魔法騎士レイアース (SFC)

【まじっくないとれいあーす】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
メディア 12MbitROMカートリッジ
発売元 トミー
開発元 パンドラボックス
発売日 1995年9月29日
定価 9,800円
判定 良作
ポイント 異世界モノ
初見プレイヤー歓迎
イノーバは添えるだけ
魔法騎士レイアースシリーズリンク


概要

CLAMPによる魔法騎士レイアースがあらゆるメーカー、機種、ジャンルでゲーム化されており、本作はSFC版でRPG。トミーの表現力との融合を果たし、キャラゲー史に残る名作に仕上がっている。

特徴

  • 東京タワーにいた獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風の3人が、異世界セフィーロに飛ばされ出会うところから始まる……
  • ストーリーは基本的に原作準拠であるがパラレルワールドに近いものがある。本作に限った話ではないので色々な作品を考えるのも一興。なお、本作にはエンディングは2種類存在する。

原作要素

  • 登場人物
    • エメロード姫によって召喚された獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風は勿論、原作でお馴染みのキャラも登場。
    • 姫に仕える745歳導師クレフ、セフィーロ最高位の創師プレセア、その珍獣モコナ。敵役には神官ザガート、イノーバ、アルシオーネ、アスコット、カルディナ、剣闘師ラファーガなどが登場。火神レイアース、海神セレス、空神ウィンダムにも実際に会ったりする。
    • 声優による音声も用意されている
      • 流石にSS版のようにフルボイスとまでは行かないが、声優達による音声が用意されており戦闘中かけ声を出す。

ゲーム性

  • LかRでダッシュ移動が行え快適に移動できる。ワールドマップ上ではモコナハウスを出すことができ、ハウス内ではベッドでの就寝(HP、MP全回復)を行えるため便利。
  • マップの方も遠景による奥行きが表現されている。
  • エンカウント制で倒した敵に応じてEXP、GOLD、たまにアイテムを落とす。
    • EXPを稼ぐとレベルアップする。なお戦闘内容によって配分は偏るし分断されて個別に戦わされるなどでもEXPが不揃いになるが、これまでの取得経験値に応じて調整も入るため、基本的にはそのうちEXPが揃うようになっている。
    • 武器防具については全員とも剣と鎧で、シナリオ進行に応じて強化される。店で買える物や宝箱から獲得できる物は回復・攻撃・逃走用アイテムといった消耗品のみ。
      • 一応ステータス画面でのアイコンは変わるが、追加される特殊能力などはない。シナリオ進行での強化とは別に、剣なら通常攻撃を行う、鎧ならダメージを受ける、の蓄積でも剣・鎧のレベルが上がり攻撃力・防御力が僅かだが上昇していく。
    • 魔法の多くは本作オリジナルであるが、それぞれが習得する魔法は原作通りに三者三様差別化されている。ネーミングセンスも世界観に合っているのもポイント。また三魔神全てと契約し終盤に入ると、魔神の力を借りた更に強力な魔法を習得できるようになる。ただしGB版と違って召喚魔法は無い*1
    • クリティカルの際は、味方は「CRUSHING ATTACK!」敵は「GREATEST ATTACK!!」と画面上に出る。
    • 基本的に3人で戦うが、時折4人目に原作キャラが加入する事もある。

評価点

グラフィック演出

  • オープニング
    • エメロード姫がこの世界を救うべく3人の戦士をセフィーロに召喚するシーンが、主題歌とともに多くの一枚絵で表現される。本編でも光海風の自己紹介、魔法の習得などあらゆる重要な場面で一枚絵が盛り上げてくれる。
  • 会話の際も、多彩な表情を見せる大きな顔グラとともに文章が表示されるので見栄えが良い。ドット絵も多彩な仕草を見せる。
  • 戦闘システム
    • スーパーマリオRPG』のような構成で立体感がある。
    • 戦闘中に会話が行われないのは惜しいが、ドット絵は色々な仕草を見せるし、敵の方も静止画ではなく実際に動き、魔法を使った際はエフェクト、上位魔法では画面全体でド派手。
    • シナリオ進行による剣と鎧の進化具合もドット絵に反映される。火神レイアースと契約後、それまでの制服の上から鎧を着込む形式ではなく完全にファンタジー然とした姿となる甲冑最終形態も、ドット絵でしっかりと表現されている。
  • 難易度は基本的に低く、当時のレイアースファンの女児にも優しい出来。説明書も分かりやすく非常に丁寧な作りである。
    • ただし終盤の難易度は……(後述)
  • 戦闘曲も多く用意されており、ラファーガ戦から新たなボス曲が流れるようになるのは好評。
    • 一度は魔法騎士を追い込んだものの、エメロード姫のために洗脳に抗う苦悩が熱いBGMで盛り上がる。その後はマジックナイト3人が一枚絵とともにいよいよ終盤に差し掛かった事を実感させてくれる。
    • 最初のラファーガは負けイベントだが無理をすれば勝てる。HPが高い上に何度も復活するので無意味ではあるが挑戦したい方はカルディナを仲間にしておくと少し楽になる。
  • マルチエンディングの採用
    • ゲーム中に一定の条件を満たすとエンディングが変化する。また、終盤のボス戦に敗北すると特殊なゲームオーバーを見ることができる。
      • フラグを立てると見られるグッドエンディングは、原作やアニメの悲劇的な展開を知るプレイヤーにとって理想的な結末であり、最後のラスボス2連戦の直前のボス(セミラスボス)戦後でもフラグを立てることができるのも高く評価できる。

賛否両論点

  • 終盤は高難易度
    • 後述の序盤のアルシオーネ戦を除けば中盤までは普通に戦闘をこなしておけば特に詰む事は無いが、終盤はザコからして高火力全体攻撃を繰り出してくるようになり辛い。負けイベントを覆して喜んでいるようなプレイヤーさえも、HPMPがいくらあっても足りない状況が来る。
    • 具体的にはラストダンジョンのアルシオーネ戦から難易度が急上昇する。直前にセーブ・回復ポイントがあるため詰むことはないが、多くのプレイヤーはここでレベル上げを強いられただろう。

問題点

ゲームバランス

  • 戦闘
    • 沈黙の森に登場するアルシオーネが強すぎる
      • 最初のダンジョンである沈黙の森に登場するアルシオーネがかなり強く、普通に進めた場合のレベルだとアルシオーネの全体魔法2発で全滅してしまう。単発魔法の威力もかなり高く、2~3発で戦闘不能となってしまう。運が良いと威力の低い打撃攻撃をする事もあるが……。
      • そのため、安定して突破するには序盤では唯一レベル上げが必要になるポイントとなる。おまけにアルシオーネ戦の直前にセーブポイントが無いため、やる気を削がれたプレイヤーもいたかもしれない。最序盤に登場するアルシオーネはほのおのやで一撃で倒せるため、面食らったプレイヤーもいただろう。
      • 幸いな事に、この時点ではマジックナイト達より頭一つ抜けて強いフェリオが仲間にいるためレベル上げ自体は容易である。セーブポイントもアルシオーネ戦が発生する場所からは遠いが一応ある。
  • 序盤でレベルを上げ過ぎると面倒な事になる
    • 後に、光と海が襲って来る状況になるが倒すとゲームオーバー。わざと負けるのが正解であるがレベルを上げ過ぎていると、こちらのHPは高く相手の攻撃は軽減して時間がかかる。
    • 防具のレベル上昇は受けたダメージ量が関係するので、最高レベルの99になると敵からはろくにダメージを受けないので、混乱した仲間に攻撃されるのを待つ方がよほど効率的になってしまう。もっとも、そこまで強くなったら防具のレベル上げはやり込みの領域なのだが。
  • 敵の名前が表示されるのは戦闘の最初のみであったり、エンカウントする度にBGMが戻るなどの点が目立つ。
  • 戦闘中に会話が一切ない。ストーリーに力が入っているだけに非常に残念なところである
  • テンポ
    • エンカウント率が高い。逃げるコマンドによる逃走成功率が低い。ダメージ表示の演出が長い。ドラクエでいうルーラのようなものが無いので移動が大変。とテンポを損なう部分がある。
    • ただし逃走が確実に成功するアイテムが安価で無限に買えるし、ダメージ表示は必要な情報で、以前に行った場所に戻る機会はほぼないことも付け加えておく。
  • 宝箱
    • 序盤では森の奥からわざわざ取りに行かせるなど重要な位置づけなのだが、それ以降は宝箱から手に入るのは消耗品ばかりで開ける楽しみがない。ダンジョンの一定期間中にしか行けない場所や最終エリアでは上位回復アイテムなどが入っているのだが……
  • 通貨の用途
    • 単位はGOLDで敵を倒すと落とすのだが、用途は街で消耗品を買う以外に使い道がない。プレイヤーによっては10万GOLD余るという話もザラ。
      • その分アイテムをガンガン買って、ゴリ押ししたり派手な魔法を連発していく豪快なプレイスタイルも可能となっている。
    • カルディナを30,000GOLDで雇うという選択肢もある。直前まで光たちと敵対していたが、ここは、ふざけるなと言わないで仲間にすると色々な場所でセリフが聞けたりするので面白い。そして負けイベントを覆したいプレイヤーにとっては若干の戦力にもなりうる。
  • 次にすべき事が分かり辛い
    • イベントの終わりには次の目的地を教えてくれるのだが1回だけでありそれを忘れてしまうと大変である。その後は誰も何も言わないし、目的地に分かり易い目印があるわけでもないのでセーブする際はそういう事にも気を付けないといけない。
  • メニュー画面では、HPが満タンでも回復アイテムや回復魔法を使うことができてしまう。

その他

  • 序盤の東の大陸
    • 導師クレフは「このエレルの森」と言っているが、実際はフィールドに出なくてはいけない。すぐ南にあるのだが、そこも2本の木が木々に囲まれて森というにはおかしな印象である。
    • 気づけば楽だが下手をすると大陸をさまよう事になるだろう。広いだけで他に何かあるわけでもなく、他の大陸へ進んだ後は戻って来る事が出来ない。
  • ギミックが薄い
    • 原作で登場したロケーションを実際に冒険できるのは良いのだが、各ダンジョンともに構造の複雑さと出現する敵で特徴づけられるに留まっている。
    • あるとするなら「沈黙の森」では魔法などを封じられる事くらいである。
      • 原作準拠は良いのだが、こちらの森も2本の木で森には見えない。ついでに言うと、左から入ってきたのに龍咲海は右から出て行こうとするのは違和感がある。
    • 本作はシナリオ重視のRPGなのでギミックの薄さは大きな問題にはならなかったが、これをアクションでやっていたら敵と戦うだけのゲームとしてTOMY前作の『ESPARKS 異次空からの来訪者』と同じ轍を踏んでいた事であろう。
  • フィールドの乗り物は無い
    • イベントでは色々と出て来るが、プレイヤーが自由に乗り回す事は出来ない。フィールドは広大でマップも見れないので不便なところ。
      • そもそもイベント数に比べてワールドマップが明らかに広すぎるのが問題。
      • 原作では三魔神集結後、魔神に搭乗しザガートの居城まで飛翔してすぐに辿り着くという流れになっており、これに倣って魔神の力による各施設、ダンジョンへのファストトラベル機能が終盤解禁されても良かったかもしれない。
  • 文章のバランス
    • 顔グラが表示されているのは良いが、それにより文章のスペースが圧迫されており詰め込んだ印象、しばしば変なところで改行が入るのはザラ。シリアスな場面でもそうなるのでやや興が削がれる。
    • SS版のように、文章の上に顔グラを表示する仕様の方が良かっただろう。
  • ボイス
    • ボイスは掛け声しかなく、その掛け声も通常の行動時とクリティカル攻撃時の2種類しかない。
  • 滝の流れ
    • エメロード姫のいる場所に滝があるのだが、真下ではなく右下に流れているように見えるので、流れがおかしいと言える。
  • ラファーガの顔グラフィック
    • ラファーガに勝利しザガートによる洗脳が解けても、文章表示時の顔グラが虚ろな表情のままである。その後イノーバ戦後にパーティから離脱し、エメロード姫の城の警護に戻った際に会いに行ってもそのまま。
  • イノーバの扱いが悪い
    + ネタバレにつき格納
  • ザガートに対する忠誠心は厚く、マジックナイトが3体目の魔神を復活させた事に対しては命懸けで戦う事を告げる。
  • 後に終盤でボスとして立ちはだかり、戦闘は一旦区切り、正体はケルベロスになるが、そもそもイノーバは精獣でありケルベロスではない*2*3
    • 本作では獅堂光達とは全く面識がなく、あなたは誰だ、ザガートの仲間と言われた挙句、適当に交戦した後は、最後のあがき爆発も1ダメージにもならず無駄に終わる。
  • 直後にはラファーガが離脱して戦力低下した所でアルシオーネ戦がある。
    • 戦闘前はイノーバについて触れられる事もなく、当たり前のようにお供としてケルベロスを2体召喚、その際の演出もすぐ近くのセーブポイントの使い回しである。
      • わざわざセーブポイントが見える場所まで戻ってからの召喚なので、嫌でも使い回しが目に付く。
  • ストーリーでも戦闘面でも全くもって殆ど良いところがなく完全にお株を奪われた格好となり、ケルベロスで噛ませ犬という哀れな中ボスという扱いになってしまっている。なかでもSS版を知っているプレーヤーはあまりのギャップに絶句した。
    • 加えてそのケルベロスのパラメータは精獣化イノーバと同様*4となっており、大ボス3体を同時に相手取る必要があるという非常に厳しい戦闘になる。

総評

やや不親切な個所は目立つが、レイアースの世界観をSFCに詰めこんで、キャラゲーとRPGを両立させた名作と言える。ファンの方は勿論、初見の方にも勧めたい。

余談

  • 1995年はレイアースのアニメもゲームも大きな盛り上がりを見せたと言える年である。
    • 本作発売の1か月前にセガサターン版が発売されている。あちらはアクションRPGであり、悲劇性の強いストーリー、アニメーションなど大きく異なる。
      • また、同月にGGでも『魔法騎士レイアース2 ~making of magic knight~』が発売されている。こちらは育成シミュレーションとなっている。
    • 本作発売の1か月後にGBでも『魔法騎士レイアース2nd The Missing Colors』が発売。
    • 本作発売の2か月後にはレイアースのアニメが最終回を迎えている。

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最終更新:2023年12月03日 00:26

*1 一応画面上では「魔神が現れて魔法を放つ」という演出になる。

*2 イノーバは、アニメオリジナルキャラクターであり、本作が発売した際はアニメが放送中であったため、情報が不足していたと思われる。

*3 ちなみに、1か月ほど前に発売されたSS版の方ではイノーバは猛威を振るってきており、精獣についても深く掘り下げられている。

*4 要するに使いまわし