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X X old
「ハイ。いい夜だね」
………
「さしてくるみたいに冷たい空気も、何の音も無い静かな空も」
「まるで、世界に"わたしたち"だけしかいなくなっちゃったみたい」
………
「何故、私がここにいるのか?何言ってるの?」
「貴方が望んだんじゃない」
「寂しいって。誰でもいいから傍に居て欲しいって」
………
「でも、待ってるだけじゃダメ」
「君に必要なのは、ちから。畢生と引き換えの、運命」
「私が、それを手伝ってあげる」
…………
「блядь!完全に止まりやがった、お陀仏だ。やれやれ…………どこの誰なんですかね、こんなオンボロ車を回してくれたのは」
「書類手続きしたのはボクです。後はちやないちやない」
「子供か」
「寒いよ死ぬよ~、葬儀屋がクソ運転したから死ぬ~。はよどこでもいいから行こうよお」
――楽な仕事の筈だった。邪魔な護衛も付けないぐらいにはね。帰り路、渋滞を避けて荒れ道を行ったのが拙かった。今思えば、ですが。
「おい。本当にこっちで合ってるのか。」
「う~~ん………? ………いや、合ってる……ハズ?」
「おいおい、マジか。確りしてくれよ小鳥遊」
「あ。……あれ!アレだよ! 噂の幽霊ホテル!」
――いや~。あんなに知り合いバッカとは思わなかった……。正直、観光気分だったんだよな!ハハー……。
「で、だ」
「んー?」
「厨房、貸して貰えるんだろうな」
「ンン。ロンモチ。そーじゃないとてんちょーこないっしょー?」
「よしよしよし……山菜…鮎…雪解け水……普段と違う物を試せる……手が疼いて来た」
「病気か。 あ、病気だった」
――正直俺は良く覚えてない処がある。ずっとパン焼いてたからな。気が付いたら、「ああ」なってた。
「おー、寒い寒い……澪、大丈夫か? あっと……」
「構いませんよ、今日くらい。……と、言いたい所ですが」
「わ、悪かったって。えーと、陰陽大属サマ……」
「違います。……手、貸して頂けませんか。さっき転んだ時に腰を打った様で」
「早く言えよ!!」
――兄を探しに来ました。兄以外の事は知りません。覚えていません。今回はプライベートです。お話でしたら、他の方へ。
「あ˝ー、効くな。流石山の国、小さくともこれだけは……」
「おい」
「酒を貰えないか? んん、純米酒。いい物がある」
「おい!」
「何だ、猿駆」
「いつまでこうやって風呂に」
「温泉」
「……”オンセン”にいる気なんだ。任務があるんじゃないのか」
「お前如きが詳細を知れる気か?えぇ?いいから黙って俺の護衛をしていろ。………~♪」
「……」
――久しぶりに暴れられるかと思えば、呑気な旅行の「御守」だ。ジュンマイシュだの、カイセキリョウリだの、サシミだの、チャワンムシだの、コーヒーギュウニューだの、
下らない。任務でなければ全く、全く興味が無いよ。
「では参りやしょうか、ヨタローさん」
「おう♪ 参るとしようか、
ガイロード=サン。全く、うちの家出娘は何してやがんだか」
「所で……いつもの腰の得物はどちらへ?」
「温泉でそんなもん持ってたら無粋だろ? どーせ大したことないって♪」
――家が誇る最強の疾患者と評判の”歩く死体”サンが消えたのは、あんまり良くない噂のホテルでして。……――まさか、あんな事になってるとは。
「わかるわかる。男ってェ……いい加減よね?」
「全くだわ。貴女は話の分かる人みたい」
「なんでこんな気の合う人ともっと早く会えなかったのかしらァ」
「この後興味深い部屋を見つけたんだけど、ご一緒しない?」
「探検! ステキ。旅行の醍醐味よね。ご一緒しましょう!」
――あ、御名前聞き損ねてたわ。あの人なら、素晴らしい使徒になれていたでしょうに。またあそこ、行ってみようかな……。
「無理無理無理っ、死ぬ死ぬ死ぬ!死んじゃうから!」
「俺が運転するよりマシ」
「………マシ」
「『お宝の山』がどうとか言ってふらふらどっか行っちゃったよ!」
――私、普通の女の子なんですけど!!車の運転とか、フツーに違法なんですけどッ!
それは月が薄らと照らす白夜の見せた幻想。
一夜限りの狂想詩。
嘘吐きはやがて倒れ伏し、その時を止める。
「こりゃ、完全に外部との接触を断たれてる。陸の孤島だ……手掛かりが無いからなんとも言え無いが……」
「ないが……?」
「そもそも、この猛吹雪の中を下山したいか?ってコト」
隔離された猛吹雪に塗れるホテル。
そこで出会う敵対者達。
「スマーーッシュ!」
「何だあいつ何もんだ」
「ウチに欲しいですねえ……。」
奪い合われるのは、ただ一つ。
「温泉湯種仕込みパン!完成だ!さあ――思う存分食べてくれ!」
「何で店長がいるの!?」
「へっへーもーらい♪」
「貴重な食糧をそんな贅沢品にしていいのか……」
犠牲者を、ついに許してしまう。
「洒落にならなくなってきたな」
「俺じゃあないぞ。この寒い山に蛇を連れ込めるとでも思ったか?」
それは、屋敷にかけられた幻。
「どこかに出口が必ずある筈なんだ。恐らく、きっと――この館の主がそれを望んだなら、」
「………」
「子供部屋、だ。玩具が散らばった」
「………」
「入口は狭く隠してある。だがどうにかして見つけて見せる。一晩中かけても」
「それって、あそこの事かしら」
「多分そうよねえ。へ~」
一夜にして覚める、夢。
「はい、皆」
「そろそろ、夢から覚めたい?」
「知らない。 決めるのは彼方たち」
「逃げて覚めるか、逃げずに夢を見続けるか。 選んで」
一人の犠牲者を発端に続く事件。
嘘吐きたちの祭典。
止められぬ犠牲。
「―――逃げな嬢ちゃん………楽しかったぜ♪」
「………あ ……――ッ!!」
雪山の山荘ホテルに隠された怒りと、嘆きの真実。
それを知った時、彼はどの選択をするのか。
「さて…………たまの骨休みになるかは分からないが、行くか。
ルーシー嬢」
「はいっ」
Liar's Lie's "L"asing.
最終更新:2016年01月14日 19:26