ジェクト


「泣くぞ すぐ泣くぞ 絶対泣くぞ ほら泣くぞ?」

スクウェア(現スクウェア・エニックス)のRPG『FINAL FANTASY X』の登場人物にして、事実上のラスボス*1
続編の『FINAL FANTASY X-2』にも一部イベントなどで登場している。
声の担当は 天田益男 氏。ジュストではない。

主人公ティーダの父親で、水球のようなスポーツ「ブリッツボール」のザナルカンド・エイブスのスター選手として名を馳せていた。
胸から腹にかけて、このチームの大きなタトゥーを彫っている。
実力は確かだが「俺は天才だから練習なんてしなくていい」など傲慢でいい加減な言動や行動が多く、更には酒好きと問題もあった。
しかし根は人が良く、ショーマンシップを心がけていたため絶大な人気を誇っていた。

息子のティーダは、そんな彼を軽蔑しながらも内心憧れていたが、当のジェクトはそんなティーダの事をからかってばかりいたり、
彼の妻は夫の事を強く愛していたためティーダ視点では母親が構ってくれない原因がジェクトだった事で、
ティーダは彼の事をかなり嫌っている。

本編の十年前、海でトレーニング中に行方不明になり死んだものと思われていたが……?

+ ネタバレ注意
実はトレーニング中、ザナルカンドの海の深くで休んでいた巨大な生物(『シン』)に触れた事でスピラに飛ばされていた。
そこで不審者として捕まってしまうが、ジェクトの語る「ザナルカンドから来た」という言葉に興味を持ったユウナの父ブラスカにより、
彼のガード(護衛)として同行する事を条件に出獄。
家(ザナルカンド)に帰るために、ブラスカともう一人のガード剣士アーロンと共に、
スピラの災厄たる『シン』を倒す「究極召喚」を得るために「ザナルカンド」に向かう旅に同行する。

彼らの旅は(主に妻と子供に帰ったら見せてやろうとしたジェクトによって)部分的に撮影されて世界各地に残されており、
ゲーム中で特定のイベント後に世界中で見る事が出来る。
3:30~
9:40~

最初はブラスカ達に同行すれば家(ザナルカンド)に帰れるだろうというような軽い気持ちであったが
(そのため、当時熱血漢だったアーロンとは口論が絶えなかった様子)、
旅の中でブラスカ、アーロンと友情を育み、スピラの現状と、
「究極召喚」が発動者の命をも奪うものであっても悲しみを消すために『シン』と戦おうとするブラスカの覚悟を知る。
また、旅を続けていく内に「自分の故郷であるザナルカンド」には帰れない事を悟り始める。

旅の果て、ブラスカをアーロンと共に守り切ったジェクトはザナルカンドへ辿り着き、そこで究極召喚の実態を知る。
究極召喚とは絆の力、想いの力の産物であり、召喚士と強い絆のある人物(=ガード)の魂を召喚獣とする必要がある上に、
召喚士自身の命も投げ打つ必要のある、非常に危険なものだったのだ。
それをユウナレスカから知らされた時、ジェクトは自らその役を買って出て「ブラスカの究極召喚獣」となり、『シン』を破った。

オレの夢はザナルカンドにいる
あのチビを一流の選手に育て上げて……
てっぺんからのながめってやつを見せてやりたくてよ
でもな……どうやらオレ
ザナルカンドにゃ帰れねえらしい
アイツには……もう会えねえよ
となりゃオレの夢はおしまいだ
だからよオレは祈り子ってヤツになってみるぜ
ブラスカといっしょに『シン』と戦ってやらあ
そうすればオレの人生にも意味ができるってもんよ

+ 究極召喚の真実
しかし、実はこの「究極召喚」は、いわば「一時しのぎ」の手段にすぎなかった。
『シン』を倒した究極召喚獣は、その大元であるエボン=ジュに乗っ取られ次の『シン』となってしまう宿命を持っていた*2
その宿命に逆らう事は出来ず、彼もまた『シン』となってしまう。
なお、1人残されたアーロンはその事実を後に知らされ、敵討ちに挑むが返り討ちに遭ってしまった。

それから9年ほど後。
祈り子になる前のジェクトに託された「息子を頼む」という誓いから、
『シン』(ジェクト)に乗ってジェクトの故郷である夢のザナルカンドに渡ったアーロンは、素性を明かさずティーダの後見人として彼を見守っていた。
だが、冒頭で夢のザナルカンドが『シン』に襲われた際、アーロンは『シン』となったジェクトの息子に自分を止めて欲しいと願う想いを感じ取り、
ティーダを『シン』の前に誘導、『シン』に吸い込ませてスピラへと渡らせた。
その後、紆余曲折の果てにアーロンに導かれたティーダ達と対決する事になる。

戦う時の姿は、元の姿を随所に残した「ブラスカの究極召喚獣」としての巨大なバケモノのような姿。
BGM「Otherworld」のイントロと共に現れる巨大な手と共に登場する様はかなりの迫力。
通常は物理攻撃と石化効果のある「ジェクトビーム」を使う(第2形態になると全体攻撃の「なぎ払い」が加わる)が、
味方のメンバーと同様オーバードライブゲージを持ち、完全に溜まると強力なオーバードライブ技を放つ。
第1形態と第2形態前半はダメージ+ゾンビ(第1形態のみ)の「ジェクトフィンガー」を、
第2形態後半は全体に大ダメージを与える「真・ジェクトシュート」を使う。
一緒に現れるジュ=パゴダ2体も、ジェクトを回復したりこちらをステータス異常やMP吸収で撹乱し、倒してもしばらくして復活する厄介な相手。
ドライブゲージを溜めておき、「調合」を生かして守りを固めていきたい。

アーロンに並ぶイカス親父キャラとして、アルティマニアの人気投票では見事5位に。
息子に嫌味たらしく接していたのも、愛情表現が苦手なだけで実際はとても息子想い。
最後の時まで上記のセリフで茶化す父親愛は感動モノ。

+ 上記のセリフについて、ネタバレ注意
ジェクトはよくティーダにこの言葉を言っていた様子。
愛情表現が苦手な事もあって幼少時のティーダにはどうしても嫌味に映っていたようで、
序盤におけるティーダの夢の中で言われるこのセリフは嫌味たっぷりに聞こえてくる。

だが、旅を続けていく内に分かっていくジェクトの本来の性格や、ジェクトの残した映像などからティーダのジェクトへの印象は大きく変わっていく。
ラストで対面し、再びこのセリフを聞いた時はまた違った感じを受けるだろう。

ブリッツボールの技に自分の名前を付ける趣味があるようで、
放つシュートには「ジェクト様シュート3号」というとんでもないネーミングの技名が付けられている。
インターナショナル版では「雄大かつ素敵なジェクトシュート3号」と、更にぶっ飛んだものに。
「3号」とあるのは、客に1号や2号の存在を期待させさらに試合を盛り上げるという狙いも含まれていた。
ティーダは彼を見返す一環として何としてもこのシュートを成功させようとしていたが、本編開始まで成功する事は無かった。
本編中これを成功させられるかどうかはプレイヤー次第。
ちなみに『X-2』のインターナショナル版では、ブラスカやアーロンとはぐれて三日間オアシスにいた時にサボテンダーの子供にボールを与え、
ブリッツボールを教えていた事が明らかに。彼もまたジェクトシュートを成功させようと頑張っているが……?

+ 『ディシディア ファイナルファンタジー』では
対戦アクション『ディシディア ファイナルファンタジー』(DFF)及び
『ディシディア デュオデシム ファイナルファンタジー』(DDFF)においても登場。
カオスサイドとしての登場で、他が揃いも揃って悪人ばかりな中での登場に当初は「?」と思う人も多くいたが、
原作においての立場の変化や、『DDFF』で語られているストーリーを見れば頷ける。
EXモード時は究極召喚時の姿を人並みのサイズにしたような姿に変化する。

+ DDFFネタバレ注意
元々はコスモスサイドで、ユウナと共に戦っていた。
しかし12回目の闘いで、カオスサイドとして現れたティーダと対峙。ユウナの仲裁で戦いは回避するも、
ティーダが皇帝の謀略で倒れてしまう。
ジェクトは自身の命を擲ってコスモスから与えられた力をティーダに注ぎ込み、犠牲となる。
皇帝は「空の器」となったその遺体をカオスの下へと運び、次の闘いでカオスの駒となるように促し、
自身の支配の野望のためにジェクトの持っていたクリスタルの力を悪用する事を考えていた。
13回目の戦いで当初皇帝に付き従っていたのもこのため。
しかしそれはティーダと共に元の世界へ戻りたいという想いからで、最後は皇帝に離反しティーダとの一騎打ちに向き合った。

戦闘ではほぼ近距離戦オンリーで戦う「スーパーインファイター」。
クセのあるキャラ揃いの中でただ一人格ゲーしている御仁であり、遠距離攻撃の手段は一切持たない。
地上技の「ジェクトラッシュ」と空中技の「ジェクトストリーム」を軸にブレイブを奪っていくのが主体。
技を出す特定のタイミングでの入力で出す技が強化され、パッドの向きで技も大きく変化する。
上手くいけばHP攻撃にも繋げられるが、タイミングについては使って慣れるしか手は無いので、
ただ連打するだけでは持ち前の火力を発揮出来ない上級者向けのキャラと言える。

とはいえ単純にタイミングを合わせてボタンを押していくだけなので、
コンボが安定すると「スーパーインファイター」というのに恥じない火力を発揮する。
技の種類が少ないとは言え、始動技は溜める事で判定が強化されるため、ガードも怖くない。
コンボの最中に召喚やブレイクのエフェクトが発生すると繋ぎのタイミングが狂いやすいが、
その辺の調整も完璧にこなしてこそ真のジェクト使いと言えるだろう。
ブロッキングに近い「ジェクトブロック」でほぼ全ての技を弾ける(判定の無い技は弾けず、近接強判定は互いに仰け反る)ので、
格ゲーしていればいるほど使いやすい。
HP攻撃は溜める事で性能が向上する技が多く、単発で当てるのは少し難しいが有効性は高い。
EXバーストは「キング・オブ・ザ・ブリッツ」。何とも彼らしいネーミングである。
UT版までは平均以下の威力だったのは内緒だ

UT版、『DDFF』と調整は幾度も入っているが、キャラランク上では常に上位を占める。
しかしトラップで近寄らせてくれない皇帝とは相性が悪い。


MUGENにおけるジェクト

皇帝を製作したダガー氏によるジェクトが存在していたが、現在は公開停止。
氏が1年半近くもの歳月をかけて製作した手描きのドット絵は細部にまで拘りが感じられ、とても完成度が高い。
性能はDFF及びDDFFに準じており、近距離戦で圧倒する戦い方を主体とする。
地上での「ジェクトラッシュ」や空中での「ジェクトストリーム」は原作よりも派生の種類が多く、
この派生のさせ方次第でコンボの幅が無限に広がる。
「ジェクトブロック」でのブロッキングも可能で、Hitdef型の物理攻撃なら相手を怯ませて追撃する事も可能。
ただ、超必殺技や飛び道具だと逆に自分が怯んで隙を晒すハメになるので注意。
しかし裏を返せば、単発ならこれでノーダメージでやり過ごせてしまえる。
氏の皇帝同様、特定の条件で発動し攻撃を強化するアビリティも搭載されている。
また、更新によりストライカーユウナティーダ、アーロン)やEX技、新技が追加された。
特殊カラーも追加され、11Pでゲジマユ(アシストゲージは通常通り)+防御力1.5倍の黒カラー、12Pで性能超強化の金カラーとなる。

AIは未搭載だが、五右衛門氏、ワープスター氏が外部AIを公開している(五右衛門氏のAIは最新版非対応)。
この他、究極召喚時に持っていた大剣の上で戦う『FFX』のラスボス戦を再現したステージも、ルーネス氏によって公開されている。
コンボムービー
ワープスター氏AI
ルーネス氏ステージ




  「決着( ケリ )、つけっか?」

出場大会

+ 一覧
更新停止中
凍結


*1
何故「事実上」かというと、ブラスカの究極召喚を倒した後にもエボン=ジュとの決着が控えているからである。
尤も、ジェクト戦以降の召喚獣バトルからエボン=ジュまでの戦闘は、パーティーが自動的に常時リレイズ状態となり、
確実に全滅する事なくバトルが進むため、『FF7』のセフィロス戦同様、実質的なイベントバトルと見做す向きもある。
なお、石化させてしまえばリレイズは効かないので、
石化攻撃改が付いた武器でパーティーアタックを繰り返して全員彫像にしてしまえば全滅する事は可能。暇な人は試してみよう。
さらに捻ったやりかたとして、上記の方法で2人石化させた後でキマリが自爆してエボン=ジュを倒した場合、
ご丁寧にエボン=ジュの撃破演出が流れた後にゲームオーバーになる。感動のバッドエンド

*2
究極召喚自体に召喚者の命を奪う仕様はなく、死亡してしまうのは究極召喚を『シン』に対して使用した場合に限られる。
祈り子との強い絆により実現する究極召喚は『シン』の身体の幻光虫の構成を解き再構築を一時的に断つ力があるが、
元凶であるエボン=ジュには影響はなく、エボン=ジュはその場で究極召喚獣に乗り移り次の『シン』に造り変えてしまう。
歴代究極召喚獣は例外なく改造により多大な苦痛を受け(ヴァルファーレの祈り子によれば一応自我は残るらしいが)、
絆が仇となり究極召喚獣の苦痛がシンクロしている召喚士にフィードバックされるため、召喚士はそれに耐えられず死ぬのである。
つまり、究極召喚は根本から『シン』を倒すことにないどころか、
悲劇の連鎖を起こす上記に書かれた通りの一時しのぎに過ぎないものである。

これらの事実は民間には知られておらず、エボン教による情報操作も相まって、
「『シン』の発生の原因は機械文明に頼り過ぎ傲慢になった人間への罰で、いつか罪が消えれば『シン』も消える」とされている。
生きた災害に等しい『シン』という存在が身近にある世界で、多くの民間人は「究極召喚」という見せかけの希望に縋り、
常に生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされる余裕の無さから思考を停滞させて、
エボンの「常識」外の思想や行動=罪という風潮の土壌となり、「変化」や「異端」自体に忌避感が向かう社会構造を成立させて、
『シン』が滅びないという現実を知られて絶望で社会が破綻するような事態にはならないが、
同時に来もしない仮初の「いつか」という偽りの希望により社会を存続させている、
1000年間人間同士の大きな内乱も騒乱も起きないが、代わりに待ち望まれている「救い」も永遠に訪れない、
良くも悪くも「停滞」した、反吐が出る程合理的なディストピアである「スピラ」が形成されているのである。

一応擁護するならば、エボン教の事実上の開祖にして最初に『シン』を倒した召喚師ユウナレスカはエボン=ジュの実の娘であり、
父の願いとその強さを知っているため、『シン』を倒すことが物理的にも心情的にも事実上不可能という状況の中で、
それでも最愛の人である夫ゼオンを犠牲にした究極召喚で死の螺旋を完成させ、スピラの人々に偽りとはいえ希望を与える事を選んだ。
長い歳月を経たことで永遠に続く死の螺旋を維持することに目的が変わり、ティーダやユウナの行く手を阻む諸悪の根源となってしまったが、
当時の彼女は自分にできる範囲で、父と夫とスピラの人々のため、最大限の努力をしたことは記憶に留めておいて貰いたい。


最終更新:2023年06月06日 08:05