カイザーコロシアム(遊戯王OCG)

登録日:2024/06/19 Wed 05:44:30
更新日:2024/11/16 Sat 22:15:38
所要時間:約 4 分で読めます




カイザーコロシアム
永続魔法(禁止カード
(1):自分フィールドにモンスターが存在する限り、相手はその数より多くなるように自身のフィールドにモンスターを出す事ができない。

《カイザーコロシアム》とは、『遊戯王OCG』に存在するカードの1枚である。
2002年7月18日発売の、ユニオンモンスターが初登場したパック「ユニオンの降臨」が初出。
禁止指定までに22年弱かかっているという、数あるTCGの中でも非常に遅咲きのカードである。



概要

簡単に言えば、「相手プレイヤーが相手フィールド上に出せるモンスターの数を制限する」効果を持つ。
例えばお互いのフィールドにモンスターが2体ずつ居る場合、相手は3体目以降のモンスターを召喚・特殊召喚・セットができなくなる。

昨今の遊戯王におけるビートダウンデッキでは、大量のモンスターを特殊召喚してそれらを素材にEXデッキからモンスターを出すデッキが主流である。
つまり、それらのデッキは須らくこのカードの影響をモロに受ける。

仮にこのカードの使用者がモンスターを1体だけしか立たせていない場合、相手も1体しかモンスターを出せなくなる。
EXデッキから特殊召喚を行う場合、基本的に「2体以上の素材モンスターをフィールドに出す」事が必須。
そのため、素材モンスターすら並べられないこの状況ではそうした大半の召喚行為自体が封じられてしまう。
特に例外的な効果でなければフィールドのモンスターしか素材にできないシンクロ・エクシーズ・リンク召喚には非常に刺さる。
リンク召喚ならばモンスター1体だけを素材にリンク1を出せる場合もあるが、それでは基本的に時間稼ぎにすらならない。
基本ルールで手札のモンスターも素材にできる儀式・融合召喚はこの限りではないが、それらでも召喚行為の選択肢が限定されることには変わりない。

そもそも現代では「複数の」大型モンスターを並べる動きが普及しているため、最終的にフィールドに並べられる数が減るだけでも痛手となりうる。
いずれの召喚法を用いるデッキであっても、展開の選択肢を大幅に狭める効力がある。


詳細な効果処理

このカード、テキストの短さに反して複雑な裁定・処理が多い。
「相手に召喚させない永続カード」という共通点がある《御前試合》などのカードと比べて大きく異なる部分も存在する。

その内容を以下の折り畳み部分に記載する。
かなり細かい内容もあるため、ざっくりと勝手を確認するのであれば読み飛ばしてもらっても構わない。



長所

  • 高い拘束力
前述の通り、使用者が自分フィールドのモンスターを1体だけにする事で相手の召喚行為を厳しく制限できる。
昨今のデッキはモンスターの大量展開が当然と化しているため、このカード1枚で多くのデッキに致命的打撃を与えることができる。

  • 使用者には(直接的には)全く制限がない
上記の効果処理の詳細にも書いたが、《カイザーコロシアム》の効果は使用者側には何も制限を課さない。
これは《御前試合》系統のカードと比較した時の大きな優位点の1つである。
こちらが一斉展開を行う際に、わざわざ《カイザーコロシアム》を退かしたり無効にする手間が不要なのである。
そのため、単騎立ちによる《カイザーコロシアム》展開抑制と大量展開による制圧・一斉攻撃をシームレスに切り替えることができる。

上記の効果処理の詳細で触れた通り、これらは《カイザーコロシアム》適用下で基本的には発動できなくなるため、除去を未然に防いでくれる。
いずれも非常に厄介な除去であるため、発動そのものを許さない対策はとても頼りになる。



短所

  • 自分フィールドにモンスターが1体以上必要
このカードの拘束効果を適用できるのは、あくまで「自分フィールドにモンスターがいる時」限定。
なので「自分がモンスターカードを全く使わないことで、相手にも等しく使わせない」用途は残念ながらできない。
《御前試合》系統のカードが「最悪発動させれば展開抑制はできる」ことと比較すると、単体では機能しないという大きな欠点がある。

なおこれは「除去に弱い」という欠点にも連鎖している。
《カイザーコロシアム》の破壊のみならず、モンスターへの除去でも瓦解させられてしまう可能性がある。

  • 事実上自分がモンスターを2体以上維持できなくなる
1体だけだと簡単に条件を壊されてしまう恐れがあるが、かといって複数のモンスターを並べると拘束力が激減する。
2体でも出せるならある程度のシンクロ・エクシーズ・リンク召喚はできてしまうため、相手のデッキのギミックにもよるが普通に反撃をされかねない。
相手をそのターンで仕留める総攻撃用の展開でもない限り、こちら側の展開はリスクが大きくなる。

これはつまり、《御前試合》系統のカードと異なり「ロックを維持しつつ自分はそれなりに展開する」ことが困難なことも意味する。

  • 既に場にいるモンスターは除去できない
上記の効果処理の詳細で触れた通り、《カイザーコロシアム》適用前にフィールドに居たモンスターには何にも影響を与えない。
《御前試合》系統のカードであれば発動した際に条件を満たすようモンスター数を減らす、すなわち後から発動しても除去という使い道がある。
一方こちらにはそうした使い道が無いので、効果が腐りやすい。

  • コントロール転移・「相手フィールドに」モンスターを出す効果
かなり稀だが、相手が自分の場にモンスターを送り付けることでロックを緩めることができる。
例えば自分が《カイザーコロシアム》と1体だけのモンスターを出していた場合、本来相手も1体までしかモンスターを出せない。
しかしここで相手がなんらかの送りつけ効果を発動すると……自分の場にモンスターが2体になる。
これにより相手はモンスターを2体まで出せるようになり、場合によってはエクストラデッキからの特殊召喚が解禁されてしまう。
《夢幻崩界イヴリース》がこれを得意としており、《転生炎獣アルミラージ》辺りの素材にして自身を送り付けた上でゾーンを作り出す事ができた。

また、あらゆる召喚・特殊召喚に反応して相手フィールドにトークンを生成する《ブラック・ガーデン》も天敵。
どうしても最低1体は相手にモンスターを出すのを許してしまう以上、「相手がモンスター1体を通常召喚→自分フィールドにトークンが出来てあっさりロック解除」、という事態も充分起こりうる。

なおコントロール転移でロックを弱体化できるのはその通りだが、逆に《カイザーコロシアム》の使用者側もコントロール転移を有効に活用できる。
例えば自分が《カイザーコロシアム》と《マタンゴ》、そして更にモンスター1体を出したとする。
そして自分のエンドフェイズ時に《マタンゴ》の効果でコントロールを相手に移した場合、「お互いの場にモンスターが1体ずついる」状態になる。
この状態になると、相手は《マタンゴ》が邪魔でモンスターを追加で出す事ができない
相手の手札に上級モンスターがなければ《マタンゴ》をアドバンス召喚で片づけることも叶わず、そのまま頓死する可能性も大いにある。


採用デッキ候補

十分な影響力を与えるなら、使用者側がモンスターを1体だけ立たせた状態で使用したい。
つまりこのカードを有効に使えるのは、自軍のモンスターが1体だけの状態でも十分に相手を妨害できるデッキになる。

恐らく、最初にガチで《カイザーコロシアム》を採用したのはこの2種のデッキであるとされている。
【トゥーン】は《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》の様なステータスが高く比較的場持ちの良い下級魔法使いトゥーン1体で直接攻撃を繰り返す。
【ロックバーン】は《ステルスバード》や《拷問車輪》などを用いて毎ターンちくちくバーンを与えていく。
この様に展開力は低いが直接相手ライフを削りに行ける点が共通しており、また両者共に自然とカウンター罠を採用するデッキであるため、布陣の維持も基本それらで行っていた。

元々モンスターを1体だけ立ててターンを返すデッキ達であるため相性が良い。
特に【閃刀姫】は能動的に自分のモンスターを退かせるギミックが多いため恩恵を受けやすい。

  • 【メタビート】
とにかく相手の展開を封じればよいというデッキであるため、こちらも相性は良好。
インスペクト・ボーダー》と共に立たせることで、モンスターカードのプレイをほぼ完全に封殺できる。
複数ターンかけて拘束力のあるモンスターを並べまくることはできなくなるため決着はやや長引くが、1ターン目の瞬発力を強化できるメリットは大きい。
後は他のカードで相手の魔法・罠カードによる悪あがきを宥めれば勝利になる。

《転生炎獣レイジング・フェニックス》だけを立たせて残りは罠カードで妨害するパターンが基本なので、さほど無理なく使える。
さらに《転生炎獣ウィーゼル》によって能動的に相手フィールドにモンスターを特殊召喚できるため、前述の《マタンゴ》ハメ技と同じことができる。

後攻1ターンキルを得意とするデッキだが、先攻になった際の防御札として注目されている。
相手の後攻1ターン目の展開を抑制して2ターン目で決着をつけるという、スムーズな勝ち筋を生み出せる。
この際場に出すモンスターは、相手が出したモンスターの除去と後続確保ができる《天球の聖刻印》がベスト。

かなり運を要するが、《カイザーコロシアム》を活かした妨害行為が存在する。
  1. レベル8の「炎王」モンスターを2体並べられる状態にし、《炎王の聖域》《カイザーコロシアム》を発動してターン終了。
    (例:場に《炎王妃 ウルカニクス》手札に《炎王神獣 キリン》)
  2. 相手がモンスターを特殊召喚した際に《炎王の聖域》の効果で《炎王神 ガルドニクス・エタニティ》をエクシーズ召喚。
  3. 《炎王神 ガルドニクス・エタニティ》の効果で《カイザーコロシアム》による「1体まで」制約はそのままに相手のなけなしのモンスターを破壊する。
通常の展開からは逸れる上に相手の動きにも左右されるが、決まった時の見返りは大きい。

《降雷皇ハモン》を軸とした場合に、展開力が高くない点を逆手に取った防御カードとして機能する。
失楽園》による耐性付与と《失楽の霹靂》による魔法罠無効により盤面の突破難度は高く、一転攻勢に移行しやすい点も含めて動きを邪魔しない。


制限動向

現在でこそ有名なこのカードだが、その活躍の歴史は意外にも浅い。
このカードが登場して15年くらい経った頃、ゲームスピードが一気に上がり《御前試合》のような展開メタカードが軒並み高く評価される時代が到来。
しかしそんな中でもこのカードの存在感は薄く、なんなら時代が過ぎた分だけ風化していた感もあった。
このカードが真に注目され始めたのは2023年くらい。登場からゆうに20年過ぎた頃である
上記のように一部のデッキでじわじわと活躍が見られたためか、2024年4月1日から準制限カードに指定されたシングル価格も一気に10倍以上になった
それでも傾向は変わらず、遂に2024年7月1日から禁止カードに指定されることとなった

『遊戯王マスターデュエル』ではもう少し早い段階から注目されており、特に規制で永続妨害カードを失った【神碑】が代替手段として使用していた。
他の永続妨害カードは罠カードであるが、《カイザーコロシアム》は魔法カードのため《レッド・リブート》を回避できる点も良しとされていた。
その結果、OCGより一足早い2024年1月10日から制限カードに指定、そして同年7月11日の改定をもって禁止カードに指定された

一方で海外(TCG)では、2016年8月29日に禁止カードに指定されている。そしてそこから今日に至るまで解除されていない。
TCG規制では特に除去カード関連が強く取り締まられているため、ロック性能が高いと評価されたのだろうか。
しかし(現代ならまだしも)当時の環境では特にこれと言って目立って活躍していたかというとそういうわけでもないので、そこそこ驚かれていたりもする。
こういう一見よくわからない規制は色々前例があるせいか、日本ではこの事例もそんなに騒がれはしなかった。


類似カード?

狭き通路
永続罠
お互いのフィールド上にそれぞれモンスターが2体以下の時に発動する事ができる。
お互いのプレイヤーは自分フィールド上に召喚できるモンスターは2体までになる。

一見すると《カイザーコロシアム》とよく似た効果を持つと思われるカード。
互いに出せるモンスターの数を2体までに抑えられるのなら、《カイザーコロシアム》ほどではなくともなかなかの展開抑制力があるように見える。

ただし、コンマイ語に精通した決闘者ならピンとくるだろうが、この効果には大きな抜け道がある。
そう、召喚できるモンスターは2体までであって、反転召喚特殊召喚には一切制約が無いのだ。
つまり自分のフィールドに存在するモンスターが2体以上のときに通常召喚ができなくなるだけであって、特殊召喚であれば3体目以降を出し放題となる。
そして通常召喚はだいたいの展開ルートでは初手の1体目で使うことが多い。
せいぜい【ふわんだりぃず】に刺さるかなという程度で、ほとんどのデッキにはなんの妨害にもならない。

テキストの書き方が少し違うだけでカードパワーに雲泥の差が出る。遊戯王の難しさを表す一例である。




追記・修正は、ただ一体のみのモンスターで戦い抜くというタイマン気質の決闘者がお願いします。

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最終更新:2024年11月16日 22:15