牙狼 紅蓮ノ月

登録日:2015/10/11 (日) 17:00:00
更新日:2025/05/16 Fri 22:18:55
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牙狼新生。幻想平安絵巻、ここに始まる――――


―平安のに吼える金狼。―

牙狼(ガロ) 紅蓮ノ月(ぐれんノつき)とは、雨宮慶太原作・監督の特撮作品「牙狼-GARO-」の第七期シリーズ作品である。

【概要】


同シリーズでは二作目となるアニメーション作品。
しかし、前作「炎の刻印」の直接の続編ではなく、中世ヨーロッパを舞台にしたダークファンタジーとして描かれた前作とは舞台を一新、平安時代の『守りし者』たちが織りなす伝奇風活劇となっている。
ただし、厳密な時代考証は一切されておらず、せいぜい「和風ファンタジーの世界観で牙狼をやる」程度の感覚である。史実に名を遺す人物も、本来の歴史とは関係ないところでバンバン火羅と化しては叩き斬られている。

『未来忍者』『タオの月』など、原作者・雨宮氏は和風テイストの作品をいくつも手掛けており、
『牙狼』シリーズもTV版第一期の頃から東洋的な要素とは親和性の高さを見せてきたが、舞台そのものが古の日本というのは今回初の試み。
物語の傾向的には全体の縦軸となる要素を匂わせつつも一話完結の趣が強く、『誰が火羅なのか』を探り当てる推理サスペンス的な構成が目立つ。


キャラクターデザイン原案には『ウイングマン』、『電影少女』シリーズ、
I"s』、『ZETMAN』、『TIGER&BUNNY』など数々のヒット作を生み出した桂正和先生が、
脚本には『鋼の錬金術師』『仮面ライダー剣』『轟轟戦隊ボウケンジャー』など、
アニメ・特撮を幅広く手掛ける會川昇と『鳥人戦隊ジェットマン』『人造人間ハカイダー』、
『鉄甲機ミカヅキ』『牙狼-GARO- MAKAISENKI』『衝撃ゴウライガン!!』と雨宮監督作品に関わってきた井上敏樹が構成として参加、
サブライターには前作にも全裸回でその名を知らしめたサブ脚本で参加した村越繁、
仮面ライダー1971-1973』を手掛けた和智正喜、そして吉岡たかを、猪爪慎一、水上清資とそうそうたる面子がその独特な世界観を構築していく。

桂先生は雨宮氏と同じ阿佐ヶ谷美術専門学校出身の後輩にあたり、
『ゼイラム』シリーズのアニメ版『I・R・I・A ZЁIЯAM THE ANIMATION』でも仕事した縁で今シリーズに参加したとされている。

アニメ制作は前作と同様MAPPA&東北新社。
監督は『幽☆遊☆白書』『みどりのマキバオー』などのスタジオぴえろ作品で作画および作画監督を務め、
NARUTO‐ナルト‐』では絵コンテ・演出・作画監督・原画の一人四役を務めた若林厚史。
若林氏はアニメ『グイン・サーガ』の監督も務めており、MAPPA制作アニメでは『神撃のバハムート GENESIS』の演出・作画監督として参加している。

2015年10月16日からスターチャンネルで無料放送、ニコニコアニメチャンネルでも配信開始、
一週間後の2015年10月24日からファミリー劇場で『魔戒指南』も放送中。
2016年1月23日までは雷吼役の中山麻聖氏と第四話に登場する赫夜(かぐや)役の大橋彩香氏が司会を務め、両名とキャスト・スタッフのインタビューを、1月30日から『秘密結社鷹の爪」でおなじみ株式会社DNP制作によるおまけアニメ『ゆるがろ』第二弾をそれぞれアニメ本編終了後に流す方式となっている。

また、2017年11月23日に放送された「金狼感謝祭2017」にて、劇場版新作アニメの製作及び公開が発表された。
そして、2018年3月23日に劇場版タイトルが「薄墨桜 -GARO-」と発表され、公式サイトのオープンと予告映像の公開がなされた。
正式上映は10月6日より。


平安の世、渦巻く――
Darkness dwells in Heian period.

【あらすじ】


豪華絢爛、雅な貴族の文化が花開き、霊的結界によって厳重に守護されし都――平安京。

しかし、その栄華の様相は日暮れと共に変貌を遂げる。
都に結界を張る呪術集団・陰陽師が実際に護るのは、都市の北端中央に位置する中枢部・光宮のみ。
市井の陰には、人の魂を食らう物の怪・"火羅"(ホラー)が住み着き、平安京の夜闇を跋扈していた。

陰陽師が光宮の護り手であるように、民の護り手となる者も存在する。

闇の世界で火羅を討滅せし者――それが"魔戒騎士"と"魔戒法師"

魔戒騎士は、鎧を召還して手にする圧倒的な戦闘力で火羅と戦い、
魔戒法師は、魔導力による法術を駆使して魔戒騎士をサポートする。

魔戒法師・星明(セイメイ)に拾われ、魔戒騎士として育てられた青年・雷吼(ライコウ)は、
従者の金時(キントキ)とともに、都に暮らす人々のために日々奔走していた。

平安京に渦巻く闇から、次々に生まれ出でる火羅。
はたして、雷吼たちが立ち向かう先にあるものとは……。


【登場人物】


ほぼ全員が前作『炎の刻印』からの続投という異例のキャスティング。
キャストによっては作中のポジションが似通ったキャラクターを演じていることもあるが、
血縁や生まれ変わりといった因果関係は特にない。

が、2018年1月11日におけるニコニコ動画の「『牙狼-GARO- VANISHING LINE』の一挙放送+制作スタッフ談話」にて、アニメ『牙狼』シリーズの空間は同一のものであると発表された。
その上、『VANISHING LINE』第23話「MY SISTER」では、エルドラドキングが本作の金時、星明、雷吼や、炎の刻印のレオン、アルフォンソ、ヘルマン、エマ、メンドーサ、そしてサンタ・バルド城を知っているような描写が一枚絵とともになされた。
したがって、アニメでの(現状)最古の黄金騎士はこの作品の主人公ということになり、更にその剣が『炎の刻印』のラファエロの相棒だった先代黄金騎士や主人公レオン・ルイスに受け継がれ、更に『VANISHING LINE』の主人公ソードに受け継がれていることになる。
また、『DIVINE FLAME』終盤にてレオンの元に駆け付けた無数のガロの英霊の中には、本作の主人公たる雷吼も存在していたことだろう。


  • 闇を討つ者――雷吼(ライコウ) CV:中山麻聖 幼少期:潘めぐみ
本作の主人公。この時代における魔戒騎士の最高位『黄金騎士ガロ』の称号を受け継ぎし若者。
真の名は『源頼光(みなもとの・よりみつ)』。天下五剣の一つ・童子切の伝承、土蜘蛛と酒呑童子退治といった話などで知られる平安中期の武将として知られている。

魔戒法師・星明の屋敷に従者・金時と共に棲んでおり、普段は扇子作りの内職で生計を立てているが、
夜には白い魔法衣を身に纏い、日本刀型の魔戒剣を振るって平安の闇に蔓延る火羅を斬る。

自身を都の外に捨てられていた天涯孤独の身の上と思い込んでおり、本当の名前も知らない。
しかし、星明が幼少期の彼を発見した時『火羅に襲われる中心滅獣身の状態を保ったガロの鎧に守られる』
という本来なら考えられない状態下にあったことから、生家と思われる源家共々、魔戒騎士との宿命的な縁が窺われる。

星明の手で鎧を解除されてからは、彼女の手で育てられたくましく成長。
長らく称号を継ぐ者が途絶え、空位となっていた黄金の鎧を受け継ぎ黄金騎士・牙狼(ガロ)の称号を星明より与えられた。
実力はまだまだ未熟だが正義感が強く、人々を「守りし者」としての気概は既に充分に備えている。

端整だが峻厳な顔立ちをしており、一見すると近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、
人柄自体は至って朴訥としたもので金時を騙してこっそり屋敷を抜け出そうとしたり、
星明に薦められた砂糖菓子やら小袖の手作り芋まんじゅうを食べて感激するなど、人間らしい茶目っ気や無邪気さもある。というかかなりポンコツ気味…
日常的に星明に振り回されているためやや女性不信気味で色恋沙汰には疎い。ちなみに童貞。


火羅狩りの際身に纏う黄金の鎧は『炎の刻印』と比べると金箔めいた質感を除けば意匠のアレンジがほとんど見受けられず、感情の高ぶりで牙を剥き吼える部分を除けば特撮版に近い印象を持つ。
また、本作独自の設定として星明が魔導輪ザルバの封印を解かねば鎧を召還できないという制約と
火羅を討滅し鎧を送還した後激しい疲労に陥るというデメリットがある。


演じる中山氏はTV版第4期にて主人公・冴島雷牙を演じており、
どちらの牙狼も「瞳の色が青」という共通点がある。


  • 稀代の術師――星明(セイメイ)CV:朴璐美 幼少期:逢葉まどか*1
雷吼を魔戒騎士として育て上げた美しき魔戒法師。年齢不詳で彼が幼少の頃からまったく容姿が変わっていない。
真の名は『きよめ』。平安京随一の陰陽師・安武晴明(はるあき)の孫娘という名門の生まれであったが
自らの意志で闇に生きる『守りし者』としての道を選び、現在は実家とは疎遠。
一時期道魔法師に弟子入りしていたこともあった(つまり道満は彼女から見ると弟弟子にあたる)が、闇に心をゆだねることを否定し、
光の側に立つと決めてからは破門されている。

父に安武家の嫡男・信太丸(しだまる)、母に陰陽師の名門・賀茂家から嫁いだ術師・葛子姫(かつらこひめ)を持ち、
幼少期から火羅を遊び半分で討滅できるほどに非凡な才覚を発揮していた。
しかし、陰陽師と魔戒法師の在り方の違いからこれを危惧した祖父の手で座敷牢に隔離される。*2
さらに徒に火羅を刺激したことから脅威を排除すべく安武家に大量の火羅が攻め寄せ、彼女の父母は自身を犠牲にして家と娘を守った。

その身に火羅を封印したことから自身も異形と化した葛子姫は熊野の地下に封印されていたが、
他ならぬ星明の手によって封印から解き放たれる。しかし、彼女の真の狙いは修行の末編み出した『火羅を魔導具に変化させ使役する術』*3によって母を長年の呪縛から解き放つことにあった。


モデルは言わずと知れた実在の陰陽師・安倍晴明であるが、本作では祖父と娘とで別々のキャラクターであるという翻案がされている。
また、この物語では『安武』と書いて『あべ』と読む。

白銀の髪に桔梗色の装束を纏い、普段は遊女として貴族の屋敷に出入りしており、その美貌と卓越した琵琶の腕で男達を虜にしている。

これまでのシリーズの魔戒法師(あるいは創作における陰陽師のステロタイプ)と比較すると非常に俗っぽくエキセントリックな人物で、
性格は気まぐれで現金、珍品と甘味に目が無く金にがめつい。得意技は泣き落としと色仕掛け。
そんな彼女に雷吼と金時も振り回されっぱなしであるが、なぜか蝶を過剰に嫌っている(本人曰く「憎んでいる」)という他愛も無い弱点も。
法師としての腕前は確かで法術を駆使してホラーと互角に渡り合い、結界を張って雷吼の戦いを援護する。
また、鎧の召還に必須なザルバの解放は彼女にしかできない。*4
封印の術はかけ続けているだけで生命力を消費する危険なものであるが、当人はそれをひた隠しにしていた。

正装は烏帽子に水干だが、その下には露出が多く身体のラインを強調したレオタードのような魔法衣を身に着けている。
キャラクターデザインを手がけた桂正和氏の代名詞である『尻』には要注目。*5
火羅との戦いに際しては惜しげも無く上衣を脱ぎ捨ててその肢体を躍らせるが、
物語が進むにつれ普段からこの格好でいる時の方が多くなり、むしろ水干姿がレアという有難味があるのかないのかわからない事態になっている。

そして後半、光喰らう火羅の遺した闇から雷吼を救うために道魔法師に施された呪印が彼女の秘めたる闇を呼び覚まし、古の火羅・嶐鑼(ルドラ)の依代にされ「黒星明」となり、胸元に三日月の痣が現れ、戦闘服もボディコンスーツを意識したものになる。前番組のアミリを思い出す視聴者もいるとか。
第二十一話にて晴明の捨て身の儀式と雷吼の剣で嶐鑼の闇を消され、元に戻り嶐鑼との決戦に挑む。

声を担当する朴璐美氏は、「炎の刻印」でも高い実力を持った姐さん系ヒロイン女魔戒法師エマ・グスマンを演じている。


雷吼の従者を自称する元気な少年。
外見は童子だが星明同様に雷吼の幼少時から容姿に変化がなく、見た目通りの年齢では無いと思われる。
モデルとなったのは頼光四天王の一人・坂田金時。ママカリまさかり担いだ~♪でおなじみの御伽噺『金太郎』の後の姿としても知られている人物である。

雷吼と共に星明の屋敷で暮らしており、忠義を誓った彼の身の回りの世話を焼くが、
互いにどこかズレたやりとりを交わすことが多く、客観的には凸凹コンビの相方といった体である。
また、星明にも主人共々いいようにこき使われており苦労が絶えないようだ。

従来シリーズにおける魔導火を翳す役割を分担しており、
背中に携えた二振りの黒い棒を地に走らせたり打ち鳴らすことで火花を散らし、
それを対象に見せることで火羅を探知できる。逆を言うと金時が居合わせなければ雷吼たちに火羅を特定する手段は無い。


声を担当する矢島晶子氏は前作では第4話のゲストで復讐に燃える少年・アロイスを演じた。


  • 式 CV:逢葉まどか
陰陽師が秘術を以て駆使する式神のこと。この作品の世界観では、人型に切り抜いた紙を媒体として打つ。
晴明や彼から渡された星明のものもあり、こちらは『式にゃん』『式っち』と愛称を付けて呼ばれる明確なキャラクターを持つ。
『シキシキシキ…』としか喋れないが、人語を解する知性はあり意見をするときは紙面に文字が浮き出る(漢字は使えず、オールひらがな)。
日常生活においてはずぼらな星明に代わって小間使いのような雑事をこなし、
戦闘時は雷吼を背に乗せて一旦木綿の如く宙を飛ぶなど細かいフォローが光る。…金時より役に立ってるかも…
式の人格は打った陰陽師のそれを反映するため、ある意味式にゃんの言動は星明の深層意識の表れとも取れる。
中盤、取り返しのつかない過ちを犯し闇に堕ちかけた星明を踏みとどまらせるという単なるマスコットにとどまらない活躍を見せたが、第十七話にて晴明が彼女の体に施された道魔法師の呪印を解く際、暴走した彼女の拳を受け焼失した。
…が、星明の闇堕ちと共に黒く復活。操り人形となってしっかり働いている。


名門貴族・藤原南家出身の青年。
平安京の警察官とも言うべき役職である検非違使(けびいし)として天子に仕えていた。

自身が召し抱えた放免*7・小袖と相思相愛であったが、
身分の違いから添い遂げることが適わず貴族中心の社会の在り方に絶望。
検非違使としての使命も貴族の地位も捨て去り、『袴垂』を名乗って手下と共に傲慢な貴族から金品を強奪し貧しい民に分け与える義賊の道を歩む。
それを境に服装も萌木色を基調とした検非違使の制服から荒々しい盗賊然としたものに変わっている。

その活動は時を待たず藤原南家の出身である大盗賊・天戒丸/藤原時忠の耳に入り、
実は藤原南家秘伝の『白銀の鎧』を継承する白蓮騎士・斬牙(ザンガ)*8であった彼に後継者として見込まれる。
当初は貴族としても盗賊としても半端者であるという自嘲から『守りし者』としての宿命を受け継ぐことに乗り気ではなかったが、
過去の因縁から火羅と化した同僚・成通の凶行を知り、青鞘の魔戒剣と魔導輪ゴルバ(CV:チョー)を受け継ぎ、ついに次代の白蓮騎士の称号を襲名。
雷吼とは異なる道を歩みつつも、都の闇にはびこる火羅との戦いに身を投じることとなった。
袴垂となってからはニヒルで反抗的な言動が目立つが、偽悪的な態度の裏には強い正義感があり、
雷吼とも馴れ合いは避けているものの敵対する程険悪な間柄では無い(食べ物で釣れば話し合いにも持ち込める)。

身に纏う白銀の鎧は実写シリーズの白夜騎士・打無に酷似しているが、その理由は不明。
振るう魔戒剣は打無と同じ実写シリーズの銀牙騎士・絶狼やアニメ前作の絶影騎士ゾロにも似た鋭い曲刀に変化する。
第二十話では稲荷に魔導火の灯された宝玉を渡され烈火炎装、一時的に強化させるが、魔導火をルドラに憑依された星明に喰らわせることなく鎮火してしまった。

史実における保輔は傷害や強盗といった無法を数多く働き、日本最古の切腹者として壮絶な最期を遂げたいわくつきの武将であり、
本作で『袴垂』を名乗ったのは『今昔物語集』にも名を記す悪名高い盗賊・袴垂と保輔を同一視する説から。*9

声を担当する浪川氏は前作では主人公=黄金騎士ガロであるレオン・ルイスを熱演。
雷吼役の中山氏共々、過去作における黄金騎士の演者が別のキャラクターとして出演していることになる。
ちなみに、小袖を演じた大関英里氏は前作ではレオンの母・アンナを演じており、いずれも死に別れる関係となっている。


左大臣の位を持つ平安京の最高権力者。モデルはもちろん実在した藤原道長その人。
本作では優雅でありながら目的のためには手段を選ばない怜悧冷徹な野心家という側面が強調されており、
優男風の外見だが、一族全てを追い落とし、権力闘争の頂点に君臨しているかなりの豪腕の持ち主。

直接的に魔界に携わる人物ではないが、この時代は物の怪=火羅の存在が現代よりも社会と密接に関わっており、
彼も光宮を守護する陰陽師が操る神秘そして魔戒騎士の存在については認識している。ゆえに火羅を目前にしても動じることがない。
万軍に匹敵する力を有する『黄金の鎧』を手中に収めようと画策しており、その封印を司る星明にも強い執着を持つ。

声を担当する堀内氏は「炎の刻印」では全裸が正装(でもめちゃくちゃ強い)な色ボケ親父ヘルマン・ルイスを演じたが、
今作の根幹に関わってくるキーパーソンとされている。


  • 安武晴明 CV:天神英貴
名の読みは「はるあき」。*10
光宮を守護する使命を帯びた陰陽寮でも史上最強と称される陰陽師。星明の祖父。
モデルとなった人物は星明と同一だが、一般的な創作における白面の貴公子然とした造形ではなく、がっしりとした壮年の男性として描かれている。
平安京を呪術的に守護する第一人者として道長からは絶大な信頼を置かれており、彼の右腕として光宮と道長の両方を守るべく尽力している。

本作では陰陽師と魔戒法師は別々(少なくとも所属は完全に異なる)のスタンスだが、式神を操りホラーの脅威をものともしない実力は本物。
しかし、陰陽師はあくまで貴族の世界である光宮『のみ』を守護する存在であり、名もなき民を守る魔戒騎士・魔戒法師とは異なる道を往く者である。
彼もまた同様だが、権力者につき従うドライな一面とは別に家を出た孫娘の事は彼なりに心配しており、第二十一話にて赫夜と共に嶐鑼に憑依された彼女を救うために自ら命を落とした。

声を担当する天神氏は、前作では初代堅陣騎士ガイアことラファエロ・ヴァンデラスを演じており、第二十一話ラストで星明と別れを告げる場面も前作アニメの『時たゆたう場所』を意識している。
いずれも『壮年の実力者』『残された者に未来を託し散る』というポジションである。


保輔(袴垂)の兄。道長の家司(屋敷警護の責任者・執事)を務める有力者であり「道長四天王」の一人。検非違使にも顔が利く。
謹厳実直な武人で自身も剣の達人。家柄や体面を重んじる故に貴族社会の欺瞞に反発する保輔とは喧嘩別れしてしまうが、
魔戒騎士の力を求める道長の要請で黄金の鎧(牙狼の鎧)と並び藤原南家に伝わるという白銀の鎧(斬牙の鎧)の行方を追う中で、
他ならぬ保輔自身が鎧の継承者=白蓮騎士として戦っている事実を知る。
弟が都に仇為す盗賊・袴垂となったことで完全に追う者と追われる者の関係になってしまったが、
一方で物の怪から都を守るという使命感から利害が一致した時には息の合った連係を見せることもあり、
心の底では未だ強い兄弟愛で保輔と繋がっている。
第二十一話にて、夜廻をする中ルドラに憑依された星明に遭遇。尋常ではない殺気に気付くも、刀を抜くよりも早く魔導筆の一振りを受け呆気なく死亡。筆は剣より強し…。

史実の保昌は源頼信・平維衡・平致頼らとともに『道長四天王』と称されるほど武芸に秀でた人物で、道長のはからいで和泉式部と結婚した。保昌自身も歌人で、『後拾遺和歌集』に彼が詠んだ和歌作品が一首収録されている。


道長に仕える検非違使の長官で、「道長四天王」の一人。彼の命で京の安定のため動く。
京を騒がせる物の怪(火羅)に憂う一方で、光宮の安全を優先して疫病に侵された貧民を切り捨てるという冷徹な面もある。
腕の立つ陰陽師でありながらも道長になびかない星明の尻尾を掴もうとしている。
実は裏ではその上昇志向の強さに陰我を見出した道満の誘惑に乗り火羅と化していた*11
自身の政敵を兇賊の仕業に見せかけて抹殺し、その罪を袴垂に着せようと画策していたが、保昌と袴垂にその証拠をすっぱ抜かれ、野望が露見したことで本性を顕すも斬牙に討滅された。

史実の公任は本編の彼とは異なり、政治の面だけでなく和歌・漢詩・管弦に秀でた「三舟の才」を持つ歌人とされており、藤原道長に対抗意識を持つ逸話を持ちながら、行動を共にすることが多かった。

  • 賀茂保憲 CV:駒谷昌男
陰陽師の名家である賀茂家の陰陽師で、「道長四天王」の一人。晴明と同じく星明の祖父。
星明や晴明を敵視しており、また自分こそが彼らより優れた陰陽師であるという陰我を抱いていた結果、道満の策により火羅と化してしまった。


  • 源頼信 CV:野村勝人
「道長四天王」の一人に数えられる若き武将。戦時には長巻を揮い、火羅と戦えるほどの技量を見せる。
実は雷吼の異母弟に当たり、両者の顔立ちも良く似ている。鎧のことよりも雷吼と星明の関係が気になるお年頃。
自分と雷吼の関係を知ってからはわだかまりなく兄を受け入れ、鎧を纏えずとも自分の成せる事を成すと公私に渡って奮闘する。
一方で星明の想いを一顧だにしない雷吼の朴念仁ぶりには苦言を呈することも…
中盤を過ぎて道長から直々に検非違使庁長官の後任へ大抜擢を受ける。

声の野村氏は、前作において二代目堅陣騎士ガイアにして『もう一人の黄金騎士』であるヴァリアンテ国の王子・アルフォンソを演じた。
また、頼信の母たる南御前を演じる多田なつみ氏も前作ではアルフォンソの母であるエスメラルダ王妃を演じている。
史実では保昌と共に『道長四天王』の一人であり、源氏の東国進出にも貢献した彼だが、今作でいかなる運命を辿るのか注目される。
なお、『ゆるがろ』第二弾でもアルフォンソ並にいじられキャラを演じている。
あまりにも謙った態度に赫夜から「そんなんだから雷吼に先を越されるし牙狼にもなれないのよ!」とツッコまれた。


  • 末摘花 CV:斉藤貴美子
本編後半に入り、第十四話から登場したセミレギュラーキャラクター。
源氏物語の同名の登場人物に相当する。
貴族でありながら庶民に対しても分け隔てなく接する明朗闊達で気立ての優しい女性だが、
当時の女性の理想像とはかけはなれた容姿と振舞い*12から都では『悲劇の姫君』とからかわれており、
当人も笑い飛ばしてはいるものの男縁の無さについては半ばあきらめている。
しかし、自立したタフな女性が好みな頼信からは高く評価されており、時折まんざらでもない空気になることも。
第十四話で頼信が源融に連れ去らわれた際、なぜか顔を赤らめていたが……いかがわしい妄想をしていたのだろうか?


  • 多田新発意(ただのしんぼち)CV:辻親八
頼信の父親。史実における源満仲であり、新発意は出家後の名前である。
現在は病を患い臥せっており、時折うわごとのように雷吼の本名の頼光の名を呟くことも。


貴族らしからぬ常識はずれの奔放さで数多くの男性と浮名を流した恋多き女性。
星明とは旧知の仲らしく、彼女にはよく情報を提供する。
その身分ゆえに謙る彼女に対して「『和泉ちゃん』でいいわよ」と気兼ねなく呼ぶように促す気さくな面を持つ。
情報提供と引き換えに多めの小銭を請求するがめつい部分が玉に瑕。

史実における和泉式部は、平安時代中期で活躍した歌人とされており、中古三十六歌仙および女房三十六歌仙に名を連ねるほどの情熱的な歌才の持ち主。
また、和泉守の位を持つ橘道貞と離婚した後、冷泉天皇の第三皇子・為尊親王と熱愛が世に知られ渡るが、
身分違いの恋だと親たる越前守・大江雅致と越中守・平保衡から勘当されている。
為尊親王の没後は弟の敦道親王、藤原道長の家司である藤原保昌と恋仲になる…と紫式部から「はしたなき女」、
藤原道長からも「浮かれ女」と揶揄されるほどの恋愛遍歴の持ち主でもある。
…それを反映してか本作の第十五話でもシャレにならない真似をしでかしたこともある。和泉ちゃんマジ文科系ビッチ
ちなみにDVD版の特典でも情報屋として常若に協力しているのだが、本編から20年近く前の話だというのにまったく容貌に変化がない。


  • 蘆屋道満 CV:闇智一
平安の世に暗躍する謎の法師。
顔一面に無数の傷痕が刻まれた不気味な男で、京の闇に潜んでいる。
モデルとなった実在の蘆屋道満は、藤原顕光に使える呪術師で、安倍清明に匹敵するほどの力を持つとされた人物。
『闇』を愛し、『光』を憎悪しており、迎門(ゲート)を通じて現世に火羅を召還する術を操る。
いわば本作における火羅絡みの事件の仕掛け人であり、星明からは「火羅よりも性質が悪い」と断言されている。

人間の心の闇を煽る手管に長けているものの、その一方で人の心の中にある光(良心)を侮り、まったく信用していないため、
闇の誘惑を跳ね除けて人としての尊厳を貫いた標的に計画を瓦解させられたり、上辺だけ悪巧みに乗った星明の本心を見抜けなかったりと
『純粋な闇の住人』であるゆえの隙も度々見せている。ドジっ子。

神出鬼没であるが、一部を除いて生活臭に乏しい牙狼シリーズの黒幕には珍しく表社会でもそれなりに有名人であり、
師である道魔法師共々四条河原に建てた竪穴式住居に定住し在野の呪術師として普通に名と素性を明かしたうえで
自営業にて生計を立てていたりする。また、蘆屋道満というのは代々襲名する称号のようなもので、彼の本名は別にあるらしい。
あと裸足。

声を担当する関氏は「炎の刻印」では放浪の医者ファビアンに憧れる青年ミケル/メディクルスを演じた。


  • 道魔法師 CV:土師孝也
道満と共に京の都の闇に潜む謎の老法師。
その正体は『先代の蘆屋道満』であり、晴明とは呪術勝負を繰り広げたライバル関係にあった。
また、実家を出奔した星明が彼に師事していた時期もあり、現在もその関係は完全には断ち切れていない。
髑髏の図柄が施された黒い賽を持つ。雷吼の本名を知っており、道満と同じ「呪われた子」と称するが…。

後半、嶐鑼とその依代となった星明をめぐり対立。最終的に下剋上を起こした道満の闇に喰われ消滅した。道満の心の底の闇の深さは道魔法師の予想以上のものであった。

声を担当する土師氏は前作では堕ちた魔戒法師にしてシリーズを通した黒幕・メンドーサを演じており、
「今作も彼がラスボスになるのではないか?」とファンに警戒されていた。


  • 魔導輪ザルバ CV:影山ヒロノブ
世界観を問わず『牙狼』シリーズに一貫して登場するシンボル的なキャラクター。主題歌を歌っているのも彼。
前作では猿轡を噛まされたようなアレンジがなされていたが、今回は特撮版に近いオーソドックスなデザイン。
火羅を探知するなどの役目は相変わらずだが、今作の序盤では普段は何故か石化しており、
星明によって封印を解かれないとその力を発揮することができなくなっている。
一人称が『俺様』というフランクなものだった特撮版と異なり、口調は前作と同じく一人称が『我』という古風な言い回し。
喋りすぎると星明に強制的に封印されてしまうのが悩みだったが、
この問題に関しては雷吼が独力で鎧を召還できるようになってからは解消され、星明が去ってからは実質上雷吼の相棒として助言する立場になる。

なお、前作では物語開始以前に大破し、修復された際に一度それまでの記憶がリセットされてしまったため、
もし『紅蓮の月』が『炎の刻印』の前日談だったとしても、雷吼と共に戦った記憶は既に無い可能性が高い。


  • 稲荷・三狐神 CV:鵜殿麻由、佐咲沙花、佐藤依李子
京の外れにある稲荷神の石像が配置された巨木をゲートにした番犬所の神官にして今作のブラック上司枠
白塗りのおかっぱ頭と京人形を思わせる姿をした三人の童女で、顔かたちは三人とも全く同じだが、声や性格は別々で

  • 稲荷(天)はリーダー格で一番よく喋る底意地の悪いロリBBA(CV:鵜殿氏)
  • 稲荷(白)は落ち着いたお姉さんっぽい喋り方(CV:佐咲氏)
  • 稲荷(空)は無機的で抑揚のないカンペを読み上げるような口調(CV:佐藤氏)

…となっている。*13
番犬所の神官が白塗りの童女トリオという構成は第1期『暗黒魔戒騎士篇』の三神官と酷似しており、
同作品の騒動は東の番犬所が諸悪の根源であったことから年季の入ったファンからは警戒されていたが、第二十一話にて元老院に尻をひっぱたかれたのか、三人揃って自ら出陣。
道満をものともせず九尾の狐にも似た姿に変化し噛みついて返り討ちにした。

雷吼・星明がそこに立ち寄ると強制的に異空間に移動させ、
彼らに指令を送るがその内容はほぼ厄介事なので両者の仲はあまりよろしくない(というか一方的に星明が楯突いている)。
ちなみに、三人の中の一人である鵜殿氏は前作でも性悪ロリBBA神官ガルムを演じているほか次回予告ナレーションおよび『ゆるがろ』でも活躍。赫夜の腹話人形になったり大喜利に出たりと大忙し。時折頼信をアルフォンソ呼ばわりするが気にしちゃいけない。
第七話以降は他の稲荷も予告を担当しているほか、EDテーマ「花紋」も彼女らが歌っている。
というか、1期EDはほぼ番犬所のPVと化している。
さらに、2期EDのカップリング曲には「イナリズム」なる本編の雰囲気とは明らかに合わないポップでかわいい曲が収録されている。
その歌では三狐神が雷吼に対してギャルゲヒロイン的なセリフを言うという中々カオスなパートが存在する。
Dance all night~♪ 狐踊る今宵の月~♪


本作のキーパーソンと目される碧眼の少女。「かぐや」という名前の通り、『竹取物語』に語られるかぐや姫その人である。
伝承通り竹の中から生まれたとされ、その絶世の美貌から多くの貴族たちから求婚を望まれるも、
彼女の育ての親である老夫婦が貴族からの贈答品で財を成すうち、肥大した欲望に呑まれて火羅と化してしまい、
以来、宝物を持って来させては用済みの貴族を殺すための「エサ」として利用され続けていた。
偶さか出逢った雷吼に『救い』を求めるが、それは火羅を斬ることとはまた別の『何か』であり、
老夫婦に化けた火羅を討滅した雷吼に真意を告げることもなく、月へと消えていった。
その正体は、安武家の祖先により生み出された、『紅蓮ノ月』という紅い月で嶐鑼を封印せし宿命を背負いしモノ。
いうなれば、人型魔導具というべき存在で、その法力は傷ついた者を癒し、嶐鑼に憑依された星明の結界を中和するほど強い。

『ゆるがろ』第二弾では金時相手にどういじり倒すかを考えてたら頼信なのに落胆したり、
このコーナーを「本編で扱いの悪かったキャラを月にかわっておしおきするコーナー」と勘違いしたり、
「『ゆるがろ』が本編」と評価されたいと発言したりと、Youtuberならぬゆるチューバーとして注目されて自身が主役のスピンオフ作品を作ってもらおうと張り切ったり、頼信にお金貸して♪とせがんだり、と今まで出番のなかった鬱憤を晴らさんとハジけまくる。
そこ、ただのへごちんと言うな。
第十四話以降にて再登場、ED「花蓮」も稲荷ら三狐神と共に熱唱している。


アニヲタの項目を荒らす者を、俺は絶対に許さない――その項目、俺が編集する!!















美しい桜が咲き乱れる時、
悲しくも儚い復讐劇が幕を開ける―――




薄墨桜
GARO


2018年10月6日(土) 平安魔戒草紙、再演。



―貴方に出逢わなければ――。―





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最終更新:2025年05月16日 22:18

*1 逢葉氏は『炎の刻印』ではヒロインの一人、ララを演じている

*2 これは火羅の目から大事な後継者を隠すという意味合いもあったものと思われる

*3 原理はザルバを始めとする魔導具や轟天のような魔戒獣に近い

*4 これは陰陽師の技術らしく、実は彼女に術を手ほどきした晴明なら簡単に解くことができる。雷吼も七話で一度解除してもらった後はいつでも召喚が可能となったが、同話ラストで再度星明に封印され元の木阿弥に…

*5 原作者である雨宮慶太氏から唯一「尻が出る衣装を」というオーダーが出たとか。桂先生は「明らかに世界観にそぐわない」と難色を示したものの、雨宮氏のゴーサインが出て現在に至る

*6 劇中では推定20代相当の常若が「今度鎧を纏えば子供になってしまう」と語っており、実際その後の戦闘を終えて金時になっているので若返りはかなり急激なスパンで起こるようである。

*7 捜査の人員として登用された前科者

*8 公式での紹介およびスタッフ・久藤 瞬氏のTwitterにおける表記では『残牙』。サブタイトルおよび特別編『曲宴』では『斬牙』とばらつきがある。サントラでは袴垂・斬牙召還となっており、劇場版のサントラにおいても「斬牙真」とあるので『斬牙』が公式名称となっている模様。

*9 本作でも社会的には兇賊という扱いだが、これは押し込んだ屋敷に棲む貴族が火羅と化していた場合、その場で討滅して結果的に強盗と認識されているため。

*10 史実の安倍晴明も名前の読みははっきりしておらず、「はるあき」「はるあきら」等複数の説がある

*11 この時点で憑依前の公任は死亡したと言えるが、その経緯や時期自体は判然としない。

*12 長身・男性的な異装・供もつけずに外出等

*13 担当声優の1人、佐咲氏のブログによると、当初は単に稲荷A・B・Cという仮称だったがEDテーマを歌うに当たって改めて命名されたとのこと。天・白・空はそれぞれ天狐・白狐・空狐…という架空の狐の位階に因んでいると思われる