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クジャク

登録日:2025/12/21 Sun 17:46:10
更新日:2026/06/17 Wed 23:29:42
所要時間:約 5 分で読めます





クジャクとは、キジ目キジ科クジャク属に分類される鳥類。

生物学的な分類とか難しいことは置いておいて、一般的には「動物園にいる綺麗なアイツ」として認識されている。
漢字で書けば「孔雀」
大型の鳥なのになんでスズメの字が?と思う人もいるかもしれないが、恐らくは中国に渡ってきた際に単に音だけを見て充てられたと考えられている。
同じ理由で「(あな)」にも特に意味はない。

英語ではPeacock(ピーコック)……と言いたいところだが、それはオスの名称。
メスはPeahen(ピーヘン)、ひっくるめてPeafowl(ピーフォウル)と呼ぶのが正解*1
でも面倒くさいからみんなピーコックって呼んでいる。




概要

世界で最も美しい鳥の一つ。異論は認めるが、たぶん少数派。
オスが広げる絢爛豪華な飾り羽は、古今東西あらゆる芸術家やデザイナーの創作意欲を刺激してきた。

一方で、その生態や実態を知ると「綺麗だけど……うん……」となる、なんとも言えない愛嬌(?)を持った鳥でもある。
「見掛け倒し」という言葉の語源になったとも言われるが、実物は結構パワフルで凶暴。

主な種類は以下の通り。

  • インドクジャク
おなじみの青いヤツ。日本の動物園にいるのは大体これ。
首から胸にかけての鮮烈なブルーが特徴。 性格は(この手合いにしては)比較的マイルドで、飼育もしやすい。
インドの国鳥でもある。

  • マクジャク
東南アジアに住む緑色のヤツ。
インドクジャクよりデカいし、トサカの形も違う。
気性が荒い上に喧嘩っ早い。おまけに寒さに弱いので日本の動物園ではレアキャラ。

  • コンゴクジャク
1936年まで発見されなかった「アフリカの隠しキャラ」。
あの派手な飾り羽を持っておらず、見た目は完全に「ちょっと綺麗なキジ」。そりゃ見つからんわ。
ちなみに日本の動物園ではズーラシアのバックヤードである繁殖センターにしかいない。


あの「羽根」の真実

クジャクといえば、あの目玉模様(眼状紋)がビッシリついた扇状の羽根。
求愛の時期になるとバサーッと広げて「どうだ俺美しいだろう!」と見せつけてくるあれ。

誤解されがちだが、あれは尻尾(尾羽)ではない。
正体は上尾筒(じょうびとう)という、本来なら尾羽の付け根をカバーするための羽が、進化の過程でバグったとしか思えないレベルで巨大化したもの。
本当の「尾羽」は、あの巨大な扇の後ろ側で、必死に飾り羽を支えている地味な短い羽のこと。
縁の下の力持ちポジションである。

  • 構造色の妙
あのギラギラした色は、色素(ペンキ的なもの)がついているわけではない。
構造色といって、羽の微細な構造が光を干渉・反射させることで色が見えている。
シャボン玉やタマムシと同じ原理。
つまり、クジャクは全身に光学迷彩ならぬ光学主張を纏っているようなもの。ナノテクすごい。

  • ハンディキャップ理論
「あんな目立つ羽根をつけてたら、天敵に見つかって即死だろ」 もっともな意見である。
実際、にとっては「どうぞ食べてください」と言わんばかりの看板背負ってるようなものだし、逃げるときも邪魔で仕方がない。

じゃあなんであんな進化をしたのか? 進化論的には「俺はこんなに無駄で邪魔なハンデを背負ってても生き残れるくらい強い(=優秀な遺伝子を持ってる)んだぜ!」というアピールだとする説が有力(ハンディキャップ理論)。
命がけのファッション。モテるためには死のリスクさえも踏み倒す。それがオスの生き様である。

なお、繁殖期(春~初夏)が終わると全部抜け落ちる。
秋の動物園に行くと、ただの「ちょっと大きい鳥」が歩いているだけという悲しい光景に出くわすことがあるが、苦情は受け付けない。


生態

見た目は貴族、食性は野武士。
基本的には雑食で、草の芽や種はもちろん、虫、カエル、トカゲ、そして毒蛇まで食べる。
特にサソリやコブラといった「人間が嫌う有毒生物」をバリバリ捕食することから、後述する信仰の対象になった。
を食らわば皿まで……というか毒そのものが栄養源。

  • 飛べるの?
飛べます。

「飛べない鳥」だと思っている人も多いが、普通に飛ぶ。
ただしスズメみたいに自由に飛び回るわけではなく、危険を感じた時に木の上に緊急避難したり、ねぐらに帰る時に飛ぶ程度。
まぁキジの仲間だし、そんなもんか。
あの長い飾り羽を引きずりながら、重力に逆らってフワリと浮き上がる姿は幻想的。
着地は結構ドスーンと落ちてくる。

  • 鳴き声
最大の欠点。 その優雅な見た目から、さぞ美しい声でさえずる……と思いきや。

「イヤァァァァァン!!」 「ケオォォーーー!!」

文字で表現するのは難しいが、「の喧嘩」と「女性の悲鳴」と「赤ちゃんの絶叫」を足して3で割らないような声で鳴く。
しかもデカい。金属的でよく響く。
繁殖期には早朝から絶叫しまくるため、近隣住民にとっては公害レベルの騒音となる。
「美しいから」と安易に飼い始めると近所付き合いが崩壊するので注意。
まぁキジの仲間だもんね。ケーン!


人間との関わり

  • 食材として
見た目が美味そうかどうかは別として、かつては高級食材だった。
ローマ皇帝や中世ヨーロッパの貴族は、宴会の席で「クジャクの丸焼き(羽根つき)」を出して権力を誇示したとか。
味は硬くて筋っぽくて微妙らしい。
進化は彼らに「味の良さ」までは与えなかったようだ。鶏肉の偉大さがよく分かる。

  • 神話の中でのクジャク
神話に於いては、前述の「毒蛇を食べる」という益鳥っぷりから、「災厄や煩悩(毒)を喰らう」として神聖視されてきた。

孔雀明王
仏教の守護者。他の明王が怒りの表情で武器を構えている中、一人だけクジャクに乗って涼しい顔をしている。
有毒生物を食べてくれることから人間にとっての「毒」である「煩悩」や「災害」といった苦しみも食べて取り除いてくれる功徳を持つ存在と信仰されていた。

ギリシャ神話
最高神ゼウスの妻、ヘラの聖鳥。
あの目玉模様は、ヘラに仕えていた百目の巨人アルゴスの目が移植されたものらしい。ちょっとホラー。

ローマ帝国
「肉が腐らない(と信じられていた)」ことから、不死の象徴とされた。


日本におけるクジャク

日本には結構昔(飛鳥時代あたり)から輸入されていた。
江戸時代には庶民の見世物として大人気。伊藤若冲なんかの絵師がこぞって描いたのもこの頃。

現代では、だいたいの動物園にいる。 なんなら放し飼いエリアで、ハトみたいなノリで通路を歩いてたりする。
人間に慣れきっており、カメラを向けるとサービス精神旺盛に羽を広げてくれる個体もいる。
ただ、あれは別にファンサしてるわけじゃなく、単に威嚇か求愛のどっちかである。


野生化(帰化)問題

笑えない話として、現在日本の一部地域(沖縄県の宮古島・小浜島や、伊豆半島など)で野生化したインドクジャクが激増して問題になっている。
  • 天敵がいない(大型肉食獣不在)
  • エサが豊富
  • 気候が快適
というクジャクにとっての楽園条件が揃ってしまった結果、固有種のトカゲや昆虫を食い荒らす侵略的外来種として君臨してしまった。
地元では「綺麗な鳥」ではなく「畑を荒らす害鳥」「生態系クラッシャー」として駆除対象になっている。
観光客が「わあ、野生のクジャクだ綺麗!」と喜んでいる横で、地元自治体が頭を抱えている構図はなかなか皮肉なものがある。
持ち込んだのは人間なので、鳥に罪はないのだが……。


クジャクの名を冠するもの

  • クジャクチョウ
タテハチョウ科のチョウの一種。
名の通り翅の表側にクジャクの飾り羽のような大きな目玉模様(眼状紋)を持つ。
ただ、実際の孔雀ほどに鮮やかな構造色をしている訳ではない。

  • クジャクヤママユ
ヤママユガ科のの一種。
こちらも翅に目玉模様がある。ただ色は割と地味。
ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』のキーアイテムとして登場するため、名前は聞いたことがあるという人も多いのではないだろうか。
ちなみにドイツ名は「Nachtpfauenauge(夜のクジャクの目)」で、上述の作品が日本語に翻訳され広まったことで和名が付けられたという。

  • クジャクバト
カワラバトを品種改良したもの。
尾羽が発達してクジャクの飾り羽のようになっている。その尾羽のせいか、飛ぶのは苦手。

  • アイスポットシクリッド
南米のアマゾン川に生息しているシクリッドの一種。
その模様から別名をピーコックバスとも呼ぶ。

  • くじゃく座
ぼうえんきょう座やふうちょう座などのマイナーな星座と隣り合った場所に星座として存在している。
16世紀頃に作られた比較的新しい星座で、かなり南のほうにあるので日本から見ることは難しい。


クジャクモチーフのキャラクター(ほとんどが♂の姿)


孔雀に由来する命名






追記・修正は、飾り羽を広げてメスに無視された経験のある方にお願いします。

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最終更新:2026年06月17日 23:29

*1 なお“cock”、“hen”、“fowl”はそれぞれ「家禽のオス」「家禽のメス」「家禽全般」な意味