Splatoonシリーズ

登録日:2022/09/12 Mon 01:40:55
更新日:2025/06/23 Mon 12:00:43
所要時間:約 14 分で読めます






世界を塗り替えなイカ?



Splatoon(スプラトゥーン)シリーズとは、任天堂から2015年に発売された『Splatoon』から始まる関連作品の総称である。
本項目では、同シリーズの大まかなゲームシステム、ルール、および各シリーズに共通する作品設定を中心に解説する。


概要

4対4のチームに分かれて行うPvP対戦「ナワバリバトル」をメインコンテンツとするゲーム作品群。
いわゆる対戦型シューティングゲームのひとつである。
同社の大乱闘スマッシュブラザーズシリーズと同様、プレイヤー間の対戦モードが主軸に据えられており、ストーリーモードは添え物的に存在する構成。

対戦型シューティングゲームは歴史の長い由緒あるゲームジャンルなのだが、「対戦」「銃撃」をメインとする関係上、
内容はプレイヤー同士の殺し合いのような殺伐とした内容になることが多く、世界観や難易度的にも初心者や子供には向かないものが大半だった。
これは単にFPS開発者に残酷ゲームマニアが多かったから……ではない。
具体的には下記のように、

  • 銃弾の撃ち合いや刃物での斬り合いになるため、どうしても残酷描写が多くなりがち→対象年齢が上がり、CEROがZ(18禁)のゲームも珍しくない
  • ゲーム性の都合上、戦争などシリアスな題材が選ばれやすい→世界観やストーリーが暗く重くなってしまう
  • 勝利に貢献するためには敵を倒す(キルを取る)ことが重視される→(チーム戦では)キルが取れないと足手まといになってしまう→キルを取るには緻密な操作(エイム)が要求され慣れが必要
  • 倒されたプレイヤーはゲームから排除される*1→そうすると初心者は入場後何もできないうちに(他プレイヤーに)排除され、まともにゲームをプレイできない→そのため上達も困難
というように、ゲームジャンル自体に構造的問題があったためである*2

このことから、FPS/TPSは広く知られたジャンルであると同時に「ゲームをあまり触らないライト層向けの調整がしにくい、とっつきにくいゲーム」「残酷描写が多いシリアスなゲーム」というイメージを抱えたジャンルでもあった。

本シリーズはそうした課題を
  • 銃弾の代わりにインクをかけあうスポーツという設定(殺し合いではなく、流血や欠損表現もない)
  • 陣を取ることで対プレイヤーを避けても(エイムが下手でも)勝ちに貢献できるゲームシステム
  • ローラーやフデなどの銃撃戦をする必要のないブキも使用可能
  • キャラクターを人間ではなくイカを筆頭にカートゥーン風で描かれた水生生物で構成(哺乳類はネコのみ登場)
  • 任天堂お家芸の秀逸なキャラデザイン&底抜けに明るい雰囲気(+ブラックジョーク)

……といった要素で解決。

結果、発売後またたく間に知名度を勝ち取り、ライト層のプレイヤーからは「新感覚の対戦ゲーム」、コアなゲームマニアからは「TPS界の革命児」と評され、空前の大ヒット作品となった。
「マリオカート」や「スマブラ」シリーズにも出演を果たした他、数々の企業とコラボを果たすなど、現在では任天堂の人気を支える大看板の一つとなっている。

また、画面内情報を極力排した画面構成も特徴的で、被ダメージは画面の汚れで、インク残量は背中のタンクで把握する構成になっている。
数字でわかる情報は制限時間、ゲージで表示されるのはスペシャルウェポンや補充中のインク量ぐらいであるが、直感的に現在の状況を把握しやすくなっている。


世界観


作品によって多少異なるが、「流行の先端を走る大都会に、田舎出身のインクリング(プレイヤーキャラ)が上京してきた」というのが大まかなあらすじであり、舞台となるのは基本的にイカした大都市。
基本「ナワバリバトル」の腕前、経験が「一人前のイカの嗜み」でありステイタスとなるため、ナワバリバトル(≒オンライン対戦)をろくにこなさない状態だと「イカしていない」「信頼に値しない」とされ、ショップ類のことごとくが利用不可。
また、一定の条件を満たしてショップに入れるようになったとしても、上位の装備品はバトルを重ねて「ランク」を上げないと購入制限をかけられてしまう。
……といった具合に厳しいところもあるが、作中の登場人物であるインクリングたちは基本テキトーで享楽的な性格なので、全体としてユルいテンションで話が進む。
あと、ビジュアルが全体的にチャラい……正確に言えば2010年〜2020年代の若者文化を意識したようなデザインで統一されている為、流行を意識したような「ハイカラ」な雰囲気も特徴。

バトルのBGMは加工されたボーカル(イカ語)が入るロック調の物が中心で、作中で人気のバンドやアーティストをイメージして作曲されている。
実際の演奏者もバンド毎に違うこだわりっぷりで、
いずれも、ゲーム内でなんらかの形で実際に流れているという設定があるのも特徴(バトルBGMはイカたちが実際に聴きながらバトルをしており、店のBGMなら店内のBGMと言った具合)。

現在ナンバリングされている作品はいずれもゲーム起動時にニュース番組が流れ、やはりインクリングのMCが現在のフェスの状況やバトル開催地等のイベント情報をお知らせしてくれる。

なお作中世界は「現代から12000年後の遥か未来の地球」という設定。
この惑星の支配者であり現代で言うところの「人類」にあたる存在はこのインクリングたちで、その他の登場人物もほぼ全てが海洋生物で構成されている。*3
元・陸上生物、とくに哺乳類はホモ・サピエンス含めて滅亡しており、化石や旧時代の遺産あるいは伝説としてごくわずかに存在が語られるのみとなっている。
でもNintendoはまだある。




ゲームの特徴


ナワバリバトル


本作のメインとなる対戦は「ナワバリバトル」と呼ばれる陣取り合戦である。
プレイヤーは銃器にあたる「ブキ」を持ち、4人対4人の計8人でバトルに参加。
制限時間の間、ブキを使って自陣の色のインクで地面をできるだけ広く多く塗ることを競い合う。
タイムアップすると両チームの「ナワバリ」…もとい、塗ったインクの面積が比較され、より広い面積を塗ったチームが勝ちとなる。

従来のFPS/TPSのようにブキを使って相手プレイヤーを攻撃し、倒す(=キルを取る)こともできる。相手を倒すと自分の色のインクで爆発するので得点にもなる。
ただし、勝敗を直接左右するのはフィールドを自陣の色に塗るという一点
*4
倒されても10秒程度で復活できるのでどんなにキルを取られても塗りまくっていたら試合に勝ててたなんてことは普通にある話である。

相手プレイヤーを倒して相手を妨害するだけでなく、塗ることで自陣を広げて味方の道を確保したり、フィールドの塗り残しを埋めていったり、相手に自陣の色を上書きされないよう防衛に徹したりと、勝ち筋は様々。
極めれば多様な選択肢を求められるのだが、勝手が分からない初心者でも、ナワバリバトルならとりあえずそのへんを塗っておけば最低限の貢献はできる。
FPS/TPSに慣れていないプレイヤーは照準が定まらず誤射を連発することになるだろうが、それすらも「撃った箇所を塗って自陣の面積を広げた」というスコアは入るのである。

ちなみにヘッドショットの概念はなく、体のどこに当ててもダメージは同じになる。距離減衰の概念に関してはきちんと設定されているが、実際の射程とレティクルの反応する射程に差があり、レティクル反応距離内でのダメージ差は微々たるものになっている。
また、ブキによってはインク弾の当たり具合でダメージが変動するケースがある他、爆発系の攻撃は爆心地と外周で威力が変わる。
ただそもそも一般的なTPSに比べると、交戦距離が非常に短く設定されているため、エイムの意識も少なからず違ってくる。

陣地に塗る「インク」自体にもバフ/デバフの効果があり、相手の色の陣地の上では足を取られ、自身の色の陣地の上では身を隠してすばやく移動したりインクを回復したりできる。
このため、基本的にプレイヤーは自身のインクの外には出ず、無茶な突出が起こりづらいのだが、「相手陣地にボムを投げ込む」「長射程のブキで一気に塗り替える」「相手の警戒が向いていないルートから奇襲する」「フデや雷神ステップで強行突破する」といった方法で陣地に穴を開けることもできるため、
これを如何(イカ)に防ぐか、あるいは行うかが戦略上重要になってくる。

ナワバリバトルでは満足できない刺激を求めるプレイヤーは、ガチマッチ(バンカラマッチ)と呼ばれるより複雑なルールでのバトルに挑むことができる。
こちらはランクも細かく分けられており、これが初心者と上級者の棲み分けとなっている。


プレイヤー


プレイヤーが操作するのは、二足歩行する人のようなイカのような生命体「インクリング」。
2では、インクリングの敵対(?)種族であるタコのような生命体「オクタリアン」も(条件を満たせば)使用できるが、性能は同一。
ただ、ユーザーから正式名称で呼ばれることは殆どなく、単に『イカ』『タコ』呼びされる事が多い。
3では最初からイカとタコの好きな方を選べる。
彼らはインクに潜って移動出来、機動力に優れた「イカ形態」と、移動は遅いがメインウェポンやサブウェポン、スペシャルウェポンを使いインクを塗り活路を広げる「ヒト形態」を使い分けることができ、
ゲームではこれを切り替えながら戦うことになる。
インクリングには、インクを塗る銃器にあたる「ブキ」と、装備品にあたる「ギア」をそれぞれ装備させることができ、装備内容によって性能は大きく変わる。
ただし、どのブキも「インク量は有限であり、撃ち尽くすと補充するまで「弾切れ」ならぬインク切れを起こす」点は共通である。
なおインクリング、オクタリアン共に水生由来の生物にもかかわらず、水が大の苦手。ステージ外等の深い水に浸かってしまうとインクであるため溶けてしまう。

ちなみにインクリングは「自分と違う色のインクを受けた時」にダメージを受けるため、フレンドリーファイアは設定から起こらないようになっている。弾丸自体は命中時にかき消されてしまう*5ので、味方に当てないことがベストではあるが、過度に気を張る必要はない。この辺りも間口の広さに繋がっているのだろう。


ブキ


インクを発射する各種武装。試合開始前にあらかじめ選んでおき、試合中は変更できない。
主武装であるメインウェポン、投擲または設置するサブウェポン、必殺技であるスペシャルウェポンの3種からなり、ひとつのメインウェポンに対して固定のサブウェポンとスペシャルウェポンがついているというシステム。

メインウェポン

他FPS/TPSで言うところの銃器にあたるのだが、「」関係上、既存の人間の武器のカタチに囚われないものが多い。
そもそも初期装備「わかばシューター」は縁日あたりで馴染み深いプラスチック製(っぽい)水鉄砲だし、なんなら筆だったりローラーだったりバケツだったりと、どう見ても銃じゃないのも一定数ある。
ブキのデザインとしては水に関連する玩具、日用品、絵画道具、任天堂が過去に出したグッズP90といった感じ。
「ブキ」の名を冠してるだけあり、インクタンクが特徴的なものの「」等のデザインも増えてきた。




サブウェポン

主に投擲のボムや、シールドといったサポート性能を持ったブキ。
「サブ」と銘打っているが、インク消費量はメインウェポンよりもかなり多いため、むやみにつかうとインク不足になりやすい。
使いどころは慎重に。

スペシャルウェポン

ステージの地面や床を塗り続けると「スペシャルゲージ」が貯まり、ゲージが満タンになると1回発動できる強力なウェポン。
バトルの切り札となるため、ここぞというときに使うべし。


ギア

いわゆる装備品。アタマ、フク、クツの3種があり、ハイカラスクエアの各店で購入することができる。
ギアにはそれぞれに「ギアパワー」と呼ばれる能力がついており、装着することにより、それに対応した能力がアップする。
最初からギアに付属している「基本ギアパワー」と、ギアのレア度に応じて1つから3つのスロットにつく「追加ギアパワー」があり、
「追加ギアパワー」はバトルを重ねることでランダムで追加されていく。

なお、大多数のギアの見た目はその辺の服屋で売っている普通のコーデであり、装備するとインクリングの外見にきちんと反映される。
性能重視で選ぶか、ハイカラな見た目重視にするかはプレイヤー次第。
かわいい人型のイカちゃんが様々なファッションに身を包むビジュアル面・コーデ性の高さも手伝い、こうしたジャンルにあまり縁がなかったであろう「かわいい」好きの層への求心力も発揮している。

2以降は「ギアパワーのかけら」というアイテムを使って自分の好きなギアパワーを付けることができ、見た目と性能を両立させることが可能となった。


シリーズ作品一覧






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最終更新:2025年06月23日 12:00

*1 一定時間経過したのちリスポーンする場合もある。

*2 勿論、他の対戦型シューティングゲームも、こうした課題に対応する手段は模索している。

*3 ちなみにコレ、このゲームのみでの荒唐無稽な設定ぽいが、現実の学説においても数億年後の地球を支配しているのはイカなのではなイカ?という仮説が存在している。

*4 もちろん、敵の行動の阻止のためのキルや逆に自身がキルを取られない立ち回りは依然として超重要である。

*5 一応インクを命中させた味方のインク量が回復するという小技があるが、実践での使い道はあまりない。