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SIREN

登録日:2010/02/26 Fri 12:43:22
更新日:2026/08/11 Tue 18:05:45
所要時間:約 24 分で読めます






どうあがいても、絶望。

『SIREN』はSCEよりPlayStation2用に発売されたホラーアクションゲーム*1
2003年11月6日に発売。
オーディオメーカーにも同名の会社があるが、この項目ではそちらについては扱わない。

2006年に続編となるSIREN2が、2008年にリメイク版「SIREN:New Translation」が発売された。



【概要】

キャッチコピーは「どうあがいても絶望」

テクモ(現コーエーテクモゲームス)の『零』シリーズと並び、当時のホラーアクションアドベンチャーゲームでは珍しい和風テイストを打ち出したビジュアルが特徴。
ただし、本シリーズでは実際の役者をモデルにした、より生々しいキャラクター造形や、
和風ホラーだが敵として出てくるのは幽霊ではない*2、基本的に敵は倒されても時間が経つと復活してしまう等、
当時の同系統のゲームや一般的なイメージからは色々と外れた独自性が打ち出されている。

内容についても、世界観の核にクトゥルフ神話を彷彿とさせる設定が見られることを始めとして、
東西の名作ホラー、諸星大二郎や伊藤潤二の漫画作品から引用、あるいはインスパイアされたと想像される部分が多く見られ、そのテの作品が好きな人間だとニヤリとさせられるのは間違いない。
また、和風ホラーを代表する作品と捉えられている一方で、作中に登場してくる眞魚教のイメージやゲーム内の設定、用語の多くを聖書伝説から引用されているのも特徴。
ビジュアル面も、登場人物の容姿や服装、風俗、舞台となる村の建物などは昭和中期〜平成初期の日本らしさが強いのに、
漂う雰囲気には何処となく異国感も混じっているという、歪な印象を受ける世界観が特徴である。
これは日本で最もキリスト教の影響が色濃い長崎県に伝わる民間信仰の“隠れキリシタン”のイメージが付与されている故と思われる。
この“隠れキリシタン”は、16世紀にキリスト教が日本に伝来した後、その影響力等を危険視した当時の権力者たちが禁教令を出したことで、
信徒たちが弾圧や迫害を避けるべく、表面上は棄教・改宗したと見せつつも江戸期を通じて密かに信仰を守り続けた末、
聖書の文言や讃美歌が和風に改変され、禁教令が解かれても従来のカトリック等に合流することなく、新たな形の信仰と化した経緯を持つ。
舞台となる羽生蛇村の無理くさい名前は、バミューダトライアングルに由来する等、恐らくは意図的にシリアスな笑いも込められている。

物語の構造としては、いわゆる群像劇として描かれており、須田恭也がゲーム上では主人公として扱われるものの、
彼以外にも操作できる登場人物が複数人存在し、彼らを操作するステージでは物語もその人物の視点で描かれるため、
宮田司郎を筆頭に、須田以外にも主人公と呼べる登場人物は複数いる。
むしろ、須田は立場的には「村の因習に巻き込まれた一般人」なので、序盤と終盤以外はそこまで活躍していなかったり。

ストーリーについては、初見ではまず理解しきれないほどの複雑なものとなっている。
要約すると、ループ構造に陥ってしまった、閉ざされた繰り返しの世界が舞台となっており、
主人公となる操作キャラクター達が、何かしらの結末を迎える度に時間が巻き戻り、再び冒頭の展開から始まる…という構造となっている。
ゲームでは何度も同じステージを選択・プレイできるのだが、物語の構造を考えれば、主人公たちもプレイヤーと同じく、何度も同じ時間を繰り返していると言えるのだ。

ゲームにおいては、プレイヤーは各ステージの主人公となるキャラクターを操作し、設定された終了条件を満たしながらゲームを進めていくことになる。
この終了条件には、如何にもゲーム的な…というか、現実的に考えても置かれた状況から脱するのに当然と思われる行動を取る“終了条件1”と、
危機的な状況にも関わらず、水に濡れたタオルを冷凍庫に入れて凍らせたり、草むらに埋もれている石碑を見つけ出して起動させるなど、
現在の追い詰められた状況を脱するのには無関係としか思えない謎行動も取らされる“終了条件2”がある。
後述のように、実はゲーム中での重要行動となるのは“終了条件2”の方であり、
これは先に述べた通り“終了条件2”がループして閉ざされた世界からの脱出を目指した行動として設定されているため。
そのため、ゲーム的にも最初は“終了条件2”のフラグが解禁されておらず、各登場人物が“終了条件1”を積み重ねた先、
言い換えれば「各々が当たり前の行動を取っていった結果」である、閉ざされた時間軸の果てのどうあがいても絶望の結末を見た後に、
ようやく提示された“終了条件2”の行動を各登場人物たちが積み重ねていくことで、決められた物語・結末に抗っていく展開となっている。

しかし、だからといって登場人物全員が生存してハッピーエンド…なんてものを迎えられるというわけではない。
どちらの行動を取っても死亡する運命を避けられない登場人物は数多く存在するが、それでも各々が出来得る限りの可能性を紡いだ結果、
それが最後まで生き残った者たちにバトンとして繋がれ、彼らが閉ざされた世界から脱出する力となるのである。
そのバトンとなる行動も、プレイヤー視点で見れば分かりやすくこの後のシナリオに繋がるものもあれば、
それ単体は他愛もない些細な行動、あるいはとても地味な行動だが、それでも「その行動がなければ主人公たちは間違いなく詰んでた」と言えるものまで様々。

シナリオ以外の本作の大きな特徴として『視界ジャック』が挙げられる。
これは、ステージ内にいる敵味方の視界を盗み見ることができる能力、及びシステムである。
本作における主な敵である「屍人」は、不死身という設定ゆえに一度倒しても一定時間が経過すると復活する仕様になっている上に、
屍人の種類や所持している武器、操作キャラクターの耐久力にもよるが攻撃力も高めで、場合によっては一撃でゲームオーバーになることもある。
よって操作キャラが丸腰の時に襲われたり、複数体の敵に同時に見つかったり、銃を持っている敵に発見されると、ほぼ積み状態になると言っても過言ではない。
そのため、視界ジャックを使って周囲の屍人の動きや位置を確認しつつ、彼らに見つからないように移動するのが基本となる。
さらには、屍人が見ているものや独り言の内容、平常時の行動パターンが謎解きに関わってくることもあるため、これを使いこなさないとまずクリアできない。

なにより本作は、
  • ずっと走らせているとキャラクターが息切れを起こして移動速度が遅くなり、それでも走るとやがて立ち止まって息が整うまで行動不能となる。
    • そのため敵の目を盗みながら慎重に進むことを余儀なくされる。
  • 手に入る武器はバールのようなものや火かき棒などの日用品が多く、攻撃力も低く設定されておりゴリ押しプレイは困難。
    • 武器を持つことすら出来ない(=攻撃できない)操作キャラもいる。素手で殴ったりもできない。
    • 敵は倒しても一定時間経過で復活するため、武器が弱いのもあって、これまでのホラーゲームのような「敵を全滅させながら進む」プレイングは実質不可能。
  • 操作キャラの耐久力は低く、攻撃力の高い敵であればワンパンで死んだりする。とあるキャラクターは敵に触られた時点でゲームオーバーになる。
  • 銃は強力だが弾数が少ない。しかし敵には弾数制限が存在しないため、射程が長い猟銃を持った敵が登場するステージは例外なく難関。
    • 操作キャラやステージによっては拳銃持ちですら大きな脅威となり、猟銃も終盤になるとお約束と言わんばかりに殆どのステージに配置されている。
  • SELECTボタンを押せば地図が表示されるが、操作キャラや敵の位置などは表示されない。建物などの配置も複雑で、敵やアイテムの位置を暗記していないとひたすらぐるぐる歩かされる羽目に。
  • 終了条件(クリア条件)はほとんどノーヒント。特に第2終了条件に関しては「わかるかんなもん!」「いや、それ何処にあるんだよ…」とキレても仕方ないくらいにヒントが乏しい。

…等々、それまでの同ジャンルのタイトルと比較しても類を見ない難易度の高さを誇り*3、多くのプレイヤーを絶望させたマゾゲーとして有名である。

しかしながら、緻密な世界観や『ループもの』という舞台設定、多くの伏線を張りながらも謎を残して終わるシナリオが話題となり、根強いファンを生み出した。
登場人物のバックストーリーなどもしっかり作り込まれていることも相まって、制作陣のこだわりの深さを称賛したり、奥深い考察にのめり込むという現象が起こったのである。
ただゲームをクリアしただけではシナリオの全てを理解することはできないし、考察や解説を見たところで理解しきれるとは言えないが、
それが逆にファンの想像力を掻き立て、発売当時には公式でも宣伝に利用していた*4こともあってか、普及し始めていたインターネットでも白熱した議論が交わされていた。

また、前述した通りかなり難易度が高いものの、絶対にクリアできない鬼畜仕様というわけではなく、
やり込むとクセこそ強いものの、慣れが必要なタイプのゲームなのだと解ってくる。
特に一般人ゆえに強力な武器を持たず、腕力などが優れているわけでもないという操作キャラクターの特徴から、
敵を倒して進めていくのではなく、敵の目を掻い潜って進めていくゲームであることを意識するだけでも違ってくるだろう。
謎の終了条件や攻略の難しさも、独特なゲームプレイの楽しさを踏まえたためとも考えられるし、
敢えてそういう仕様にしたと考えても、世界観・設定的に納得できるものだったりする。プレイヤーの腕前を上げることは必須だが。

よって諸々の作品構造への理解が深まることで、ゲームシステムに慣れたプレイヤーからは日本らしく“言外に含ませる”登場人物たちの心理描写や、
物語の重厚さも相まってクソゲーと言われることはほとんどなく、むしろホラゲーの歴史に欠かせない傑作と評価する人が非常に多い。
「クリアできない=クソゲー」と極端な思考をする一部プレイヤーを除けば。
中にはディスクが擦り切れるまでやったなんて人も。
永遠にループする円環の世界に閉じ込められた人々が、絶望的な状況にありながらも自分、または大切な者の生存を諦めず、
定められた運命から抜け出そうとして微かな希望のバトンを繋いでいくという切なくも熱い物語の展開に、心打たれたプレイヤーもいるだろう。


【あらすじ】

2003年(昭和78年)8月3日 00:00━━*5
赤い海からサイレンが響き、一つの村が消えた。
その村にいた人々は、自分たちが謎の赤い海に囲まれた異界に取り込まれたことに気付く。
そこは、『屍人』と呼ばれる怪物たちが支配する世界。
絶望的な状況に追い込まれた人々は、果たして異界から脱出することができるのか…。


【昭和78年の人物】

須田恭也(すだきょうや)

オカルト好きが高じて、ネット掲示板で仕入れた情報をもとに羽生蛇村にやってきた高校生。通称SDK。
愛車の自転車がパンクして山中を彷徨っていたところ、石で何かを破壊している謎の美少女と遭遇し、強い印象を抱く。
その日の深夜、村人たちによる怪しい儀式を目撃してしまい逃げ出すも、様子のおかしい駐在警官に胸を撃たれ、直後に異界に迷い込んでしまう。
八尾に導かれる形で村の教会に避難するが、何者かの悲鳴を聞きつけ外に飛び出し現場に向かうと、そこで前日に見かけた少女・美耶子と再会。
何か事情がありそうな上、目が見えない美耶子を放っておけず、彼女を守りながら屍人や追っ手を掻い潜り、異界の村を奔走する。
行動を共にするうちに絆が出来た二人は、一緒に村から出ようと約束を交わすが…。
武器は火かき棒と拳銃、狩猟銃、日本刀、宇理炎。後に異界ジェノサイダーに転職する。

神代美耶子(かじろみやこ)

須田が山中で遭遇した盲目の美少女。
尊大な口調で話し、しばらくは「ぐーず☆」を初めとする罵倒の数々で一部のプレイヤーを興奮させるが、後にデレを見せ始めるツンデレヒロイン
盲目ながら生まれつき視界ジャックを可能とする程の強い霊力を持ち、普段は愛犬のケルブの視界をジャックして『目』になってもらっていた。
だが異界入りして間もなくケルブと死別してしまい悲しみに暮れていたところ、直後に出会った須田に助けられることになる。以降は須田を犬の代わりとして扱い、行動を共にする。
村の外部の人間である須田に信頼を寄せるようになり、彼を頼りに村から連れ出してもらおうとするのだが…。
須田は知る由も無かったが、村の暗部に深く関わる人物であり、人としての戸籍が存在しない
「美耶子」という名前も、神代家に生まれ、いずれ「神の花嫁」となる役目を負わされた娘に代々引き継がれ続けてきた名前である。
彼女は「神の花嫁」として幼少期から村では神聖視されており、たとえ村の中であろうと、事情を知らない人間にはその存在は秘せられていた。
しかし「神の花嫁」としての役割を自ら拒絶した彼女は、儀式に必要なとあるモノを破壊したのだが、これが村の異界化を招く一因となってしまった。
なお、歴代の『美耶子』の中でも特に強い幻視能力(=視界ジャック)を持っている故に、黒幕は儀式を完遂させ得る存在として、当代の美耶子に期待していたとのこと。
ちなみに中の人はガチの霊感体質だったらしく、撮影中は頻繁に「見える」を連発してたらしい…。

竹内多聞(たけうちたもん)

大学で民俗学を教えている助教授。
実は羽生蛇村出身で、幼少時代に地震で両親を亡くした過去を持つ。
強い霊感の持ち主で幽霊の類を見慣れているため、化け物だらけの異界でも基本的に冷静*7
村を離れていたこともあってか、羽生蛇村に纏わる情報をかなり正確に集めており、その情報を記した彼の手帳は、最終決戦に臨む須田の大きな助けになった。
亡き父の臣人は郷土史家で、羽生蛇村の研究成果を実費で出版していた。
家族ぐるみの付き合いもあって、志村のじいちゃんと知り合いである。
某千の風の人にそっくり。だがアニヲタ的にはラディゲの役者と言った方が伝わる人が多いだろうか。
銃の不法所持(確実)とヅラの疑惑(嫌疑)あり。理由は3Dモデルがどうもヅラっぽいから。

安野依子(あんのよりこ)

竹内の生徒で、彼を慕って勝手についてきた女子大生。
異界に迷い込んでもあまり危機感を持っているようには見えず、「待て」と言われても待たなかったり、
ラジオを使った陽動作戦を行おうとする竹内に「こんなガラクタ拾ってどうするんですか?」と水を差してきたり、
迂闊な行動をしかけて竹内に制止されるなど、良く言えばマイペース、悪く言えば空気の読めない言動が目立つ。
おかげで彼女を「ウザ子」「クズ子」等の心無いあだ名で呼ぶプレイヤーもいるが、後半はそのマイペースさが癒しにもなる。
実際のところ、上述の危機感のない言動は、竹内と違って彼女は羽生蛇村の事情を知らないが故のものであり、
一人になってからもマイペースを貫き、時には勇気ある行動や度胸を見せる肝の据わりようは称賛に値するだろう。
エンディングでの竹内との立場の逆転ぶりも語り種。
漫画で得た知識を生かして屍人の巣から脱出を図ったり、大学のノートに多聞の少女マンガ風な似顔絵を落書きしてたりと、割とオタクっぽい趣味も持っている。
ちなみに八尾役の南氏と同様、彼女を演じた水野雅美氏も役者が本業ではないとのこと。
というのも15周年記念イベントで語られたところでは、初期構想では役者とモーション・声を分けるつもりだったが、全て演じてもらった方が面白いという理由で方針転換したらしい*8
おまけに水野氏は「軽井沢の不動産王の娘さんで、すごいお嬢様」というなかなかに衝撃的な話が語られていた*9

宮田司郎(みやたしろう)

村にある宮田医院の若き院長で、どこか影がある人物。通称撲殺天使みやたん。
……実は、宮田家は代々の医者の家系であると同時に村の暗部(荒事や表に出来ない雑事)を担う役目を負わされており、当然のように家を継いだ宮田もその役目をも引き継いでいる。
“どこか影のある人物”になるのも当然だろう。
荒事をも担っていることを裏付けるように、劇中にてネイルハンマーを持たせたら右に出る者はいない。え、スパナ様? 誰ですか、それ?
春海の内緒の友達という「みやちゃん」も彼ではない。
今作の裏主人公と言える存在。
求道師として持てはやされる牧野には鬱屈した感情を抱いており、異界化二日目の夜に思いの丈を本人にぶつけた後、自分の頭に拳銃を突きつけ……


牧野慶(まきのけい)

村の土着宗教である眞魚(まな)教の求道師。ホラーゲーム界屈指のキングオブヘタレ。
通称ヘタレ求道師、もしくは丸腰牧師。
後述する求道女の八尾に精神的に依存しており、単独行動中はうるさいほどに「八尾さん」と口にする。
聖職者であるがゆえに荒事に慣れていないのか、それとも精神的な問題か、大人の操作キャラクターの中では唯一武器を「持てない」仕様になっており、
先に述べた精神的な脆さが目立つことから、プレイヤーからは「ヘタレ」扱いされることが多い。
物語終盤にはこの仕様が無くなり、平然と拳銃を扱い、

恩田理沙(おんだりさ)

就職のために羽生蛇村から都会へ出て、スーパーで働いていた21歳。
だが職場に馴染めずにいたところ、怪しい業界の人に危うく騙されかけたことで傷心し、実家に戻ってきた。
これらの背景からも分かるようにかなりの不幸体質であり、物語に登場してからも徹頭徹尾運が悪い不憫な子。
異界入り後は姉からの手紙にあった宮田医院に向かい、そこで会った宮田としばらく行動を共にするが、
彼とはぐれたところで、既に屍人化していた姉の美奈と不幸な再会を果たしてしまう。
屍人化した姉に捕まった理沙は、そのまま殺され、姉と同じく屍人化する末路を辿るかと思われたが、
何故か理沙は姉と意識を同調させられて*10しまい、第二の美奈となって宮田に迫った結果、彼に絞殺されて屍人化。
ちなみに、意識を同調させられた後はこれまた何故かわざわざ私服からナース服に着替えている。
屍人化した後は、美奈と二人で宮田を執拗に追跡するようになる。叫び声が非常に耳に刺さってうるさい。
最終的に頭脳屍人となるが、集合体恐怖症の人にとってはトラウマレベルの外見になってしまう。
使用武器は。お察しの通り最弱武器。
名前の元ネタは本作の中核スタッフであるプロデューサーの外山圭一郎とシナリオの佐藤直子がコナミ時代に出掛け、
本作にも強い影響を残した初代サイレントヒルに登場する看護婦リサ・ガーランドから*11

恩田美奈(おんだみな)

宮田医院に務めていた看護師。理沙の双子の姉。
生前は宮田と交際関係であったが、物語開始時点で既に死亡しており、本編では最初から頭脳屍人化した状態で登場する。
恋人の宮田との理沙に執着しており、彼らを執拗に付け狙う。細い身体に見合わず異様にタフ。
劇中では遭遇した理沙に赤い水を飲ませて屍人化させようとせず、意識を同調させるなど、他の屍人とは若干異なる行動を取る。
マニアックスによると、これは美奈が臨死状態…つまり生と死の境を彷徨っているような状態のまま屍人化した影響とされている。

志村晃(しむらあきら)

羽生蛇村に住む猟師。70歳。
誰が見ても猟師と分かるような服装・装備と風貌のナイスシルバー。
彼のステージはもはやゴルゴゲーも同然である。
彼の一族は代々「勘」の鋭い者が多く、晃自身も村と儀式の黒幕の異常性に気付いている稀有な人物の一人だが、
過去のとある事情から、その事実を表立って主張したりはせず、固く口を閉ざして生きてきた。
妻を早くに亡くし、その次に息子と従兄弟を過去の災害で失ったことで、すっかり厭世的になっている。
異界入りした後、どうあっても異界から抜け出せないことを悟り、「化け物(=屍人)」になる前に死のうと自らの猟銃を使って自殺するが…

美浜奈保子(みはまなおこ)

かつては人気を博したアイドルだが、年を重ねる毎に人気が低迷。今は落ち目のタレント。
将来への不安からかヒステリックな言動が多い。天の川を「てんのかわ」と読むなど頭も悪い。
オカルト番組のレポーターとして村に来ていたところ、異変に巻き込まれる。
途中で拳銃を入手するが、一般人のはずなのに拳銃の扱いがうまい。恐らく自身の出演ドラマ「ヒットマンは雌豹」で学んだと思われる。
赤い水が永遠の若さをもたらしてくれると思い込んで入水するが、そのために皮肉な末路を辿ることになる*13

高遠玲子(たかとおれいこ)

村の分校の先生。武器はバール。上の傘よりは心強く使いやすい。
天体観測会の引率として学校に来ていたところ、異界に巻き込まれた。
元来生徒想いの優しい先生であったことに加え、かつて娘を亡くしたことがきっかけで離婚してしまった過去から、
クラスで孤立しがちだった春海を、まるで母親のように普段から気にかけていた。
その優しさは春海と共に異界に巻き込まれてからも変わらず、文字通り命をかけて春海を守りつづける。
最期はのガソリンに火をつけて…
終盤にはアフロになったりクチビルゲになったりするが、春海を想う気持ちはずっと持ち続けていた。

四方田春海(よもだはるみ)

天体観測会にただ一人来ていた小学生。
両親を事故で亡くしたショックでふさぎこみがちになり、クラスでも孤立することが多かったという。
ゾンビの街とか霧の深い街とかを平気で歩き回る幼女たちに比べるとごく普通に非力な幼女で、
ゲーム的な事情もあり、彼女が主役となるシナリオの難易度は非常に高くなっている。
いろいろストーカーされて大変な子。
生き延びる為に策を弄する必要があるため、伝説の軍師「四方田春海( しほうでんしゅんかい )」扱いされることもある。
ただし出典の関係から「しほうでんしゅんかい」と呼ぶと「ニコ厨死ね」と言われることもあるため注意。

様々な偶然や幸運が重なり、赤い水を摂取せず逃げ回っていた春海は、終盤で名越校長の屍人に追い詰められるが、屍人化した高遠が校長を道連れに奈落に落ちて行ったことで窮地を脱する。
そして、友達であった美耶子に導かれた須田の手によって、春海は「どうあがいても絶望」な異界から唯一、現世に帰還することが出来たのであった。
しかし、彼女を救助した自衛官は次回作で…

前田知子(まえだともこ)

両親と喧嘩してプチ家出中に巻き込まれた女子中学生。
家出の原因はアイドルにハマりすぎて成績を落としてしまっており、それを心配していた母に日記を盗み見られたことに気づいて大喧嘩したのがきっかけ。
異界をさ迷い歩いているうちに牧野と合流するが、事故というより狙撃手のせいで牧野とはぐれてしまい、一人で散々屍人に追いかけられるはめに。
ようやく両親の下にたどり着いた時には、両親(と該当シーンが採用されたCMを見た視聴者)を恐怖のドン底に叩き込む姿になっていた。
その後は仲直りして一家で仲良く暮らしている。ミス裏の顔。

前田隆信(まえだたかのぶ)真由美(まゆみ)

知子の両親。
真由美は主婦で隆信は役場の職員(写真が得意で村の広報に載ってる写真は隆信によるもの)。
プチ家出した娘を探しに八尾のいる教会へとやって来た。
はっきり言うとストーリーの本筋には関わらない登場人物であるが、とあるステージで登場した際のインパクトの強さから、プレイヤー達に強い印象を残した。
母の爆笑エアクッキングは一見の価値あり。父のエア芸も必見。いやはや芸達者な家族である。
詳しくは実際にプレイ、又はプレイ動画にてご確認下さい。

石田徹雄(いしだてつお)

「了解…射殺します」
村の警官。一番最初に出てくる屍人*14
銃を持っていることもあって初見で訳も分からないまま彼に射殺されたプレイヤーは多い。
終盤では羽根屍人となってプレイヤーを苦しめるが、生来の酒好きと電気を利用したトラップにかかり拳銃を奪われる羽目に。
演じたのはゲーム実況プレイヤーの「えどさん」こと江戸清仁。

名越栄治(なごしえいじ)

村の分校の校長。
優しい校長先生で生徒からも信頼されていたというが、屍人化後の「はるみちゃんのにおいがするよぉ」の失言でロリコン疑惑を掛けられる羽目に。
イベントで見せたさわやかな校長スマイルで有名。後にヒトデに進化した。
登場する屍人の中でも異様なタフさを誇り、倒してもすぐ復活してしまうため、登場するステージではかなりの難敵。

神代亜矢子(かじろあやこ)

美耶子の実の姉。美少女である美耶子と比べると良くも悪くも普通の顔。ちょっと眉毛が濃い。
代々受け継がれてきた神代家の役目に従い、許婚として神代淳を迎えている。
幼い頃から自分と違い、妹が「神の花嫁」として周囲の人々に神聖視され、思いを寄せる淳までもが執心していることから、美耶子に激しい嫉妬心を募らせてきた。
これは亜矢子自身が神代家の『闇』を何も知らされておらず、美耶子の境遇をほとんど知らないのも原因である。
一応「儀式の際に人身御供となる」ことは知っていたのだが、妹ばかりが重んじられてきた日々への鬱屈からか、異界で妹と再会した際には、
「さっさと生贄の一人になりなさいよ!」と怒りをぶつけている。
対して美耶子は村の暗部や真実を知っていたため、亜矢子の敵意には全く気にも留めず、
何も知らない姉の方が哀れな境遇なので、逆に呆れていたほどである。

神代家の宿命などを知る機会を得られないまま儀式に参加し、異変に巻き込まれて異界入りするが、なんとか終盤まで生き残る。
が、「完璧な実」と見込んでいた美耶子を捧げたことで儀式の完遂を確信し、「次の花嫁は必要ない(=跡取りや生贄は要らない)」と判断した黒幕により、あっさりと焼殺されてしまった。

…と、徹頭徹尾蚊帳の外だったこともあり、本編で登場したデモシナリオも3つ程度と少なく、
ほとんどのキャラが死んでいく中、どこで何をして、どうやって終盤まで生き残ったのかほとんど描写されなかった。
そのうえ敵として出てくることもないため、登場人物の中では忘れられても全くおかしくないほど一番影が薄い*15
さらに言えば、黒幕の思惑に反して儀式は完遂できなかったため、実際には生かしておくべきだったのに早合点で体を燃やされるという、亜矢子にとっては踏んだり蹴ったりな幕切れであった。

ちなみに彼女も美耶子と同じく不完全な不死の命を持っているので、自らを焼き殺した炎が特別なものであったりしなければ、肉体が死んでも精神は死んでいないことになる。
その場合、死後も精神体として異界を彷徨っているかもしれない*16

神代淳(かじろじゅん)

亜矢子の婚約者で入り婿。元々は神代の家とはなんら血縁関係のない家柄らしい。
厨二病臭い言動からも窺えるが選民思想を持つ。
楽園に導かれるという大嘘を吐かれていたせいもあるが、淳や神代家にも“利”はないにも関わらず、色々と闇深い神代家の真実を勘違いした末にノリノリで儀式に協力している道化。
こういった事情もあり、婚約者である亜矢子よりも「神の花嫁」である美耶子の方に興味を持っているのだが、
彼女が人身御供であることも理解しており、亜矢子を嫉妬させる目的も込みで執着する素振りを見せているというサド気質。
半ば意地になっていたのか、はたまた何も考えていなかったのか、異常な事態の中でも空気を読まずに美耶子を追い続け須田を銃撃。
須田が美耶子と現世で再会できなくなる一因となった。

最終的には都合よく黒幕に使われ、気圧されるままに儀式を手伝わされた挙句、
正体も知らぬままに降臨を待ち望んでいた神=不完全状態で復活した堕辰子にタックルされ、あっけなく命を落としてしまったのだが、
人としては死んだものの、堕辰子が逃げ込んだ“いんふぇるの”に亡骸が堕ちており、そこで半屍人化。
「全てを終わらせてほしい」という美耶子の願いを受けて“いんふぇるの”に到達してきた須田の前に立ち塞がった。笑い声がムカつく。
序盤は狙撃銃を使った銃撃戦。ある程度ダメージを与えると、銃を捨て斬鉄剣と似た設定の日本刀「焔薙」を使って切りかかってくる。
尚、ここでゲームオーバーになると、上記の厨二病全開の高笑いをする。
ラスボス直前ながら、敵としての強さ(厄介さ)は後に控えるラスボス並である。

最後には常世の存在をも滅することが出来る『宇理炎』の炎によって滅ぼされ、遺された彼の『焔薙』が以降の須田の武器となる。
さらに、終了条件2では円環から抜け出すべく導かれた人々により紡がれた『木る伝』が宿り、堕辰子の首を落として止めを刺す真の力になる。

リブート版のコミック『SIREN ReBIRTH』では、神代姉妹の従兄弟(つまり神代家の分家の出身)で幼馴染という設定に変更された。

八尾比沙子(やおひさこ)

眞魚教にて牧野を補佐する役目に就いている求道女。
……しかし、実は牧野からは不自然な程に依存されている関係である。(ただし男女の関係などではなく、寧ろ母に縋り付く幼子のような構図である。)
聖職者らしく慈愛に満ちた女性で、よそ者である須田の怪我を心配したり、逃がそうとしたりと優しい人物。
ゲーム中でも(メタ的にも)プレイヤーは彼女に最初に助けられることになる。
しかし、眞魚教の信者帳を読んだ辺りから謎めいた言動をしたり、村の暗部について知っているような素振りを見せるなど、


なお、演じた南りさこ氏についてまるで他作品の出演情報が出てこないことから、
ファンの間では正体不明の存在としてある種の怪談のような扱いを受けていた時期がある。
15周年イベントでディレクターにより「役者ではなく広告モデルだった」と説明がされたが、近況は不明だという。


【27年前の人物】

神代美耶子(かじろみやこ)(先代)

昭和51年(1976年)当時の「神の花嫁」。なお、こちらは盲目ではない。
後代(姪)の美耶子と同じく、座敷牢に幽閉されて育ったため世間知らず。交流できるのは母親代わりの女中・澄子だけであるため、彼女には心から信頼を寄せている。
儀式当日の夜、澄子の導きで神代家の屋敷の地下通路を抜け出し、不入谷教会に到着する。そこで図らずも御神体の首を盗み出してきた晃一と邂逅し、彼を頼りに異界化した村からの脱出を目指す。

終盤で晃一の願いを聞き入れた美耶子は、自分を守ってくれたパートナーを失ったことで途方に暮れる。
その後、澄子と再会できたことに安堵するも、彼女の思惑に気づけないまま囚われてしまい、目隠し・拘束の上で(旧)宮田医院の地下に27年間も幽閉されることとなる。
この時に一対の“宇理炎”を持たされるのだが、これが巡り巡って27年後の人間である宮田と恭也の手にそれぞれ受け継がれた結果、最終決戦でラスボスを滅する大きな決定打となった。

ちなみに神代家の地下道を通ったとき、苦しげなうめき声をあげながら這いずる異形の存在を視界ジャックで目撃し、恐怖に駆られて絶叫しているが、
その異形の正体は神代家の直系で、『神の花嫁』に選ばれなかった者たちの成れの果てである。

志村晃一(しむらこういち)

志村晃の一人息子。父と同じく鋭い勘の持ち主。
以前より黒幕の存在を疑っていた晃一は、偶然にも儀式が行われるとの報せを聞き、儀式の失敗を企んで御神体の首を盗み出した。
その後、屋敷から逃げ出してきた先代の美耶子と出くわすが、何やら困った様子の美耶子を放っておけず、彼女を連れて異界化した村からの脱出を目指す。

逃避行の中、二人は何とか(旧)宮田医院の地下室に辿りつくものの、晃一は道中で赤い雨を浴びたことで屍人化の兆候が表れはじめる。
身体の異常に気付いた晃一は、化け物――すなわち屍人にならず人間のままであり続けたいと美耶子に頼み、身体を拘束した上で杭を打ち込んでもらい「封印」された。
宮田の(旧)宮田医院のステージで地下の霊安室に行くと、27年経ってもなお箱の中で屍人化に抗い続ける晃一が確認できる。

ゲーム本編の主人公達のように、彼にも紡がれた因果の導きがあったのかもしれないが、こうしてマッチポンプ的に始まった逃亡劇は失敗に終わったのであった。

志村貴文(しむらたかふみ)

志村晃の従兄弟。
志村一族の例に漏れず勘が鋭く、儀式の黒幕に疑問を持ち、村の暗部を探って触れ回っていたことが危険視され、精神異常を理由に(旧)宮田医院にて身柄を拘束されてしまった。
幽閉された貴文は、従兄弟の晃に手紙を出して助けを求めたが、当の晃は事情が事情なだけに黙殺する他なく、結局助けは来なかった。
そして27年前の異界入りに巻き込まれた日、ようやく脱出したのだが喉の渇きに耐えられず、赤い水を飲んだことで屍人化してしまう。
この時、貴文は『先代の美耶子と晃一が辿った結末の一部始終』を視界ジャックで目撃している。

澄子(すみこ)

神代家の女中として働く、先代の美耶子の世話係。
美耶子を溺愛していると同時に彼女の境遇を憐れんでおり、その胸中を日記にしたためる程である。
儀式の当日、美耶子を村から密かに逃がすため、神代家の地下通路を抜けるよう促す。
後に(旧)宮田医院の地下で美耶子と合流するが…



【敵】

屍人(しびと)

村を闊歩する怪物。
元は普通の人間であったが、異界に溢れる「赤い水」を摂取した上で死亡したり、
あるいは「赤い水」を一定量摂取したことで、不死の怪物として蘇った(あるいは変異した)存在。
屍人化した直後の「半屍人」状態では、まだ人間だったころの記憶や精神性を有している者もいるが、
屍人化の段階が進み、より異様な姿に変異していくと共にそれらも薄れ、文字通りの化け物となっていく。
プレイヤーを恐怖のどん底に叩き落す敵だが、憎めない一面を見せることもあり、愛されキャラ扱いされる場合も。
詳しくはリンク先へ。

堕辰子(だたつし)

眞魚教で崇められる
遥か昔、空から羽生蛇村に堕ちて来た『常世(=異界)』の存在で、伝承では翼を持つ蛇として描かれている。
+ 終盤のネタバレ
本作のラスボスにして、本作の狂った世界の根幹にある存在。
実体は伝承の格好いい姿ではなく、人間が思い描くような「神」とかけ離れた化け物で、モチーフはタツノオトシゴである。

過去の現世(過去の羽生蛇村)で喰い殺されて肉体を失ったことで、霊体のみが常世に存在している。
その常世に居る堕辰子に“実”=かつて現世で失われた堕辰子の肉体を還すのが羽生蛇村で行われている『儀式』の正体である。

そして、ゲーム中にて本来の人格を取り戻した八尾によって、“完全な実”と目されていた美耶子が捧げられたことで現世に再降臨する……が、
実はこれ以前に須田の屍人化を防ぐべく美耶子が自身の血を彼に分け与えていたことと、須田の血も美耶子の中に混ざったことで、彼女の“実”としての完全性が失われていた。
不完全な“実”を捧げられた堕辰子もまた、八尾の目論見に反して不完全な状態で復活し、自我を失くして暴走状態に陥った。

その後は弱点である日光が当たらないように、屍人が建造した『屍人の巣』に身を隠していたが、宮田がダムを爆破したことで洪水がなだれ込み、屍人の巣が破壊される。
ただでさえ不完全な状態にあった堕辰子は、直射日光を浴びて弱体化し、本能で現世と常世の境目である『いんふぇるの』へと逃げ込む。
八尾から彼女自身の“実”を捧げられ、完全体の成体となった堕辰子は、後を追ってきた須田に襲い掛かる。

ゲームにおいては、堕辰子は不可視の透明状態で移動しており、その状態で接近して腹部にある口で食らいついてくる。
ダメージは数発は耐えられる程度だが、対処法を見つけなければ成す術なくやられてしまう。

鍵となるのは視界ジャック。
これだけでもおおよその位置を把握する事は出来るが、堕辰子が須田に接近すると、ある方向を指差す美耶子の姿が共に映る。
指し示す方向へ向かっていくと、やがて巨大な眞魚岩がそびえ立つ場所があり、視界ジャックを使わずとも眞魚岩に堕辰子の姿が映し出されるので、
タイミングを合わせて『宇理炎』の炎を当てることで、ダメージを負わせることが出来る。

こうして何度も『宇理炎』でその身を焼かれた堕辰子は瀕死状態まで追い込まれ、『焔薙』を首を切り落とされることとなった。
切り落とされた堕辰子の首は老化した八尾に抱えられ、彼女と共に次元の狭間へと落ちていき、
「八尾が堕辰子の首を探す過去の自分へ、堕辰子の首を手渡す事を繰り返し続ける」という無限ループの「虚母ろ主の輪」が完成するのだった…


【用語】

  • 羽生蛇村
本編の舞台となる山村の集落。某県の三隅郡に存在し、近隣自治体に上三隅があり、県道333号線が通っている。
小さな村であるが、2003年現在では駐在所、医院、コンビニエンスストアなどが存在するほか、小学校は生徒数が少ないながら2学年を纏めた3クラス形式で運営されていたりと、極端な田舎の村というわけでもない。
かつては産業として鉱山が存在したが、主な産出物である錫が取れなくなってからは閉山している。
村の有力者である神代家が代々強い影響力を持っており、村役場や宮田医院など〝儀式〟に関する協力や黙認をさせている等、闇を抱えた村でもある。
漫画版では地元警察すら神代家の影響が及んでいる描写があり、警察すら儀式に関して見逃している節がある。

27年前に大規模な土砂崩れが発生しており、31人が土砂に呑み込まれ、2人が亡くなった大災害として伝わっている。
登場人物の一人、竹内多聞はこの災害に家族で巻き込まれて両親を喪い、現実世界に取り残されてしまった。
この災害から生き残った人々は、村に大きな被害をもたらした犯人が神代家の娘と志村家の息子だと知ると、
二人への憎悪から「駆け落ちに失敗した」と噂を流した。




日本の田舎の村ながら、(ゲーム的な理由があるとはいえ)異様なまでに銃火器が普及している村である。
設定上、かつて旧日本軍が羽生蛇村にて何らかの活動*20を行った形跡が残っており、かつて村に防空壕跡があった事や、宮田医院が陸軍指定病院になった経緯から旧日本軍の置き土産であるものである可能性が高い。
実際、ゲーム内で屍人が使用する銃火器には旧式の村田銃の他に、旧日本軍の九九式小銃や二六年式拳銃といった装備が登場する。儀式に失敗した1976年時点でも相当数が村に保管されていたようである。
ただし、それ以外の銃火器は(数が多すぎるが)警察用のニューナンブ*21や狩猟用のライフルと現代日本でもありふれたものが多く登場する。

  • 赤い水
異界のそこかしこに見られる謎の赤い液体。
現実世界には存在しないもので、現実世界の水(雨なども含む)は異界ではほとんどこれに置き換わっている。
これをなんらかの形で体内に取り込むと、たとえ致命傷に近い傷であっても治ったり、体力が回復したりする。
さらに登場人物の大半が異界入りした後に「幻視」を使えるのは、少量でも体内に赤い水を取り込んだ影響とされている*22が、摂取量が一定量を超えると屍人化する。
また、取り込んでしまった時点で日本神話における『黄泉戸喫(よもつへぐい)』の原理により、現実世界に帰ることが叶わなくなる。
その源は堕辰子の血であり、劇中に登場する屍人がみな目から血涙を流しているのは、赤い水の代わりに自身の血液を排出しているためである。
また、異界の羽生蛇村の周囲にある『赤い海』は全てこの赤い水であり、屍人は『海送り・海還り』を繰り返した後、これと一体化すると言われる。

  • 海送り/海還り
屍人と化した人間が日に四度、村に響き渡るサイレンに誘われて『赤い海』に向かい、そしてさらに異形化が進んで帰ってくること。
ゲーム中のムービーでその様子を見ることができる。なお、サイレンのように聞こえる音は堕辰子の叫び声。
上記の通り『赤い海』とは堕辰子の血であり、屍人は最終的にはこれと一体化するのであるが、
一度の『海送り』で一体化する段階には及ばず、たいていは異形化が進んだ上で村に帰ってくることがほとんど。
ストーリーが進むにつれて異形化が進んだ屍人が増えるのもこれによるもの。
現実世界の羽生蛇村でも、おそらくこれを基にしたと思われる民俗行事(当然屍人になったりはしない)が伝わっているとか。

  • 神代の呪い
神代の血に掛けられた呪い。
作中では神代に属する美耶子・亜矢子の他、恭也が美耶子の血を取り込むことでこの呪いを受けている。
神代家の直系の子孫は、祖先が犯したとある罪の影響で、「神=堕辰子」に近付くことを拒絶される呪いを受けている。
これにより赤い水の影響を受けず、屍人にもならない他、神代家に生まれる子供は例外なく女の子となる。
なお、入り婿である淳や美耶子の父親などは元々外部の人間なので呪いを受けていない。

本来一度発症すると止めることができない屍人化も、神代の血(呪い)を取り込むことで進行が食い止められる*23
この特性を何らかの形で知っていたらしい美耶子は、劇中で恭也に自身の血を取り込ませている。
+ 呪いに付いての詳細
大本になった呪いは、神代の祖先である八尾に掛けられた不老不死の呪い。

その子孫である神代家直系の女性も不死となのだが、呪いを受けた本人ではないためか呪いの効力も不完全であり、不死なのはその精神(魂)だけ。
よって肉体が失われようと、魂のみが「精神体」として永遠に現世に囚われ続けることになる。
さらに老衰しても完全に消滅させられない限りは腐るでもなく朽ちたような状態で残るので、想像だに出来ない苦しみを味わわされる。
祖先が犯した禁忌のせいで死を迎えることも出来ず、朽ちた身体のまま永遠に生き続けなければならない彼女たちの境遇は、哀れとしか言いようがない。

  • 眞魚教
羽生蛇村に根付いている独自の土着信仰。
教会やロザリオなど所々にキリスト教を彷彿とさせるが、そのシンボルは十字架ではなく、「生」という漢字を逆さまにしたように見える『マナ字架』と呼ばれるもの。

  • “いんふぇるの”
眞魚教で伝えられる“楽園”。永遠の命が約束された世界とされる。
だが、屍人化したり、神代家の血を体内に取り込むなどしないと入ることが出来ない『常世』(=異界)であることや、
世界そのものも黒い空や枯れた大地、柱やピラミッド以外何もないなど楽園と呼ぶには程遠い。
アーカイブではいんふぇるのを描いた宗教画が登場するが、おおよそ楽園とは程遠いおぞましい世界が描かれており、かつてこの世界を垣間見た者の伝承は残っているようである。
何よりも楽園と語られる割に名称は『いんふぇるの』(=地獄)となっていることや、
須田と八尾以外でいんふぇるのに唯一たどり着けたのが、劇中で須田を撃つという「罪」を犯した淳だった辺り、色々と制作陣の意図も含めて察せるものになっている。

  • 羽生蛇蕎麦
羽生蛇村のご当地グルメ。
その味は思わず我を忘れさせるほどで、ある屍人はテーブルを汚しながら素手で食し、
またある屍人は地面にぶちまけられた蕎麦を奇声を上げながら貪るなど、数々の屍人を魅了する。
~羽生蛇蕎麦の作り方~
①多めの沸騰したお湯で麺を3分間ゆでる。
②麺をざるにあげ、冷水でよくそそぐ。
③肉水、酢、唐辛子、砂糖で作ったスープに麺を入れ苺ジャムを乗せて完成。お好みで季節の果物を加えても美味です。

では肝心のお味は……( ゚д゚)ドウアガイテモゼツボー


【余談】

羽生蛇村のモデルは埼玉県秩父郡内の廃村。
廃墟、心霊スポット巡りブームの中で『SIREN』のモデルになった場所として人気になっている。

ストーリーやシステムで某静岡の一作目に似ている部分があるのは、プロデューサーと脚本が同じ人だから。
CMが怖すぎると抗議され放送中止になっているが、たった7件なので宣伝戦略ではないかと思われる。

割と多くのプレイ動画が動画投稿サイトに投稿されており、解説プレイや攻略プレイと様々なものが上がっているため、
プレイしたけど攻略できない、怖すぎて自分じゃプレイできる気がしないがストーリーは知りたい、というような方は一度探してみるのも良いかもしれない。
全く危機感とは無縁の超人的プレイや、バグ技を利用して操作キャラが高速移動したりするRTA動画など、ホラーゲーとは思えない内容の動画も多々投稿されている。

関連書籍として、公式から様々な用語を解説したムック本『SIRENマニアックス』が出版されている。
全てが解説されているというわけではなく、細かな謎は残っているが、SIRENファン必携の一冊であることは間違いない。
単純に読み物としても面白い一冊だが、その分入手しづらいのが難点。

2004年10月に数々の追加要素を加えた『SIREN SPECIAL EDITION』の発売が予定されていたが、会社のポリシー上、発売するかどうか議論になり、最終的に実現しなかった。
発売が実現していれば、新たにイージーモード・ノーマルモードを追加したゲームモード*24、シナリオ達成条件がより鬼畜に進化したチャレンジモードなどの実装が予定されていたようである。
難易度の緩和されたSIRENに関しては続編のSIREN2にて実現する事になる。
他にも、ゲームのメイキングも収録する予定であり、まさにSIRENファン垂涎のソフトになったと思われる。

2013年8月にはツイッターにて当時のスタッフや出演者がつぶやく10周年イベントが行われた。
収録風景やラフスケッチなど秘蔵の写真もアップされているので、気になった方は「SIREN2013」でググっていただきたい。

2014年には「SIREN -赤イ海ノ呼ビ声-」のタイトルで漫画化。
コミカライズ版として原作に忠実な形で進行していたが、掲載紙の休刊と作者の体調不良が重なり途中で連載休止に。
公式サイトから再開を断念する告知が行われる有様となった。

2018年には、本作の実質的なリブート版であるコミカライズ『SIREN ReBIRTH』が、web漫画サイト「Z」で連載された。
前述の漫画化リメイク企画が頓挫した後に引き継がれる形で再始動という紆余曲折はあったものの、ゲームからの設定を再編しつつ無事に完結した。



+ どうあがいても絶望な救いようのない真実
八尾は『実』を捧げることが“呪い”を解く方法と思い込んでいたが、実際のところは不明である。
マニアックスによれば、堕辰子の肉を食べた者達に発動した呪いは、『常世の存在を下位の存在が食べる』という禁忌を犯したことに対するもので、
呪いを掛けたのは堕辰子当人ではなく、『堕辰子よりも上位の存在*25』とされている。
つまり、もし堕辰子が八尾を許したとしても、呪いをかけた大本の存在が許すとは限らず、そもそも呪いが解けるかどうか自体、不明確なのである。
そのため、「八尾が何をしようと関係なく、大本の存在が許すまで呪いは解けない」あるいは「未来永劫呪いは解けず、八尾は絶対に許されない」可能性も存在し、
これが事実であれば、八尾は「自分が何をしても絶対に許されない」という絶望に気付かないまま、自分の子孫を無為に犠牲にし続けていたことになり、
さらにその身勝手な行動が、彼女の子孫はおろか、村人や村を訪れた人間たちの人生、果ては因果律すらも狂わせたことになる。

さらにいえば、本編終盤で八尾自身が『実』を捧げたことで堕辰子が完全復活していたことから、
罪を償って“呪い”を解くためには、八尾が自らを犠牲にする必要があったのではとの考察もある。
八尾も最終手段として誰に言われるでもなく自らの『実』を捧げている辺り、ある程度は事実に気付いていたが、自分可愛さに目を背け続けてきたのだろう。
これこそが八尾が背負う本当の原罪であり、『SIREN』という救いのない物語の本質だったのかもしれない…。




追記・修正は絶望してからお願いします。

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最終更新:2026年08月11日 18:05

*1 海外タイトルは欧州版が『Forbidden SIREN』。中国・韓国版が『死魂曲 SIREN』。欧州版タイトルは後の実写版映画のタイトルとしても採用されている。

*2 幽霊が全く出ないわけではなく、とあるキャラクターの話で心霊現象が起こったりはしている

*3 ステルスを強要されるという意味では、バイオハザードやサイレントヒルといったアクション要素のあるホラーゲームとはゲームのジャンルが違うという側面もある。

*4 現実世界のネット上でのみ前日譚やSDKの書き込みといった裏設定的なものを公開していた。

*5 現実世界においては1989年に元号が『平成』に変わっているが、本作においては2003年時点でも元号は『昭和』のままという設定になっており、ここだけでも『SIREN』の世界は我々の世界とはよく似た違う世界であることが分かる。なお、この設定から毎年8月3日は“異界入り”と称して『SIREN』ファンがSNS発信したりファンイベントを開いたりする。後述の10周年イベントを機に、ゲームのキャストやスタッフも独自に発信したり交流したりなんて動きも。

*6 つまり須田は自分で自分を呼び寄せたことになる。この辺りも、本作が『時間ループもの』であることを強く印象付ける設定といえるだろう。

*7 あるステージでは、井戸桶から赤ん坊の手が出てくる心霊現象が起きる…のだが、既にこの程度の心霊現象は慣れっこらしく、竹内はほぼ無反応であった。

*8 元々は容姿のモデルだけ担当する予定だった演技経験がないキャスト含め、恩田姉妹役の児玉啓氏や亜矢子役の松井亜耶氏も同様とのこと。

*9 リメイク作の『SIREN:New Translation』では、両親が持つ土地を撮影に貸し出してくれる等、ゲーム内同様にメタ的な意味でも助けてくれたとか。「二万坪ポン☆と貸してくれたぜ」

*10 屍人化した者がこのような行動を取るのは、作中では後にも先にも美奈くらいである。

*11 ちなみにリサ・ガーランドの元ネタはホラー映画「ゾンゲリア」に登場する看護婦リサ・ブロントから。

*12 「自分たちがいる世界の素晴らしさを知ってほしい」という目的で生きている人間を襲う(=屍人化させようとする)のは、劇中に登場する屍人が概ね共通して持っている価値観である。

*13 元ネタは間違いなく諸星大二郎の名作『暗黒神話』

*14 ただし、最初のステージで出てくる石田は異界化の前兆で発狂しているだけで、身体的には人間のままである。

*15 実際、SIREN:New Translationでも唯一彼女に該当する、または役割を統合したキャラは登場していない。

*16 『ReBIRTH』では最終決戦後、須田がジェノサイドに赴く前に美耶子の導きで歴代の神代家の魂を開放するシーンがあり、亜矢子の精神がまだ生きていればこの時に同じく開放されたと思われる。

*17 「末代まで祟ってやる」というフレーズは、このテの「呪い」が絡むホラーではよくある話。

*18 ウロボロスとは“永遠の象徴”として現される自らの尾を咥えて◯か∞を形作る蛇、或いは竜のこと。不老不死、永遠、死と再生の象徴として扱われる。名前の意味はギリシャ語で“自らの尾を噛む者”であり、本作に於いては「自らの尾」=「自分の子孫」を犠牲にしてきた八尾とも解釈できる呼び名となっている。

*19 それぞれ異なる時代の羽生蛇村の一部を、レイヤーを重ねるように組み合わせているようなものとすればイメージしやすいだろうか。

*20 旧日本軍が屍人の軍事転用を目的として研究をしていたようである。

*21 2インチ新型のため、2003年から異界に持ち込まれた銃

*22 志村や春海など、生来「勘」が鋭かったり、霊感が強いなどの理由で、「赤い水」に関係なく幻視能力を使える登場人物もいる。

*23 ただし、あくまで進行を食い止めるだけで治す作用はないため、対象者を人間に戻すことはできない。

*24 条件がマイルドになったり、ヒントが多く表示されたり、体力に余裕があるモードで、SIREN通常版のモードはハードモードに相当するよう調整されていた模様

*25 世界の誕生前に君臨していた唯一無二の存在『闇那其』の死骸の欠片より生まれた分身の一つであることが、次回作『SIREN2』にて明かされた。堕辰子もまた、同系統の(同じように生まれた)存在だとされる。