- コンビナートの皆さんでわちゃわちゃしようぜ!って感じのリレーです。
- キャラ名はなるべく入れるようにしましょう。誰が誰やらってなっちゃうと大変ですからね。
- 他PL様のキャラ動かしたい時はご相談の上でどうぞって感じでいいと思う?
コンビナートのとある施設。その倉庫に、2坪タイプのプレハブ冷凍庫が置いてある。
関係者であれば大抵の者は知っているであろう、ヘルの私室だ。
中はシングルベッドが一つ、小さな勉強机と椅子一脚の殺風景さ。
この年頃の子供の部屋にしては、おもちゃも漫画も一切ない。
なお、ヘルは寒さは平気だが、普通に酸欠は起こすので扉が完全に閉められることはない。
そのためちょっと部屋の入り口辺りを拝借されることはよくある。
酒を冷やすためだったり、アイスクリームなんかの嗜好品を置いておかれたり。
時々文句は言うのだが、ヘルは置いてある物に手を付けたりもしないので、結局その手の間借りがなくなることはない。
今朝ヘルが目を覚ました時も、昨夜はなかった紙袋が、部屋の入り口付近に置いてあった。
紙袋には
パン屋を示してるっぽい意匠のプリント。
その中身は…アイスクリーム入りメロンパン、なのだが。
時を戻して、ヘルが目覚める前の… もしかしたらまだ寝ていなかった頃の夕方あたり。
実験番号109番…、桃樹は『外での命令を受けたあと』の仕事帰りにパン屋に寄っていた。
彼は実験体とはいえ、少しの自由は認められており、生活用の金を少しケチってはお店に寄ってこっそりと美味しいものを買うのが日々の楽しみであったのだ。
「… えへへ、なんとか買えてよかったー♪」
その手には行きつけのパン屋『ハコラ』で残り一個であったアイスクリーム入りのメロンパンが入った紙袋。
美味しいもののために早く『用事』をすませた甲斐があった、と彼はご機嫌に鼻歌を歌い、日が沈み月がうっすらと出る道の中を歩いて組織まで帰ろうとしていた。
そんな時、彼はドンッ、と誰かとぶつかり、紙袋を落としてしまう。
「∑みぃっ!?」
「∑きゃっ!? … っと、だ、大丈夫? 怪我はないかしら…。」
ぶつかってきたのは、N国では珍しい青い髪の少女であり、青年にしては少し身長が高く筋肉質であった彼に当たって落とした袋のそばで転んでいた。
そのことに慌てて彼は少女に手を差し出す。彼女からは血の匂いはしない。きっと怪我はないだろうと彼は推測した。
「… みぃー、大丈夫なのじぇ…。 みぃ! おに… おね… おねにーさん! 袋落としちゃってごめんなのじぇー!」
その少女は彼の口調を聞き、おにーさんかおねーさんか悩んだものの、混ぜた言い方をしつつ、そばにあった袋を拾って彼の手を取り、立ち上がる。
「ああ、別に大丈夫よ。落としたぐらいじゃ潰れないでしょうし。 …ごめんなさいね。こっちの不注意だったわ。」
そう笑って、少女から紙袋をもらって微笑み、それじゃあ、と手を振って少女と別れる。
じゃあね!と少女がその背に向かって手を振り、その背が見えなくなったところで。
「… ……じゃあね、コンビナートのモルモットさん♪ あたいのお遊び相手になってにぇ?」
くすり、と笑って呟き、スキップ混じりに少女は闇に溶けていった。
そんな呟きは彼には届かなかったらしく、紙袋の中身を少し確認してまた道を歩く。
組織にたどり着けば、研究員に捕まり、アイスメロンパンを食べる時間がなかったためにこっそりと彼はヘルの部屋に紙袋を置いた。
――――――― … そこからほんのわずかに聞こえる時計の針の音に気がつかず。
「……?なんだろこれ? 時計の音が……爆発物?」
手にとりかけたパン屋の袋からきこえたかすかな時計の音に軽く眉を顰めてヘルは手を止めた。
ぴぴー、とその瞬間に笛の音。 振り返れば入口に
ジゼルが立っている。
「さむいです。せまいです。お腹がすきました。……一人で何か美味しいものを食べるのは、ずるいです」
「まあ、その恰好じゃここは寒いだろうけど、僕のせいじゃない……」
へそ出しのボンデージまがいの彼女の格好に一瞥くれて頷くと、ヘルは再び袋に目を戻す。
「美味しいもの、かどうかはわからない。試しに食べてみるなら食べてみてもいいよ?
寝ている間に不審者が残した時限爆弾とかで、動かしたらすぐに爆発したり、口に入れた瞬間にちょうど爆発したりしたらごめんね?」
「Аппетит приходит во время еды. 食欲は食事の時に沸く。
私はお腹がすいてるだけで、爆発物を口の中で処理できるか試してみたいわけでも、
それで頭をふっとばしたいわけでも全然まったくありません」
ぴぴー、と片手をあげてもう一度吹かれる笛。
「そうだなあ……誰か手のすいてる人、来てくれないかきいてみようか」
携帯端末を取り出して、短く共通の連絡網につながる暗号メールを打つヘル。
「冷凍庫に不審なパンの袋。中から時計の音がする。爆発物の可能性もアリ。救援モトム、と。よし」
「あん?」
――純白の雪に沈み込む木々の間、空を飛ぶように景色から浮かび上がる石段があった。
きらきらと輝きながら弛む水面。
静かに立ち上る湯気。
耳にささやくように木々を反響する落水の音。
H根・郷羅温泉。
それらに混じる様に間抜けな電子音が鳴り、
ある男がそれに気付いたのである。
「無粋だな。人がなぁ~~んの為にて政治工作を手早くちゃちゃっと終わらせ少々三日程"念の為の確認時間"を造り
”泊まってよかった!ホテル・旅館ランキング都近県部門ナンバーワン旅館”郷羅コージーインへ自腹を切って宿泊してると思うんだ」
ぶちぶちと文句を言いながら、温泉に浸した身を緩慢に起こす。
中々どうして堅気なら知らぬ存ぜぬを決め込んでも良いのだが、それでは明日の己が危い極道の悲しき身なのだ。
そもどうでもいい用事なら、葬儀屋か
カルディアで事が足りる筈だ。
つまりは、一応メンツを潰さない為に通さざるを得ない話。
もしくは、どうしても彼でなければならないという事態の二つになる。
第一級連絡以外は寄越すなと口添えていた筈だ。
「ちっ。駅弁は喰って行ってやるかんな」
帰路ルートを考えつつも、無精して腕をぷるぷると伸ばす。攣りそうだが、ここなら釣っても湯治が出来るな。
そんな阿呆な事を考えながら携帯を手に取り、ようやく。と息を吐いて画面を弾く。
「えー、何々……湯気で見えんな……えー……あーよし。何?
"冷凍庫に不審なパンの袋。中から時計の音がする。爆発物の可能性もアリ。救援モトム"。」
一息。
「………………………」
自分でも、彼――
フレデリックは眉根が思い切り寄っていたのが分かるだろう。
パン。
時計。
爆発物。
救援。
出た答えは一つだ。
緩慢にショート・メッセージを打ちこんでいく。
フレデリック・クロスナーは時に上層部の命令を他に伝える役目をする厳粛なる事務員。
当然、適切なメールの内容はこれだろう。
「サプライズプレゼントかもしれんからほっとけば?ヒゲの誕生日もうすぐじゃなかった?あげたら?」
当然、犬猿の仲の「葬儀屋」の誕生日等知る由もない。
フレデリックはビシューン、とメールが電子の空を翔けていく音を堪能し、
それをふかふかの手拭の敷かれた桶に投げ込み、長風呂と洒落こむのである。
「お、フレデリックから返信…」
『サプライズプレゼントかもしれんからほっとけば?ヒゲの誕生日もうすぐじゃなかった?あげたら?』
ちょっとまともな助言を期待した僕がバカだった。
ジゼルは寒い寒いうるさいから、前に買っておいたチョコをベッド下の箱から出して渡して、とりあえず部屋から出てもらった。
そっちでまともな人捕まえられるといいけど…
もう一度携帯端末のメッセージを見て、
「…ま、相談しないよりマシかな。近くにいるといいけど、
ギルテ」
不審物?はそのままにして、部屋を後にした。
ヘルから厄介払い気味に渡されたチョコレートの箱を抱えてもぐもぐ齧りながら、
部屋の外をきょろきょろ見回しながら歩くジゼル。
誰かさがしておいでって言われたけど、誰も見当たらないナア、なんて首を傾げ。
「……誰もつかまえられないなら、作ればいいのですわよね。
誰か爆弾を食べられる方……そんな方、居たかしら」
しばらくしてぽん、と手を打つと、チョコの箱を抱えたままついと空中に手を伸ばし、
何も無い空間を何かを模るように指でなぞる。
ザッ、とあたりの地面から吸い上げられるようにそこらの土砂が集まって、徐々に人の形を成していく。
「……お菓子が食べられなければ?」
『決まってるわよぉ、お菓子が食べられないなら、爆弾を食べればいいじゃない!!』
「頼もしいです。桃樹さん」
彼女の異能により出来上がったレプリカ桃樹に向かって満足げに頷くジゼル。
ぱっと見はほぼ、彼に間違いないが、
なんというか、絵で例えるなら右利きの人が左手で描いた絵?というレベルには顔の造作が怪しい。
ちなみに模型は彼女の意識を共有して動いているので、その会話は完全な一人芝居である。
「……桃樹さんが、10人くらいいらっしゃれば、きっとどんな爆弾でも平気ですね」
『決まってるわよぉ、ゲンバクでもスイバクでもバクバクよぉ!!』
そうして、ヘルの冷凍庫からさほど離れてはいない屋外で、劇団ひとりをつづけながら、
延々しばらく左手で描かれたような顔をした桃樹を量産し続ける少女がいた。
最終更新:2016年01月09日 16:04