常に役立ち、同サイクルの青《ロリアンの発見》はモダンからレガシー・パウパー、挙句の果てにヴィンテージまで使われた。フェッチランドと異なり基本でない土地への対策をすり抜けられる点も地味に強力。
自身の能力で勝手に墓地に送られるという性質から、このカードは通常リアニメイトが必要とする「墓地から出すクリーチャー」「墓地に送るカード」「リアニメイト呪文」「それを唱える土地」のうちリアニメイト呪文以外の全てを工面できる。そのためトップメタの【青黒リアニメイト】で使われてその安定性に大きく寄与した。コモン程度のスペックしかない本体も《再活性》で1マナで出てくるならゲームを決められる怪物となる。これ悪いの《再活性》なのでは?
コンボデッキでありながらトロールにより土地事故、色事故、手札事故を起こさずフェアデッキのようにも振る舞えるという状況が非常に危険視されたことにより収監と相成った。

  • 《まき散らす菌糸生物/Sowing Mycospawn》
4マナ3/3で任意の土地を戦場にサーチし、キッカー(1)(◇)で基本土地でもお構いなしに土地破壊を行うエルドラージ。
この手のサーチによくある基本土地縛りもタップイン縛りもなく、エルドラージ専用2マナ土地である《エルドラージの寺院》《ウギンの目》をサーチ可能。
だがそれ以上に《不毛の大地》をサーチできることが問題であり、4マナで1枚、6マナで2枚の基本土地を含む土地破壊が可能であった。
2マナ土地を複数擁するエルドラージであるため、この極めて優秀な土地破壊が高速で着地する。上述の《露天鉱床》の項にもある通り基本土地をポンポン破壊されたらもうその時点でゲームにならないので多くのプレイヤーから凄まじいまでのヘイトを買っており、「強力かつ不快」という至極真っ当すぎる指摘を受け無事禁止となった。

禁止解除されたもの

  • 《精神力/Mind over Matter》
悪名高き【MoMa】の心臓だがこれ単体では問題ないと判断されたのか解除される。
《時のらせん》が帰ってきた今なら【ドリームホールモマ】や【実物提示モマ】なら組むことができるようになった他、実用性は皆無だが「イクサランの相克」で登場した両面土地を用いれば往時のモマごっこもできる。
ただし《精神力》を介さない【High Tide】でも同じようなデッキになるので、《精神力》が除去られるだけで瓦解する【MoMa】よりかは【High Tide】が優勢。
さらには【実物提示教育】からなら《精神力》よりも、《全知》経由でエムラ様を降臨させる【Show and Tell】の方が安定するというジレンマもある。

エクテンでの禁止を受けてレガシー制定時に禁止とされたが、墓地依存度の高いコンボデッキであるため危険性が薄く解除される。
現在は【エンチャントレス】(女魔術師デッキ)で、大量エンチャント破壊に対する対策カードとして採用されているようだ。

  • 《ドリーム・ホール/Dream Halls》
Magic Onlineで使用可能にもかかわらずそれほど脅威的ではなく、レガシー環境で新しいデッキの登場が期待されると判断され解除される。
解除以後、レガシーでは専用デッキが構築されており、コストを踏み倒す定番のカードだった。
スタンダードではカスレアだった《衝合》が次々とフィニッシャーをサーチしてくる動きは当時のレガシーならではの光景。
しかし《全知》登場後は、「素出しは不可能だがその後はピッチコスト不要」な《全知》の方が構築を縛らず爆発力に優れているという評価になる。
当初はその《全知》を出すまでの「つなぎ」として《ドリーム・ホール》が用いられていたが、現状最も踏み倒したいカードが色を持たない《引き裂かれし永劫、エムラクール》だということもあり、
これらのデッキは《実物提示教育》に寄せた【オムニテル】という構築になっていく。色を持つカードしか踏み倒すことができないこのカードはお役御免としてレガシーを去っていった。
《全知》と違って素出しも許容範囲内なので、お守りとして1~2枚入れている場合もある。

  • 《納墓/Entomb》
解除理由は上と同じ。
古典的な速攻リアニメイトやらの墓地を利用するデッキの多くで活躍しているが、《死儀礼のシャーマン》等墓地対策クリーチャー登場以後は若干下火。
サイドに墓地対策を仕込んでいない人はまずいないので、巻き添えで対策されてしまうのも逆風か。
ただそれでも通ればほぼ勝ち確なので割と見かけるカードである。メタゲームの変遷で墓地への意識が薄くなっている時に当たると対処不能になったりする。
単色デッキを使っている時に《エメリアの盾、イオナ》が出てくると絶望する。納墓からでは無かったが、とある試合で【リアニメイト】が【赤単バーン】に対し《入念な研究》からの《再活性》、対象《エメリアの盾、イオナ》、指定赤で即投了というシーンもある。
この他にも《鋼の風のスフィンクス》《グリセルブランド》など様々なカードが《暗黒の儀式》から1ターン目に出てくる。
《死儀礼》禁止で有利になるか?とも言われていたが、他のデッキも同様に暴れまわっていたことなどもあり、現在はすっかり「モダン以上では許されないが、レガシーでは平凡なカード」といった趣だ。

  • 《金属細工師/Metalworker》
大量マナを生み出せるが、対策されやすいクリーチャーであるためか解除される。
解禁後はレガシー版【MUD】などのエンジンになっており、一時期は《カルドーサの鍛冶場主》戦略などとも相性が良い点もあってよく用いられた。
ただ研究が進むにつれ、土地から大量マナを出せる【Post】が登場したことなどから採用率は低くなっていった。

  • 《厳かなモノリス/Grim Monolith》
《金属細工師》を解禁しても茶単系デッキが現れなかったため、こちらも解除されることに。
上記【MUD】や【エルドラージ・アグロ】で特殊地形対策への対策として採用されることがあるほか、様々なデッキで使いきりのマナ加速のように用いられる。
別途アンタップする手段があるとインチキ臭い動きになる。

  • 《Illusionary Mask》
ファイレクシアン・ドレッドノート》とのコンボデッキ【マスク・ドレッド】が凶悪だった。
が、ドレッドノートのエラッタが解除されたことで他にも似たような悪用手段は増え、3マナとカード2枚で出てくるのが除去耐性のない12/12トランプルだけじゃ危険性も薄くなったとして禁止解除に。
むしろどちらかというと、現代MTGでは2,3番目にルール文章が長いうえにものすごく複雑な挙動をするテキストの方が問題だったりする。
出てくると「【スタイフルノート】なのは分かるし使い方も分かるんだけどテキストが思い出せない」ということで大体ジャッジを呼ぶ羽目になる。

  • 《時のらせん/Time Spiral》
"強化版《Timetwister》"呼ばわりされたこのカードも無事解除される。《精神力》共々大量マナを生み出す《トレイリアのアカデミー》という最高の相棒がいなければ問題ないという判断だろうか。
カウンターが跋扈するエターナルではフリースペルのメリットを活かしにくいという事情もある。さすがに6マナは重いし。
解除以後は主に【High Tide】で活躍している。

  • 《土地税/Land Tax》
たった1マナのエンチャントのくせに毎ターン条件次第で3枚のハンドアドバンテージという黎明期のぶっ壊れカード…であるが、手に入るのが基本土地だけなためか解除された。下環境はそもそも基本土地の投入枚数が抑えられる傾向にあるので投入しようにも出来ないという面もある。
古の【タックスエッジ】というコンボデッキもあったためか、解禁情報が流れた瞬間にシングル価格が急上昇→結局使われずに急降下の流れは多くのレガシープレイヤーを阿鼻叫喚の渦に巻き込んだ。
現在では統率者戦の白単デッキを支える強力なエンジンとして採用されている。

  • 《世界喰らいのドラゴン/Worldgorger Dragon》
1ターンキルをも可能とする脅威のコンボデッキ・【ワールドゴージャー】のキーカード。
……ではあったが、「同じリアニメイトなら《グリセルブランド》釣った方が強いよね」と公式に言われて解除。
一応上記《納墓》と併せて1キルはできるのだが(《Underground Sea》→《暗黒の儀式》→《納墓》→《動く死体》→無限マナ発生させ《天才のひらめき》でゲームエンド)、「カウンターが溢れるレガシーで手札5枚使っての1キル」「もっと安定性の高いコンボデッキが複数存在している」などの点から問題ないと判断されたようだ。

項目参照。黎明期の凶悪ダメージソース。
これも《露天鉱床》に並び面白い挙動をしていて、最初はT1制限入りで自動的に禁止。
その後T1では1年だけ制限解除されたが、T1.5ではその間も禁止のままで、レガシーに移行してもそのまま禁止だった。
しかし時が経つに連れてカウンターは増え、高速で手札を使う手段も増え、結果解除されることに。
《宝船の巡航》や《時を越えた探索》など手札を増やすカードが暴れた直後ということでそういうカードへのメタも期待されたようだ(《時を越えた探索》が禁止された改訂で解除されたことからもそれが見てとれる。)
実際のところ高速化した環境では1ターン目、遅くとも2ターン目に設置できないとロクにダメージを与えることすらままならずただの置物と化すので解除は問題なかったようだ。

カード性能については項目参照。
収録されたスカージがトーナメントで使用可能になる日に禁止カードに指定されたためレガシー(の前身に当たるType1.5でも)で使えたことは無かったという曰く付きのカードだったが、2023年8月7日付けで禁止解除。
《スレイベンの守護者、サリア》や《減衰球》といったコスト増加、自身もストームを持つ《狼狽の嵐》などコンボデッキへの対策カードが増加したことから、コンボ側を強化するという側面も有している。



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最終更新:2025年04月24日 09:56

*1 Type1=ヴィンテージとType2=スタンダードの中間の意味

*2 《精神的つまづき》《レンと六番》が約5ヶ月、《時を越えた探索》が約1年、《アーカムの天測儀》約1年半、が《王冠泥棒、オーコ》が約1年9ヶ月、《死儀礼のシャーマン》が5年9ヶ月、《ギタクシア派の調査》が約7年2ヶ月

*3 ここでは合理性より「お試し」として様々なカードをフィニッシャーに据えた実験的なデッキのこと。変なカードが突然出てくる面白さや、【ワーウルフストンピィ】のようにこういう肩肘張らない部分から生まれた強力デッキも存在する。そもそもレガシーのストンピィ自体、その前身がカジュアルデッキである。

*4 卓が立つと同じ人しかいなかったり、そもそも卓が立たないほど人が減ってしまったというもの。現在は持ち直しているが、一時期は非常に深刻だったようだ。

*5 「アメリカにおいて朝や昼の時間だと参加人数が少なくなり、デッキの方向性が変化する」というもの。

*6 統率者2015とか◯◯統率者デッキに入っている奴。

*7 先にデモコンでライブラリーを空にしてからタッサを唱えると《意志の力》でタッサを打ち消されて負ける。

*8 まあ《墓掘りの檻》で代用しちゃうことも多いけど

*9 シールは弱粘着性で、スリーブ上から貼ってもOK

*10 戦場に出た時に名前ステッカーを貼り、名前中の母音数だけ赤マナを生み出す3マナクリーチャー。どのステッカーを貼れるかは運が絡むがステッカー構築を特化することで最小でも3、最大で6マナ生み出すことができた。

*11 ステッカーではなく20面ダイスで出すマナを決定するように変更されている。機能的にはほぼ同じ物だったりする

*12 それまでポータルやポータル・セカンドエイジ、ポータル三国志はトーナメントでは使用できなかった。当時の開発部曰く「ポータルはポータルというカードゲームであって、MtGではない」。

*13 一度目の起動で手持ちのクリーチャーカードを落としたいクリーチャーと入れ替えて、2度目の起動でそれを捨てる。

*14 自分の墓地のカードを追放して無色1マナの代わりに出来る

*15 そもそもタップするだけで戦場から逃げて次のターンに戻ってくるので普通のアーティファクト対策が効かないし、効くようなカードは他のカードの対策のために入っている。なお先述の《精神的つまづき》もこのカードの対策が可能で、「つまづきゲー」を加速させる一因でもあった。

*16 こういった安全弁が墓地利用系デッキに対する抑止力になっている他、デルバーやレオヴォルドのようなカスタマイズ性の高いデッキが出てきているという意味では多様性はある。

*17 墓地のカードを「本来のマナコスト+手札から1枚土地を捨てる事」により唱える事が可能になる能力。

*18 1位は発売と同時に禁止となった策略カード群、2位は《精神の願望》の使用解禁と同時に禁止、発売日基準だと35日。

*19 無色マナで+1/+1カウンターを乗せられ、+1/+1カウンターを取り除く事でプレイヤーにダメージを飛ばせる。

*20 詳しい説明は省くが最初に相棒のぶっ壊れぶりを示したカード。1ターンキル、《予期の力線》を絡めると0ターンキルまで発生するという【ジャイルーダコンボ】が、相棒のルール改正まで環境を大荒れさせた。

*21 スタンダード、ブロック構築、エクステンデッド、タイプ1.5→レガシー、タイプ1→ヴィンテージ、統率者戦。

*22 昔のスタンダードに存在したパーミッションデッキの【カウンターモンガー】をもじったもの

*23 いわゆるデルバー系デッキ。デルバーは抜けたりするけど