「連続失踪事件。能力者絡みの可能性が高い、なぁ…… 2日前からだろ? 起こってるの。随分情報が早いんじゃねーの?」
公安33課に齎された、ひとつの事件。それは、2日の間に10名を越える行方不明者を出した『失踪事件』
異常なまでの速度と人数に、異能者の仕業と断定されるまでさしたる時間はかからなかった。
「また暫く帰れなくなるなぁ」
「ま、そう言うなって。これだけ派手に動いてるんだ、すぐに尻尾もつかめるさ」
すぐに解決すると思われていた事件。しかし……
「覚醒したばかりの疾患者、ですか?」
「そうだ。……貴重な人材、確保せねばなるまい。公安が動き始めているとの情報もある。早急に『交渉』したまえよ?」
動き出す各勢力。
「我ら『蛇頭』に手を出したこと、『呪い』の底で悔いることだ」
確保、あるいは暗殺、あるいは保護。
未知なる疾患者に伸びる、無数の追求。
「また被害だと!?」
「しかも、今度は『疾患者』まで消えたらしいんだよな」
「………。」
異能が囁く、真実へ至る道。
それはしかし、信じたくない結論へ至る道でもあった。
「………疾患者を投入したところで、捕らえることは出来ません。至る未来は、死、それのみですわ」
預言者が告げる、未来。
「アレは……そうね、言うならば『人喰い』ね。『魂喰い』と言ってもいいかもしれないけど。関わるのはオススメしないわよー?」
情報屋が齎す、人物像。
全ては、一人の少女に収束する。
――― 寂しいよ、寒いよ。ねえ、一人にしないで、にいさま……!
「《彼女》に言葉は通じない」
「《彼女》に見境はない」
「《彼女》は唯全てを溶かし、喰らう」
「《彼女》は害悪である」
組織を違えても、下される命はひとつ。 『保護』でなく、『確保』でなく、『暗殺』ですらなく、
ただ完全なる『抹消』を求めて、動き出す精鋭たち。
………その全ては、もはや遅すぎたというのに。
動く数は無数。
たどり着いたのは、一人だけ。
死なせもせず、目的を遂げさせもせず、彼らを翻弄した《犯罪者の王》は、ただ静かに《彼女》を見る。
「ごめんな、待たせて。……もう、邪魔は入らない」
「さあ、その罪を暴き、終わりを告げよう。 ……これで、悪夢は終わり。目覚める時間だよ……」
―――――― にいさま。
「……犯人は、『お前』だ」
東都探偵倶楽部事件簿:ファイル0 《~探偵が生まれた日~》 (※嘘予告)
その日、公安33課から一人の男が去り――
―― 街の片隅で、一人の探偵が生まれた。
(続かない)
最終更新:2016年01月12日 20:49