エール団(ポケモン)

登録日:2019/11/24 Sun 21:42:46
更新日:2025/04/01 Tue 23:08:57
所要時間:約 12 分で読めます





ある トレーナーを 勝たせるため エールを 届け―る……
われら エール団の すごさ おそろしさ
じっくりたっぷり 教えーる!




出典:ポケットモンスター、99話『スパイクタウンのマリィ!』、
19年11月17日~2022年12月16日まで放送。
OLM、テレビ東京、MEDIANET、ShoPro、
©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon


エール団とは『ポケットモンスター ソード・シールド』に登場する謎の組織である。
英語で「声を合わせた応援の叫び」を意味する「yell」という単語の頭文字「Y」をトレードマークとしている。
アニメでは2022年2月になってようやく登場。


【概要】

エール団の目的はただ1つ、スパイクタウン出身のジムチャレンジャーの少女マリィジムチャレンジを制覇してチャンピオンカップで優勝出来るよう応援活動をすること。

これだけなら特に問題のあるグループであるようには思えないのだが、彼らのファン活動は時に過激で乱暴な物となることも珍しくないようで、
作中では
  1. 他のジムチャレンジャー達にブーイングを飛ばす
  2. ホテル『スボミーイン』の受付を占拠して彼らの宿泊を妨害する
  3. エンジンシティ西で進路を塞ぐ
  4. ターフタウン東で進路を塞ぐ
  5. ジムチャレンジャー達を追いかけるために5番道路で人から無理矢理自転車を借りようとする
  6. バウタウンで第二鉱山への進路を塞ぐ
  7. ナックルシティの東西で進路を塞ぐ
  8. ルミナスメイズの森で進路を塞ぐ
  9. 7番道路でスパイクタウン方面への進路を塞ぐ
  10. 9番道路でまたもや人から無理矢理自転車を借りようとする
…と、凄まじい頻度で様々な迷惑行為を行っている。

早い話が悪質なサポーターの集団である。興行競技として確立されたポケモン勝負の光と影を描いた本作ならではの存在であると言えよう。
なお、エンジンシティからはほぼ毎回のように「応援の練習」と称して道を塞ぎ、マリィが通るまで他のジムチャレンジャーが通れないようにしている。
メタ的にはプレイヤーのイベントスルーを阻止するという役割を果たす存在なので、イベントをクリアした頃には忽然と姿を消していることが多い。


モデルはヨーロッパに多く存在し、ヨーロッパの社会問題の1つでもある過激なサッカーサポーター・フーリガンと思われる。
かと言ってさすがにリアルな社会問題をそのままゲームに反映させるワケにも行かないため、「明確な意志が見える妨害行為で周囲が迷惑を被る」という形に抑えられている。

歴代の悪の組織と違って、大きな野望や思想を持たないという点では前作スカル団と通ずる物がある。
そもそも活動内容を見ていると、悪の組織と呼ぶのも適切とは言えないかもしれないが。


【団員達の人物像】

彼らは全員マリィに心酔しきっており、彼女がバトルに臨む時であれば例えそこがどこであってもメンバーの誰かが即座に駆け付ける。
その姿はもはや狂信的とすら言えるほどで、前述の通りマリィのためならはた迷惑な振る舞いも辞さない。
その一方で意外と思いやりのある一面も持ち合わせており、道で寝ているスナヘビが目を覚まさないよう気遣ったり、そこを通ろうとした老婦人に道を譲ったりするなど、善良な姿を見せることもある。
主人公達が通ろうとするとスナヘビに構わず大声で喚き散らし戦いを挑んでくるのだが
マリィやジムチャレンジのことが絡むとスイッチが入って豹変してしまうだけで、本当はそこまで悪い人達ではないのかもしれない。

とはいえ日頃の行いが行いなので、やはり作中における彼らの評判はお世辞にも良いものとは言えず、
「ファン失格」「誰かの応援のために他の人の邪魔をするなんてサポーターとしてレベルが低い」などと苦言を呈する人物も少なくない。
当のマリィさえも、エール団の度を越えた応援活動には頭を悩ませているようで、度々彼らの迷惑行為を叱責しては被害者達に自ら謝罪している。
エール団も彼女の言葉には素直に従い、また彼女本人に対しては付きまといなどの嫌がらせを行うようなことは一切無くバトルにも割って入らない。
そういう点に関してはファンの鑑と言えるかもしれない。
また、作中の一般人の中でエール団に嫌悪感を抱く者はいてもマリィ本人を悪く言う人は見当たらないので、幸いエール団のせいで彼女まで悪評を囁かれるような事態にはなっていないようだ。


【したっぱの特徴】

  • 男性
ピンク髪のモヒカンが特徴的なパンクロッカーのような風貌をしているが、ぽっこりお腹が出ているぽっちゃり体型。
外見に見合わずビルの二階の窓から宙返りしながら降り立つ身体能力を持つ者もいる。着地の衝撃で足を痛めてしまったけど
マリィの応援の際にはY字型のブブゼラを振るう。
バトルではガラルジグザグマと進化系のマッスグマを使用することが多い。

  • 女性
こちらもピンク髪でパンクロッカースタイル。
男性かと思うほど短い髪型と素顔が分からないメイクのせいで女性だと一瞬分からなかった人もいるかもしれない。
男性のしたっぱに比べるとスリムな体型をしており、アイドルに憧れて練習したという華麗なバク転を披露することも。
マリィを応援する時には彼女の横顔がプリントされたタオルをかざす。
バトルでは主にクスネ及び進化系のフォクスライを使用する。


冒頭の台詞のように「届け―る」「教え―る」など語尾を「エール」の形に合わせるのが男女共に口癖となっている。
戦闘時のBGMも共通であり、やはりパンクロックを意識したような感じになっている。
……正直彼らの普段の姿からは想像も付かないほどカッコいい。
またマリィと戦っている時のBGMのイントロ部分はエール団の戦闘曲とほぼ同じで、途中エール団の声援と思われる掛け声を聞くことが出来る。






以下重大なネタバレのためエンディングまで到達した方のみの閲覧を推奨します。










7つ目のジムがあるスパイクタウンにたどり着いた主人公だったが、
そこでエール団が町の正面ゲートのシャッターを封鎖し、誰もジムに入れないようにしている現場であった。

そんな中、「ある事情」により、唯一の裏道を知っていたマリィの手引きで主人公はスパイクタウンに侵入することに成功。
途中、街を占領していたしたっぱ達により

  • バリヤードによる道の封鎖
  • ビルの隙間に隠れて襲撃
  • 窓から飛び降りてきて急襲
  • バク転で近寄ってきて包囲

と言ったカオスな妨害を受けるが、主人公は難なくそれらを跳ね除ける。*1
だが、街の中にいたしたっぱはバトルに負けると妙に潔く引き下がり、
それどころかジムリーダーの居場所をネオンサインで示すというサービス精神まで発揮するという、どうにもチグハグな対応を見せていた。

だが主人公はしたっぱの想定を超えたスピードでガンガン突き進んでいく。
もはやエール団の姿に”変装”することすらままならなくなった彼らは、ついにその正体を明かす。

エール団の正体は、スパイクタウンのジムトレーナー達。
エール団のメンバーは皆この町の出身であり、マリィが勝ちあがるよう他のジムチャレンジャー達を妨害していたのは、
地元のアイドルである彼女に優勝してもらい、チャンピオンという名誉を手にしたマリィと町おこしをして、寂れた町を復興するためだった。

この町のジムリーダーを務めるネズは、ジムリーダーとしての実力、またミュージシャンとしての才能と人気、どれにおいても申し分無い人物ではある。
だが、彼のリーグカードによるとスパイクタウンはエネルギーの事情でダイマックスが使えないらしく、そのせいであまり観客が来なかったため町は徐々に人がいなくなり荒廃していったという。
リーグ委員長のローズは彼にダイマックスが使える場所に町を移転することを提案したのだが、
ネズは元々ダイマックス無しで戦い抜くことを信条としていた上に自分が生まれ育った町を愛していたので、その提案を断った。
スパイクタウンのジムトレーナー達も、故郷を愛する想いは同じだったのでネズに賛同したのだった。

だが、町が廃れていくのは止められない。その割には[[ポケモンセンター]]は普通に営業しているが
不安に襲われる彼らをネズは「大丈夫」と励ますが、事態が一向に改善しない現状に耐えられなかったジムトレーナー達はエール団となってネズの妹マリィがチャンピオンになれるよう応援することを決意。
更にメンバーの中でも過激な考えに囚われた者達が他のジムチャレンジャーへの妨害行為を働くようになったというのが真相である。

マリィは団員から真実を聞くと「そんなの応援じゃないし!」と激怒、彼らの心配に理解を見せつつも説教を始める。
そして主人公に敗れた兄ネズに、一人のジムチャレンジャーとして真剣勝負を挑むのだった。
エール団はその後改心して他のジムチャレンジャーを邪魔することは二度としないようになったばかりか、
主人公がローズの秘書オリーヴの策略で困っていた時にはネズやマリィと共に協力までしてくれる。
また、彼らの中には他の人の健闘も一緒に応援するのも悪くないと温和な姿勢を見せるようになった者までいる。マリィもさぞ一安心したことだろう。

ちなみにエール団のシンボルである「Y」という文字は向きを変えて反転すると、スパイクタウンジム=あくバッジのマークである「A」となる。
エール団のしたっぱがあくタイプのポケモンしか使ってこないのも、彼らがあくタイプのジムトレーナーだという伏線だったのだ。

【ボス】

悪の組織とは全く言い難い彼らだったが、明確にボスや幹部と言える存在がいないという意味でも歴代の悪の組織と比べて異質な存在と言える。
というか本編中で交戦するのが「したっぱ」のみであり、近年存在感を増していた名有りの個性的な幹部キャラクターは一人もいない。(その分同期の幹部が色々と印象に残る奴だったが)
一応ネズの戦闘BGMのタイトルが「エール団リーダー」であるため、エール団の正体やその上でネズの立場を考えれば彼をそういうポジションだと見なすことも出来なくはない。
そうなるとロケット団サカキ以来の、主人公と敵対する組織のトップがジムリーダーを務めていたパターンということになる。
といってもネズがエール団に各地で迷惑行為をするよう命じていたわけでもなんでもなく、したっぱ達の中の過激派が勝手に暴走していただけなのだが(ポケモンマスターズEXでもネズ・マリィ両名に「悪の組織」のチームスキルはない)。

ネズ


負けると わかっていても 挑む 愚かな おまえの ために

ウキウキな 仲間と ともに 行くぜー! スパイクタウン!!


一応エール団のボスポジションに当たる人物で、マリィの実兄
「哀愁のネズ」という二つ名を持つ、ガラル地方7番目のジム「スパイクタウンジム」のジムリーダー。
使用タイプはジムリーダーの中では歴代ポケモンシリーズ初あくタイプ
エール団のトップだけあってジムリーダーながら専用のBGMまで持っている。

詳細は彼の項目を参照されたし。


【最後に】

相手のためを思うあまり誤った道を進んでしまったエール団だが、フォローしておくとこれは決して彼ら特有の現象ではない。

ジムチャレンジャーの一人ビートも身寄りの無い自分を引き取ってくれたローズに報いて認められたいがために「ねがいぼし」を求めて遺跡を壊す暴挙に出てしまう。
またオリーヴがローズの目的に加担したのは彼に心酔していたからだったし、
オリーヴの手先として悪事を働いた「わるいリーグスタッフ」はオリーヴのファンクラブの者だったことが「ふつうのリーグスタッフ」に話しかけた時の言葉から推測できる。
そして本作最大の黒幕であるローズでさえも、彼が手を汚したのはガラルを愛しているが故に未来を憂いていたからだった。
「遺跡を壊す君はガラルを愛していない…」 と悲痛な表情を浮かべてビートを咎めていたが、これは決して演技ではないだろう。

このように敬愛、信奉する対象のためと思って道を踏み外してしまうのはエール団に限らず誰にも起こりうることなのかもしれない。
というよりガラル地方ですらこれだけあるのに、歴代ポケモン本編シリーズ全部を善悪問わず、拡大解釈ありにして例を挙げろと言われれば枚挙に暇がない。
ただもちろん誰か(何か)を支えたいという想い自体は決して悪い物ではない。
マリィはチャンピオンカップのセミファイナルで追い詰められた時「みんなのエールがあるったい!絶対の絶対に勝つもんね!」と力を奮い立たせることが出来たのだから。
そういう意味では、黒幕と繋がってこそいなかったものの、エール団はまさしく本作を象徴する敵役と言えるだろう。

クリア後はマリィに激しく怒られた事で妨害行為こそは反省しているものの、応援自体は続けている。
その為、ポケモンではリメイク作品を除けば歴代初となる解散しなかった悪の組織となる。ただ、悪と言えるかどうかも怪しいが…
現在の生まれ変わったエール団はネズが先頭に立って指揮を執っているようだ。
エール団の面々には、今後は節度を守ってジムリーダーとなったマリィを応援しつつ、共に町の復興に尽力して欲しいものである。

ポケモンでの悪の組織というと、その殆どが自分のポケモンをも道具扱いしたり人のポケモンを盗むしたっぱがいたりしたが、
エール団はそのような悪事は行っておらず、むしろスナヘビのやり取りからして内心にはポケモンを思いやる優しさを秘めており、ジムトレーナーとしての矜持も持っているのである。


【アニメ】

新無印』99話『スパイクタウンのマリィ!』に初登場。
こちらでもマリィの大ファンであり、マリィをチャンピオンにさせて町おこしをしようと考えている。
ただし現役のジムトレーナーだったゲームと異なり、ネズ曰く「元スパイクジムのジムトレーナー」とのこと。
人数は数十人くらいいるが、アニメのジムトレーナーというのは基本いない(オニオンのジムもオニオン一人)、いても数人くらいなのでめちゃくちゃ多い。
寂れたスパイクタウンのジムトレーナーの人数とは思えないほど。名門ジムの設定はアニメだけのようでした
(アニメのジムトレーナーの設定とエール団のジムトレーナーの設定がかみ合わなかったのだろう)

本編ではサトシとマリィの対戦を妨害するために登場。
『ポケモンワールドチャンピオンシップス』の試合会場を「シュートシティからスパイクタウンに変わった」と嘘をつき、
試合時間にサトシを遅らせ不戦勝でマリィを勝たせようとした。
しかし事情を把握したネズがサトシをシュートシティに連れて来たため目論見が外れる。

またサトシから話を聞いたマリィからも「不戦勝で勝っても町おこしにならない」と怒られた。


ポケットモンスターSPECIAL

剣盾編にて初登場。
まず男女のしたっぱが登場し、ダンデからの推薦を受けたことで有名になった図鑑所有者二人を襲撃した。
しかし、剣創人が手持ちでトレーナーに攻撃を当てるそぶり*2を仕掛けたことでポケモンの巣に追い込まれ、強制的にマックスレイドバトルに参加させられた。
そこで彼らの手持ちは全滅したため、結局妨害は失敗に終わった。


【余談】

ネズのモデルは、森に棲んでいた某ロックバンドのボーカルだと言われている。物販をネタにするあたりが特にそれっぽいとも。
なお本人はライブMCでネズのことに触れ、もし本当に自分がモデルだったら光栄だとしたが、一方ポケモンのことはあまり知らないからか「こいつもモンスターなの?」とも発言したそうな。


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最終更新:2025年04月01日 23:08
添付ファイル

*1 スパイクタウンのカメラは横視点で固定。雰囲気と相まって、まるでベルトスクロールアクションを思わせる。

*2 ちなみに、この行為を「ダイレクトアタック」とエール団員は呼称したが、作中でこう呼んだのは連載22年目にして初めてである。