スモール・ワールド(遊戯王OCG)

登録日:2022/07/24 Sun 11:05:53
更新日:2025/02/05 Wed 10:25:18
所要時間:約 7 分で読めます




《スモール・ワールド》とは『遊戯王OCG』のカードのひとつである。



概要

相剣」や「ふわんだりぃず」、《D-HERO デストロイフェニックスガイ》などの強力なカードを多数輩出した第11期のパック「BURST OF DESTINY」。
そんなパックでしれっとノーマルレアで収録されたた通常魔法が《スモール・ワールド》である。

効果が判明した際には、そのいかにもノーレアらしい複雑怪奇なテキストこれまでにない独特かつ汎用性の高い効果で話題を呼んだ。

さて、とりあえずそのテキストを見てみよう。

通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札のモンスター1体を相手に見せる。
見せたモンスターの種族・属性・レベル・攻撃力・守備力の内、1つのみが同じモンスター1体をデッキから選んで確認し、手札から見せたモンスターを裏側表示で除外する。
さらに確認したカードと種族・属性・レベル・攻撃力・守備力の内、1つのみが同じモンスター1体をデッキから手札に加え、デッキから確認したカードを裏側表示で除外する。

……………

???「なぁにこれぇ」

とまぁ、ご覧の通り一次方程式を言葉で表現したカードの如く初見では非常に理解しづらいテキストを有している。

イラストでは《S-Force ジャスティファイ》の周りに無数の光の球のようなものが漂っている様子が描かれている。
手に持っている1つが赤く光っているところを見ると、なんらかの能力か機械で対象を捜索しているのだろうか。



ややこしい効果の解説


テキストを流れを噛み砕いて解説すると

1.手札のモンスター1体を相手に見せる。これをAとする。
2.デッキからAと種族・属性・レベル・攻撃力・守備力のうちどれか1つだけが同じモンスターを1体選ぶ。これをBとする。
3.手札から見せたAを裏側除外する。
4.デッキからBと種族・属性・レベル・攻撃力・守備力のうちどれか1つだけが同じモンスターを1体選ぶ。これをCとする。
5.2で選んだBを裏側除外し、Cを手札に加える

となる。
要するに、手札とデッキのモンスターのステータスを芋づる式に参照することでモンスターを万能サーチするというものである。
ちなみに攻撃力/防御力が?のモンスター同士もちゃんと同じステータスとして扱う事になっている。

解説用の書き換えテキストを元に、使い方の具体例を挙げてみよう。

《スモール・ワールド》を使った動きの一例
1:手札の《女帝カマキリ》(星6/風属性/昆虫族/攻2200/守1400)を相手に見せる。これをAとする。
2:デッキからAの《女帝カマキリ》とレベルのみ同じな《邪帝ガイウス》(星6/闇属性/悪魔族/攻2400/守1000)を1枚選ぶ。これをBとする。
3:手札から見せたAの《女帝カマキリ》を裏側除外する。
4:デッキからBの《邪帝ガイウス》と属性のみ同じな《混沌帝龍-終焉の使者-》(星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500)を1枚選ぶ。これをCとする。
5:2で選んだBの《邪帝ガイウス》を裏側除外し、Cの《混沌帝龍-終焉の使者-》を手札に加える。

この例の場合、仮に手札に《風帝ライザー》(星6/風属性/鳥獣族/攻2400/守1000)があったとしてもAとして使うことはできない。
何故ならレベル・攻撃力・守備力と3箇所のステータスが《邪帝ガイウス》と同じためである。
《水陸の帝王》(星5/水属性/爬虫類族/攻1800/守1500)もこれまたAとして使うことはできない。
こちらの場合《風帝ライザー》とは逆で、どのステータスも《邪帝ガイウス》と一致していないためである。
《天帝アイテール》(星8/光属性/天使族/攻2800/守1000)なら守備力のみが共通するためAとして使うことができる。

注目すべきははステータスを直接比べるのはAとB、BとCである点。
つまりAとCはステータスが同じところがいくつあっても、あるいは全部違ってもなんでもいいのである。
出張モンスターのBを挟んで手札のAと同テーマのCをサーチしたり、デッキに眠るBを使って手札のAと全くかけ離れたCをサーチすることもできる。



運用方法

手札とデッキから1枚ずつ裏側除外する必要があるため消費は多いものの、OCGの膨大なカードプールを以てすればサーチ範囲は文字通り無限大
条件さえ満たせばあのすらサーチ可能という万能性を誇る。
例えば手札の《灰流うらら》(攻撃力0)から攻撃力のみ一致するデッキの《エフェクト・ヴェーラー》を中継すれば、
  • 光属性
  • レベル1
  • 魔法使い族
  • 攻撃力0
  • 守備力0
のいずれかのステータスを持つモンスターという、とてつもなく対象範囲の広いサーチを行える。
ちなみに裏側除外するのはコストではなく効果処理なので、《灰流うらら》を食らっても手札が無駄になることはないので安心。
何なら最初のカードを見せるところも効果処理の一部なので、情報アドすら与えなくて済む。
効果の性質上、A→B→Aと指定すれば同名カードのサーチも可能。
基本的に意味の無い行動だが、手札の《紅蓮魔獣 ダ・イーザ》を除外してもう1枚を持ってくることで攻撃力を底上げといったこともできたりする。

ただし、参照に使うモンスターはステータスがどれか1つだけ一致していなければならない。2つ以上被っているとサーチできないので注意しよう。
そうでなくてもシンプルに処理が非常にややこしい。
システムで勝手に処理してくれる遊戯王マスターデュエルならともかく、面と向かってやる場合には特に注意が必要。
「よく見たら2つ被っててサーチ不可」とか「発動したけど中継用のカードが《強欲で貪欲な壺》で飛んでて不発」なんて事になったら面倒なトラブルに発展しかねない。
使う場合は自分のデッキの構築や現在の状況をしっかり把握しておく必要がある。
そういう意味でも超上級者向けカードと言えるだろう。
有志によってサーチ関係を確認できるツールも作られているので、デッキ構築の際にはそれも利用するのがオススメである。

加えて自身と手札の参照元を使って1枚サーチ、つまり単純に手札1枚分ディスアドになっている点にも注意。
サーチできるカードは多いが、そのサーチしたカードで手札1枚分のディスアドを埋められるかどうかが重要となってくる。
参照に使ったカードは再利用が難しい裏側除外されてしまうので、負担の軽減も難しい
「《スモール・ワールド》のサーチ用に汎用カードを飛ばしたら大事な場面で使えない……」なんてこともありうる。
採用及び使う時は慎重に考えよう。



相性の良いデッキ

その性質上、どんなデッキでも気軽に採用できるとは言い難い。
「何が何でも特定のキーカードを引き込みたいデッキ」
「採用するモンスターが特定の共通項を持っており、このカードがシンプルに使いやすいデッキ」
などがこのカードを採用する筆頭となる。

モンスターほぼ全てが闇属性・鳥獣族で構成されているテーマ。
ほとんどの「BF」モンスターで手札交換を行える他、初動の安定として重要な《BF-毒風のシムーン》のサーチとして便利。
後者の中継用には《ダーク・アームド・ドラゴン》や《多次元壊獣ラディアン》などの高レベル闇属性がオススメ。

レベル1の鳥獣族が中心となるテーマ。
《エフェクト・ヴェーラー》を中継することで、1枚初動になる《ふわんだりぃず×ろびーな》と強力な手札誘発を相互にサーチすることができる。
ディメンション・アトラクター》や《灰流うらら》該当する。特に前者は条件の関係で使えない場面もそこそこあるので、元手としても使いやすい。
ちなみに《ふわんだりぃず×えんぺん》を中継すれば上述の三幻神をサーチできたりする。

《ヌメロン・ネットワーク》を貼ることに全力をかけるデッキ。
そちらを持ってくる《ヌメロン・ウォール》や《惑星探査車》をサーチできれば動き出せるため好相性。
またサーチするルートを逆に辿ることで、《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》などの制圧突破手段をサーチすることもできる。
素引きするなどして《ヌメロン・ネットワーク》を貼れる手段が既にある場合でも腐りにくい。

ほとんどのモンスターが地属性で構成されたテーマ。
手札の「マドルチェ」モンスターからマドルチェ・ゴキブリュレ増殖するG》を中継すればほぼ全ての「マドルチェ」モンスターにアクセスできる。
特に《マドルチェ・プティンセスール》へのアクセスがぐっと容易になったのはありがたい。

種族デッキの中でも、とりわけ所属モンスターの属性が結構バラけているデッキ。
そのため適当な手札誘発を中継すれば、様々な恐竜族モンスターにアクセスすることが可能。
初動の安定性を高めてくれる。

種族以外のステータスがカードごとにバラバラなテーマ。
そのためテーマ内のみで様々なカードにアクセスすることが可能となる。
また裏側除外を利用するテーマでもあるため、サーチ時に裏側除外した2枚を無駄なく活用できる点も魅力的。


この他にも、中継用の適当なモンスターを入れることができるならば様々なデッキで活用することが出来る。
将来的にも新しいモンスターが登場する度に利用手段が広がることが確約されている。

まさに無限の可能性を秘めたカードと言えるだろう。



サーチできないカード

このカードによるサーチの仕組みを理解したとき、誰しもが一度は興味を覚えるだろう。
1万種類を超える遊戯王OCGの膨大なカードプールにならば、メインデッキに投入可能なモンスターの中に1枚くらい、スモール・ワールドでサーチできない孤立したモンスターがいるのではないか、と。

結論から言えば、そんなことはない。
メインデッキに入れることができる通常・効果・儀式モンスター(そしてこれらと複合するペンデュラムモンスター)は6千種類を超えるが、そのすべてにステータスがひとつだけ一致するモンスターが複数あることが確認されている。
上記の説明でAにあたる最初の手札のモンスターとBにあたる中継用モンスターさえ構築時点で適切に用意しておけば、という前提はあるものの、
最終的なサーチ先Cになれないメインデッキのモンスターは理論上存在しない。

ではどんなAとCのモンスターの組み合わせでもサーチができるのか、つまりどんなモンスター2体を選んだとしてもそれらを中継するBのモンスターを用意できるのかというと、
現状ではある例外を除き、すべての組み合わせに対して適切な中継役Bが存在している。

その唯一の例外が、AかCどちらかが光の創造神 ホルアクティ》の場合である。
ホルアクティのステータスはレベルは表記上最大の星12、属性と種族は参照でほぼ使い物にならない希少な神属性・創造神族、攻守は不定の?とすべてが極端なため、これとステータスがひとつだけ一致するモンスターも極めて少ない。*1
数が少ないせいでこの中には現状、水・風属性とレベル3・6・9・11が1枚も存在しない。種族に至っては創造神族を除いてもなお10種類も欠けている。
またホルアクティとの共通項の都合上、この中には高レベルと特殊ステータスのモンスターしかおらず、攻守は全くないか非常に高いかに二極化しており中間層が薄い。
Aをホルアクティとした場合、この数少ないモンスターがBの候補となるため、そのステータスを参照して繋がるCとしてはカバーしきれないモンスターが結構出てしまう(AとCを入れ替えても同義)。
実際にやりたい場面があるかは別問題として具体例を挙げると、例えば汎用の融合サーチ及び融合素材代用モンスターである《沼地の魔神王》(星3/水属性/水族/攻500/守1100)はすべてのステータスにホルアクティに繋がる中継モンスターと一致するものがなく、今のところどうやってもホルアクティとは繋げられない。

ただしこれらも、今後のカードプールの増加によって解消される可能性は大いにある。



余談

名前の由来は「知り合い関係を芋づる式に辿っていけば全世界の人間と繋がれるのでは?」という仮説「スモールワールド現象」からだろう。
共通点を参照しながら適当なモンスターを経由して目当てのモンスターをサーチするというこの効果も、この現象を再現したものと思われる。



追記・修正は《モリンフェン》を元に《光の創造神 ホルアクティ》をサーチしてからお願いします。*2

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 通常魔法
  • サーチ
  • ややこしいテキスト
  • 遊戯王
  • 遊戯王OCG
  • 魔法カード
  • ノーレア
  • ノーマルレア
  • 裏側表示で除外
  • レアコレ再録
  • BURST OF DESTINY
最終更新:2025年02月05日 10:25

*1 2024年5月時点のカードプールでメインデッキに入るモンスターに限定すると、一致ステータスが神属性のみが2種類、創造神族が存在せず、星12のみが18種類、攻撃力?のみが19種類、守備力?のみが1種類のため、全部で40種類しかいない。他のモンスターが属性や種族のみ一致で数十種類は稼ぐ中で、これは特筆すべき少なさである。

*2 星12か攻撃力のみ?のどちらかを満たす悪魔族でない闇属性モンスターを経由すれば可能。実用性はともかく10以上の候補がある。