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真夜中の笛吹き達は座して嗤う。

  • 余所の組織が楽しそうなので、ハーメルンの皆さんもわちゃわちゃしようぜ!って感じのリレーです。
  • キャラ名はなるべく入れるようにして下さい。
  • 他PL様のキャラ動かしたい時はご相談の上で~



第六疾患者互助組織〝ハーメルン〟には、所有しているいくつかの建物がある。
所謂シェルターと呼ばれる、半分寮のような形で構成員に提供されている住居だ。
敵対組織に狙われている疾患者の安全を確保するため、また、発症によりそれまでの住まいを離れなければいけなかった疾患者の保護のため。

ここ、T島区の外れにあるワンルームアパートも、そのようなハーメルン借り上げのシェルターの一つ。
2階の一番奥の部屋から、普段では絶対に聞かれないであろう賑やかな声が聞こえてきた。

「やっぱ冬は鍋だよなぁ!鍋!」

着流し姿が堂に入っている青年が、片手に一升瓶を持ちつつ笑う。
部屋は、固いベッドの他にほとんど物が無く、まるで生活感が感じられないが、その部屋の中央、カセットコンロにかけられた土鍋だけが、場違いなほどに明るくグツグツと煮え立っていた。

「……なぜ、自分の部屋でやる…? 意味が分からない…」

ベッドに腰掛けて、部屋の主・ルフェウス=ワグナーは、ぼそり、と抑揚のない声で尋ねた。
いつもと同じように、身体が活動するのに必要最低限の栄養をゼリー飲料から摂取して寝ようと思っていたのに、何故今、目の前で、自分の家にあるはずもないカセットコンロと土鍋がセットされ、これから与太郎の言う「鍋パ」が繰り広げられようとしているのか。
感情を殺した〝死体〟には、到底理解の及ばない光景だった。



ぼやくルフェウスの真向かいに、コンロを挟んで座する制服姿の少女。
所在なさげに縮こまった様は、さながら借りてきた猫のよう。

「…あの、」

彼女――衣ヶ谷珠里もまた『第六疾患者』の一人だが、ハーメルンの所属ではない。
かと言って、個人的な交友があるわけでもなかった。ルフェウスとはこれが初対面である。

「ごめんなさい、夜分遅くに… 押しかけるような形になっちゃって。
 そういうつもりじゃなかったんですけど、そちらの方が。…そちらの方が」

困惑5割、恐縮3割に不服が2割。そんな口振りで。
最後の2割を込めてジト目を向けた先は、今回の立役者こと与太郎その人だ。

「おっ、いい具合に煮えてきた♪ そろそろ食べ頃だなぁ~♪」

…己への刺々しい視線も何処吹く風、鼻歌交じりに鍋を覗き込んでいる。
てんで呑気な様子に肩透かしを食らって、珠里はガックリ項垂れた。

「しっかし、もう何人か声は掛けたんだが… 遅いな、あいつら。
 先に始めちまうか、具材はまだまだたっぷりあるし♪」
「たっぷりすぎでしょ…これ食べ切れる人数って、後どんだけ来るのよ。
 此処を相撲部屋にでもするつもり?どう見てもキャパオーバーだから、入りきらないから」

椎茸に白菜、人参、春菊、豆腐に鶏団子…
山と積まれた具を前にして、思わずツッコミを入れる珠里。
当の与太郎はと言えば、やはりそれを気にする風もなく。

「まぁまぁ、こういうのは人数が多いほど楽しいもんだろ? …ほらルフェウス~、食べな」

鍋から手際よく具を取り皿によそって、ルフェウスへと差し出す。
ルフェウスは受け取ったそれを、じっと無表情のまま見つめたのち、

「………多い」
「ワガママ言うんじゃありません!ゼリーばっかりじゃ栄養偏るでしょ!そんなだからお前さんはいつまで経っても胸が…
 …あっゴメン、今のは俺が悪かった。ほんと申し訳ない。謝るから銃は仕舞おう、ねっ!?」

「えっ、ほ、本物なのそれ?まさかね…?」
「……? 偽の銃を持ち歩いてどうする」
「どうするって… いや、だって銃刀法とか色々…」

逆に不可解という調子で問い返され、珠里は目を白黒させるしかなかった。
そんな彼女にも、与太郎から鍋を取り分けた皿が差し出される。

「わはは。そいつに世間一般の常識ってヤツを説いても無駄ってもんだぜ。
 ――それより、はいよ。こっちは嬢ちゃんのぶん♪」

ルフェウスの注意が逸れたのを良いことに、ちゃっかり盛り付けていたらしい。
油断も隙もない、と呆れながら両手で受け取って、

(よく言うわ。自分こそ、非常識が服着て歩いてるような輩のクセして…)

憎まれ口は心の中だけに留めておいた。
どうにも彼には通じそうにないと、この数十分あまりで学習しつつある。

(それにしても、)

立ち上る湯気を眺めること暫し。

「…ひとりじゃない夕ご飯って、久しぶり」

―――ほんのり嬉しさの滲む呟きと共に、目許を和ませた。


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最終更新:2016年02月01日 01:12