……カタカタ…カタカタ…
プラスチックのキーボードを叩く無機質な音。
―――ヴンッ
デジタルの画面に打ち込まれたはずの電子文字が唐突に消え、画面は変わる。
「神隠し?」
大都市Tで昨今、行方不明者が続出しているという噂。
昨日までいた人間が、ふっつりと姿を消してしまう現象。
マスコミ対応に追われた警察の発表、曰く、
『行方不明者は全員、最近何か思い悩むところがあったという証言がある』
『問題を抱えた人間の、自発的な逐電、あるいは自殺とみて捜査をしている』
「…けど、公安33課はそうとは捉えていない。そうだろ?
キース」
「さっすが、ラビりん」
―――――…人を探して欲しいの。
探偵倶楽部の扉を叩いた、一人の少女の依頼。
名前も知らない、素性も知らない、奇妙な人探しが始まった。
「…ハンガー…ですよね?」
――――…〝分からない〟
頭を抱える一人の〝探偵〟。
「〝分からない〟、ということは、…犯罪絡みではない、だって…?」
大都会の裏側で暗躍する影の存在。
交錯するそれぞれの思惑。
「当ててやろうか?アンタの心的外傷」
鎌首を擡げた蛇の如く、
「怪我をしているな。この天才が施術してやろう!」
逃れ、追いかけ、衝突する〝意思〟と〝意思〟。
恐れるな。
奪え。
知恵を絞れ。
インターネットの海に広がる無数の情報と、それを流している謎の〝情報屋〟の存在。
『犯罪組織』の〝司祭〟が紡ぐ。
「迷える仔羊はすべて、私たちの元ですよ。―――と、言えればいいのですが、ね」
すみれ色の瞳に反転して映った景色を伺う。
…裏社会にまで蔓延した謎の失踪劇。
絡まった糸を解くに連れて、明らかになっていくキーワードは、
『小人と呼ばれる子供たち』
と
『道化師』
「行方不明になった人達が、『森に逃げる』と言っていたらしい」
逃げる? 何から? 森? どこへ?
「童話『白雪姫』の王子様ガ、実は死体偏愛者だっタ…って説ハ、有名ですヨ?」
死者を愛する者と、7人の失踪者。
―――――…二重三重に重なり合った真実。
「花?あぁ、買って行ったぜ。
『死体に供えるのに、一番美しい花束を』っつってな」
真夜中。
都会の公園で、ビルの上で、
パン屋のシャッターの前で、
その二人は相対す。
「あー!!あんたよあんた!」
「嬢ちゃん、もしかして俺を探してくれてたのかい?色男はつらいねぇ」
「うっさい!ハンガー侍!」
出会ってしまう、必然。
糸に引かれ合うように、
「お前と出会ったのが、そもそもの間違いだったんだ。〝探偵〟」
どうして出会ってしまったのだろう。
どうして出会ってしまうのだろう。
この広い大都会で、
こんなに無数の人間がいる中で、
―――なぜ、〝この人でなければ、いけないのか〟…
「花…?」
「〝死体〟には、花を手向けるのが礼儀じゃありやせんか」
「…………分からない…」
目覚めたのならば、その名を呼んでごらん。
方法は簡単。
『ある掲示板』に書き込めばいいだけ。
「――――――さぁ、ぱーてぃーのはじまりなのじぇ!!」
東都探偵倶楽部事件簿:Märchen 《Sneewittchen ~白雪姫~》 (※嘘予告)
デジタルの画面に打ち込まれたはずの電子文字が唐突に消え、画面は変わる。
ディスプレイに浮かび上がる文字
―― Welcome to Hameln ――
(※続かない)
最終更新:2016年01月12日 22:15