奈落(犬夜叉)

登録日:2020/05/16 Sat 00:13:33
更新日:2025/04/17 Thu 18:35:51
所要時間:約 5 分で読めます





貴様たちはよく、運命だの宿命だのと口にするが、それは弱者の戯言でしかない。

本当に力のある者は、運命も宿命も己で作り出すものなのだ。


出典:犬夜叉完結編、1話「奈落の心臓」、読売テレビ、小学館、サンライズ、
2009年10月3日~2010年3月29日まで放送、© 高橋留美子/小学館・読売テレビ・サンライズ 2009



概要

『奈落』とは『犬夜叉』の登場人物であり、ラスボス
6巻で犬夜叉一行の宿敵として登場しながら最終巻である56巻まで話を引っ張ったその姿から、少年誌に残る逃亡系ラスボスとして有名。
なお真のラスボス/黒幕は四魂の玉なので奈落がラスボスなのかどうかは意見が分かれるところではあるが。

CV:家中宏(鬼蜘蛛時代、奈落)、森川智之(人見蔭刀)

実年齢は50歳。人間換算だと23歳。一人称は「儂」。
人間態の縮れ毛具合からファンからしばしば「ワカメ」呼ばわりされている。

出自故に奈落には決まった姿がなく、登場当初は狒々(ひひ)*1の毛皮で姿を隠した怪しげな風体をした半妖だった。この頃はCV家中。
珊瑚が登場した前後くらいに人見(ひとみ)蔭刀(かげわき)という病弱な若殿を殺し、容姿と立場を乗っ取って以来、人見の姿をしている。


出自・人物

元々は本編の50年前に活動していた盗賊『鬼蜘蛛』を核とし、雑魚妖怪たち(本編でよく出てくる手足がない妖怪とか)が合体した事で生まれた新たな妖怪。
かつて全身に火傷を負い両足を折る重傷を負った*2自分を洞穴に匿い看病してくれた巫女桔梗をした鬼蜘蛛は、
身動きできない故に桔梗に何もできないことに鬱屈とした感情を溜め込み、
そんな自分の邪気を察知して集まった雑魚妖怪達に、身動きできる肉体を得て桔梗と四魂の玉を手にするべく、自身の身体を差し出した。
その結果、誕生したのがこの奈落であるが、記憶こそ鬼蜘蛛のそれを引き継いでいるものの、意識は『奈落』としての新しいものに刷新されている。
なお、誕生の経緯こそ特殊だが、人間と妖怪が混じった存在なので、分類上は犬夜叉と同じ半妖になる。

ちなみに普通の作品ならボスの出自の謎が明かされたら遠くないうちに決戦するのが定石だが、
奈落の場合明かされたのが7巻と序盤も序盤であり、こっから決戦まで49巻も間が空く。

鬼蜘蛛としての人格は既に失われており、奈落という新たな人格が形成されているものの、
それでも『核』となった鬼蜘蛛は奈落に大きな影響を与えており、当初桔梗に危害を加えられなかったのも、彼女への鬼蜘蛛の思慕が原因。
鬼蜘蛛の名残か背中には大きな蜘蛛のような痣が付いている。
奈落としてはこの鬼蜘蛛の影響や自身が『半妖』であることに忸怩たる思いを抱いており、分身妖怪『無双』として鬼蜘蛛を本体から追い出したこともある。
この時にはまだ鬼蜘蛛は奈落の『核』としての機能を有していたこともあって回収したが、追い出しても平気な身体になるべく白霊山に籠った事も。
このことから分かるように、奈落は鬼蜘蛛を忌み嫌っており、鬼蜘蛛もまた、桔梗を殺した奈落を憎んでいるのだが、
結局のところ奈落の根本的な部分には鬼蜘蛛がおり、奈落の本当の目的にも鬼蜘蛛は多大な影響を与えている。

こうして生まれた後、奈落は桔梗によって浄化されていた四魂の玉を穢して入手するべく、
桔梗と想い合っていた犬夜叉の姿に変化して桔梗を襲撃し、その次に桔梗の姿に変化して犬夜叉を襲撃。
そして憎み合った両者を同士討ちさせ、その後穢れた四魂の玉を入手しようとしたが、
犬夜叉を封印した後、瀕死となった桔梗が遺言で自身の遺体と四魂の玉を一緒に焼くように言付けたことで、
桔梗と共に四魂の玉もあの世に連れていかれてしまい、奈落の野望は砕かれることとなった。

それから50年の間に弥勒の祖父と争って、弥勒の一族に風穴という呪いを与えるなどして時を潰していたのだが、
この風穴という呪い、いずれは呪われた対象を吸い殺してしまうとはいえ、「何でも吸い込む」という能力自体が非常に強力なため、
呪った本人である奈落でも吸い込まれるとただでは済まないので、最猛勝(毒虫)を使って使わせないようにしなければならないと、
「解呪のために呪いを引き継いだ一族の者が殺しに来る」ことを考えると、奈落にとってハイリスクにもほどがある呪いだったりする。

そして、時が流れて本編開始直後、戦国時代に桔梗の生まれ変わりである女子中学生・日暮かごめタイムスリップ
妖怪の襲撃で彼女の身体に宿っていた四魂の玉が取り出され、事故で玉が砕け散ってしまったことを受け、
その欠片を集めて四魂の玉を本来の姿に戻し手に入れるべく、欠片集めの傍ら、同じ目的の犬夜叉一行を邪魔するようになる。

ただ、実は奈落は『四魂の玉の完成』と『犬夜叉の打倒』を目的としているものの、その後のことは考えていない。
奈落の本当の目的は、実のところ鬼蜘蛛と同様に『桔梗の心を手に入れること』なのだが、
鬼蜘蛛と融合した妖怪達の中には桔梗に退治され恨みや憎しみを抱いていた者もおり、それらを取り込んだ影響によって、その目的をの間際まで自覚できなかった。
行動がちぐはぐしているのも、奈落自身が自分の本当の目的を見失っていたことによるもの。
四魂の玉の完成を目指しているが、願いを叶えてくれるわけではないと知っている奈落に玉の使い道は特に存在せず、
犬夜叉の打倒を目的としているのも、四魂の玉を巡るライバルだからではなく、桔梗の心を奪った恋敵だからである。

また、奈落は仲違いを多用するが、これは人同士の絆の大切さを知っているからこそであり、奈落の心は妖怪ではなく人間であった。
そして四魂の玉および欠片は使用者の妖力を高めるが、同時に肉体はおろか心まで妖怪と化してしまう。
奈落は完全な妖怪化を望んでいる一方で自身の心が妖怪と化するのを恐れていたため、玉を手に入れても最終決戦まで同化できなかった。
この辺りも、奈落の心が人間だからであるが所以と言えるだろう。
そういった意味では、他者を平然と踏みにじる「怪物の心を持った人間」であると同時に、人が持つ強さを理解している「人の心を持った怪物」と言えるかもしれない。


能力

基本的な能力は『吸収』『体の再構成』『分裂』の三つ。攻撃する時と逃げる時は瘴気を放つ。
元が人間と雑魚妖怪の集合体であり、誕生して精々半世紀程度しか年月を経ていない事もあって単体での強さ自体はさほどでもない反面、
といった具合にいずれも『雑魚妖怪の集合体』という自身の出自を最大に生かす戦い方をする。

ただし奈落がそうだったように、生み出した分身は独立した意識を持つ故、揃いも揃って皆我が強くやたら奈落を裏切る
奈落側も分身の心臓を切り離し手中に収める事で生殺与奪権を握ってはいるのだが、それでもなお奈落に反旗を翻すわ奈落に成り代わろうとするわな状態である。
裏切らなかったのは悟心鬼と夢幻の白夜だけ。しかも悟心鬼の場合、裏切る間もなく早死にしたためでもある。信じられるのは最猛勝だけだよ……。
一応、奈落としては野心家がお好みな様子で、赤子など裏切られることを前提とした分身も作ってはいるので、分身が裏切ることは最初から予期してはいるようだが…。

また奈落は半妖なので、月に一度半妖特有の妖力を失う日がある。
しかし奈落の場合妖力を失う日を自分の意思で決める事ができ、動けないその日は肉体の改造に費やすことで無駄にしていない。
このように奈落自身の強化は日々の努力のおかげである。

さらに集合体なので核さえ無事なら体をバラバラにされようと生き残る驚異的な生命力を誇る。
なので奈落に通用するのはかごめや桔梗の破魔の矢のような霊力・法力しかない。
ただし殺生丸の『爆砕牙』は破壊が浸食するため再生しきる前に倒されてしまいかねない天敵。
しかし浸食される前の部分を切り離すことで破壊を回避できる。
これらの点から来る「刻一刻と変動する能力」と「特定の手段でなければ倒しきれない不死に近い体」が噛み合う事による、
対策の取りづらさ
こそが奈落最大の武器であり、奈落を強敵たらしめている所以である。

そのため奈落自身この体に自信を持っているが、それが仇となる事も。
終盤では名有り妖怪には通用しない事でお馴染みの飛来骨が奈落に向かって放たれた時、強化されてる事にすら気づかず、
「いまさら飛来骨なんて効く訳ねーだろ(笑)」みたいなノリで回避すらしなかったら、まさかの体バラバラ&再生不可にされて大慌てで逃げた事がある。
メチャクチャ情けないが、奈落にはよくあること。

また、奈落は傀儡(くぐつ)の術」と呼ばれるものを扱うことができる。
木製の人形を2体用意し、送信側の人形は自分の手元に置いておく。受信側には自身の髪を結びつけ、それを核として土人形を作る。
この土人形が「傀儡」と呼ばれ、狒々の皮を纏った奈落の姿をしており、主に触手で攻撃する。
傀儡は人形故にダメージを受けても構わず行動できるが、木人形が埋め込まれている胸が唯一の弱点となっている。


奈落の逃亡癖

実のところこの奈落、逃亡の常習犯である。
6巻から登場しているのに決着が56巻という事からも察せられるが、とにもかくにも決着がつかないのである。
これが裏で暗躍するのが得意な策士・隠者系だったり、どこぞの大魔王のように居城の玉座にどっかり座って動かないタイプなら、
犬夜叉一行が奈落と出会う事がないので奈落の株も落ちないのだろうが、奈落は必要とあれば前線に行く事もいとわない行動派なのだ。
しかも事あるごとに何度も犬夜叉一行と出会って対決するのに決着がつかないのは、
「犬夜叉達が弱いから敗走した」とか「横槍が入ったから」とかではなく、奈落がとにかくしぶとく逃げるからである。

圧倒的不利なら逃亡も分かるが、多少予想外な事態になっても逃げるし、なんなら有利な状態でさえも逃げる。
登場当初からとにかく逃げに逃げ、原作漫画内でも逃亡回数はゆうに20回以上。アニメも含めばさらに増える。
仕舞には逃走劇をまとめたコピペが誕生する始末である。

最期

終盤、穢れた四魂の玉を完成させ完全に妖怪化した最終形態となり、曲霊と共に決戦を挑み、
犬夜叉・殺生丸一行を肉体・精神的に追い詰めるが、その中で自身の目的と手段の矛盾を見透かされ動揺。

瘴気の塊とともにの村へ落下しようとするが、曲霊を倒され、かごめの破魔の矢、犬夜叉の冥道残月破、殺生丸の爆砕牙の前に肉体は崩壊し首だけの姿になり、
「骨喰いの井戸」にて奈落は四魂の玉に願いを掛けたと告げ消滅するが、魂はかごめと共に四魂の玉の内部の空間に取り込まれる。

四魂の玉の目論見通りに玉内の妖怪と翠子の運命をかごめ共々継がされるはずだったが、犬夜叉に救われたかごめが「唯一の正しい願い」を告げたことにより、玉は消滅。
奈落もまた、翠子の魂や数多の妖怪達とともに浄化され消滅した。

奈落自身の悪性や非道の数々は決して同情できるものではないが、
それでもほんのささやかな恋慕の感情を歪められてしまった点では、彼もまた被害者だったといえる。

「あの世でも桔梗と一緒になれそうにはないな」と嘯いてはいたものの、成仏するかのようにに包まれ安らかに逝けたのはせめてもの救済だったのかもしれない。

ちなみに作者によると四魂の玉共々浄化されたので、死後奈落は地獄には逝っていない
救われたわけではないが、生前奈落は苦しみ続けていたので、死後も苦しみ続けるということだけはなかった、と語っている。


余談

先述の通り劇場版への出演歴がある。
本篇に絡まない劇場作品において、原作の悪役キャラ(それもラスボス)が劇場版に出演するというのはかなり珍しい方である。

2003年に発売された、犬夜叉のファンブック『奥義皆伝』という本において、「あなたらしいキャラクター」というフローチャートがあったのだが、
そのフローチャートで奈落に行き着くための最終条件が、あろうことか……、

「髪の毛がワカメっぽい」

にYESと答えることであった。
ラスボスでありながら完全にネタ要員扱い……。

また『戦国波波裸蜂(ぱぱらばち)』のコーナーでは部下の波波裸蜂*3から、
弥勒は隙あらば珊瑚のを撫でてたら珊瑚は恋に落ちたので、奈落も桔梗の尻を撫でれば心を射止めれるはず
と報告を受けていた。勿論奈落は一蹴したが。





追記・修正は逃げながらお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 奈落
  • 犬夜叉
  • 妖怪
  • 半妖
  • 逃亡系ラスボス
  • 鬼ごっこ
  • 家中宏
  • だいたいこいつのせい
  • 森川智之
  • 仲違い妖怪
  • ラスボス
  • しつこい
  • 鬼蜘蛛
  • 分身によく裏切られる
  • 逃げるが勝ち
  • 物理無効
  • 何故かなかなか立たなかった項目
  • 奈落一派
  • 自分の心臓に裏切られる男
  • 卑劣
  • 外道
  • 横恋慕
  • 蜘蛛
  • 盗賊
  • 狡猾
  • 四魂の玉
  • ワカメ
  • 煽り屋
  • 人見蔭刀
  • 努力家
  • 傲慢
  • 自己中
  • ゲス
  • ストーカー
  • 無様曝してもひたすら生き抜いた男
  • コピペ
  • 宿敵
最終更新:2025年04月17日 18:35
添付ファイル

*1 妖獣の一種で、実在するヒヒとは関係ない。

*2 アニメで補足された部分によると、仲間割れの末火にまかれ崖から突き落とされた事が語られている。

*3 最猛勝の亜種と思われる妖虫。名前は勿論「パパラッチ」をもじったもの。