牙大王


「わが一族が天国で淋しい思いをしないように、
 おまえたちは殉死者として誠心誠意仕えるのだ!」

+ 担当声優
渡部猛
TVアニメ、1986年映画版、PS『世紀末救世主伝説』
佐藤晴男
『パンチマニア』
福原耕平
『北斗無双』シリーズ
坂本頼光
『DD北斗の拳』
酒井敬幸
『LEGENDS ReVIVE』

福原氏は『ガンダム無双Special』で武者ガンダムMK-IIを演じた。
坂本氏はデカいババア等の他の悪役キャラと兼役。

原作・武論尊、作画・原哲夫による漫画『北斗の拳』の登場人物。『五星戦隊ダイレンジャー』の巨大武人ではない。
野盗集団「牙一族」の首領。
大きく後退した額になまず髭、そして常に首が斜め45度に傾いているのが特徴的な巨漢。
中国拳法打雷台の流れを汲み、相撲の源流になったとされる「華山角抵戯」を身に付けている。
切り札は全身を鋼鉄のごとく硬化させる「華山鋼鎧呼法」。

原作では「牙大王」の名で呼ばれるシーンはなく、息子達からも専ら「おやじ」と呼ばれていた。
単行本のキャラ紹介で「族長(牙一族)」と記載されているのが、原作連載時には名前が付けられていなかった名残である。
そもそも原作で名前が判明している牙一族はマダラのみであり、アニメ化に際して新たに名前が設定されたものと思われる。
流石に固有名詞未設定は不都合なので、長年「牙大王」で定着していたが、
現在(パチンコなど)は前述の呼び名を踏まえてか「牙親父」と呼ばれている。また、オフィシャルウェブサイトでは「牙族長」と表記されている。
英語表記は「Fang Clan Chieftain」。

+ 劇中の活躍
マミヤの住む村を狙って息子達を差し向けるものの、
折悪しく村には流れの用心棒としてレイケンシロウが滞在していたという最悪のタイミングで、向かわせた部隊はあっさり全滅する。
実はレイを味方に付けていて内部から裏切らせるという狡猾な策謀を企んでいたのだが、
ケンシロウの実力を見たレイは(登場当時は心が荒んでいたため)「強い方につく」とあっさり牙一族を見捨ててしまう。
身内を殺された復讐のため、ケンシロウとレイの身内を息子達に捜索させるものの、ケンシロウの身内は発見できず*1、レイの妹アイリを確保。
逆襲に出たケンシロウとレイに対してマミヤ、アイリを人質にして同士討ちをするよう強要するが、
北斗・南斗の間に伝わる死を偽装する演出「聖極輪」に引っかかって多数の息子達を返り討ちにされる。
怒りに燃えてケンシロウに襲い掛かり、華山鋼鎧呼法によって体を鋼鉄と化すものの、
秘孔大胸筋を突かれて強化を解除され、そうとも知らず余裕をかましていた所に鉄柱攻撃を喰らい大ダメージを受ける。
悪あがきに息子達を投げ付けたりダイナマイトを持ち出してみるが、既にその肉体は死に始めており、
投げ付けようとした所で肉体が硬直し右腕を失ってしまう。
最後は逆上してケンシロウに襲いかかるが岩山両斬波でとどめを刺され、燃えたぎる溶岩へと落ちていった。
断末魔は「あ!!」
TVアニメ版は中の人の名前「わぁ~、たぁ~、べえぇ~~!!」

+ 解説
北斗全編のストーリーの根幹とはあまり関係しない、ただの野盗集団の親玉であり、
シンとの戦いを終えたケンシロウの前に初めての頼れる仲間・レイが登場するエピソードのやられ役としての存在意義しかないキャラクター。
ケンシロウからは最初から格下扱いされており、最初は北斗神拳を使わず鉄柱で攻撃するも、
華山鋼鎧呼法で通用しなかったため「お前如きに使う気はなかったが仕方ない」と、とても面倒臭そうに北斗神拳を解禁している
(しかも普段ならケンシロウが構える時には「ゴゴゴゴゴ」などの重い擬音が表示されるのに対して、「サササササッ」と非常に軽い擬音だった)。
しかしアクの強い巨漢ボスとしてハート様ウイグル獄長達と同じく、強烈な印象を残す人物である。

牙一族は非文明的な蛮族とおぼしき風体の連中だが、レイを味方に付けて村に潜入させるという謀略、
アイリを捜索してくる情報力(後述のように、ラオウトキの存在までは分からなかったようだが)、
そして優れた統率力を発揮する華山群狼拳を会得しており、野蛮人めいていながら知性も活用している。
しかし身内が殺された際に労働用奴隷としてさらってきた人達に無理矢理殉死を強要して殺害するなど、
その文化は常人と相容れるものではなく、むしろ人類と共存不可能な異質な文明を持っている分質が悪いとも言える。
牙一族を倒した後、マミヤの村の住人が喜ぶ台詞で「牙一族は絶滅した(全滅した、ではない)」などと言われており
村の住民からも人類扱いされていなかった事が窺える。*2

一族の構成員は全員が牙大王の息子という恐るべき繁殖力を誇り、そこらのエロゲーのハーレム主人公も真っ青の精力絶倫ぶり
エロゲーの主役の色男達だってこんな化け物と比較されるなんて嫌だろうけど)。
しかも最後の悪あがきに息子を投げ付ける時には「わしが生きておれば貴様の代わりはなんぼでも作れるわ」と叫んでいる。まだ作る気かアンタ。
ちなみに娘は作中で確認する限り一人もいない。
牙大王がそういう遺伝子体質なのか、仮に娘が生まれても殺すなり奴隷として使い潰すなり母親の下に返すなりしたのか…?
さらに、息子達の外見年齢から逆算して考えてみると、
牙大王は『北斗の拳』世界での核戦争による文明崩壊が起きる前からこのような大家族を成していたと思われる。
アジア圏なら一夫多妻で法的にもそういう方面が緩い国等もあるにはあるが、作中では略奪で生活している一族であるため、
なおさら文明崩壊前はどうしていたのか気になる所である。
「牙一家」でなく「一族」なんだし、こんな連中の親類縁者が他にもいたのだろうか?

アニメ映画版(旧劇場版)ではさらに牙一族の物量が増大しており、一大軍団となっている。一体何人こしらえたんだ。
ただマミヤの出番がカットされているため原作のような悪事は働いておらず、
拳王軍に対して「自分たちはこの地で面白おかしく生きていきたいだけ」と主張するなど
むしろ無闇に触れなければ善良な一族のような扱いであった。とはいえ戦闘に入ると旧劇場版ならではの残虐スタイルだったが。
居住地に侵攻してきた拳王軍を迎え撃ち、牙一族VS拳王軍という北斗ザコマニア歓喜の集団戦を繰り広げた後、
さらに牙大王VSウイグル獄長のドリームマッチが実現…かと思いきや拳王様御自らが御出馬あそばされ、当然手も足も出ず粉砕された。
尺の都合とは言え、獄長との夢の対決を見たかったファンも少なくなかっただろう……
その獄長?レイに襲い掛かって輪切りにされましたが何か?

挙句、「ここの一族は新時代に不要だから抹殺しろ」と命じられ、一族は原作同様皆殺しにされたのであった。

「さぁ、わしの身体は鋼鉄の鎧だ。どこからでもかかってこい!!」



ゲームにおける牙大王

人気キャラクターが大勢いる北斗においては牙大王がプレイアブルキャラクターとして使用できるゲームは長らく存在せず、
アクションゲームのステージボスなどで登場する程度だった。

SFCの格ゲー『北斗の拳7 聖拳列伝 伝承者への道』にはCPU専用の敵キャラとして登場しているが、
プレイヤー操作を想定されていないため技は少ない。
おまけに既に華山鋼鎧呼法を発動しているのかゾンビみたいな肌である。
だが「華山群狼拳」と称して息子を投げ付けてくるのでファン必見……ってそれ群狼拳違うよ!最後の悪あがきだよ!
8:33あたりから

PSの『北斗の拳 世紀末救世主伝説』では第三章前半の中ボスとして登場。
華山鋼鎧呼法で正面からの攻撃をすべてガードしてくるが、背中は無防備。
飛び込み頭突きを回避するとケンシロウを見失うモーションが入り隙だらけだが、それでなくても背後を取るのは簡単。
体力も雑魚並で起き上がりの反撃も無いので一度ダウンさせたら百裂脚を重ねて秘孔コマンドを成功させるだけで終わる。

北斗無双』でもNPCキャラで、技が少ないどころか華山鋼鎧呼法が色んなモブにパクられている
ジャギの幻闘編ではジードとタッグを組んで街を襲うも、成り行きでジャギ&アミバに敗北した事で、一族ごと彼らに協力するようになっている。
ちなみに『真・北斗無双』では上記の息子投げが実装された。

その後、2020年に配信されたスマホゲー『真・北斗無双モバイル』で、
「牙親父」としてようやく初プレイアブル化された。長い長い雌伏の時だった……。

インパクトはあるものの割とマイナーなキャラクターだと思われるのだが、何気にパロディキャラが存在する。
それがアリスソフトの『闘神都市II』(これの全年齢移植版である3DS版『闘神都市』含む)に登場する盗賊団の首領である。
序盤の印象的なトラウマイベントであるクライア・カラーのイベントにおいて、攫われたクライア救出の最後の障害として現れるのだが、
倒された盗賊団の下っ端の屍にすがって号泣する、体表を硬質化させ物理攻撃を無効にする奥義を使って来るなど完全にそのままである。
なお、ハニワ聖戦士になる道を選んでクライアのイベント自体を回避すると、当然こいつも登場しない。

また、友人であり同期の漫画家、宮下あきら氏の『魁!!男塾』において、
明らかに牙大王のパロディである「ゴバルスキー」というキャラクターが登場している。
外見は誇張抜きで「獣耳を付けた牙大王」であり、こちらは息子でなく本物の狼を使った集団戦法を得意としている。
負けそうになると「変わりはいくらでもいる」とぞんざいに扱う所も同じ


MUGENにおける牙大王

The Magic Toaster氏が製作。
SFCの『北斗7』のスプライトを使用しており、音声はアニメから取ってきたのか鮮明な声で台詞を喋ってくれる。
なお、「mugenversion = 1.0」になっているが、WinMUGENでも使用可能。

飛び道具として息子を投げ付けたり、原作で見せた頭突きなどで戦うが、なにぶん元が元だけに技は少なく、
歩行アニメーションすら無かったのか前進・後退時には牙大王は突っ立ったまま息子が押して移動するという苦しい状態
(上記のゲーム動画でも確かに前後移動をしておらず、前進は全て飛び膝蹴りで行っている)。
この技数では普通の格ゲーキャラと対戦させるには厳しい…と思いきや、技が少ない分単発火力が高めで判定も強く、
通常技にも削り効果があるなど性能自体は悪くなかったりする。
唯一の必殺技である息子投げも、息子が消えるまで次弾が投げられないものの硬直が非常に短く、
相手との距離によっては息子投げがコンボとして繋がったりするので安心して息子達を投げまくろう。わしが生きておれば貴様の代わりはなんぼでも作れるわ!
超必殺技発生が非常に遅いが当たれば5割持っていく鉄拳制裁と、どこかで聞いたような咆哮と共に突進し、相手をボコボコにする乱舞技の2つ。
後者の威力は前者に劣る(3.5割ほど)もののガード不能なので、ゲージが溜まったら積極的に狙っていきたい。

AIは未搭載だが、guykazama氏による外部AIが公開されている。
技の少なさから立ち回りは単調になりがちだが、上記の性能をフルに活かして襲い掛かってくるので侮れない強さを持つ。

出場大会



*1
もしもここでケンシロウの身内を発見できていたらラオウトキを敵に回してしまう事になり、ケンシロウへの復讐以前に全滅させられていただろう。
またジャギでは仮に捕獲できたとしても弱点になり得ず、牙一族の戦闘能力ではジャギ相手ですら勝ち目は薄そう。
アミバを本物のトキと間違えて捕らえに行こうものならデクにされるのがオチで、よしんば捕獲できてもレイが正体に気付かないはずがない。
恋人ユリアが実は生きているという後付け情報を入手したとしてもヒューイやシュレンあたりにやられそうだし、
実兄ヒョウが修羅の国に居ると知って渡航なんぞしたら名も無き下級修羅に皆殺しにされるのは必定。

これらの情報を牙一族が得る事ができなかったのはどれもこれも後付け設定だからというメタな事情があるのだが、
彼らにとっては知らずに済んだ方が幸運だった……いや、結局ケンシロウとレイに皆殺しにされるわけだが。

なお、この点について円道祥之著の考察本『北斗の拳100の謎』では、レイやマミヤが単独調査でトキとラオウの存在
(およびトキがカサンドラに幽閉されているという情報)を調べ上げた事から、
牙一族の情報網でラオウ達を発見できないはずがないとし、一族の安全のために敢えて隠されたのではないかと考察されている。
同時に一族に女性がいない理由も、世紀末の情勢を鑑みて全員売ってしまったのではないかと推測されていた。

*2
ラオウ編・修羅の国編を終えた後の原作終章で「野獣どもに襲われて人が住めなかった地」という場所が出てくるのだが、
その野獣と言うのは凶暴なとかとかの野生動物ではなく、牙一族の生き残りか同類みたいな蛮族の事であった。
北斗世界の野蛮人はもはや人類扱いされないレベルらしい。そっちも計略を用いたり、火炎放射器を駆使したりと文明はあるのだが…。


最終更新:2024年03月28日 10:20