―――――暗殺。すなわちそれは、美徳なり――――――
N国のとある都市の一角。そこに中系民族の相互互助グループ、「華僑」がある。
その裏で動くのは、「蛇頭」。もちろん、自分もそこの所属だ。
毒蛇。マフィアリーダーと同じ歳であり、若くして数多の著名人を暗殺してきたプロフェッショナル。
そんな暗殺者も、また疾患者であった。
路地裏で動物たちをかき集めて情報を聞く。ネズミ、野良猫、ハト、スズメ…小動物で都会にいるような動物は自分にとってはなくてはならない情報網だ。
そして、その情報を上部へ伝えるのもまた己の役目。
「……よし、散れ。いつも通り自然でいるようにな」
透き通る一声が路地に集まる動物たちを散らせて、自然へと戻す。その場に起こっていた不自然な光景は、自然な光景へと戻った。ただそれだけのコトだ。
端末から無線でつなげてある通信子機を耳へ取り付けたら、通信を上部へつなげる。
「……どうやら、「探偵」が重い腰を上げたようだ。面白くなってきたぞ。若の指示でこの毒蛇、どこへでも忍んで見せよう」
上部へと連絡をつなげれば、それだけを伝える。それだけで伝わるのは上部…「若」と呼ばれる者との古くからの縁のおかげでもある。
が、やはり若と呼ばれると上部はいい気がしないようだ。端末から帰ってくる不満の声に小さく笑う。
「……すまんすまん、悪かった。どうしてもお前とは上司と部下の関係だからな…これは一応ルールなんだ、許せ。」
謝ってからしばし会話を続けて、それから端末を切る。ビルにはさまれてわずかに見える空を見上げる。
独り言をつぶやく。
実際この国のこの都市にはたくさんの施設がある。そしてそれらから敵対されることもしばしばある。
そんな奴らを自分は暗殺し続けてきた。それは年齢など関係ない。己の手を使わず、汚さぬままにすべてを見えぬ毒で蝕んできた。
それこそ、己を「魔女」と称すのに最適ではないか?己惚れているわけではないが、誇りに思うべきことだろう。
「……さて…呪術をまた使う時か…」
不穏に笑うその口元を崩せる者は、果たして現れるのだろうか―――――
最終更新:2015年12月25日 11:31