ジェット・アローン(新世紀エヴァンゲリオン)

登録日:2021/07/21 Wed 23:46:53
更新日:2025/01/03 Fri 07:49:21
所要時間:約 14 分で読めます




※推奨BGM:次回予告



予告


迫りくる使徒に対し、抵抗を試みるのは、ネルフだけではなかった。
だが、その民間の開発した巨大兵器は、公試運転中に制御不能に陥る。

暴走を始めたジェット・アローンへ向かうエヴァ初号機。
果たしてミサトは、炉心融解を止められるのか!?




次回

人の造りしもの

さーて、この次もサービスしちゃうわよん!







で、どうです?例の計画もこっちで手を打ちましょうか?

いや。君の資料を見る限り、問題はなかろう。

では、シナリオ通りに。



ジェット・アローンとは『新世紀エヴァンゲリオン』に登場した対使徒戦用兵器である。
名前の頭文字をとってJAと呼ばれることも多い。勿論農協の事ではない。
本項目でも省略の為にジェット・アローンの事をJAと呼称していく。
漫画版には登場しない。だが新劇場版では……?


目次




概要

日本重化学工業共同体、通産省、防衛庁(時代を感じる)がNERVに対抗するために作ったもので、開発責任者は時田シロウ。
民間の作った機体ではあるものの、その裏には政府の意向が大きく関わっている(実際NERVと政府の関係は決して良好ではなく、互いが互いの腹を探り合っている状態である)。
ちなみに国防省所属の部隊である戦略自衛隊は今回の件には関わっていないとされており、戦力としては恐らく国連軍に編入されている自衛隊(陸自)に組み込まれるものだったと思われる。


外見は通常のエヴァンゲリオンと同じくらいの大きさの人型ロボットだが、背面部から制御棒が6本出ており、顔面部も高さが低い為か、見ようによっては首のない人間のようにも見える。
歩行時には迷走するロボノイドめいて腕をゆらゆらと滑らかに揺らしながら早歩きのような状態で移動しており、その安定しながらもどこか人間味のない不気味な動きで「機械」としての印象をより一層強めている。

(ダミープラグなどを除いて)基本的に有人操縦が前提となっているエヴァとは異なり、動力源として原子力による動力炉を内蔵し、遠隔操作で外部から操縦するという形式で、動作可能時間は150日間の運転が保証されている。
「原子炉での稼働は非常事態が起きた時に危険なのでは?」と考える人もいるかもしれないが、あらゆる場合を想定して対応パターンを組み込んだOSで制御している。

また、A.T.フィールドの類はないが、時田が「時間の問題」と評しているため、(発表時点で実現こそしていないものの)何らかの形で突破する為の手立てを持っていたと思われる。*1

他にもハッチが背面部にあり、有事の際に中に人が入って手動で操作ができる操作盤が設置されている。
しかし、内部は汚染物質で充満しているらしい。それでは非常時の操作用設備の意味がないのでは……?
(暴走時の出来事だからなのか、それとも内部の放射性物質の半減期が極めて短いものなのかは不明)


エヴァとの比較

エヴァンゲリオンと比較した場合、どういった点で優り、どういった点で劣っているのかをいくつかの点で見ていく。

戦闘能力

作中でJAは歩行と言うにはかなりの高速で動き、更に初号機もJAを押さえつけるのにかなり苦労している*2ことから、単純な馬力で考えるのであればエヴァといい勝負ができる可能性が高い。この点では互角と言えるだろう。
一方で、エヴァは作中で様々な武装を用いて戦闘を行っているが、JAにはその類のものは描写されていない。
作中で出ていないだけでそういうものがある可能性もあるが、仮に(内部のリアクターへの影響等を考えるなどして)武装を運用する事を想定していない場合、戦闘方法の選択肢によって多角的な戦闘が出来る点ではエヴァに軍配が上がるものと思われる。
また、また上記の「エヴァとJAが互角」も、あくまで通常の状態のエヴァでの話の為、シンクロ率によってはすさまじい力を出すことを考えるとこの点でもエヴァが勝る。
一方エヴァはアンビリカルケーブルによる稼動範囲の制限が課せられ、パージや断線で広がってもそこから動けるのは長くても5分。
対してJAは遠隔操作のため稼動範囲に制限はなく、その上で150日、即ち5ヶ月もの間動ける。
この差は戦闘相手との実力が拮抗している場合などにはかなり有効になってくる。
総じて考えると短期戦ならエヴァ、長期戦ならJAと言う風に分かれると考えられる。

パイロットの有無

「これで何か差が出るのか?」と思う人もいるかもしれないが、実はこれによって戦闘の対応が大きく変わる使徒のタイプがある。
それはアラエルの様な「精神攻撃系」の使徒である。
攻撃を受けた所でそこにパイロットはいないため、JAの場合何ら問題なく動くことが可能。「アラエルを倒す手段もない」などと言ってはいけない。
この点はやはり遠隔操作ならではの利点である。
また「侵食系」の使徒に対して操縦を行う者が(少なくとも使徒の侵食自体が原因で)直接危険にさらされることがないのも強み。
(もっともこの点は同時に「直接的な対応が困難である」という弱みでもあるが)
ただ、機械だけで制御が完結しているということは人智を超えたクラッキング能力を持つ使徒相手には極めて脆弱ということでもある。

加えて、作中に出てきた使徒達は人間の行動に合わせて進化している事が関連書籍等で示唆されているためJAが実戦投入されていたらまた違う行動に出てきた可能性が高い。

安全性

エヴァに関しては知られている通り、過去にヒトを取り込んでしまった事、パイロットの精神状態などによっては暴走の危険がある事、そして状況次第ではサード・インパクトのような大災害を起こす可能性も秘めている。

JAにはそういった問題はないが、先述した通り「動力源に原子力リアクターを使用している」点は対使徒戦用兵器としては大きな問題となる。*3

組み込みのOSで非常時の対応はある程度保証してはいるものの、使徒との戦闘時に何らかの形でリアクターに支障、もしくは修復不能なレベルの損傷が発生した場合、JA自体が倒されるだけではすまず、周囲が放射性物質によって汚染されてしまう。
使徒の中には初見殺しで襲ってくるもの特殊な環境で戦闘を行う事になるもの人間のテクノロジーで対応できる範疇を超える攻撃法を持つ使徒など、人間の想定し得る「あらゆる場合」に当てはめられるとは考えにくい存在もいるため、このリスクは決して無視できるものではない。と言うより、起動している限り常にその危険があるという点ではエヴァよりもさらに厄介である。

方向性の違いはあるが、はっきり言ってどちらも相当危険な代物である。


劇中の活躍


TVアニメ版

第七話に登場。

東京都心である第28放置區域にてJAの完成披露記念会が行われることになった。

NERVの代表として現地へ向かうミサトリツコ

が、制作した日本重化学工業共同体は第3新東京市の建設関連の利権から外れた組織の集まりで、制作理由自体にNERVへの敵対意識がある物のため、あからさまな冷遇を受け、「リアクターの危険性」とある種真っ当なリツコの質問にもエヴァの問題点や本来極秘情報のはずに内容を小出しにしながら馬鹿にしたような解答で返されており、披露会後の控室ではそれぞれ違うベクトルで大人げなくキレ散らかしていた。


そんな状況で起動テストが開始。
始めは問題なく稼働し、エヴァ同様に歩き出したが、直後に突如としてリアクターの内圧が上昇を始め、原子炉内の温度が連動する形で上昇。
バルブ開放などの指示を送るも効果なし。緊急停止を試みるも信号を受信せず、暴走状態に陥ってしまう。エヴァではよくあること。


暴走している状態も危険*4だが、炉心部の温度上昇が起きているため、このままでは炉心融解が起き、放射線による汚染が大規模に起きてしまう。


この状況に陥った場合、自然停止を待つ以外に方法はないと時田は言うが、その確率も0. 00002%と絶望的な数値。
ミサトは「奇跡を待つより捨て身の努力」と言い、停止手段の開示を要求。

残っている手段は「プログラムの強制消去」による停止。(当然時田としては使用を避けたい手段の為に一度は言い渋った。)
当然最終手段の為、タダで消せるわけもなくパスワードが必要だが最高機密の為、時田には開示権限はない。
ミサトに押される形で開示の打診を電話で行うも、まともに取り合ってもらえずたらい回しにされる*5
その間、制御不能になったJAは厚木に向けて進行中。

ミサトはこれ以上待ってはいられないとして、独断での行動を開始。時田もこれには反論せず、黙って受け入れた。(因みにリツコは苦言を呈しており、一度は反対していた。)
日向にF装備の初号機(+シンジ)の輸送を依頼し、自らは防護服を身にまとい、直接JAを停止する為に動き出した。

作戦は非常にシンプル。
暴走しているJAを初号機が押さえつけて動きを止め、その間にミサトが内部に侵入してプログラム消去のパスワードを入れて止めるというもの。
日本重化学工業共同体も、侵入の為のサポートをし、時田は管轄外である事を承知でミサトにパスワードを告げる。
JAを止める言葉。それは「希望」……。

炉心融解までの猶予は残り5分程度しか残されておらず、作戦はすぐに開始。
予定通りにJA内部に侵入したミサト。
制御盤もすぐに見つかり、ミサトは教えられたパスワードを打ち込む。*6

しかし出たのは「ERROR」の表示。当然JAも止まらない。

あの状況で時田が嘘を言ったとは考えにくいため、考えられるのはプログラム自体の改竄
そうなるともはやプログラムからのアプローチは出来ない。
炉心融解までの時間は残りわずか。JAからは高温の蒸気が噴き出している。

意を決したミサトは一か八か、内部の制御棒を自らの手で押し出すという力技に出る。
少しずつ制御棒は動き出したものの、JAからは高温の蒸気がどんどん吹き出し、臨界点への到達も秒読み状態。

絶叫するシンジ。諦めの表情を浮かべる時田。
そんな中でも希望を捨てずに動くミサトだったが、ここで突如として制御盤の「ERROR」表示が消え、JAの再起動プログラムが起動。そのままリアクターの温度も急低下。平常の状態になったJAの中で呆然とするミサト。
切迫していた事態は一瞬にして過ぎ去った。

管制室では止まった事で喜びの声が上がり、時田も驚愕の表情に。
シンジも危機が去った事で安堵し、中のミサトに対して奇跡を起こしたことへの称賛を吐露。

しかし肝心のミサトは異様すぎる幕切れに対して疑念に満ちた表情を浮かべていた。





奇跡は用意されていたのよ。誰かにね。




作中で言及されていないが、恐らくこれが原因でJAの計画は白紙になったと思われる。




新劇場版

JA自体の登場シーンはなし。ただ、「序」が第壱話から第六話まで、「」が第八話から第拾九話まで(一部の話がカットされているが)と、ちょうどアニメ上のJAの一件の話を飛ばす形で描かれているため、登場していないだけで何らかの絡みがあったと考えても違和感はない。



他作品での活躍

エヴァンゲリオン2

本編同様のシチュエーションで登場するが、イベントフラグを立ちにくい為、お目にかかる機会はあまり多くないかもしれない。
イベントも戦闘というよりはちょっとした鬼ごっこであり、内蔵電源が切れるまでにJAに追いついて押さえるというもの。
位置情報は示されるが、JAは蛇行しながらゆらゆらと動いており、一定方向にいるわけではないので注意。
また状況が悪いとJAから離れた位置からのスタートになる。
因みにイベント時点までに初号機にS2機関を取得させておくと制限時間が消失し延々と鬼ごっこを繰り広げるシュールな光景が見られる。
尚、初号機をF型装備に換装しているとF型装備のイベント用グラフィックが用意されていないのでイベントフラグ自体消滅する。

追いついた後はアニメと同じ展開になり、出番はこれで終わった。



エヴァンゲリオン バトルオーケストラ

使用可能機体として登場。

だが、エヴァでも使徒でもない為か公式サイトにて「全キャラクター中最弱」などと言うあんまりすぎる扱いを受ける。
攻撃時にはすたすたと早歩きしながら相手に突進したり、防御時は体をかがめて腕を組んで体制を整えるという相変わらずシュールな動きを見せる。
必殺技時は謎のエネルギーを纏いながら高速で突っ込んでくる。


余談

名前の由来は東宝怪獣映画『ゴジラ対メガロ』に登場するロボット、「ジェットジャガー」及びその前身である一般公募作品の「レッド・アローン」である。

実は初号機が第3新東京市以外で使用されたのは今回が初めてであり、その後マトリエル戦まで毎回第3新東京市以外の場所(ガギエル→横浜沖、イスラフェル(初戦)→紀伊半島、サンダルフォン→浅間山火口。)での戦闘が行われる。

作中でミサトが発した「奇跡を待つより捨て身の努力」は新劇場版『破』にて第8の使徒戦のリツコの「奇跡を待つより地道な努力」と言うセリフで形を変えて流用されているが、シチュエーションは「積極的に被害を止めに行こうとする」と「無暗に動かずに被害を最小限に食い止めようとする」と言うもので手段としてはまるで正反対で、二人の思考の違いがよく表れている。

割とこういう一発メカが登場しがちなスパロボでは出番は一切なし……というより、元から機動兵器がわんさかいる世界観なのでネルフに対抗してわざわざコイツを作る必要性が薄いし、
ネルフがエヴァ以外の使徒に対抗できる機動兵器の開発を妨害し出したら、それこそ参戦作品各所にまで妨害しなきゃいけない事になりかねない。
2010年代以降のエヴァは新劇場版メインの参戦になっているので多分今後も彼が直接登場する事はないと思われる。

『ぷちえゔぁ』では擬人化キャラ「JA子」が登場し、初号機の擬人化キャラ「エヴァンチョー」のオッカケになっている。


追記・修正は「希望」をパスワードにしながらお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • ジェット・アローン
  • JA
  • 人の造りしもの
  • エヴァ
  • エヴァンゲリオン
  • リアクター
  • メルトダウン
  • 炉心融解
  • 新世紀エヴァンゲリオン
  • 原子炉
  • シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
  • 時田シロウ
  • 暴走
  • シュール
  • JA ←農協ではない
  • 希望
  • ある意味リリンの生み出した文化の極み
  • まさかの再登場
  • 歩く不発核爆弾
  • ヒーローより強い兵器は必ず暴走するの法則
  • マッチポンプ
  • JA子
最終更新:2025年01月03日 07:49

*1 A.T.フィールドは強力な攻撃でぶち抜ける事は公式設定で言及されており、実際に本編でもN2兵器やポジトロンスナイパーライフル等の攻撃でA.T.フィールドを中和せずにダメージを与えているシーンがあるので技術の進歩を考えると確かに時間の問題だったかもしれない。また、時田がA.T.フィールドのことを知っていること自体が前述の通り政府との繋がりを表している

*2 ただしこの時はミサトを乗せている関係で初号機も無茶が出来なかった可能性も十分にある。

*3 実際作中でリツコが言及している。

*4 実際死者が出てこそいないがJAは管制室のあるエリアを暴走状態で踏み抜くという非常に危険な行動をしている。

*5 ここで一番に電話をかけるのが内務省長官であることから、政府の肝入の計画であることもわかる。この後は最低でも3件以上電話を回されるのだが……

*6 ここで打ち込まれた時のタイプ音の回数は3回だが、パスワードの「希望」を打ち込むとすると、ローマ字入力では「kibou」で5回、かな入力でも濁点があるので4回になるはずである。JAに搭載されたキーボードは一般的なqwerty式や50音式とは異なるようだ。

*7 作中では短時間しか映っていないものの、制御盤の画面で起動用プログラムのバージョンが「Ver.2.2.1c」、再起動用プログラムが「Ver.2.2.1b」と1つ手前の型になっており、起動プログラム側に改竄がなされていた事が示唆されている。

*8 この時点ではまだ名前が明かされておらず、エンディングのキャスト欄も「電話の男」になっている。

*9 パスワードの件の引責辞任か、それとも団体自体が解体されたのかは不明だが、肩書が「『元』日本重化学工業共同体」になっている。