Mutant Year Zero: Road to Eden
【みゅーたんと いやー ぜろ ろーど とぅ えでん】
ジャンル
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AADV+SRPG
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対応機種
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Windows 7~10 PlayStation 4 Xbox One Nintendo Switch
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開発元
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The Bearded Ladies
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発売元
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Funcom
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発売日
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GOG, Origin, Steam: 2018年12月4日 Epic Games Store: 2019年8月16日 【PS4/One】2018年12月4日 【Switch】2019年7月30日
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定価
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3,600円(Epic Games Store, Origin, Steam) $ 34,99(GOG)
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参考
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Unreal 4 ゲームエンジン使用
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判定
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なし
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ポイント
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日本語対応 ケモナー感涙の女狐ミュータント
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概要
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スウェーデンのTarget Games社制作のTRPG「Mutant - År Noll」(英題は「Mutant Year Zero」)を移植したものである。
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開発元のThe Bearded Ladiesはスウェーデンの会社であり、本作の舞台もスウェーデンとなっている。
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The Bearded Ladiesは『Hitmanシリーズ』を製作したIO Interactiveの開発者らが独立して設立した会社であり、本作が処女作となる。開発陣には『HITMAN』シリーズはもとより『PAYDAY』を手掛けたメンバーも参加している。
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「隠れている時にクリティカルの確率が上がる装備アイテム」に「古代のハゲ頭の暗殺者のように」という解説が付いている。
ストーリー
赤死病によるパンデミックによって大きな混乱が起こる中、核戦争が勃発。
一般市民は"エンクレイブ"と呼ばれる、地下、海底、宇宙のシェルターへ避難した。
しかし、エンクレイブ間およびエンクレイブ内で闘争が起こり、エンクレイブの外では逃げ遅れた人々が凶暴化した"グール"と化して人を襲う。
もはや人類は絶滅寸前となっていた。
用語
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アーク
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長老とハモンが作り上げた要塞。
「Noah's Ark(ノアの箱舟)」にちなんだネーミングと思われる。
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エデン
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どこかにあるという楽園。
ハモンはその存在を信じているが、長老はそんなものはないと言う。
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ゾーン
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アークから見て、外の世界。
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ストーカー
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アークのメンバーのうち、ゾーンに出て物資の回収などを行う任務の担当者。
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ハモン
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アークのエンジニア兼ストーカー。
遠くに墜落した飛行物体がエデンから来たものだと信じて調査に向かったまま行方不明となった。
ハモンがいなくなるとアークの機械システムを維持できないため、長老はストーカーにハモンの探索を命じる。
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ミュータント
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当初は豚のボーミン(イノシシは英語でBoar(ボア))とアヒルのダックスの2名。本編途中で5名となる。
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グール
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凶暴化した人類の子孫。文字も読めないほど知能が低下していて、作戦理解能力が低く、よく揉めている。
しかし、医療ロボットのプログラムを書き換えて味方に付けており、本当に知能が低いのかは疑問。
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ポリスボット
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人類が居なくなった廃墟で相変わらず取り締まりを行っている。
グールにも攻撃するらしいが、ゲーム内でその現場を見ることは出来ない。
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ノヴァ教団
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古代人を神と崇める宗教団体。アークの破壊を目論んでいる。
常識的に考えれば論理的に破綻のある教えだが、グールを洗脳するには十分らしく、グールを従えている。
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デルタの店
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アークにあるデルタがやっている店。英語では"Delta's Fix Pit"となっている。
元はデルタの父がガンスミスをやっていて新品の銃も売っていたらしいが、現在は銃のアタッチメントの付替えとレベルアップのみをやっている。
アタッチメントの付替えは無料だが、武器のレベルアップには相応の武器の部品が必要。
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プリップの店
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アークにある酒場。ゲーム中に飲食することはない。
プリップは古代の遺物を集めており、遺物ポイントを貯めると役に立つコツを教えてもらえる。
例えば、持ち歩ける手榴弾的な武器をデフォルト2個から3個に増やす、ロボットへのクリティカルの確率が増加するなど、いずれも本当に便利である。
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イリディアの店
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アークにあるアイテムショップ。
アイテムを買うというよりは、スクラップと交換となる。仕入れと在庫の概念があり、在庫切れが起こる。
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MIMIR-Zシリーズ
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MIMIRマーク入りの軍事ロボット。いずれも倒すと爆発して周囲にダメージを撒き散らす。
MIMIR-Z200は小型ドローン。
MIMIR-Z400 ~ MIMIR-Z600は大型ロボット。
MIMIR-Z700はZ200を2機従えた大型ドローン。Z700は単体でも圧倒的な索敵能力と攻撃力があるが、Z200を2機とも失うと自爆することもある。
システム
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アークを拠点として、ミュータントのうち最大3名を選んでゾーンを探索し、時には敵と戦う。
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ゾーンはいくつかのエリアに分かれており、一度行ったことのあるエリアへはどこに居てもmapからワープ可能。
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ゲーム開始時にはまだアークに行ったことがないので、アークへはワープ不可となっている。
探索
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クォータービューのAADVのような操作でゾーンのエリア内を探索する。
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懐中電灯を点けることで探索時の視野の範囲が広がるが、敵からは見つかりやすくなる。
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懐中電灯を点けても、どこにアイテムが落ちているのかが非常に見つけづらく、だだっ広いマップを虱潰しに探索するしかない。
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敵の索敵範囲に入って敵に見つかると、敵が先攻で戦闘になる。
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敵の索敵範囲外から「奇襲をかける」を選ぶとプレイヤーが先攻で戦闘となる。
戦闘
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探索モードからグラフィック的にはシームレスに、SRPG様の戦闘へ移行する。
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戦闘中はフィールドは格子状のマスに区切った形で表現され、マス単位でSRPG様に移動することになる。
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敵のターン、プレイヤーのターンが完全に区別されており、交互にターンが回ってくる。
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基本的に敵味方ともにどのキャラも行動力を2つ持っており、それを消費するとそのキャラは行動終了となる。
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攻撃を行うと行動力が残っていてもそのキャラは行動終了となるため、攻撃後の移動やリロードは出来ない。
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一度倒した敵は再湧しない
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アイテムドロップはすべて固定であり、ドロップする敵は常に同じアイテムを必ずドロップし、ドロップしない敵は決して何もドロップしない。
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敵が仲間を召喚することがあるが、それらが召喚される位置まで固定である。
ストーカーの試練
スコアを競うモード
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←詳細説明
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mapはストーリーモードの使い回しだが、敵の配置はストーリーモードとは異なる。
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ストーリーモードではそのmapに出現しなかった種類の敵も配置されていることがある。
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ストーリーモードの進行具合と無関係にすべてのミュータントが使える。
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ストーリーモードの進行具合と無関係にすべてのミュータント能力が解禁された状態となっている。
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ミュータント全員がスティンガーを装備している他、1,500スクラップ、武器の部品280を持った状態でスタートする。
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イリディアの店で武器と手榴弾類、医療キットが購入できる。
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ストーリーモードで2丁入手可能な武器でも1丁しか在庫はない。
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武器に付ける照準などのパーツや防具は在庫がない。
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ストーリーモードと異なり、ミッション中にアークに戻るとミッション放棄とみなされる。
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ミッション中だけでなく、アークでもセーブ不可となっている。
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評価点
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戦術の自由度が広い
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探索モードから戦闘モードに入った時の配置そのままで戦闘することになるので、初期配置のとり方が戦術の要となる。
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ミュータント能力の「カエル足」や「モスウイング」など、ハシゴがない場所でも高所に移動できる手段がある。
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ゾーンドッグ(野良犬)は直接攻撃しか出来ないので、高所に陣取れば一方的に攻撃できる。
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攻撃の際、高所側に命中率のボーナス、低所側に命中率のマイナス補正があるため、高所の敵に低所から挑めばかなり不利だが、前述のミュータント能力で高所に移動すれば解消できる。
なお、高所にいる敵でも、こちら側が敵の射程内に居なければ降りてくることもある。
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最初のマップで「強い敵は迂回しましょう」というチュートリアルがあり、これを実践すると完全に戦闘を避けて進むことが出来るエリアが幾つかある。
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先へ先へ進めば、本来はもっと後で開けるはずの宝箱を開けることが出来る。
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弱い敵や、レベルは高いけれどもくみし易い敵などから各個撃破して行けば良い。
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前述のミュータント能力は戦闘中しか使えないが、「奇襲をかける」ことが可能な場所では「奇襲をかける」ことで戦闘状態になり、そこでミュータント能力で普通なら行けない場所に移動して、敵に発見されないうちに「戦闘からぬける」ことで普通の探索モードに戻れるので、敵をスルーすることにも使える。
一時的に戦闘モードを使って敵をスルーするのであれば、マグナスのミュータント能力「スニーク」もかなり強力である。これは、カバー状態から、カバー状態になれる場所への移動であれば、敵の索敵範囲内であっても敵に見つからずに(1回)移動可能というものである。
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そもそも探索モード中の敵の索敵範囲は地形や敵キャラの向きに関係なく敵キャラを中心とした円形であるが、戦闘中は探索モード中では敵の索敵範囲だった場所も物陰であればステルス状態でいられるため、ミュータント能力を使わずとも敵をスルーできる場面もある。
ただし、戦闘モードを抜けた時には探索モードの索敵範囲の外に居なければ、当然敵に見つかることになる。
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敵キャラの索敵範囲内に別の敵キャラがいる場合、1体の敵をステルスで殺しても、殺した直後に別の敵にバレることになる。が、ノックバックできる消音武器で攻撃して別の敵の索敵範囲から押し出した後に殺すと、周囲の敵にバレない。
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なお、いくら消音の武器でも敵のいるマスを弾が通過するとバレる。
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ジョークが効いている
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iPodらしき遺物を拾った時に「オシャレな果物測定器」という説明文が出るなど、ほとんどの遺物に少しズレた解説文が付く。
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遺物ポイントという発想も含めて『アースシーカー』にどことなく似ている。
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敵同士の会話が間抜けである。
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グールは知能が低いので、コントのようなやり取りが随所で聞ける。
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例えば…
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グールA「お前なんで巡回しない。さっさと巡回しろ」
グールB「ストーカーが殺しにくる。怖い。それよりパーティーしたい」
グールA「ストーカーこない。だから巡回しろ」
グールB「巡回する」
いやいや、ストーカーが来ないなら、なぜ巡回する必要があるのか。
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グレイ・ワンという名前の中ボスがいるのだが、それって『METRO 2033』のダーク・ワンの
パク…オマージュではないだろうか。
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なお、『METRO 2033』にてシェルター外に物資を調達しに行く任務の担当者を"ストーカー"と呼んでいたのをそのまま
パク…使用している。
探索中にノートを拾うというシステムも『METRO 2033』をパク…リスペクトしているのではないか。
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何かを見つけた際にその時アクティブなっているキャラによってセリフが異なるのだが、ぜひとも全部ダックスのセリフで聞いてもらいたい。
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例えば…
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山積みのキャベツを見つけた時
ファロー「グールが農業をするなんて考えもしなかったわ」
ダックス「すごいや、これじゃあアークの全員分あるぞ。いや、ボーミン1人分かも」
ミュータントの死体を見つけた時
ファロー「ひどいわ。誰がこんな事」
ダックス「ミュータントの死体は初めて見たな。とにかく俺は死ねるということが分かった」
なお、ファローのセリフにも面白いものはある。
キノコ栽培所にて
ボーミン「今は戦闘中だから、このようなものを見ても前に進まなければならない」
ファロー「見なかったことにするわ。私はまだ正気を保っていたいから」
ダックス「うっひゃー!(ネタバレにつき、以下略)」
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賛否両論点
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いろんなことが何処でも出来すぎる
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ゾーンのエリア探索中でも、メンバーの入れ換えや装備の変更、セーブそしてロード、ミュータント能力のアンロックまで可能。
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ここまで出来るのに、銃のアタッチメントの変更だけはアークのデルタの店でしか出来ないのがことさら不便に感じる。
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どこからでもアークに一瞬で戻れる
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デルタの店に行くのに便利。というか、デルタの店でしか出来ないことをどこでも出来たらそれで十分なのだが。
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ゾーンのエリア探索中にセーブしたファイルをロードして再開すると、一部の敵が巡回しなくなる不具合がある。特にMIMIR-Z200で顕著である。
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敵の医療ロボットは戦闘不能となった敵を蘇生する。
医療ロボット以外の敵を倒した後セーブし、そのセーブファイルをロードして再開すると敵の死体が消えているので医療ロボットは誰も蘇生できないことになる。そのような場合、自爆することもある。
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レベルアップについて
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レベルや経験値はキャラ毎ではなくパーティのパラメーターである。
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このため、ミュータント全員が常に同レベルであり、途中で加入したキャラはいきなりそれまで居たキャラと同レベルとなる。
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このシステムにより、キャラを育てるための戦闘は必要なく、その時その時で自由にメンバーを組める。
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逆に、経験値を特定キャラに与えまくってエースに仕立てるということは出来ない。
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レベルアップするとポイントが得られるだけで、ステータスなどは向上しない。
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ポイントはミュータント能力をアンロックするために使用する。
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ただし、ポイントによってHPを+1するという能力をアンロックすれば、ステータス向上とはなる。
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ミュータント能力をアンロックして、それをどう使うかが問われているゲームであり、レベルを上げて物理で殴るゲームではない。
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ロボットを行動不能にするミュータント能力「サーキットブレイカー」、敵1体を1ターン行動不能にする「猪突猛進」などをステータス強化よりも優先して取らないと戦闘が力押しで運任せになる。
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攻撃力はほぼ武器依存であり、武器はほとんど宝箱から入手するので、物理攻撃はゲームの進行に伴って強くなる。
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1戦1戦が開発側の意図した難易度になり、楽な戦いなどない。
問題点
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ノートについて
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収集要素として存在するノートを集めていないとストーリーが把握できない。
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とある人物の手記は物語の根幹を理解するために必要であり、ちゃんと読んでいないとラストのどんでん返しについて行けない。
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醸造会社の経営報告書のように1度見れば十分なものもあるが、そういう雑多なものが多く混じっているため、本作でのノートの重要性が伝わりにくい。
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ノートだけでなく、MIMIR Needle Pistol の説明文も必読である。
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わかりづらいが、装備変更画面のリュック部分を選択することで拾ったノートを読み返すことができる
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とある人物の手記は物語の根幹を理解するために必要であり、ストーリーをより深く理解できる。
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マップがだだっ広い
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例えば最初の「金属の鳥」エリアのマップは最初の敵と遭遇するまでの空間が広すぎて、「敵が出ないバグか?」と不安に思ってしまう。
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敵はスグに応援を呼びがちであるが、敵と敵との距離が開いていると応援を呼んでも聞こえないという場合があり、それはそれでそういうデザインであろうかと納得できる場面もないわけではない。
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グールはポリスボットの応援要請に応えないし、逆もしかりであるため、交互に配置することが出来たんじゃないかと思う場所もある。
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map内の色々と使えそうな廃墟に敵が配置されていないこともあり、もったいなさを感じる。
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本作では落ちているアイテムの数が限られるため、だだっ広いマップ内にポツンと落ちているアイテムを血眼で探すことになり、マップが無駄に広いと感じがちである。
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なお、懐中電灯を点けてもどこにアイテムが落ちているのかが非常に見つけづらく、だだっ広いマップを虱潰しに探索するしかない。
総評
『Wasteland 2』や『XCOM』に似たシステムのSRPGではあるが、ストーリーやイベントの自由度は極端に制限されている。
本作はミュータント能力をアンロックして、それをどう使うかが問われているゲームであり、レベルを上げて物理で殴るゲームではない。
行き過ぎた造形のミュータントがいるイかれた世界観で、登場人物らの間抜けな会話などからストーリーは二の次だと思わせておいて、最後に伏線回収をやってのけているのは、少しズルい。
ただ、その伏線がノートによる環境ストーリーテリングであることから、一部プレイヤーに伝わっていないのは残念である。
その後の展開
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本作はPS4/XboxOne版が同時発売された後、2019年7月にSwitch版がリリースされている。
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2019年7月31日にDLC「Mutant Year Zero: Seed of Evil」が発売されている。
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本編のストーリーの後日談となっている。内容に本編のネタバレが含まれているので先に本編のメインストーリーをクリアしてからのプレイを推奨している。
最終更新:2022年01月09日 19:49